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plumeria

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急に襖が開いて、大声で喚きながら飛び込んで来たのはつくしと桜子。
その後に入ってきた爺さんは俺があるものを頼んでいた西門馴染みの老舗呉服店、「冨久田屋」の店主。夕方挨拶に行った呉服屋の爺さんだ。

揃ったところで長襦袢姿の雛乃には取り敢えず着物を羽織らせて、全員がその場に座った。


「・・・で?もしかして俺の後をずーっとタクシーで付け回していたのはお前達か!」
「付け回してたって・・・元々は総二郎が京都で浮気したからでしょ?!これがいい証拠じゃないのよ!」

「浮気?!浮気現場に爺さん呼ぶのかよ!」
「そうですわ、先輩!このお爺さんは何者ですの?まさかカメラマンとか言いませんよね?記念に撮影しとこうとか?!」

「そ、そんなの有りなの?」
「馬鹿か!なんでそんな場面を撮影しなきゃいけねぇんだよ!」

「もうお座敷に戻っても宜しおすか~?うち、姐さんに叱られてしまうわ~」
「私もどうしたらいいんですかね?若宗匠に言われた着物、何処に出したらええんでしょうか?」

「ねぇねぇ!桜子、そんなの撮影してどうすんの?何の記念?私の時はなかったよ?」
「もしかしたら隠し撮りじゃないんですか?で、1人の時のおやつ代わりにそれを・・・」

「おやつっ?!」
「桜子、いい加減なことを言うな!こいつが信じるじゃねぇか!!」

「風邪引くわ~、明日もお座敷やのに~」
「私も早う帰らんと腹が減りましたわ~」


くそーっ!💢 誰が何を言ってるのかさっぱり判んねぇじゃねぇか!

「仕方ねぇからつくしと桜子は少しここで待っとけ!で、雛乃はすぐに着物着せてやるから座敷に戻れ!で、冨久田屋さんは悪いが着物をこのまま置いて店に戻っててくれ」

「畏まりました。でも、舞妓はんのだらりの帯を若宗匠お一人で結びはるんですか?」
「・・・何とかなる。前にもやったから」

「ほな、手伝ってから帰りますわ」
「おおきに~、じゃ宜しゅうお頼申します~」

俺がそう言うと雛乃は立ち上がり、冨久田屋さんも「よいしょ」と腰を上げて、そこに投げ出された5メートルもの帯を手に持った。そしてさっさと雛乃を元の舞妓姿に戻して座敷に送り返し、冨久田屋の爺さんは「これですから~」と大きな風呂敷包みを俺に差し出してこっちも帰って行った。


さて・・・問題はこの2人だ。



********************



総二郎がすっごい怖い顔して腕組みして目の前に正座してる。
私は桜子の片腕持って半分隠れてたら「つくし、隠れるな!」って怒られた。
桜子も微妙に顔が引き攣ってる・・・この子は負けず嫌いだからどうにかして総二郎を悪者にしようと考えてるんだろうけど・・・何となく、私達の勘違いのような気がして冷や汗が出る・・・。

いや、でも何処で間違えたのかしら?
確かにあれは浮気の電話だったわよね?私にバレたらマズいとか、雛乃が良いに決まってるとか。


「まず、なんで俺が浮気してるって思ったんだ?東京駅で俺を待ち伏せていたのは桜子、お前か?」
「思ったって・・・だって、だって・・・」

「だって何だ。お前、俺の事を信用してないのか?」

総二郎の一段低くなった声が私を責める・・・怖くなってまた桜子の陰に隠れたら、私の代わりに桜子が総二郎と闘い始めた。


「じゃあ聞きますけど西門さん、ここはなんですの?どう見ても密会現場ですわよね?だってお座敷は向こうのお茶屋さんでしょ?わざわざ裏の出口から出て舞妓さんと一つのお部屋に居たのは何故?そっちの理由を教えていただきたいわ」

「そ、それは・・・それは別に疚しいことじゃねぇよ。時間が無かったからここで・・・って、桜子には関係ねぇよ!」
「時間が無かった?時間ならお座敷が終わってからでも良くないですか?」
「いや、桜子・・・そうじゃないでしょ?」

「舞妓の時間ってのは厳しいんだよ!夜の9時からだって予約は入ってるらしいし、早くしないと・・・だから!お前に説明しなくてもいいだろうが!」
「深夜まで待てなかったって事ですか?だからお座敷前に済ませてしまおうと?」
「あ、あのっ・・・それってどういう意味?桜子?」

「先に答えろ!なんで浮気だと思ったんだよ!」
「西門さんが迂闊にも喋りながら歩いていたからですわ。先輩は鈍感だから黙ってりゃ問題ないとか、雛乃の身体の方がいいに決まってるとか、14日はお前と過ごした方が楽しいとか」
「ちょっと!そこまでは言ってないと思うんだけど?」

「誰がそんなこと言ったよ!それにヤケに俺のスケジュールに詳しいじゃねぇか。タクシーで追いかけるにしても知り過ぎてねぇか?」
「西門のお若いお弟子さんなんてチョロいですわよ。着物を見慣れてるから膝上20センチのスカートで簡単に口を割りましたわ。しかも聞いてないことまで教えてくれたから助かりました!」
「そんな手を使ったの?いや、足を使ったの?!」


「あーーーっ!!判ったよ!言えばいいんだろ!」

総二郎が急に大きな声を出したかと思えば、さっきのお爺さんが持ってきた風呂敷包みをバサッ!と私達の前に置き、その結び目をスルリと解いた。
そこには着物を入れておく”たとう紙”が・・・それも3枚?そう言えばあのお爺さんがさっきそんな事を言ってたような?


「これって・・・着物?」
「まぁっ!京都まで来て舞妓さんに着物のプレゼントですの?そこまでしなくても確か舞妓さんの着物は支給されるんじゃありませんの?」

「誰が雛乃に着物選ぶんだよっ!つくしの着物に決まってるだろうが!」


「「・・・・・・は?!」」

私の着物?私のって・・・どういう事?
雛乃さんを長襦袢姿にしてまで着せようとしたんじゃなかったの?

たとう紙の小窓から見える色柄はどれも凄く綺麗・・・これが私の着物?総二郎を見たら少しだけバツが悪そうに頬を膨らまして視線を逸らせてる。
口をひん曲げてポリポリ顎なんて掻いちゃって、眉間の皺が凄いんだけど。

それと総二郎を交互に見てたら、急に私の真横に座っていた桜子がスッと立ち上がった。


「なぁーんだ、面白くないわ!・・・先輩、どうやら勘違いみたいなので私がお先に失礼しますわ」
「はぁ?さ、桜子、ちょっと待ってよ!」

「朝っぱらからこんなに動かされていい迷惑です!今夜は1人で休みますから先輩はご自分の好きなようにしてくださいな!」
「だって、だって、あのホテルに部屋取ったんじゃなかったの?」

「ホテルも変えますからご心配なく。それじゃ西門さん、お邪魔しました!」
「おぉ、帰れ帰れ!」
「桜子ーっ!」


パタンと閉められた襖・・・ドキドキして振り向いたら、総二郎が相変わらず怖い顔して睨んでた。


「あ、あの・・・ごめんね?何か勘違い・・・したの、かな?ははは・・・」
「ははは、じゃねぇよ!全く・・・俺の計画が全部台無しじゃねぇか!」

「計画?何を計画してたの?私に隠し事してたの?」
「隠し事・・・っちゃ隠し事かもしれねぇけど、お前に合うように着物を仕立ててすぐに持って帰るつもりだったんだよ!」

「はっ?私に合うように仕立てる?私が居ないのに?」


「・・・雛乃は身長とスリーサイズがお前と全く同じなんだ。もしかしたら手の長さが1センチぐらい違うかもしれねぇけどな」

「・・・・・・」


総二郎の話だと雛乃さんと私、身体のサイズが殆ど同じだったから、それで「雛乃がいいに決まってるだろ」
雛乃さんが置屋さんにバレたら怒られるからやっぱり本人でやれば?って言ったから「つくしにバレたらマズい」
そして売れっ子の雛乃さんを予約できて、総二郎が京都入りするのが一致したのが・・・今日らしい。


「だから呉服屋呼んで仕立て直しの打ち合わせしたらすぐに雛乃を座敷に戻せるようにって、この殆ど人が来ない宿の部屋を借りてたんだよ」

「だからって雛乃さんの着物を脱がせなくても・・・」

「着物だって羽織らねぇと柄の出方とか見られねぇの!あんな舞妓の着物の上からだと出来ねぇんだよ!」

「いや、言ってくれればいいのに・・・って言うか、私は着物なんてそんなに着る機会ないし・・・」


「ばーか!西門の婚約発表の時は着物って決まってんだよっ!」
「・・・・・・はい?」

「お前に悩む時間なんて与えないために西門に連れてったら速効記者会見する気だったからさ。着物が大至急必要だったし、西門の紋付きの着物、ちゃんと前もって準備したって言いたかったのに・・・お前に言ったらサプライズにならねぇじゃん!」


サプライズにならねぇじゃん!って・・・そんなサプライズ、総二郎の自己満足だからーっ!




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