FC2ブログ

plumeria

plumeria

タクシーの中で五十嵐さんが面倒臭そうに調べ物をしている。そして羽田空港にも電話を掛けて何かを聞いていた。
その話の内容だと、梅三郎がいるからこのままでは今日の飛行機に乗れないってことみたい。

事前の申し込みが必要らしく今からすぐに申し込めば明日には飛行機に乗れる、そう言われて車は私の知らない街の中に入って行った。
五十嵐さんが嫌々ながら向かったのはペットショップで、そこで梅三郎が入れるケージとドッグフードを買ってもらった。


可哀想に・・・小さい梅三郎は突然移動なんてしてるから怯えてる。
「大丈夫だよ、私が居るからね」って声を掛けたら五十嵐さんが舌打ちしたのが聞こえた。


「・・・君は出て行った時も散々迷惑かけたのに帰る時にもこんな・・・いや、いいけど」

「・・・ごめんなさい。でも・・・」
「いいよ。帰ってくれる決心してくれたんだから文句言っちゃいけなかったね。でも、これだとホテルには泊まれないから五十嵐の持ってるマンションに行くからね」

「マンション?五十嵐さんのマンション?」

「俺のじゃない。五十嵐物産の社員寮も兼ねて小さなマンションを持ってるんだ。そこなら犬が居ても問題ないだろうから」


まさか・・・同室?そんな事ないよね?


午後6時半・・・タクシーが停まったのは本当に小さなマンションで、でも比較的新しいのか可愛らしい外観だった。

車から降りたらもう外は暗い。類は今頃お屋敷に戻っていてもおかしくない時間だ・・・そんな事を考えながら頭上の星が見えそうな空に顔を向けた。
私が居ないことに驚いてるだろうな。スマホでさえ置いてきたんだもん・・・捜しようがなくて困ってるかもしれない。
今頃必死になってあちこちに・・・宮崎にも電話したかもしれないね。


目を閉じたら私を捜して走り回っている類の姿が浮かんで睫を濡らした・・・それを梅三郎がペロッと舐めて、慌てて笑顔を作ろうとしたけど唇を噛み締めたままで全然笑えなかった


**


五十嵐さんに連れられてワンルームの小さな部屋に入った。

こんなに狭い部屋・・・もし五十嵐さんが襲ってきたら逃げる場所も無い。でも梅三郎が私を守ってくれる?こんなに小さいけど、噛めばそれなりに痛いもの。
だめだめ、そんな事してこの子が蹴られたりして怪我でもしたら・・・くりくりした目で私を見上げる梅三郎が、今度はペロッと私のほっぺたを舐めた。

ずっと抱きかかえていたから床に降ろしてあげるとクンクンを匂いを嗅ぎ回って落ち着かない。最終的には抱っこをせがむように私の足によじ登ろうとするから、仕方なくもう1度抱き上げた。

それを見る五十嵐さんの冷たい目・・・この人はどうやら動物が嫌いなんだ。まるで汚いものでも見るかのように眉根を顰めて梅三郎を睨んでいた。
だからこの子も怯えながらでも低く唸る・・・「大丈夫だよ、梅三郎」って頭を撫でるとその声は収った。


「君はこの部屋を使うといい。間違っても出ていこうなんて思わないようにね。出入り口は1つだし、管理人がずっと見てるから勝手には外に行けないよ。必要な物があったら隣に俺が居るから呼んでくれればいい」

「隣・・・?隣の部屋、ですか?」

「一緒がいいならそうしてもいいけど?でも犬が居る部屋では寝ることも出来なくてね。悪いけど結婚しても動物は飼わないからそのつもりでね。ペットなんて飼い主の機嫌取りばかりして役にもたたない、鬱陶しくて邪魔なだけだ」

ムカッとする言葉だったけど、それでこの部屋から出て行ってくれるなら我慢出来る。
私はまた小さく唸りだした梅三郎を抱き締めて「ありがとう」ってお礼を言った。だって、この子のおかげで1人になれるんだもんね。

「君の夕食は後で届けられるように手配した。管理人が持って来ると思うからそれを食べてくれ」

「・・・判りました」


いつもならお腹が空いて類が待ち遠しい時間だ・・・でも、今日は全然食欲なんてなかった。
届いたのは見た目の豪華なお弁当で、まだ少し温かかった。
目付きの怖いおじさんが届けてくれて、「ゴミはきちんと集めておいて下さいよ」なんて低い声で言われて、梅三郎が鼻をヒクヒクさせてた。

勿体ないと思うけど殆ど食べられない・・・喉の何処かが苦しくてすぐに箸を置いてしまった。



この日、私は梅三郎を膝の上に抱えたまま、一晩中類の事を考えていた。

自分から初めて好きになった人。
どうしても欲しかった自由な生活、可愛らしいお部屋と笑いのある食卓。
私の言葉を聞いてくれる人・・・私を笑わかせてくれる人。

同じ時間を過ごしてくれる人・・・私を抱き締めてくれる腕。


その人を悲しませてしまう私・・・あの家に居てはいけない人間、この先も消えない記憶・・・。


この言葉がずっと頭の中で繰り返されて、自分の行き着く先が見えなくなってしまった。




*********************



牧野の残していったスマホの中には登録されてないけどいくつかの携帯番号がある。
これのどれかが瀧野瀬会長で、他には両親のものもあるだろう。だけどここで瀧野瀬に掛けるのは止めておいた。

牧野が自分から出て行ったかもしれないと言う内容を伝えれば、取り戻すのに不利になる・・・あくまでも騙されて連れ出されたという確証が欲しかった。

だから掛けるとしたらこっちの方に・・・


『お電話ありがとうございます。五十嵐物でございます。本日の業務は終了致し・・・』

くそっ・・・!五十嵐物産は当然時間外で電話は繋がらなかった。
五十嵐浩司の携帯番号なんて知らない。急いで執事に確認したら宮崎にある五十嵐の自宅電話番号だけが判った。


「類様、五十嵐様にお電話を?牧野様が宮崎に連れ戻されたと?」
「判らない。でも牧野をこの屋敷から出て行くように仕向けるのはあいつ以外に考えられない」

「ちゃんと預かっていると伝えているのにそんな事を?まさか戻らない牧野様に無茶な事を・・・」
「加代、少し黙って!」

「も、申し訳ありません!」

加代も自分に責任を感じてるから余計に狼狽えてるんだ。
そんな彼女には申し訳ないけど声を荒げてしまった。言われなくても少しは頭を過ぎってる・・・もし、牧野に触れていたら・・・。

そんな事になって牧野が傷ついたら絶対に許さない・・・その時は有無を言わさず道明寺や美作も、ついでに西門も使って総攻撃してやる!


『はい、五十嵐でございます』

この声は叔母さん・・・と、思ったが声なんて覚えてもないから使用人かもしれない。

「東京の花沢と申しますが、浩司さんはご在宅でしょうか?」
『浩司坊ちゃまですか?いえ・・・少々お待ち下さいませ』

坊ちゃま?坊ちゃまってタイプじゃないだろうっ!!いや・・・そんな所でキレてる場合じゃなかった。
やはり電話口に出たのは使用人の女性で、彼女は確認の為に電話を保留した。

待たされる時間が長い・・・もしかしたら花沢と名乗ったのは間違いだったか?イライラしながら待っているとやっと電話口に戻って来た。


『大変申し訳ございません。浩司坊ちゃまは数日前から出張でこちらにはいらっしゃいません。本日お戻り予定だったんですが急用が出来てお帰りは明日になられたそうです』
「明日?そうですか、判りました。因みに海外?」

『は?いえ、そんな支度はしてなかったと思いますけど・・・何かお伝えしましょうか?』
「携帯の番号を教えてもらいたいんだけど」

『あっ、それは私からでは・・・』
「だよね、じゃあもういい。ありがとう」


やっぱり浩司は海外出張なんかじゃない・・・東京に来てるんだ。
明日帰ると言ったよね・・・じゃあ今日は都内に泊まってるのか?


「大至急情報部を総動員して都内のホテルを全部捜索しろ!偽名を使ってるかもしれないから顔写真を用意してフロントで確認、ホテルの規模は無視して全部当たって!!」

「はっ!了解しました!」

「まずはペット同伴で泊まれるところから捜せ!牧野が豆柴を連れて行ったからその子を手放すはずがない。でもどういう手を使うか判らないから必ず全部に確認しろ!」

「る、類様?!都内のホテルなんてものすごい数ですわ!」
「いいから全部だ!見付かったらすぐに連絡!」

「畏まりました!」


どれだけ数があろうが確認してやる・・・朝になって東京を出られる前に必ず見付けるんだ!




80716df2e04fe3ba083655af4577883f_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/02/14 (Thu) 06:00 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/02/14 (Thu) 06:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: Happy Valentine♪

えみりん様 こんにちは。

コメントありがとうございます。100話目なので表で待っていました(笑)

梅ちゃん、頑張ってくれると良いんですがまだ子供ですのでねぇ💦
どうかしら?
新幹線だと速効乗れるんでしょうけどね。宮崎まで直では行けないので・・・。
ここ、浩司君の誤算だったのかもしれません。
(plumeriaにとっても誤算でしたが💦)


我が家、形だけだけど煙突があるんですよ。
レンガ色で四角い形の。

そこによく烏が止まるんですが、外から見たら縁起が悪いような気がしてなりません(笑)
建てた時は「いいじゃん!」って思ったんですが、最近は「なんで煙突があるんだろう?」って疑問です。

デザイン担当の人、何を考えて煙突?
そして私達は何故その時に承認したんだろう・・・。

今朝も煙突には烏がいました・・・う~ん。


義理チョコって最近はないものだと思っていましたが、ダンナの会社は社長の奥様の趣味で毎年「チョコ用意するからね!だから3月にもお返しちょうだいね!」って言われます。
しかも金額指定もされます・・・いい加減、止めないかなぁ。
クリスマスにも「プレゼント交換するから一人3000円の物を用意して!」って。

子供かっ!!って言いたくなります(笑)

2019/02/14 (Thu) 14:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうですねぇ、確かに狂ったと思いますよ(笑)
それは後に判ります・・・梅ちゃんがいたおかげで・・・ふふふ。動物の移動は難しいですね。

あらあら、まだお若いのでしょうね(笑)
うちのダンナはそういう時も2次会には行かなくなりました。
お酒飲むのも疲れるんですって。

私的には0時の類君更新時間に掛かるとイヤなので、早いか遅いか・・・出来たら遅くなって欲しいぐらいです。ははは・・・。
だって田舎ですから店まで迎えに行かなきゃいけないんですもの。

酷いときには車で往復1時間・・・私の夜の時間は貴重なのに(笑)

2019/02/14 (Thu) 14:19 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/02/14 (Thu) 18:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

コメントありがとうございます。

読み応えのあるコメント、大笑い致しました。
なんて会話をしてるんですか!事故しますよ?!(笑)

って事は大きいのかしら・・・いや、アレの話じゃなくてへ○の話だけど。
そんなもの食べるんなら太いのかしら・・・だからアレの話じゃないって!

花沢城では書かないけど、ちょっと興味はあります。
(多分2人が断わるよね💦)


豆柴嫌いの浩司、はい!そのうちバッサリ斬っておきます!!

お祝いコメント嬉しかったです♥ありがとう~♥

2019/02/14 (Thu) 22:39 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply