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「五十嵐物産東京支社の営業部長をしてた川本竜之介って人・・・多分、今は63歳ぐらいかな?役員名簿にあったから上位管理職だと思う。5年前に退職してるけど、その後何をしてるか調べてくれる?」

仏頂面の藤本の横で花沢の情報部に電話をしていた。
そこまで睨まなくても目の前に置いてるのはうちの決済書類で、それにサインしてるんだからいいと思うんだけど。

「本気で見てますか?」って意味だよね、ってチラッと見ると次の書類を持ってる。
そういう所、優秀すぎて涙が出そうだ。


夕方のテレビ会議と1人だけ来客予定があったからそれを片付けて、急ぎのメールに目を通した。常務からの「至急回答」の文字が見えてムッとしたけど、それも速効済ませてパソコンの電源を落とした。

「よし、これで今日の業務は終わりだよね」
「・・・終わったんですか?」

「うん、だって定時だから。お疲れ様、藤本。明日も宜しくね」


まだ何か手に持ってるけど見ないフリ・・・コートを手に持って急いで執務室を出ようとしたその時、加代から電話が入った。

彼女が職場に居る俺に掛けてくるなんて事は殆どない。
少し嫌な予感がしてその電話に出てみた。

「もしもし、どうしたの?加代」
『類様、申し訳ございません。牧野様なんですが、今日は何かご予定がありましたかしら』

「予定?なんの?」

『いえ、何処かにお出掛けとかそんな予定ですわ。私は何も知らないのですけれど・・・やはり今日は何処にも行くような話はありませんでした?おかしいわ・・・』

不安そうな加代の声と、微かに数人の声と物音が聞こえる。
誰かが屋敷内を走ってるのか?その時に「北の庭はどうだった!」と言う警備担当者らしき声が聞こえた。


「加代、何があった?牧野がどうしたの?」

『いえ、それが・・・夕方近くまでお庭で桃太郎達といつものように遊んでいらしたんですけど、この時間になってもお部屋にお戻りでないので捜してるんです。でも、お屋敷の何処にも姿がないような気がして・・・今も全員で捜してるんですけど』


牧野の姿が見えない?

確かに屋敷は馬鹿みたいに広いし、牧野が知らない部屋もあるけど・・・だからって探検なんてしないだろうし、しても屋敷内ならすぐに見付かるだろうし。
あれだけ賑やかな牧野の事だ、静かにかくれんぼなんて出来ないと思うんだけど・・・?


「加代、犬たちは?」

『はい、桃太郎と菊次郎は犬舎に戻っています。庭師の話ですと梅三郎とはまだ遊ぶからと言われて、あの子だけ戻さなかったそうですわ』


梅三郎だけ・・・?どうして梅三郎だけ?
確かにあの子だけは牧野の犬だけど、今まであの2匹と区別なんてしたことがないのに。何故か凄く嫌な予感がして「すぐに戻るから!」と電話を切って車まで急いだ。


まさか・・・ね。

まさか、俺の前から消えたなんて・・・そんな事ないよね、牧野。


**


屋敷に戻ったらすぐに出てきた加代は「まだ見付かりません!」とさっきよりも慌てていた。

急いで部屋に戻ったけど牧野の物は何1つ無くなってないし、マグカップも置かれたままで本だってテーブルの上・・・椅子の背凭れには牧野のカーディガンが無造作に置かれてた。
ベッド脇には彼女のスマホがある・・・これを置いて行ったのは何故だ?

普通にしていた感じがそのまま残った部屋・・・ここには牧野が決心して花沢を出ていったと言う空気はなかった。


今度は牧野と話したって言う庭師のところに向かうと、その時の牧野の様子を話してくれた。

「いつもより元気がなかったようですけどねぇ・・・まだ豆柴と遊ぶと言って大事に抱えてましたよ」

「抱きかかえてたの?歩かせないで?」

「はい。それも珍しいなぁとは思いました。いつも3匹を追いかけるようにして戻ってこられますので今日は何故梅三郎だけ抱いて、こっちの2匹も何故かゆっくり歩いてきましてね。それに最後に『ありがとう、おじさん』って言われたんです。
その時の顔が寂しそうで・・・何かあったんでしょうか?」


庭師に「ありがとう」?その意味は何?
今日は特に庭師の世話になってないのだとしたら、「これまでありがとう」って意味?

「加代、表の防犯カメラ、どうなってる?」
「在庫切れで手配してましたでしょう?それこそ明日、新しい物と交換予定だと業者から連絡はありましたわ」

「って事は門の周辺のモニターは見られないの?」
「はい?あ、あの、申し訳ございません!そこはまだ確認してないですわ」


「・・・警備室に行ってくる!」
「類様!!」


警備室で屋敷中の防犯カメラの映像を見た。
警備担当者は24時間ここに待機していて、牧野にも不審者が近づかないよう注意しろと指示は出しておいた。

ただ最近ここに来た牧野の事だし、何処までが不審者なのかと言われれば判断出来なかったのかもしれないし、花沢家の人間ほどの緊張感がなかったのか・・・。


「牧野様でしたら確かに午後、庭に出ておられたのは別のモニターで確認出来ます。こちらですね・・・そして画面のこの奥の方が正面の門ですが、現在はこれが限界です」

「・・・他のカメラの映像は?」

「こちらが玄関周辺のモニターで、ここからも少し見えます。今、牧野様が門の方に行かれましたよね?どうやらフリスビーを投げ損ねたようです。それを取りに行った時に誰かと話しているようですが、その人物の姿が・・・あぁ、ここですね!」

「どこ?」
「この門柱の端の部分に人の腕のような物が見えます。ボルゾイが興奮しているようですので見たことがない人物でしょうか」

「拡大出来る?」
「はい、すぐに」


拡大しても牧野は背中を向けていて表情の確認は出来ないし、音声も拾えては居ない。
確かに桃太郎と菊次郎が威嚇してるようにも見えるけど、牧野の方が宥めてるような感じが記録されていた。そこで暫く牧野は動かない・・・そのうち向きを変えてトボトボと犬舎のある裏庭の方に回った。

「この先の映像は?」
「こちらです」

今度は牧野が誘導して2匹を犬舎に戻してる。
それは庭師から聞いた様子と同じで、牧野は確かに梅三郎を抱き締めているようだった。

「この先なのですが、牧野様は裏庭のアジリティーのある方に向かって行かれました。その後が監視カメラの死角に入ったのかお姿を確認出来ません。裏門のカメラも交換前でしたので万が一ご自分で出られたのでしたらここかもしれませんが・・・」

「そこ、監視カメラが無いならどうして人を置かなかったんだ!」
「と、当日は配置していたのですが!」

「その日だけ置いたって仕方ないだろう!!」
「は、はいっ!申し訳ございません!」


いや、2~3日の事なら問題ないと思ったのは俺だ。警備員の配置の事も明確に指示はしなかった。鍵が掛かってるんだから侵入されることもないと思っていたのも事実・・・。
そして牧野が自分から出ていくわけがないと決めつけていたのも俺だ・・・だけど、誰かが牧野を言葉巧みに誘導したとしたら?

そんなの1人しか居ない・・・とうとう九州から出てきたのか!


「類様!裏門の扉は閉めてありましたが鍵が開いたままになっていました!」
「夕方この付近の道路に長時間止めてあったタクシーがあったとの情報です!」


「る、類様、申し訳ありません!私がついていながらお屋敷内だから安心してしまって・・・!」

「・・・加代、監視カメラも計画的だったんだ。牧野が自分からこの屋敷を出て行くように仕向けたんだ・・・」
「例の方・・・でしょうか?」


「心配しないで。絶対に取り戻すから・・・!!」





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Comments 4

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2019/02/13 (Wed) 07:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは!それ、坊ちゃんじゃないですかね?(笑)
梅ちゃん、役に立つかなぁ?・・・でも、1人じゃないのでちょっと安心でしょ?

ちょっとだけつくしちゃんには寂しい想いをさせてしまうけどお許しを。

100話いかないと思ったのになぁ(笑)
もう暫くお付き合い下さいませ♥

2019/02/13 (Wed) 11:58 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/16 (Sat) 21:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

ホントですよね💦これも花沢家に仕えてる人には「類じゃない」って感じだったのかも?
つくしちゃんだから気が緩んだんですかねぇ・・・

浩司君が1枚上手だったのか?つくしちゃんが騙されやすいのか・・・こっちかな?(笑)

少しの間離ればなれですが、急スピードで(お話しは長いけど)事件解決に動きます。
応援してやってくださいね!


コメントありがとうございました。

2019/02/16 (Sat) 23:36 | EDIT | REPLY |   

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