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今日は窓から類を見送って、お父様たちも玄関では見送れなかった。
久しぶりに類とあんなことになって身体がまだ痛い・・・運がいいのか悪いのか、丁度類がインフルエンザ中にアレが始まったから良かったって思っていたのに。

こんな事が毎日続いたらホントに壊れちゃう・・・だからって誰にも言えないし。


そんな幸せな悩みは朝食が終るまで。
それが終ったら類に言われたように瀧野瀬に電話を入れようと思っていた。

午前中はテーブルマナーと花沢物産の歴史についてのお勉強をするって言われてた。それまでに宮崎を出て今日までの報告と自分の気持ちをお爺様に説明しなくちゃいけない。
スマホを握り締めて一生懸命頭の中でリハーサルみたいに台詞を繰り返して、あのお爺様に負けないようにと自分に気合いを入れていた。


「・・・様、・・・・・・野様・・・大丈夫ですか、牧野様?」

「・・・はっ?!あぁ、加代さん!ごめんなさい、気が付かなくて。どうかしましたか?」

「うふふ、何か一生懸命唱えていらっしゃったから。これからご実家にお電話ですか?」

「あはは・・・はい、そうなんです。どうしても類と離れてる時には電話をする勇気が出なくて・・・今日はちゃんと連絡しておきなさいって彼にも言われたので今から掛けるんです。それが終ったらお勉強しますからちょっと待ってて下さいね?」


どれだけ考え事をしていたんだろう、って時計を見たらもう9時半。
加代さんが朝食の後片付けに来ていて、私はそのノックの音も足音にも気が付かなかったみたい。それにまだ服すら着替えていない・・・だから急いで服を着替えて、もう1度顔を洗って気分を引き締めた。

加代さんは食器を下げた後にお茶を持ってきてくれて、まだスマホと睨めっこしてる私を見てクスクス笑った。


「ご心配でしょうけどご自分に素直になってお話しなさいませ。大事なのは流されないことですわ。
お話を聞いた時には驚きましたし、牧野様のお爺様もちょっと強引な方のようですけど、結局は自分の人生ですもの。たった1度の人生を他の方に決められては勿体ない!自分で決めて、自分の好きなように生きるのが1番です」

「・・・自分の人生を自分の好きなように?」

「そうですわ。そのためのパートナーが類様なのでしたら、ご自分と類様のために頑張るって思えば勇気も出ますでしょ?きっといい結果が出ますわよ。お勉強はいつでも出来ます。時間など気にせず落ち着いてご自分の気持ちをお話しなさいませ」


「・・・はい。ありがとう、加代さん」


加代さんが出ていったらスマホを目の前に・・・お爺様の携帯番号は記憶にあったからそれを打ち込んで静かに耳にあてた。
何度目かのコール・・・このまま電話が繋がらなかったらいいのにって思った瞬間、お爺様が電話に出た。


『・・・もしもし・・・誰じゃ?』
「お、お爺様?お久しぶりです。つくし・・・です」

『つくし・・・?!つくしじゃと?!』

懐かしい嗄れた声、電話だと聞きづらいお爺様の声が私の耳に飛び込んで来た。

あぁ、そうか。このスマホは類が買ってくれた物・・・私の持っていたスマホは宮崎に置いてきたんだから判らなかったのね。電話にすぐに出なかったのにも納得して、もう1度電話を持ち直した。


「お爺様、長いこと連絡しなくてごめんなさい。あの・・・もう五十嵐さんから話は聞いたんでしょ?」

もう少し丁寧に謝れば良いものを・・・って自分でも思うけど何を話していいのか判らない。
さっきまで一生懸命練習した台詞は何処に行ったやら、いきなり五十嵐さんの名前を出してしまって自分でも驚いた。

『この馬鹿者!本当に出て行って皆に心配を掛けたのに、社内の伝言に1度メールしただけでこんなにも行方を眩ますとは・・・!すぐに宮崎に戻ってこんか、つくし!』

「ご、ごめんなさい!でもお爺様にはちゃんと新しい恋を見付けに行くからって言ったでしょ?それに反対だってしないで『やってみるか?』って仰ったじゃない。黙って出たわけじゃないわ」

『屁理屈を言うな!お前には仕事もあったのに投げ出したまま出て行きおって・・・どれだけ迷惑掛けたと思っとるのか!』


・・・どうしてお爺様は「元気だったのか?」「身体を壊してないのか」という言葉を出してくれないんだろう。
確かに五十嵐さんから私の様子は聞いてるだろうけど、それでも直接私が電話してるのに・・・どうして仕事の事しか言わないの?

迷惑も心配も掛けたけど「無事で良かった」、とは思って下さらないのね。


「・・・1度そちらには帰ろうと思っています。でもね、私・・・今、好きな人が居るの。その人と暮らしてて大事にしてもらってるんです」

『・・・馬鹿馬鹿しい。花沢の跡取りらしいがそんな人間とお前が一緒になれると本気で思うておるのか?五十嵐の倅は早く戻れと言うたのじゃろうが。そのぐらいの男にしておいた方が分相応というものじゃ』

「五十嵐さんとは婚約解消したいんです。今までだってそんなお付き合いはしてないし、私達の間に恋愛感情がないんだもの。そうでしょう?昔からの約束かもしれないけど私は五十嵐さんとは結婚なんて出来ません。お願い、お爺様・・・そのように話をしていただけないかしら」

『今更そんな事は出来ん!それに浩司は東京でお前の姿を見て惚れ直したらしいぞ?つくし、悪い事は言わん・・・こっちに戻ってこい。これからは五十嵐の倅がお前を大事にしてくれるじゃろうて』

「そうじゃないの!私の気持ちがあの人には向かないの。私は・・・!」
『いい加減にせい!!この結婚は瀧野瀬と五十嵐で決めたこと!儂に逆らうことなど許せるか!』


「お爺様・・・それって私を瀧野瀬のために利用するって事なの?」

『・・・・・・好きに取ればいい。兎に角早く帰ってこい。判ったな!』


頑張って掛けたのに・・・電話はお爺様から一方的に切られてしまった。

その後、お母様とお父様にも電話を掛けた。
凄く怒られたけど両親には「声が聞けた」と泣かれた。それだけで・・・とても嬉しかった。


私はお爺様にとってなんだったんだろう。
子供の時から煽てられたり褒められたり、そうかと思えば束縛されて1人きりにされた。

言われるがままに仕事だからとパソコンを叩く毎日。難解な文章を読み解いて取引を繰り返した学生時代・・・遊びにも行かず、行事にもお祭りにも行かず・・・恋も知らない。


もうそんな生活に戻るのは嫌・・・私は私の人生に明るい色を付けていきたい。
ただ、それだけが願いなのに・・・。



*******************



「・・・クシュン!」
「ホントに風邪引いたんじゃないの?藤本は風邪引かない人種だと思ってたのに」

「・・・そろそろ虐めるのも止めていただけませんか?今の発言、モラハラですけど」
「良く言うよ。牧野の誕プレの時、俺と犬を同じ括りにしたクセに」


黒縁眼鏡が隠れそうな程のマスクをした藤本が俺から1番離れた場所で仕事をしている。
それを面白可笑しく見ながら、午後もパソコンで瀧野瀬コーポレーションの過去の事業内容なんかのチェックをしていた。

サラッと見る限りではおかしい部分はない。
だけど特定の企業と良く組んでいる。それも割と大規模建築の時だけ。そして必ず五十嵐物産もそれに参加してる。

「・・・でも、よくこんな大規模事業に瀧野瀬が入り込めるよね。これって国内有数の企業がしても良いような案件なのに・・・それが数年間でこんなにも?逆に言えば九州に留まらずに関東に進出する気は無かったのかな・・・」

「・・・クシュン!何か仰い・・・ハックション!」
「もう帰ったら?」


そんな財源が何処から出るんだろうと思えるような過去の建設物件。
九州でそこそこの企業がこれまでに1~2度だけっていうなら納得出来るけど、繰り返し大掛りな事業に加わってる・・・それに違和感を感じた。

正当な請負工事なら問題はない。それに似合わない企業規模だと言うだけで出来ないわけじゃない。


「藤本、頼みがあるんだけど」
「・・・へ?なんでしょう?」

「五十嵐物産の内部事情が知りたい。過去・・・そうだな、15年分ぐらいでいいから主な案件の完成工事原価報告書と人事関係のデータ。可能なら金融機関との取引内容とか出せる?」

「・・・無茶言いますね。関連企業とはいえ独立した会社ですからそこまで立ち入れませんよ。まぁ、専務のご希望の資料が揃うかどうかは判りませんが出来るだけって事でいいならやってみます。
でも、今は書類の保管期限が決められていますから15年前とかは流石に存在してないと思いますよ?花沢グループは最大で9年保管ですからね・・・クシュン!」

「任せる。可能な限りで調べてくれる?出来たら明日まで」


「・・・・・・殺す気ですか?」
「・・・出来次第でいいよ」






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2019/02/01 (Fri) 07:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/01 (Fri) 08:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

寒いですねぇ~!今日は流石にエアコンつけちゃった(笑)
雪なんですね?私の所は全然・・・雪で地面が白くなることがないのでニュースで見て驚くだけなんですよね。
雪道での運転も数年に1度ぐらいです。

だから逆に怖いんですよね・・・凄い前にスリップしてスピンしたことがあります。
で、動けなくなって牽引してもらいました。

お話し・・・もう少し可愛い爺さんにしようかと思いましたが、こうなったらトコトン嫌な爺さんにしてやろうと思いまして💦
ごめんね、つくしちゃん・・・両方の話で可哀想にしてしまった・・・。

類君、早くデレデレ状態から抜け出して格好良くなってっ!!(爆)

2019/02/01 (Fri) 11:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

sir***様 こんにちは。

コメントとお返事、どうもありがとうございました。
突然のお願い事にも関わらず温かいご対応、本当に嬉しいです♡

確かに少し減っているかも・・・?(類君だけではなく総ちゃんも少なくなっていますね💦)
そんな時のsir***様のお話の再開は感動でした♡
そしてブログのトップ画像・・・!!もう感激です!

お仕事忙しそうですね。
お風邪などひかれませんように、お身体に気をつけてくださいませ。

お言葉に甘えて、早速バナーを貼らせていただきますね。
私の方はお手数お掛けして申し訳ないぐらいです💦お時間があって、fc2に慣れてこられた時にでも・・・。

素敵な・・・💦いや、もう巫山戯た話ばかりでお恥ずかしい・・・。
そうですね、いつか素敵なお話しが書けるように頑張って続けていきたいと思います。

こんな私ではありますが、どうぞ宜しくお願い致します。

2019/02/01 (Fri) 12:07 | EDIT | REPLY |   

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