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「専務、何してるのか知りませんがこっちの仕事もしていただけますか?今日の夕方のプレゼン資料です。必ず目を通してくださいね?」

「そんなもの今日あったっけ?何処で?」
「第3会議室です!忘れてたんですかっ?!朝も言いましたよね?」

「言い忘れたんじゃないの?」


今日も元気な藤本が横で五月蠅い。

それを無視して眺めていたのは五十嵐物産と繋がっている企業のリスト。そのリストの中には過去に金銭トラブルや不正取引で行政処分を受けた企業も数社ある。
この企業と取引するのに内部での監査機能はどうなってたんだろう?

花沢ならこの「ブラックリスト」に記載のある企業なんて照会の時点でアウトだろう。
ビジネスパートナーになるためには厳しい審査をクリアした企業でないと許可されないのはお爺様が代表の時から変わらない。


「ほら!専務、そんなもの見てないで今度南米で行われる地下資源の採掘事業についての企画書です。それに関するメールが渡辺部長から来てるはずですからすぐに確認してください!
それとカナダのオーレン海外支部長から至急回答くださいと来期の予算についてのメールもあるでしょ?」

「・・・よくそれだけ覚えられるよね、藤本」

「専務のおかげで記憶力だけは鍛えられるんですよっ!」

そんな会話をしていた時だった。
俺のプライベート用のスマホが鳴り、また藤本は眉を寄せたけど、見れば自宅の警備室から・・・何かあったのかと思って電話に出たら、伝えられたのは監視カメラの破損だった。


「監視カメラが?その子達、掴まえられたの?」

『いえ、申し訳ありません。牧野様に言われた道を追いかけたのですが見付けることは出来ませんでした』

「そう・・・被害は正面の2台だけ?不審な点はない?」

『不審な、と言われると庭園内の監視カメラは偶然サッカーボールが当たったために落下したのかもしれませんが、門上部の監視カメラは強固な小道具を使って割られた可能性もあります』

「小道具?」


警備担当者の話だとうちの前の通路で数人の子供がサッカーボールを蹴りながらやってきて、1番初めにボールが当たったのは門上部に埋め込まれた監視カメラだったけど、その時には被害はなかった。
そして1人が力一杯ボールを蹴って、最初に壊されたのは庭の中の監視カメラ。慌てた子供達が門から中を覗き込もうと門柱に飛び付いた時に監視カメラの映像が途切れたらしい。


『門上部の監視カメラは悪戯防止のために少し埋め込んでありますし、子供の背では届かない位置です。今回は誰かの背中に飛び乗ってまで覗き込むという不自然な行動をとっているのと、その子達が帽子を目深に被って顔が確認出来ないことです』

「わざと顔を隠してるって感じなの?」

『そのように見えますね。普通の子供なら誤って破損させたからと言って、慌てている時に顔を隠すなんて事はしないでしょう。それに埋め込んであるものが割れたとなれば手に持ちやすい小型のドライバーかナイフなどの固い部分がある小道具で殴りつけたのではないかと・・・その部分が暗くなっていて判別出来ませんでした。それにもう1つ・・・』

「まだあるの?」

『はい。牧野様が不安に思われたらいけませんのでその場では言わなかったのですが、同時刻に裏門の監視カメラも同じような手口で破壊されました。同じ年頃の子供のようですね、サッカーボールがそこでも見えていましたから』


同時刻に正面と裏門?
確かにこれまでも何処か1箇所ぐらいなら被害を受けたこともあるけど1度に複数箇所なんてなかった。
しかも顔がちゃんと映像として残ってて、その子の家を探し出して説教するついでに花沢に恨みや文句があったのかどうか、その家の事情を詳しく調べるまでやってきたはず・・・それで、これまでは全部がただの悪戯だった。


「牧野は?牧野は無事?」

『はい。牧野様はお怪我もありませんし庭に入ったボールをその子達に返して普通にしておられました。私達が飛び出たことで驚かれたようですが屋敷で説明を受けられたと思います』

「うちの監視カメラ、ドイツ製の特殊なヤツだったよね?すぐに交換しておいて」

『はい。既に手配はしていますが丁度同じタイプの物が輸入待ちだそうで3日ほど掛かるそうですが』

「3日・・・まぁ、そのぐらいは大丈夫だろう。連絡ありがと。他に変わったことがあったら教えてくれる?」

『本日は念のため警備員を正面と裏に配置します。少年達が特定出来ましたら調査も行います。それで宜しいでしょうか』

「ん、いいよ」


なんだろう・・・少し胸騒ぎがする。まさかと思うけどあいつが?
いや、別に隠してるわけじゃない。ちゃんとうちに居るって伝えてあるんだから、そんな無茶なんて・・・。

念のため藤本を使って確認させた。
「なんで私が!」なんて怒っていたけど「その間にサインするから」って言えば渋々電話を入れていた。


「あ、すみませーん。私は東京の藤本不動産と言いますがそちらの営業本部長の五十嵐浩司さん、いらっしゃいますかぁ?」
『お世話になっております。藤本不動産様・・・ですか?生憎と五十嵐は昨日から出張で海外に出ておりまして。お急ぎですか?』

「ほほぅ!海外にですか~?判りました、急ぎませんので結構です~、どうも~!」
『はぁ、ではお電話がありましたことだけ伝えておきますね』


すっごく演技が下手だってすぐに判った。
女子高校生の電話じゃないんだからなんで語尾を伸ばすの?それに嘘つくならなんで藤本も変えなかったんだろう。そう言うところ、変に真面目だよね・・・こいつ。


でも、五十嵐じゃないなら本当に悪戯なのか・・・俺が神経質になってるのか?




*******************




類の車が帰ってきたのが窓から見えると今日も玄関まで走って行ってお出迎え。
車のドアが開く前から扉の外に出て待っていたら、降りてすぐに小さなケーキの箱をチラチラと見せてくれた。

「うわあっ!何、それ!」

「これ?会社の近くに最近オープンしたケーキ屋さんがあるんだけど、そこで予約しないと買えないチーズケーキなんだって。一昨日予約したんだけど買えるのが今日だったから買ってきた。食事が済んだら部屋で食べよ?」

「うん!!」

それが本当かどうかは判らないけど、今日、私が驚くような出来事があったから元気がないと思ったのかも。
監視カメラの事で連絡がいったはずなのにそれにはひと言も触れず、夕食の時も藤本さんの面白い話で盛り上がった。

この先どうなるかなんて判らないのに春の予定も立てたりして、まるで五十嵐さんの事なんて終わったかのような類の言葉・・・そのぐらい心配しなくていいよってことなんだろうけど、余りにも現実を無視してるから逆に可笑しくなった。
「え?何が可笑しいの?」なんてキョトンとしてるから「何でもないよ」って言うと拗ねた顔を見せちゃって。

・・・類のその優しさが嬉しかった。


お部屋に戻ってから珈琲を淹れて、類が買ってきてくれたケーキを食べた。

「ホント、すっごく美味しい・・・っ!あれ?類は食べないの?」
「俺はいい・・・甘いの嫌いだもん」

「でも2つあるもん。じゃあ、食べさせてあげる!あ~んして?」
「・・・・・・やだ」

「これはたこ焼きじゃないんだから!はい、あ~ん・・・」

そう言ったと同時に類に差し出したケーキ付きのフォーク、それをサッと取り上げると手首を掴まれて引き寄せられた。
そして塞がれた唇・・・一瞬歯を舐められた?って思うぐらいで離された!


「チーズ味・・・くすっ、ご馳走様♡」
「・・・もうっ!」




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2019/02/09 (Sat) 10:18 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/09 (Sat) 12:07 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

いつもコメントありがとうございます。
ちょっと仕事がドタバタしてるのでお返事いつも遅くてスミマセン💦

これが何の為の裏工作か・・・ははは、もう1人しか居ませんよね。
今からちょっとだけシリアスになりますが(もう1回念のため)このお話はプチコメディです。

余りド真剣になっちゃいけませんよ?(笑)
気楽な感じで読んでいただくと助かります♥

私のところも寒いですが・・・やっぱり雨です。とほほ!
この連休は寒そうですね~!気をつけてお過ごし下さいませ。
(ってか、私は関西に行くんですが・・・寒いのかしら💦)

2019/02/09 (Sat) 20:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

今度は辛子かワサビでいこうかと思います。
刺激的~♥

はっ?それならハバネロか?!

2019/02/09 (Sat) 20:56 | EDIT | REPLY |   

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