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「桃太郎、菊次郎!どっちが速いか競争だよ~!それっ!」
「ワンワン!」「ワン!」

「あっはは!梅三郎には無理だよ?この子達には勝てないってば!」
「ワンワンワン!!」

決して気分は浮上したわけじゃなかったけど、お母様も類も私のために一生懸命になってくれてる・・・それを感じるから笑ってなきゃ!
そう思って今日も玄関前の庭の芝生で3匹を相手にフリスビーを投げていた。

桃太郎と菊次郎の競争!そして私と梅三郎の競争だ。
当然2匹の足には敵わないからいつも私と梅三郎は2匹の後を追いかけてるだけ。そうやって笑ってるうちに元気が出て来るかもしれない。
私1人じゃ何も出来ないから、せめて笑顔で・・・そのぐらいしか思い付かなかった。


「よーし、もう1回!そーれっ!・・・あっ!」
「ワンワン!!」

桃太郎が取ってきてくれたフリスビーをもう1回投げたら手元が狂って門の方に!
風に乗って外に出そうなぐらい飛んでしまったから3匹は凄い勢いで門に向かって走っていった。それを後から追いかけて行くと、菊次郎が何かを見付けたのか大きな声で吠え始めた。

屋敷の人間だと、たとえお手伝いさんでもそんな吠え方はしない。
私がここに来てから菊次郎のそんな声は初めて聞いたから驚いた。続いて桃太郎も門の前に行って右左に何度も移動しながら吠え始めた。・・・一体何が起きたんだろう?


「菊次郎?どうしたの?何か居たの?」
「ワンワン!!!」

「桃太郎まで?どうしたのよ・・・誰も居ないじゃない」
「ワンワンワン!!!」

普段優しい顔の桃太郎の目が怖い・・・梅三郎も先輩達のそんな声を聞いたことがなかったから、この子だけは怯えて私の腕の中に飛び込んで来た。
可哀想にカタカタ震えて・・・梅三郎が怖がるから2匹を大人しくさせようともっと傍に寄ると、門の横から背の高い男性がヌッと現れた。でも何かから隠れようとしてるのか門柱にピッタリ寄り添うようにして、身体はお屋敷から見えないようにしてるみたいだった。

スーツ姿じゃなくてラフな普段着・・・一瞬誰だか判らなくて足が止まったけど、ニヤッと笑った顔でそれがお正月に再会した五十嵐浩司さんだと気が付いた。
そう・・・婚約者だと言ってもそのぐらい顔を覚えていないんだ。


あの時はタキシードだった・・・それが普段着に変わったらもう判らない。その程度なんだって今更ながら思った。


「・・・五十嵐さん、ですよね?」
「やぁ、あんまり帰って来ないから迎えに来たよ。瀧野瀬つくしさん・・・つくしでいいかな?」

「よ、呼び捨てなんて止めてください。そんな関係じゃありません。私は婚約解消したいって思ってるんだから」
「俺は思ってないし、その理由がない。解消なんてしないよ?」

「ワンワンワン!!」
「ワンワン!!」

「・・・犬にまで随分と嫌われたもんだ。でもあんまり五月蠅いと話合いにならないから大人しくさせてくれる?」


確かにこれ以上吠えると加代さんか庭師さんが来るかもしれない。
別にそれでも良かったけどこれを類に連絡されたら、驚いて仕事を投げ出して帰ってくるかも・・・そんな事はさせられないから桃太郎と菊次郎を伏せさせて「静かにね」のサインを送った。

まだ言うことを聞かない梅三郎だけ抱っこして門の前・・・白い柵を挟んで五十嵐さんと向かい合った。


「話合いってなんですか?類が居ないところでは私、何も言えないんですけど」
「類君に聞かれたらマズいのは君じゃないかなぁ・・・それでも良ければ類君が帰ってくる頃に出直してもいいけど?」

「類に聞かれたら困ること?もう私には類に隠し事なんて無いですから構いませんけど」
「隠し事がないんじゃないよ。君は何も知らないんだよ・・・宮崎でしていた事がどんな事かをね」

「私がしていた事?あの・・・それももしかしたら不正な事かもしれないって類には言ってるわ。お爺様の個人口座で莫大な金額の為替取引をした事でしょ?普通なら考えられないって類も言ってたから・・・」

そう言うと少しだけ眉を顰めた。
やっぱりあれは普通じゃなかったんだ・・・私を利用して資産を増やそうとしていたのね?

暫く何かを考えていたみたいだけどそのうち小さな溜息ついて、周りには誰も居ないのに門に顔をくっつけるほど前に出てきてニヤッと笑った。
それを見てゾクッとして一歩下がると桃太郎達が唸りだし、それをもう1度「静かに・・・」って宥めて私も彼を見据えた。

何を言われても大丈夫・・・私には強い味方が沢山居るんだから!


「そう・・・君の言う通りあの為替取引は普通じゃ考えられない事だよ。資金源は俺と会長が架空請求やでっち上げの工事に経費を使ったことにして浮かせた金・・・言うなれば瀧野瀬コーポレーションと五十嵐物産の間で行われた不正によるものだ。
会長はね、儲けた金を個人資産を増やすために不動産投資なんかに使ってる。俺はね・・・」

「五十嵐さんは違うんですか?」


「そう、俺はね・・・この花沢家に報復するために君が稼いだ金を使ってるんだよ。君はこの家を潰そうとする俺の為にコツコツ今までパソコンを叩いていたって訳だ」


「・・・え、花沢・・・を?」


どういう事?私がやってきたことは類の家を・・・花沢を潰すため?そのために私はあの部屋で毎日パソコンと睨めっこしてたって言うの?
これまで増やしてきた資金は・・・そのために使われたの?
でも、でも、花沢物産にそんな危機は来てないし、類達もお父様達にもそんな不安は感じられなかったけど・・・?


「君は何にも知らないから実に利用しやすかったよ。俺はね、花沢家が憎いんだ・・・兄弟なのに俺の親父をあんな田舎に追いやって助けようともしない。いくら素行が悪かったとはいえ絶縁に近い状態にまでする事はないよね。
本当なら俺だって花沢物産の役員になってもおかしくない立場だよ?それがあんな地方企業の役員で終わるだなんて・・・」

「そ、それはあなたのお父様に問題があったって聞いてるわ!お父様も随分助けようとしたけど、あなたのお父様の方が危ないことばかりしてお爺様って人から縁を切られたって。逆恨みじゃないの!」

「じゃあ君は自分の弟がそうなったら見捨てるかい?何が起きても助けようとは思わない?」

「・・・それは・・・」

「そういう事だよ。伯父さん達の都合のいいように君に説明してるみたいだけど、本当は自分たちだけが美味しい思いをするために追い出したんだよ。酷いことするよね。そして今では世界有数の企業になったのに俺達を呼び戻そうとも、援助しようとも、花沢の片腕にしようともしてくれない。
あのパーティーにも呼ばれたのは20年ぶりだよ?どれだけ俺達が宮崎で頑張っても、真面目にしていたらグループ本社には見向きもされない。だから裏金を作って密かに策を練ってたんだよ」

「裏金?・・・策ってなによ・・・」


「日本では余り派手には動けないからね・・・花沢がヨーロッパで拠点にしているフランスのライバル会社と手を組むためにその金を使ってるんだよ。莫大な資金を作ってそこに流し、花沢の事業妨害をして損害を出させ、それを補填するために日本本社が動き出す。その時に追い打ちをかけるようにして類君のスキャンダルでも流そうかな・・・そうしたら違う部分からも花沢を攻撃できるよね。倒産まではいかないだろうけど弱体化させるには充分だ。そして五十嵐は花沢を捨てて海外企業と組んでもいいし、弱った花沢を救う意味で残ってもいい・・・ただし実権を頂く。つくしちゃん、君は俺の計画の1番初めからの協力者なんだよ」



私が花沢を攻撃するための協力者?

そんな私がここに居てもいいの・・・?今の話は本当なの?


「それでもまだここに残るの?」
「・・・でも、あの・・・あなたの話だけじゃ・・・」

「今から俺と一緒に宮崎に帰るなら、この計画を中断してもいいけどな」
「・・・は?」

「だって類君に少し話してしまったんだろう?それなら余り危ないことは出来ないよね。君を連れて帰って今度はちゃんと五十嵐のために正当な取引を企業として行えばいいだろ?
でも、帰らないと言うのなら今の話を類君にしないといけないね・・・つくしちゃんが花沢を陥れるための資金を何年間も掛けて調達してたって・・・それはこの先一緒に居るには辛いだろう?」

「一緒に居るのが辛い?」

「そうだよ?だって類君の顔を見る度に『私はこの人を裏切ってたんだ』って思うんだよ?辛いよね・・・」



五十嵐さんは勝ち誇ったような笑顔を見せた。

私には何が何だか・・・でも花沢を陥れるために働いていたのだと言う言葉は、鋭い刃物のように私の心に突き刺さった。





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2019/02/11 (Mon) 08:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうです!プチコメです!キリッ!
12時に比べたら全然シリアスじゃありませんっ(笑)

まぁ、ちょっとはね・・・ちょっとは事件は起きるけど・・・全然大丈夫!!多分・・・。


寒いですよね~!私の所は今日も雨で風が強いみたい・・・。
って言う私は今は関西ですが・・・雪ですっ!!雪、本格的な雪はこの冬初めてです!

と、言うことで興奮していますが、夕方帰れるのかしら・・・💦ちょっと心配です。
(早く帰らなきゃ明日の更新が止まる!!ww)

2019/02/11 (Mon) 15:22 | EDIT | REPLY |   

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