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お江戸でござる! 安道名津は初恋の味

※注意書き
このお話は、大店の一人娘、つくしと、ぼんくら亭主(婿殿)総二郎。
番頭の類、同心のあきら、侠客の司が織り成すパラレル時代劇(もどき)。
今回は総二郎とつくしの結婚後、“異国蘭学浪漫編”の続編(っぽいもの。『gypsophila room』のGipskräuter様へ寄贈押し付けしたもの)になります。


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時は江戸。
徳川のぽんぽこ狸が東の国に幕府を開いて、200と数十年。
浦賀の沖に黒船は現れるわ、天下の将軍さまはご上洛なさるわで、上へ下への大騒ぎ。

そんな中でもこの男、今日も着流し姿でふうらりふらり。
道行くちょいと可愛いおネィちゃんを口説いて回る。

「あちきと遊ばない?」
「もうっ!」

袖にされるのはいつものことさと、さして気に留める様子もない。
馴染みの茶屋の軒先に座ると、奥に声を掛ける。

「いらっしゃいませ~」

奥から現れたのは、いつもの看板娘
…より、更に頭ひとつ分小さい少女がにこりと笑う。
結った髪に紅いかのこを飾り、それに合わせた朱色の着物。
少うしばかり“おデコちゃん”なところがまた、愛らしい。

だが、それより何より印象的なのは、その鳶色の瞳。
一度見たら忘れられないその色には、見覚えがあった。

「お? 嬢ちゃんは確か…ぷるめりあ……プルちゃんか……?」
「はいっ!」

流石は天下の色男。
例え相手が年端も行かぬ少女でも、女の名は一度聞いたら忘れはしない。それでなくともプルメリアとの出会いは、何とも印象的だったのだから。
名を呼ばれた当人は、満身の笑みを総二郎に返す。

「相変わらず可愛いな。…でもどうしたんだ? こんな処で…」
「アルバイト。あのね、かすみちゃんに教えて貰ったの」
「?? …あるまいと…?」

総二郎が首を捻る。
異国人を父に持つプルメリアは、時折、総二郎の知らぬ言葉を発する。
『あのね、あのね』と一生懸命に話す内容から、どうやらかすみの薦めでこの茶屋の手伝いをし始めたようだ。
仁友堂の女医、かすみとプルメリアは、総二郎が切られた“例”の一件で知り合って以来、何かにつけて会っているのだという。
一人っ子のプルメリアから見れば、しっかり者のかすみは“頼りになる姉”というところなのだろう。
『小さいのに働くなんて偉いな、プルちゃんは』と、大きいのに働かない亭主殿は、イイ子イイ子と頭を撫でる。

「あっ、総ちゃん。なんになさいますか?」
「う…ん…」

軽く総二郎が言い淀む。
いつもなら何を言わずとも酒の入った湯飲みが出てくるのだが、流石に年端も行かぬ子供にそれを頼むのは憚られた。

「そうさなぁ……。そしたら…プルちゃんのお薦めを出してくれるか?」
「はいっ」

元気よく返事をすると奥へと消える。
数分後、盆の上に乗せられていたのは正真正銘、茶の入った湯飲みと、何やら見たことのない物体。

「これは……?」
安道名津あんどおなつ。今お店の一番人気なの」
「あんどおなつ?」

再び首を捻りながら、目線を再び皿に向ける。
何やら丸い物体の上には、“これでもかっ!”という程に小豆餡が塗りたくってある。
見るからに甘そうなそれは、かすみの師匠でもある医師、南方仁みなかたじんが考案した菓子。
何でも、江戸患い(脚気)防止に効果があるとかで、巷では評判になっているのだという。

「プル、総ちゃんが病気になったらイヤ。泣く。だから食べて」
「……お……おう……」

実の処、甘いものはあまり得意ではない総二郎。
『江戸患いじゃねぇし…』と腹の底では思いながらも、女を泣かせるのは己の主義に反する。
尤もあきらあたりが聞けば『いつも啼かせてるだろ』と笑いとぱされそうなのだが。


メリケン粉と卵を混ぜたものを揚げ作られたそれは、生地にも甘味料が使用されていることから道名津どおなつ自体もほんのり甘いのだと言われた。
それに加え、上に乗った小豆餡。
食べる前から想像の出来る二重の甘さに、内心ため息をつきつつもそれを口に運ぶ。

ひとくち。ふたくち。
無言のまま口を動かす総二郎を、プルメリアがじっと見守る。

「……意外と旨いな……」
「でしょ!?」

その顔がぱっと明るくなる。

「総ちゃん、これで病気にならない?」
「ああ、ならないな。プルちゃんのお陰だ」

再び頭を撫でると、プルメリアはぽっと顔を赤くしながら、手にした盆でそれを隠した。



皿の上のものを平らげた総二郎は、懐に手を入れるといつもより多めに金子を置く。
気心の知れた茶屋の店主のこと。総二郎の意図を直ぐに察し、深々と頭を下げる。

「ごっそさん」
「あっ、総ちゃん、待って」

またなと手を降る総二郎を追いかけ、『これ』と手渡されたのは、風呂敷に包まれたお重。

「安道名津。入ってるから、あとで食べて」
「えっ? けど…」

ちろりと店主に視線を向ける。
安道名津は売り物だ。それを総二郎に持たせるということは、その代金はこの少女の給金から賄うことになる。それでは多めに金子を置いた意味がない。

要らないと言おうとした総二郎に、店主が『ご心配なく』と笑う。見ればいつもの看板娘の眼も柔らかい。
何があるかは知らぬが、この小さな少女に無体はしないことだけは判る。

「じゃあ……遠慮なく」

折角だからつくしや子供達、それに店のものにでも持って行くかと、有り難くそれを受け取る。
『ありがとな』と礼を述べ、その肩を軽く抱きしめると、茹で蛸以上に顔を赤くする。
それでも最後には「また来てね~」と可愛らしく総二郎を見送った。



安道名津を食べ小腹が膨れた総二郎は、再び町中をふうらりふらり。
歩くことで腹がこなれてきた頃、後ろから呼び止める声がした。

「総さん」
「おお、かすみちゃん」

よっと片手を上げ『今日も可愛いな』といつもの常套句を口にする。
かすみはかすみで慣れているのか。『またそんなこと言って…』と軽くあしらう。

「お出かけか?」
「ええ。柳緑楼にね」
「そうか……」

柳緑楼はいち早く遊女達の“定期健診”や、仁友堂で作られた“ペニシリン”なるものの投与を取り入れている。
そのお陰で廓特有の患者がかなり減ったと、杜花が喜んでいた。
かすみが仁友堂に籍を置くようになり、既に数年。医術の腕前は、他の蘭方医に勝るとも劣らない。
今日は多忙な仁に代わり、かすみが往診に行くのだという。

「総さん…それ…」

普段は仕込み杖しか持たぬ総二郎が、珍しく手にしていた風呂敷の包み。
安道名津が入っていることを告げると、何かを知っているのか。『ああ…』と手を叩く。

「プルちゃんからでしょ?」
「ああ、よく判ったな…。…って、そういや、かすみちゃんところで作ったモンだったな」
「考えたのは仁先生ですよ」

控えめなかすみは、謙遜するように告げる。
そんなことを話していると、昼八ツ(未ノ刻・14時)の鐘が鳴った。

「…いけない。そろそろ行かないと…」
「悪ぃな、足止めしちまって」
「いえいえ。こちらから声を掛けたんですから…。ああ、そうだ…」

足早に行こうとしたかすみが立ち止まり、総二郎の手にした風呂敷を指差す。

「それ、作ったのはプルちゃんですよ。『総さんに食べて貰いたい』って言って…。
大変だったんですよ。油がはねて、軽く火傷してしまったんですから」
「プルちゃんが…?」

しげしげと、手にしたものを見つめる。
そんな総二郎に、かすみが「色男も中々、辛いものですね。でも、奥方様なら判って下さるでしょ?」と柔らかく告げる。
総二郎が返す言葉を聞く前に、多忙なかすみは行ってしまった。

残されたのは、色男がひとり。

どうしたもんかな…と思案しつつ、近くの大きな石の上に腰を下ろす。
紫色の包みを解きお重の蓋を開けると、出てくるのは大小様々な安道名津。
思い浮かぶのは、あの小さな手で懸命に作る、可憐な姿。
それを見つめることしばし。
総二郎がお重の中身に手を伸ばす。

ひとつ、ふたつ、みっつ。
黙々とそれらを平らげていく。
もうこれ以上は食べられぬと思ったころ、お重の中は空になった。
軽く両手を合わせながら、ぽつりと呟く。

「安道名津 異国情緒の 恋の味……ってところか……?
……イマイチ決まらねぇねぁ……」

『これなら類の句の方がマシか』と、本人が聞いたら怒られそうなことを呟きながら、ゆうらりゆらり。
帰宅の途につく総二郎であった。



お江戸でござる! 安道名津は初恋の味 了




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1番初めは「駄文置き場のブログ 」 星香様からのお話でした~!!
星香様、ありがとうございました~!

めっちゃテンション上がるっ!あの「お江戸シリーズ」が私のお部屋にっ!
しかも登場してます!プルちゃん(笑)
(Gip様の時にも出させていただいたんですが、あの時はGip様へのお話だったので1人だけで興奮しておりました♡)

ほほぅ!安道名津♥初め漢字だけ見て何かと思ってしまいました(笑)
しかもこれは私の子供の時のあだ名の1つ・・・え、なんでかって?秘密です!


メッセージもいただいてますが明日の「後書き」にて紹介させていただきます♡

☆星香様にコメントいただけましたらplumeriaが責任もってご本人様にお届け致します。
公開でも非公開でもかまいません♡



星香様のお部屋にはこちらから飛べます♥



駄文置き場のブログ 1st season




駄文置き場のブログ 2nd season


それでは第2話は12:00です。お楽しみに~!
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Comments 7

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2019/01/30 (Wed) 20:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

ね~、ハート泥棒だよね~♥
この江戸っ子風の台詞、めっちゃ好き♥!!

はい、宝物です~!

私も今度あんドーナツ、総ちゃんに食べさせよっ♥(今の話じゃ無理か・・・)

コメントは星様に送っています。
今日はどうもありがとうございました!

2019/01/30 (Wed) 21:29 | EDIT | REPLY |   
星香  
鍵コメ「パ」さま

コメント、ありがとうございます♪
プルさまよりいただきました。

うふ♡気に入って頂けて嬉しいです。
総ちゃん、本当にムズいんですけど……。
このシリーズだけはイメージが落ちてくるんですよね。
時代考証はかなりインチキですので、片目を瞑って頂けると嬉しいです(^^;)
うふふ♪ 今度は「パ」さまもご出演下さいませ♪
(ちなみに、出演料はノーギャラとなっております…^^;)

お付き合い、ありがとうございました。<(_ _)>

2019/01/30 (Wed) 21:57 | EDIT | REPLY |   
星香  
プルさま

改めまして、2周年おめでとうございます♪
途中、息切れしてしまう人が多い中(かく言うワタクシもその一人)
書き続けるプルさま、アンタはエライ!
……って、このネタ、知ってますよね……? ジェネレーションギャップが不安……

ところで、プルさまのあだ名のひとつとは、これ如何に?
今度教えて下さいませマセ♡ 

2019/01/30 (Wed) 22:00 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/31 (Thu) 20:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

ご訪問&コメントありがとうございます♥
あっはは!実物のプルちゃんはとんでもないおばちゃんですが、このお話のpluちゃんは可愛かったですね♥

私、今朝は『安道名津』でした!(昨日買ったんです♡)

コメントは星様にお渡ししていますのでお待ち下さいね~。

2019/01/31 (Thu) 21:14 | EDIT | REPLY |   
星香  
鍵コメ「まり」さま

コメント、ありがとうございます♪
プルさまよりいただきました。

幕末、動乱の時代と言われている…ようなのですが…
総ちゃんの周りはのどかですよね。
きっと何があっても総ちゃんはふうらりふらりと出歩いて、「あちきと遊ばない」と言っているんでしょうねぇ…(^^;)
うふ♡「まり」さまも初恋の味、味わって下さいませ…♡

お付き合い、ありがとうございました。<(_ _)>

2019/01/31 (Thu) 21:44 | EDIT | REPLY |   

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