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plumeria

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朝一番、ドアをノックする音が聞こえてきて玄関を開けてみた。
もしかしたら類が・・・なんて一瞬思ったけどそんな事があるわけがない。そこに居たのは昨日突然現れた婚約者、五十嵐さん・・・今日も梅三郎を抱いた私に無愛想な顔を向けていた。

手には白くて小さな袋を持ってる。中にはコンビニで買ったサンドイッチが入っていた。それとカフェオレ・・・私の朝ご飯を買ってきてくれたみたいでスッと差し出されたからガサガサと無言でそれを受け取った。


「おはよう」
「おはようございます・・・」

「顔色が悪いね、寝られなかったの?」
「・・・えぇ、慣れない場所はどうも苦手で・・・」

「くすっ、花沢類の腕の中じゃなかったから?その役目はこれからは俺がしてあげるよ」
「・・・いえ。結構です、そんなの・・・」

コンビニの袋をギュッと持って身体を竦めたらニヤッと笑って向きを変え、「8時半にはここを出るから」とだけ言われた。


梅三郎も落ち着かないのか床に降ろすとすぐに「抱っこ」をお強請りする。
無理矢理この子だけ連れて来たから可哀想で、私は梅三郎を抱っこしたままサンドイッチを食べ、梅三郎には昨日買ったドッグフードをあげた。

「クゥ~ン・・・」
「どうしたの?やっぱり桃太郎達と一緒じゃないから不安?・・・だよね。毎日一緒に食べてたもんね。ごめんね、梅三郎」

「・・・クゥン」
「食べないの?あのね・・・判んないだろうけどこのあと飛行機っていう乗り物に乗るんだって。梅三郎は多分、私とは別の場所に行くと思うんだけど、宮崎まではすぐだからね・・・我慢してね?着いたらずっと抱っこしてあげるからね」


あげたドッグフードも殆ど食べない。
まだ子供だからこういうのには特に敏感なのか、匂いが違うのがダメなのか・・・それとも2匹が恋しいのかな。
宮崎までは飛行時間は2時間・・・前後の時間を合わせたら3時間ぐらいは私から離れる。その間も無事でいますようにって梅三郎のおでこと自分のおでこをくっつけて祈った。


8時半になってノックもなしにドアが開き、五十嵐さんが入ってきた。
この人も昨日の服のまま・・・ここに泊まるのは想定外だったんだろうか。

「これから羽田に向かうから。犬の荷物だけ自分でしてくれよ?俺はそんなものに触りたくないから」
「・・・言われなくても自分でしますから」

「じゃ、行こうか」


今日はこのマンションの前にタクシーじゃない車が停まっていた。
運転手さんの他にもう1人女の人が乗っていて、私達が乗る時に五十嵐さんに小さな荷物を渡してる・・・その時にチラッと私を見た目が凄く怖かった。

「部長、この方がそうですの?」
「あぁ、そうだよ。可愛らしい人だろ?」

「くすっ、えぇ、とても。世間の事を何もご存じ無さそうなお嬢さんですこと」
「麻生君、その言い方は失礼だろう?そのうち五十嵐の社長夫人なんだから」

「・・・失礼しましたわ」

1度は笑顔を見せて・・・と言うか、馬鹿にしたような笑い方で私を見たのに、今度は怒ったような顔でプイッとされた。
失礼な人・・・別に社長夫人になる気なんてないけど、初対面の人に世間知らずだと言われるのは気分が悪い。

私は彼女とはひと言も喋らずに後部座席に乗り込んだ。
もうこの時にはケージに入れてる梅三郎が心細そうに小さな窓から私を見てる。ちょっとだけ触れる顔を指で突きながらこの中の誰とも話なんてしなかった。


「今度はいつ頃東京に?」
「・・・暫くこっちに用はない。来る時にはメールで連絡する」

「そうですか。本社もいいですけれど、そろそろ関東にも支店を増やされたらいいのに。そうしたら出張も多くなるでしょう?」
「麻生君、何が言いたいんだ?」

「あぁ、先ほどのお荷物、まだ少し生乾きですけど宜しかったかしら」
「・・・意味が判らないな。余計な事は言わなくていい」

「まぁ、怖いこと。ふふっ、止めておきますわね」


よく判らない会話。
どうでもいいけど、なんでイチイチ会話の前後に私の顔を横目で見るの?麻生さんって言ったっけ?感じ悪い人・・・。

暫く会社の話を2人がしていて、私は全然興味もないし判らないから窓の外だけ見ていた。
久しぶりにこんな時間に街の中を通るなぁ、って思いながら遅刻寸前の学生やスーツ姿の人を眺めた。ほんの少ししか働けなかったけど、類とお仕事に行く時は楽しかったな。
行く時には前の晩に見たテレビの話で盛り上がって、降りる時には帰りの約束をして・・・そう言えば社員食堂で一緒に珈琲飲むんだったな・・・笹本さんとそんな話をしていたのに行けなくなっちゃった。

この時間、もう類は会社だわ・・・ちゃんと寝ることが出来たかな。寝坊せずに起きて、朝ご飯食べて時間通りに出勤したかしら。


類・・・あなたの事、大好きだったけど、そこに居られなくなったの。
私が居るとそのうち類が苦しむんだって・・・だから急がなくてもいいけど、ゆっくり私の事を忘れてね。

すぐに忘れないで・・・ゆっくり、ゆっくり忘れてね。


この後羽田から宮崎へ・・・梅三郎を連れて自分の故郷に帰った。




*********************




「類様、これまでに調べたホテルにも旅館にも、念のためその手のホテルにも聞いて回りましたが牧野様と五十嵐浩司に心当たりがあるという連絡はございませんでした」

「何処にも?その他は?」

「はい、ペット同伴で宿泊可能な場所は総て当たりましたが該当はありません。ビジネスホテル、カプセルホテル、ネットカフェなども調査中ですがこれまでのところ犬連れの女性を見たという答えはありません!」

「牧野が乗ったって言うタクシーも見付からないのか!」

「申し訳ありません!目撃者の話からではタクシー会社が特定できません。現在コンビニの防犯カメラの映像分析をしていますが時間が掛かってます!」

「・・・くそっ!」


一晩中牧野を捜して一睡もせず、屋敷のリビングに座っていた。
あれから帰宅した父さんにも母さんにもその事は伝えて、2人共驚いて言葉も出なかった。

そして朝一番、「仕事に行けと言っても無駄でしょうね」なんて溜息ついた母さんに、この件が片付くまで業務代行をしてもらうことにして藤本にも連絡をした。

この時、まさかと思って藤本を通して笹本にも確認したけど当然知らなかった。その他に牧野が姿を隠せる場所なんて何処にもないはず・・・だから絶対、同伴者が居るんだ!

イライラしながら情報部の連絡を待っていた時、同時に2つの連絡が飛び込んできた!


「類様、本日の10時羽田発の飛行機にペット同乗の申請があったようです!犬としか判りませんでしたが行き先が宮崎です!」
「五十嵐物産を5年前に退職した川本竜之介の事が判りました!」


宮崎行きの飛行機にペット同乗手続き?それって梅三郎か!?
って事は牧野はその時間にあいつに連れられて宮崎に・・・今はもう9時45分、10時だともう止めることも出来ない。

だがこれで牧野が宮崎に戻ったことはほぼ確定。
花沢家が牧野を守っていたと言う事実は瀧野瀬にも連絡済み・・・だから彼女に対して無茶をするわけはない。おそらく素直に瀧野瀬に帰すと判断した。

それならこっちを先に片付けて俺も宮崎に行くしかない・・・!
行ったと同時に五十嵐を潰す・・・そして牧野を取り返してやる!


「すぐに川本竜之介の調査内容を教えろ!」
「畏まりました!」





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2019/02/15 (Fri) 07:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 おはようございます。

あははは・・・申し訳ございません💦帰ってしまいましたねぇ💦
ここから類君の反撃&暴走?が始まります。

でもシリアスな訳じゃない・・・かな?(笑)つくしちゃんがちょっと可哀想な感じだけど💦
ちょっとだけ梅ちゃんと待っててね~!


ラストまであと少し!
お話しの上では数日間で終わります。応援してやって下さいね♥

2019/02/15 (Fri) 07:54 | EDIT | REPLY |   

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