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<side五十嵐浩司>

あれだけの為替操作が出来て語学に長けていても所詮は籠の中の鳥。
世間知らずだから適当についた嘘でここまで動揺するとはな。少し考えれば判ること・・・外国企業を巻き込むなんて五十嵐程度の企業に出来るわけもない。
尤もらしく言えば簡単に信じ込んでしまう、この子はその程度だ。

今も悩んでる・・・だがここまで話して花沢類を待たれたら完全にこの嘘はバレる。
だから、このタイミングで連れ出さないとマズい。

もうひと押しするか・・・。


「やっぱり信じてる人から裏切られた時って、そう簡単に関係回復しないよね。君が知らなかったとは言え、花沢に不利な状況を作る側に居たって事は一生彼の頭からは消えないと思うよ」

「え・・・一生?」

「そう、一生。何かある度にこの事を思い出すんだよ。うちじゃなくても五十嵐って人に出会うとか、宮崎出身の社員がいたとか、そういう些細な所からでもこの事件を連想して嫌な思いをするはずだ。自分が恋した人に裏切られたんだってね・・・。
そう思ってる類君の横にずっと居られるかなぁ・・・たとえば喧嘩した時に古い話を持ち出されたら君は耐えられるのかな?」

「ホントに私が悪かったのなら耐えられるわ。でも、それで類が私を嫌ったりはしないって信じてるから!」

「そうかな?でもさ、もし類君が嫌ったりしなくても伯父さん達はどうだろう。
今は何も知らないから君の味方かもしれないけど、全部知ってしまったら別の感情が湧くよね。類君は恋愛感情があるかもしれないけど、伯父さん伯母さんにとって君は所詮息子の恋人。息子に継がせたい会社に攻撃しようとした側の人間なんて許せるかな?そして彼はそんな両親に逆らえる?あっさり言うことを聞くんじゃない?」

「・・・・・・で、でも、類もお父様達もそんな人じゃ・・・」

「人は歳と共に変わるもんだよ。今は言われなくても彼等の胸の奥にはこの先も残るんだ・・・花沢を陥れようとした人間の1人だってね・・・」
「止めてください!!私はそんな事を考えてやっていたわけじゃないわ!」


「何度も言ってるよね?君が知らなくてもそういう風に利用していたんだよ、こっちはね!」

少し大きな声を出したら固まった・・・判ったのか?
自分はこの屋敷にいちゃいけない人間だったって事が・・・な。




**********************




桃太郎と菊次郎がまた唸りだした。
五十嵐さんが大きな声を出したから・・・それもまた制したけど、その時にもう言葉が出なかった。

喉の奥が痛くて苦しくて・・・今、彼が言ったことを頭の中で整理すればする程、私はこのお屋敷には居られないと言われてるようで足が震えた。


「・・・君は彼の事が好きなんだろう?」
「え?えぇ・・・勿論です。だから婚約解消を・・・」

「好きな人の悲しむ顔を見たい?それに耐える自信ある?」
「類の・・・悲しむ顔?」

「そう・・・俺が言うのもなんだけど、好きな人の悲しむ顔なんて見たくないよね。もし、自分がその原因だったらそっと去って行くのも愛情だよ?そう思うけどな」

「去って行くのが愛情?」


それまではニヤッと笑っていた五十嵐さんだけど、この時は何だか悲しそうな、それでいて優しい顔をしていた。
「彼を苦しませちゃいけないよ?」、そう言われた時・・・私の目から涙が溢れた。

この先、私が類を苦しませる事になる。
類は優しいからそんな事は言わないだろうけど、私の知らないところでは苦しい顔をするかもしれないの?お父様もお母様も同じなの?
『この子は昔、そういう事をしてたのね』・・・そんな記憶が残ってしまうの?

私はそれに気がつかずに自分だけ楽しそうに暮らしてるのかしら。


そんなのはイヤだ・・・類が苦しむのはイヤだ。
お父様に、お母様に嫌われてしまうのはイヤだ!


「でも、私が宮崎に帰っても類が・・・類が来るんじゃないかしら」
「その心配は無いだろう?いくら彼が来たって君が会わないと言えば済むことだよ」

「またあの暮らしが始まるの?私、それだけは嫌なんです・・・息が詰まるの」
「そうだよね。これからはもっと外に出してあげるよ。これからは不正な資金なんて作らずにきちんと会社で仕事をしよう?瀧野瀬コーポレーションが嫌なら五十嵐でもいい」

「でも、類に会ってから・・・」

「それは止めた方がいいな。ここで彼に会ったら君は離れられなくなる。もう1度言おうか?君が花沢家に居たらどっちにしろ彼を苦しめる・・・不正に荷担した君はここに居る訳にはいかないんだよ」


何度も言われる「苦しめる」という言葉に私の頭は真っ白になった。
そして「ここに居る訳にはいかない」、そう言われたあと、足はゆっくりと犬舎に向かった。


桃太郎と菊次郎は類の犬だからここに置いていかなきゃ。
でも梅三郎は類が買ってくれた私の犬・・・だから連れて行こう。

2匹を誘導して犬舎に戻し「遊び終わったんですか?」と、声を掛けてくれた庭師さんに頭を下げた。

「おや?牧野様、梅三郎は戻さないんですか?」
「・・・えぇ、この子はもう少し遊ぶんです。桃太郎と菊次郎だけ宜しくお願いします。ありがとう、おじさん」

「・・・牧野様?」



表の門から出ると誰かに見られるかもしれない。だから庭師さんと話したあとはお屋敷の裏門に回ってみた。
裏門の周りには沢山木が植えてあって倉庫も並んでて、お屋敷の中からは見えにくくなってる。誰かに見られて引き止められちゃいけない・・・そう思ってお屋敷を何度も確認しながら進んだ。

鍵が閉まってるけど内側からなら開けられる・・・音を立てないように鍵を外してそーっと外に出た。

「どうしよう・・・鍵が掛けられないけどいいかな・・・って、誰かに伝えることも出来ないし。早く気が付いて鍵、掛けてね・・・」


梅三郎は私に抱かれたまま大人しくしてる。
五十嵐さんは正門から外れた道に移動していて、その向こう側にはタクシーが見えた。私もそこに向かってトボトボと・・・鉛のように重たい足を引き摺って歩いた。

目の前まで行くと、またすごく怖い顔してる。その視線は私の腕の中の梅三郎に向けられていた。


「その犬、どうして連れて来たの?」
「この子は私の犬ですから。類が私の友達に選んでくれたの・・・だから、置いていけません」

「・・・そう。厄介な事をしてくれるね。乗りなさい」
「・・・・・・」


タクシーに乗ったら五十嵐さんが行き先を運転手さんに告げたけど、それが何処の街なのか聞き取れなかった。でも東京駅や羽田空港じゃなかった。
一体何処に行くんだろう・・・それすら、もうどうでも良くなってたのかもしれない。



花沢のお屋敷が遠くなっていく。

ごめんね・・・類。黙って帰っちゃうけど許してね。
心細そうに小さな声で鳴く梅三郎をギュッと抱き締めて目を閉じた。




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2019/02/12 (Tue) 07:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

はははは・・・前に「離れませんよね?」ってコメントいただいたときに「どうしよう・・・」って思いました(笑)
はい、これから類君が取り戻しに行きますが・・・まずは準備から♥

意外な方向に進んでいきますので、再会まで少々お待ちくださいませ♥

コメント、ありがとうございました。

2019/02/12 (Tue) 12:00 | EDIT | REPLY |   

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