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それから数日間、お爺様に電話することもなく、お母様達からも電話が来ることもなかった。
まるで去年と同じみたい・・・何事もなかったかのような時間を過ごしていた。


私と居ることは類にとっては「罪」・・・五十嵐さんに言われたその言葉は口に出せなかったけど、後は類に任せようって思うことにしたから。

くよくよするぐらいなら花沢の事を勉強しなくちゃって思って、花沢物産の歴史と組織、現在の事業展開と将来の展望、過去の実績なんかを資料としてもらって読んでいった。
私の判る部分は少なかったけど、類からも今はまだ経営に関する事は覚えなくていいって言われたから予備知識として入れるだけ。

彼は今まで私がやっていた投資に関する仕事は一切させないと言った。
これが全部終ったら私の持ってる語学力を生かして海外事業部とかどうかって・・・そうやってお仕事も相談してくれる事が嬉しかった。
押し付けるんじゃなくて、能力に楽しさを加えた職場で生き生きと働けたらいいねって。


そして加代さんには色んなマナーを教わった。
テーブルマナーも田舎の自己流だったから徹底的に・・・むしろこっちの方が類と暮らすには必要だって言われて必死にナイフとフォークを握った。

「今度から昼食は総て練習を兼ねて本格的なお料理を並べましょう。宜しいですか?フレンチと和食、中華では総てマナーが違います。どんなパーティーや会席の場に類様とお出掛けになっても恥ずかしくないようにしましょうね」

「・・・ご飯が練習ですか?」

「そうです。お夕食は類様がいらっしゃいますから出来ないでしょう?ですからお昼はお稽古です。
あぁ!それと類様にはまだ報告してないのですが、和食のお作法とお茶に着付けのご指導は西門総二郎様にお願いしております。面識がおありだそうですから大丈夫でしょう?1度には大変なのでゴタゴタが片付いてからですね」

「西門さん・・・あぁ!バイク便のお兄さんですね?」

「バイク便?」

お茶に着付け・・・はぁ、そこまでしますか!って紅茶をズズッと飲んだら「音を立てない!」と怒られた。


そうかと思えば私を1番悩ませたのはこれ・・・最先端のお洒落についての話題についていけるようにって、特別講師まで呼んで世界のコスメ事情や流行のドレスとかバッグとか。はっきり言ってどんな難しい投資のサイトよりこっちの方が難解だった。

「まずはご自分のお手入れからしませんと!」って私の荒れた頬を見て溜息をつかれ、ついでにパックしてもらってピカピカのお肌になった。
「これでは類様の方がお綺麗なのでは?」って言い残して先生は帰ったけど、それ大正解だから。


おかげで毎日が忙しい。
宮崎の事を考えないわけじゃないけど、やっぱり昔の暮らしには戻りたくない。
私はこのお屋敷で、私なりに類を支えて精一杯生きていきたい・・・廊下からまだ寒そうな冬の空を見上げて自分の気持ちを強くした。




*******************




「今日の午前中の会議はこれで終わりです。それと例の資料ですが少しは揃いましたがご覧になりますか?」

「五十嵐の?うん、揃ったものまででいいから見せてもらえる?」

不気味なほど五十嵐浩司からの催促もなく、こっちから何も言わないからって瀧野瀬が急かして花沢にモーションをかけてくることもなかった。
瀧野瀬は企業規模から考えて下手に動いては来ないと思ったけど、それでも身内を保護してるって意味では何かを言ってきてもおかしくないはずなのに。
それをいいことに、俺もいまだに瀧野瀬にひと言も連絡してないのもどうかと思うけど。


「こちらが過去7年分の決算報告書。こちらが同じく過去7年分の主な案件と内容を纏めたものです。こっちが人事関係書類ですね」
「過去7年しかないの?」

「はい。どうやらそれ以前のものは機密文書専用の処理工場で廃棄処理、しかも溶解処理したそうです」

「溶解処理・・・徹底してるね」
「それだけ情報漏洩を重視しているのか、それとも絶対にこの世に残したくなかったかのどっちかですよね」

「・・・藤本が言うと胡散臭いよね。奥さんに隠れて何か処分したいの?」
「・・・・・・」


凄く不機嫌になった藤本の事は放っておいて、昼休みの間中もらった書類に目を通していた。
そうは言っても別会社の書類だから判りにくい・・・過去の案件の件名を見ながらおかしなものがないかをチェック。ただ、五十嵐が絡むには規模が大きすぎるだろうと思われる案件も、どう見ても筋違いと思われるような案件はない。

一応企業らしく綺麗に纏められた報告書に見えるけど・・・なんて思いながらページを捲っていた。


「専務、5年前の書類見ました?」
「ううん、まだ6年前までの・・・5年前に何かあるの?」

「いや、何かあると言いますか、五十嵐物産の東京支店が西門様の茶道会館の移転工事に関わっておいででしたよ」
「は?総二郎の所の移転工事?」

「はい。何故こんな案件が?って目に止まったんですよね。確かに住宅関連や建設関連の案件も多いんですが五十嵐はビルや総合施設が多いんですよ。それなのに日本家屋の西門流?って思いまして」

「確かにね・・・」


藤本に言われた通り5年前の資料の中にそれはあった。
「茶道表千家西門流・茶道会館移転並びに改装工事一式」・・・うわっ、流石家元。凄い金額かけてる・・・!

色んなものを見ても頭に入らないから、取り敢えず西門の案件で不明な部分がないかを見てみようとした時、奇妙な事に気が付いた。

「ねぇ、藤本・・・見てくれる?」
「なんでしょう?」

「ここ・・・営業担当者がこんなに代わってる。打ち合わせ時から最終引き渡しまでって普通は代わらないんじゃないの?相手に対する信用問題でしょ?」
「ホントですね・・・あぁ、営業担当だけでは有りませんね。営業部長もその上の人も・・・4人も最高責任者が代わるというのは異例なことでしょうね」

「・・・だよね」


気になって他の案件を見たけどそんな事は起きていなかった。
西門の移転工事だけこんなに各担当者が代わってる?その理由はなんだろう・・・。

藤本が揃えた人事関係書類を見ると5年前の同時期、担当を降ろされた営業担当者や役員は転勤させられたり中には退職している人間もいた。最高責任者の3人目に至っては懲戒処分を受けてる。


「これって何かがあったって事だよね・・・5年前か。総二郎はまだ大学生・・・何か知ってるかな」
「どうでしょうか。西門様はその頃はお遊びが忙しくて会館の移転など興味なかったのでは?」

「・・・有り得るよね」


それでも聞いてみるだけ聞いてみようか、って事で総二郎に電話をかけた。

『よっ!類、どうした?』
「総二郎、少し聞きたいことあるんだけどさ。お前んとこの茶道会館、5年前に移転しただろ?覚えてる?」

『俺を馬鹿にしてんのか?覚えてるさ。俺、広告塔になって宣伝したから』
「そうなんだ!あのさ、悪いんだけど、その時の工事関連の請求書とか見積書とか議事録、花沢まで持ってきてくれない?」

『そういう時は見に来るんじゃないのか?おかしくないか?』
「花沢の役員専属受付嬢、ミス花沢だけど茶道始めたいってよ?」


『すぐ行く!』
「悪いね、いつも」



実に簡単だよね・・・総二郎って。





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2019/02/04 (Mon) 07:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 おはようございます。

コメントありがとうございます。
つくしちゃんらしいでしょ?(笑)私も田舎に住んでるので若い時には結構遠くまで行かないと流行の物とかなかったです。
若い時はね~、ネットもないしそれが不便だったんですけど今は田舎でのんびりで良かったって思います。

つくしちゃん、まずはブランド名から覚えなきゃ!ですね♡

きっかけが総ちゃん♡
(多分、総ちゃんは役に立たないと思うけど)

さて、類君何か見付けられるかな?



2019/02/04 (Mon) 08:40 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/09 (Sat) 18:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様。こんばんは。

コメントありがとうございます。

総ちゃん(笑)実はこの後も頑張ってくれるんですよ♥
この2人を書くのはめっちゃ楽しいです。

10日ぐらい先かしら・・・その時は自己満足の世界なんでお許しくださいね💦
(と、前もって謝っておく)

つくしちゃんも頑張ってますし、ラストまでもう少し!

どうぞ応援宜しくお願いします♥

2019/02/10 (Sun) 01:39 | EDIT | REPLY |   

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