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「失礼します、西門の若宗匠居てはりますか?雛乃が参りましたよ」

「あぁ、ありがとう。すぐ行く」

祇園のお茶屋である「桜や」に来たのは18時半。
ここに雛乃を呼んで、お茶屋と繋がっている古い宿の一室で会うことになっていた。

それにしても今日は1日中誰かにつけられてたような気がして、ここでも何故か落ち着かなかった。京都のお茶屋は『一見さんお断り』の風習があるから知らないヤツは入って来られないって判ってるけど、それでもすげぇ不安。

まさか今からのことを誰かに見られるって事はねぇよな?

お茶屋の女将さんに案内されて横の出口からそっと出て奥の宿屋に向かう通路を歩いていた。その時・・・

ガタン!!


「誰だ?!」

後ろで物音がしたから振り向いたけど誰も居ない。今のは何の音だ?と不思議だったが今は時間がない。早めに済ませて雛乃は座敷に戻してやらないといけねぇし。
その物音の原因を突き止めることなく俺は足を速めた。

宿屋の裏木戸を開けて入り、音を立てないように閉めて裏口から・・・なんか悪い事してるみたいで気が引けるけど、急いで教えられた部屋に向かった。


「あら、若宗匠・・・お待ちしてましたえ」
「忙しいのにすまなかったな。急いで終わらせようか」

「まぁ、せっかちですこと。そんなんじゃ嫌われますえ?お手柔らかにお頼申します~」
「悪いが時間がねぇんだ。強引かもしれないけど許してくれよ?痛くねぇようにするけどさ」

「勿論どす~、傷なんて付けないでおくれやす」
「ははっ!傷なんてつかねぇよ。じゃ始めるぞ」

だらりの帯は流石に重い!それをグイッと引っ張って解くと、やっぱり強かったのか「痛いっ!」って普通の声があがった。
こいつも人気の舞妓とは言え東京出身だからな。

「ははっ!雛乃、舞妓言葉じゃなかったぞ?」
「だって総二郎様が思いっきりやるんだもん!ちょっと言葉は普通に戻しますっ・・・って、待って、総二郎様!」

「待てねぇの!いいからしっかり立ってろ、もう少しで解けるから」
「あっ、そこは・・・痛いってば」

「お前んとこの男衆おとこしさんはすげぇキツく結ぶんだな!・・・よしっ、解けた」
「はぁ、苦しかったぁ!もうっ・・・酷いんだから」

・・・バタン!!


なんだ?また何処かから音が?でも急がないとな・・・こいつの商売まで邪魔しちゃ悪いし。
部屋の外で聞こえた音は無視して雛乃の帯を解き、今度はこのド派手な着物を脱がさなきゃ・・・何本も腰紐が結んであるから時間が掛かってマジ焦る!

「雛乃、お前も紐解け」
「え~!総二郎様、やってくれないの?私、力ないから時間掛かっちゃうよ?」

「我儘だな・・・ほら、こっち向けよ」
「ふふっ!ね、総二郎様、これからはご贔屓にしてくれるんでしょ?」

「まぁな。俺がこっちに来た時には指名するよ」
「嬉しいっ!」


パサリと衣擦れの音がして着物は畳の上に落とされた。

「よし、じゃあ雛乃、次にいくぞ。これを・・・」そう言った時、バンッ!!と部屋の襖が開いて、そこに現れたのは・・・!


「総二郎ーっ!あんたって人はーーーっ!!」
「西門さん、現行犯ですわ!逃げられませんわよっ!!」


「きゃああぁーっ!なになにっ!?」


「・・・・・・・・・はっ?桜子に・・・つくし?!」




*******************




「先輩!西門さんが出てきましたわ。どうやら奥の家に行くみたい。ついて行きましょ!」
「桜子、どうしようっ!こんなの・・・ホントに総二郎が浮気してたら・・・」

「それを確かめに来たんでしょ?何震えてるんですか!しっかりしなさい!」
「やだぁ、桜子!」

「静かにっ!足音たてないでくださいよ!」

そうは言うけど総二郎が奥の家に向かっていく・・・何だかそのオレンジ色の明かりがヤケに色っぽいんだけど、所謂そういうお宿なの?まさかご飯も食べずに雛乃さんと先に・・・ってドキドキしながら歩いていたら、暗がりの道だったから何かに躓いて大きな音を立ててしまった!

ガタン!!

「誰だ?!」


・・・・・・桜子に袖を引っ張られて隠れた近くの壁。
そこにへばりつくようにして2人で身を寄せていた。一瞬振り向いた総二郎は暫く私達の方を見ていたみたいだけど気が付かずにまた歩き出した。
そんなに急いで行きたいのっ?!

「何やってるんですかっ!バレる所だったじゃないですかっ!」
「ご、ごめん・・・」

「もうっ、あっ・・・あの戸口から入っていきましたわ」


ほんの少しだけ覗いて見たら、彼は辺りをキョロキョロしながらササッとその中に・・・私と桜子は顔を見合わせて同じ戸口から中に入った。
今度は慎重に・・・何処かで声がするのを確かめながら奥の方に進んで行った。

でもここは何なのかしら?凄く静かなんだけど・・・本当に『そういう事』をする場所なの?
1歩出す足音に細心の注意を払ってたら、すぐ横の部屋から聞き覚えのある声がした。これは・・・総二郎じゃないの?!

「勿論どす~、傷なんて付けないでおくれやす」
「ははっ!傷なんてつかねぇよ。じゃ始めるぞ」



桜子の目がキラッと光った!そして私はゴクリと唾を飲み込んだ。
始めるぞ・・・って言った?総二郎の声で始めるぞって?傷付けないでって・・・まさか、今日ハジメテするの?!

耳が一気に熱くなって、心臓がフルマラソン完走したときみたいにバクバクしてる・・・走ったことないけど。
指と歯が同時にカタカタ鳴って、桜子に「しっかり聞くんですのよ!」って囁かれて頷いたけど、実は既に吐きそうでふらふらだった。


「ちょっと言葉は普通に戻しますっ・・・って、待って、総二郎様!」
「待てねぇの!いいからしっかり立ってろ、もう少しで解けるから」

「あっ、そこは・・・痛いってば」


待てない?待てないって・・・そうよ!総二郎はいつもこういう時に待ってくれないのよ!私の心の準備が出来てないのに自分の欲望だけで身体が動くんだからっ!
それに、痛いってーっ?!なによ、もう始めたの?!・・・って変な想像したら足が勝手に動いて襖に少し当たった!

・・・バタン!!

「誰だ?!」


「「・・・・・・!!」」

「先輩っ!何回やったら気が済むんです?!まだよ・・・まだですからね」
「え?まだなの?だって痛いって・・・」

「まだ2分ぐらいでしょ?せめて3分は待ちましょう!」
「・・・カップラーメンじゃないんだから・・・」

とにかくこの手の達人桜子と襖に耳を当てて中の声を聞いていた。さっきの音にもビビらないぐらい雛乃さんに夢中なの?
総二郎・・・本当だったら許さないんだからね?!


「雛乃、お前も紐解け」
「え~!総二郎様、やってくれないの?私、力ないから時間掛かっちゃうよ?」

「我儘だな・・・ほら、こっち向けよ」


紐・・・?紐解いてるの?って事は着物の腰紐・・・それって、それって・・・
襖を挟んでも聞こえた着物が落とされる音、それを聞いた時、もう我慢が出来なくなった!

「よし、じゃあ雛乃、次にいくぞ。これを・・・」

これ以上待ってると本当に突入するに決まってるんだからーーっ!
「あっ、まだ始まってないのに・・・」って呟いた桜子の手を振りきってバーン!と襖を開けてしまった!

「総二郎ーっ!!あんたって人はーーーっ!!」
「西門さん、現行犯ですわ!逃げられませんわよっ!!」


「きゃああぁーっ!なになにっ!?」

「・・・・・・はっ?桜子に・・・つくし?!なんでお前らこんな所に来てるんだよっ!!」


ピンク色の長襦袢姿の雛乃さんと、その腰に手を回してる総二郎が呆然として私達を見てる・・・そんなに大きな目なんて見たこともないわよ?総二郎っ!!


「どういう事なの?総二郎・・・酷い、今日みたいな日に浮気するなんて!」
「説明出来るんですの?西門さん。なんで長襦袢姿の舞妓さんを抱き締めていらっしゃるの?」

「は?!あぁ、別に抱き締めてたわけじゃなくて・・・ってか、だからなんでここに居るんだよ!」

「総二郎が疚しい事してるから狼狽えてるんでしょ?!信じられないっ・・・あの1年は何だったのよっ!」
「先輩を泣かしたらこの私が許しませんわよ!あの時にかかった2人分のバイト代と先輩の美容にかかった費用、全額負担していただきますからね!さぁ、ちゃんとそこに正座して説明していただきましょうか!」



「お待たせしましたぁ~、いやぁ、あの後お得意さんが来てしもうてねぇ、若宗匠・・・あれ?」

私達が総二郎を責めていたら後ろから大きな荷物を背負ったお爺さんがニコニコしながら入ってきた。
そして私と桜子を見てキョトンとして、総二郎が大きな溜息をついた。


このお爺さん・・・誰?どっかで見たことあるような?




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2019/02/21 (Thu) 15:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

現行犯、一歩手前でしたねぇ(笑)
もう少し待たなきゃ。最近のカップラーメンだって4分とかあるし。

あれ?ママゴトじゃなかったのかな💦

でもさ、よく考えたら白塗りの長襦袢って・・・そんな気になるんかいな?
白塗りだよ?


・・・明後日判明します。はははっ!怒らないでね!

2019/02/21 (Thu) 23:08 | EDIT | REPLY |   

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