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「・・・ワン?」
「・・・クゥ~ン・・・」

「・・・・・・あ?ごめん、ぼーっとしてた。桃太郎、重たくない?」

お昼過ぎ、庭の芝生の上で桃太郎を枕代わりにして寝転んで空を流れる雲を見ていた。それを遮った真っ黒な顔は菊次郎。
そしてお腹の上には梅三郎が乗っかってた。

いつからこんな事していたんだろう・・・気が付いたらこの子達と遊ぶはずのフリスビーはまだ私の手の中にあって1度も投げてあげた記憶がなかった。
よいしょ、と立ち上がると桃太郎も身震いして起き上がり、菊次郎は待ち構えたように私にドン!と体重を掛けてきて、身体に力が入らなかった私は再び芝生の上に倒れ込んだ!

「いったぁ・・・ちょっと止めてよ、菊次郎!あんた、自分の体重考えてよね?うわぁっ!!」
「ワンワン!」

今度は梅三郎が顔の上に・・・そして桃太郎は私のスカートを口に咥えて捲り上げて、流石にそれには驚いて悲鳴をあげた!

そしてフリスビーを投げても遠くまで飛ばない・・・って言うか力が入らない。
物足りなくてすぐに取ってきた桃太郎は次を待ってるけど、2回目を投げる元気なんてなかった。
だからここで庭師のおじさんを呼んで交代してもらい、3匹はおじさんの投げるフリスビーを喜んで追いかけていた。

私はそれを芝生の上に座って眺めてるだけ・・・笑いたくても作り笑顔すら出来なかった。



「牧野様、そんなところに座っていたらまたお風邪を引きますよ?はい・・・これをどうぞ。少しは温まりますよ」

「加代さん・・・ありがとう御座います」

加代さんが持ってきてくれたのは大判のストールと膝掛け。それにマグカップに入った熱いココア。
それに包まってココアを飲んで、3匹が楽しそうに遊ぶのを見ていた。マグカップの熱さが気持ちいい・・・指先がこんなに冷たくなってたんだって自分でも驚いた。

「お昼も少ししかお召し上がりになりませんでしたけど・・・どうでしたか?酷く怒られましたの?」
「・・・あははっ、怒られるのはそうでもなかったです。そうじゃなくて・・・」

「そうじゃなくて?そんなに怒られなかったのに何故悲しそうにしていらっしゃるんですか?」


「・・・見付かって良かったって言われなかったの。仕事がね・・・仕事が止まるから迷惑だって、そう言われました」


「まぁ・・・それで」って加代さんもそれ以上の言葉は出なかった。
大きな溜息1つだけついて、私が見てる3匹を同じように見ていた。


「ねぇ、加代さん。私・・・ここに残れるかしら。ここに居たいんです。このお屋敷が大好きなの」
「あら、私達も牧野様の事は大好きですわ。これからも一緒に・・・きっと旦那様も奥様もそう思っていらっしゃいますわ」

「そう?ふふっ・・・頑張らないといけませんね」
「はい。私も及ばずながら力になりますわ。誰にも言えないことがありましたら何でもお話し下さいね」


それだけ言うと加代さんはお屋敷に戻って行った。
そして桃太郎達も庭師のおじさんが「犬舎に連れて行きますね」ってリードを付けて連れて行き、私はお庭で1人きり・・・加代さんがくれたココアも冷めてしまって、また指先が冷たくなっていった。



♪~♪~

その時に鳴ったのはスマホのメッセージ・・・ポケットから出して見たら類からだった。

『電話してみた?何か言われた?』

そのメッセージになんて返したらいいのか判らずに暫く画面を眺めていたけど・・・結局返事出来ずにポケットに入れてしまった。

『花沢の跡取りとお前が一緒になれると本気で思うておるのか?』
『許せるわけがなかろう!』
『浩司ぐらいが分相応じゃ!』
『早く帰ってこい!』・・・どれを取っても報告できるような言葉じゃないんだもの。

類が帰ってから直接話そうと思って、画面に文字を打つ事なんて出来なかった。


♪~♪♪~♪

「今度は電話?・・・もうっ、類ったらお仕事中に・・・あれ?」

今度鳴ったのはメッセージじゃなくて電話だったけど、知らない番号からで名前が出ていなかった。
間違い電話かな?この電話番号は誰にも教えていないし・・・って電話に出てみたら、それは思ってもいない人だった。


『つくしちゃん?浩司だけど』

「浩司・・・さん?五十嵐さんですか?」

『くすっ、なんでそんな反応?君の婚約者の五十嵐だよ?もしかしたら電話番号に驚いた?瀧野瀬会長が教えてくれたんだよ。君から電話があったからって、この番号をね。俺には電話くれないなんて淋しいな・・・つくしちゃん』

お爺様から電話番号を聞いたって言う浩司さんの声・・・この前パーティーで聞いただけだったけどやっぱり全然思い出せなかった。そのぐらい頭に残らない声だったんだもん。
そして今でも言われる「婚約者」って言葉に少し腹が立った。

「・・・電話をしなかったのは謝りますけど、そもそもあなたの電話番号すら知りませんでした。だから掛けられなくて当然でしょ?それにお爺様にも話したんですが婚約は解消したいんです。五十嵐さん、応じて頂けますよね?
私達の間にはなんの感情もないし、子供の時に勝手に決められただけでしょ?五十嵐さんに好きだって言われた覚えは全然ないんです。そうですよね?」

『言わなかっただけで俺はつくしちゃんと結婚するって思っていたけど?だからこの年まで恋愛なんてしなくても良かったんだから。俺はそんなに綺麗になったつくしちゃんが婚約者で嬉しいんだけどな』

「嘘ばっかり!14年間会ってないのにどうしてそんな事を言うの?!」


『会わなかった14年間、ずっと君に恋してたよ。君は俺の初恋の人だ。つくしちゃん・・・愛してるよ』


愛してるよ?何故・・・そんな事が言えるの?
五十嵐さんの心の中が読めなくてスマホを耳にあてたまま固まってしまった。

10歳の女の子に初恋をして今までその想いを抱えていたって言うの?そんなの信じられない・・・だってそんな素振りは1度も感じたこともないし、パーティー会場でもそれは同じだった。
それにこの人の手さえ触ったこともない・・・私はこの人の「温かさ」を知らない。愛ってそれでも生まれるものなの?恋ってそんな気持ちのことを言うの?

もしそうだとしても私の中にはそんな気持ちは全然無いから!


『つくしちゃん、いつ帰って来るの?帰り方が判らないなら迎えに行こうか?』

「え?いや・・・私は帰りません。あっ、1度は帰るけど宮崎に住むってわけじゃありません。類が・・・類がお爺様と話し合いたいって言ったから行くだけです。私の家は今住んでるこのお屋敷ですから」

『何言ってるの?そんな事が出来ると思ってるの?俺は婚約は解消しない。今、つくしちゃんがしてることは本当なら婚約者に対する不貞行為で、そのせいで婚約解消するなら多額の損害賠償を要求するかもしれないよ?
それにいいのかな・・・花沢物産の取締役専務が親戚の婚約者に手を出したってスキャンダルに巻き込まれるかもしれないけど・・・彼をそんな風に世間に晒しても平気なの?つくしちゃん』

「え?類を・・・世間に晒す?」


『君次第だよ。戻ってくれば何もしない・・・マスコミにも情報提供しないし花沢類は今のまま平和に暮らせる。でも従兄弟の婚約者を寝取ったみたいな記事が流れたら、花沢物産は大打撃だよね?彼、一生その罪を背負って生きていくんだよ?』


私と居ることは類にとっては「罪」なの?
五十嵐さんの言葉が何度も私の頭の中で繰り返される・・・何も言えなくなって黙っていたら「また連絡するね」と言って、今度も五十嵐さんの方から電話は切られた。


それでもまだ耳から離せなくて持ったまま・・・やっと離して真っ暗な画面を見たら、左上のランプが光ってた。

何も考えずに画面を開いて見たら類からのメッセージが何通も・・・全部中身は優しい言葉でいっぱい・・・。


『怒られたんでしょ?今度一緒に謝ってあげるから安心しなよ』
『あんた、泣いてない?大丈夫だから笑ってな。今日は早く帰るね』
『どうして返事がないの?昨日の事まだ怒ってるの?』

『牧野、愛してるよ』








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2019/02/02 (Sat) 09:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんばんは。

コメントありがとうございます。
とんでもない2人になってしまいましたね💦浩司君、とうとう・・・(笑)いや、いいですよ。

類君、何を見付けるんでしょうかねぇ・・・でも、ここはそんなに驚くような出来事にしてないんだけどな(笑)
ちょっと意外な類君が現れるかもしれません(笑)

その時はどうぞお許しを💦(これ、コメディだから!)

2019/02/02 (Sat) 21:19 | EDIT | REPLY |   

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