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総二郎が花沢本社に現れたのはその日の夕方。
事務長が外出中だったから時間が掛かったって言ってたけど、俺に言わせればめっちゃ早い。

ロビーの受付からの連絡だったからすぐに役員フロアに案内するように伝えたら、何故か数人の女子社員を従えてエレベーターから降りてきて、そこまで出迎えに来てた俺を見たら女子社員は全員そのまま降りていった。

「まったく・・・勤務時間なんだけど?!」って呟いたら藤本に睨まれたけど。


「よっ!これが頼まれてたもの。何するんだ?こんなもの」
「ちょっと調べたいことがあってね。ありがと、助かるよ」


そしてすぐにここの受付嬢と名刺交換・・・多分そこには違うメッセージも含まれてるんだろうけど。
いつも俺を見て頬を染めるミス花沢も総二郎を見て大興奮。恋が始まったら俺のおかげだよね?って思いながら資料だけもらって先に執務室に戻った。



西門は築100年以上の日本家屋。
しかも重要文化財級の石庭や茶室も含めて、本人達も迷子になるぐらいの巨大で複雑な造りの屋敷だ、
それこそ本邸は近年耐震工事を行って外観は変えずに中身だけ最新の技術で守られた要塞・・・もとい日本家屋に変身。今回のはその広大な敷地の端にある茶道会館の移転と耐震工事のようだった。

茶道会館は資料館のようなもので、今の家元の先代が作った比較的新しいものだから100年以上前のものを保持しながらの工事は必要としない。現代の技術で充分だけど・・・それにしても!

「同じ敷地内に移転と耐震工事して3億5千万・・・ですか」
「家元ならポン!と出すよね。でもさ、議事録の量に比べて他の資料は少ないね・・・実際どうなんだろ。見積もりはこれ1枚かな」

「場合によっては初回の見積もりは破棄するか返却するものですからね。それよりも見積もりの日付と1番初めの打ち合わせの日付に随分と差がありますね。この期間は何をしていたのでしょう?」

「総二郎、まだ遊んでるの?」
「お呼びして参ります」


藤本が総二郎を呼びに行くと、やけに楽しそうな表情で入って来た。
そしてソファーに座ったら鼻歌交じりで足組んで・・・その姿を見たらムカッとした。なんか暢気すぎて頭に来るんだけど。

「総二郎、口元に赤いのついてるよ」
「えっ!マジ?ヤベっ・・・!」

馬鹿なヤツ・・・急いで手の甲で拭ってるけどホントは何にもついてないから。
総二郎の唇の血色がいいから判んないのかもしれないけどさ。


それは置いといて・・・どうして五十嵐物産と西門が急にそんな契約をしたのかから聞くことにした。

「この時だけど、どうして五十嵐物産?西門が懇意にしてる業者ってあるだろ?そんなにコロコロ変えたりしないよね?昔からの繋がりだってあるんだから」

「あぁ、その時ずっとこんな新築や改装を頼んでいた業者が社内の不正事件が発覚して業務停止命令を受けたんだよ。で、そんな企業は後援会からも除外って規約にあるし、関西で世話になってる業者があるからそこを使おうと思ったんだよな。そしたらそこも案件が重なってて工期が掛かるってんで探してたら、どっかからその話を聞きつけたみたいで突然現れた・・・確かそんな流れだったと思うぜ?」

「ふーん・・・偶然なの?」

「あぁ。取引がなかったから親父も悩んでたのを覚えてる。その時の営業部長が熱血で毎日のように顔を出して説明するから、最後の方は親父、面倒臭くなってたもんな・・・」

「じゃあ西門から持っていった話じゃないんだ。で、その時の契約内容におかしな所はなかったの?それか工事までの間に不思議な事とかさ。結構担当者代わってるみたいだけど理由は?」

「んーと・・・」


こんな時なのに笑いが出る・・・あの総二郎が真剣に悩んでる。

そりゃそうだ。一応遊んでいたとはいえ大学生の総二郎が毎回そんな打ち合わせに出ていたわけじゃない。
知らなくて当然っちゃ当然・・・だから事務長の西村さんに電話を入れてもらうことにした。
「だからお前が来いって言っただろ!」ってここにきてマジギレ。

さっきまで楽しそうにしてたクセに・・・。
藤本が差し出す珈琲にも「お前が煎れたの?」って不満気に言うから拗ねちゃったし。


『担当者が代わった理由ですか?確かにあの時はコロコロ代わりましたねぇ。えーっと・・・確か1番初めの熱血担当者の植木さんはうちが五十嵐さんと契約を交わしたらすぐに転勤になられたんですよ。それにも驚きましたけど、次に来られた佐々木さんだったかな?その方は大人しい人でねぇ。何を言ってるのかさっぱり判らなくて結構こっちが怒鳴ったりしてビビらせちゃいましてね』

「熱血から大人しい人に?その時には違和感はなかったの?西村さん」

『特に思わなかったんですが、確か佐々木さんの時にいきなり見積金額に間違いがあったって言って訂正されましてね。その額が1億近かったので家元と驚きましてね』

「えっ!億に近いって、それ見積もりの意味あるの?」

『そうなんですよ。だから払えないとかじゃなくて、それは誤差じゃないだろう!って怒ったんですよ。そうしたら今度は真面目で堅物な川本さんって人に代わりました。その頃に不信感はあったんですが、もう契約を交わしたのでいちいち変更するのもって事で進めたんですけど』


この後も話を聞いたら、2番目の佐々木という男はこの後に依願退職をしているようだった。
最初の男が転勤で2番目が退職・・・呪われた案件みたいで怖いんだけど。チラッと総二郎を見たら楽しそうにスマホを触ってた。


『あぁ、そう言えば川本さんの時に暫く五十嵐の人が来なくなりましてね、茶道会館もリニューアルセレモニーの関係で工期が遅れたら困るのにって催促したんですよ。驚いた事にその時にはまた責任者が交代してて、それが最終担当者の関本さんです。
挨拶もなしに交代されたので不満をぶつけましたら、どうやらその人は社内の規定に反した行いがあったとかで辞めておられました。本当にあの時はなんだったのか・・・1番真面目そうな方でしたけどねぇ・・・』

「社内規定違反?そんな事まで喋ったの?」

『いや、これは喋ったと言うより口を滑らされたんでしょう。最後の担当者の関本さんが言われたのは「あんなことさえしなければ・・・」って感じでして、私が不思議な顔したら「忘れて下さい!」って慌てておられたのでそうかなっとね。
関係はないんでしょうけど、川本さんが「1度見積もりの内容を精査したいので、もしかしたら金額の変更があるかも」って言われましてね。その時に「またですか?」って言ったら凄く驚いた顔をされていましたよ。ご自分の会社の事なのにねぇ』

「へぇ、そうなんだ。色々とありがとう、西村さん」


結局工期も遅れずに内容的にもおかしな所はなく、西門の茶道会館移転工事は滞りなく終了したという。
色んな訂正があったものの見積もりも1番初めのものが正解だと言われ、それで最終的に決済され当然支払いなども完了。
西門サイドからは特に問題はなかった、と言う結論に至る訳だ。


気になるのはその途中のゴタゴタ・・・気のせいかな。
何処かが引っ掛かるんだけど。


「それじゃあ俺はこれで帰るわ。なんか知らねぇけど役にたったのか?」

「ん、解決するかどうかは判んないけど参考になったよ」
「そっか!それじゃ良かったな」


専務室を出てエレベーターまで行くとさっきのミス花沢がニッコリと総二郎を見送った。

まぁ、恋が始まってもいいけどさ。
恋なんてとんでもない事で始まったりするからね・・・うん、納得。



「・・・君さ」

「は、はい?専務、どうかされたんですか?」
「勤務時間内にキスなんてしたら職務規程違反だって知ってた?」

「えっ!本当ですか?!やだっ・・・どうしよう!」


・・・そんな事あるわけないじゃん。





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2019/02/05 (Tue) 06:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/05 (Tue) 08:52 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あはは!総ちゃん(笑)楽しそうですよね~!
きっと受付のお姉さんも総ちゃんのフェロモンにヤられたんですよ♥

花沢物産の人事課に罪はないと思います。罪は総ちゃんの存在ですねっ!
毎日類君見てるのにねぇ?タイプが違うから魅力的だったのかも~。

これで一気に!!・・・ただし、ややこしいので時間が掛かりそうです。
(誰も会社の不正事件なんて読みたくないでしょうが、ここは我慢してくださいっ!)

2019/02/05 (Tue) 17:24 | EDIT | REPLY |   
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Re: おはようございます🎵

yuka様 こんにちは。

お久しぶりですね、風邪とか引いてないですか?
うふふ、コメントありがとうございます。

えっ!そうですか?そんなつもりはないんだけどな💦
このぐらいは全然平気です。

これがY嬢だったら書きませんけどね(笑)名前も出ない人なら大丈夫!
でもここまでです・・・この先はダメ!!あははっ!


それと・・・当たってます!!ピンポーン!!

毎度ごめんなさいっ!(笑)でも悲しくないから安心してね!

2019/02/05 (Tue) 17:27 | EDIT | REPLY |   

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