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plumeria

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その日、夕食をとりながら聞いてみた。

「明日から一人で行きたい?俺はどっちでもいいけど・・・」

ホントは一緒がいいけど、また朝からあんな目にあったら牧野は学校に行けなくなるかもしれないし。
牧野は少し時間をおいて

「もし良かったら・・・一緒に行ってもいい?」

「もちろん。明日からは運転手に言って、違う場所で降ろしてもらうよ。他の子に見られないように」

「うん。要するに学校では会わなきゃいいんだよね?」

そんな言い方ある?そりゃ、彼氏じゃないけどさ。
今日みたいなときでも会わなくてもいいわけ?

「うん・・・まぁ、牧野がいいなら」

「全然、平気だよ!ありがとう!!」


なんだろう・・・モヤモヤするんだけど。

「ねぇ、類・・・」
「なに?」

「今日会った人・・・あの二人はお友達?F4っていうんだよね?どんな人なのか、教えてもらえる?」

「気になるの?」

「気になるって言うか・・・私、あんまり知らないからさ。知らないとまた何言われるかわかんないから、知っておこうと思っただけ」

そういうこと・・・知り合いになっても知らなくても、同じだと思うけど?
ああいう人間は自分が相手にされないから面白くなくて絡んでくるんだ。

面倒くさいな。ほっといてくれたらいいのに。

「西門総二郎・・黒髪のほうね、あいつは茶道の家元の息子。西門流っていってね、一応次期家元なんだ。
でも、すごく女の子にだらしないから近づいちゃダメだよ。
もう一人は、美作あきら。あきらも美作商事のジュニアで・・・俺と似たような立場かな。
とにかく年上の女性が好きなんだって。だからって、あきらにも近づかないで」

近づかないで・・・って、自分の彼女でもないのに変な束縛みたいなこと・・・
でも、この二人のことを聞かれるのも、どうしてこんなに嫌なのか・・・



まるで・・・・



「わーー!!類!このお料理、すっごく美味しいね!!」

牧野の声にびっくりした。今、聞いてたくせに・・・ってかちゃんと聞いてたのかな?料理の方が気になったのならそれでいいけど、二人のことを気にしてた俺がバカみたい・・・くすっ・・

「あれ?類は食べないの?どしたの?」
「ううん。何でもないよ」

ま、とりあえずもう少し観察(?)しよ・・・・
食事なんて、味わって食べた事なんてない気がする。いつも一人で義務的に口に運ぶだけで。
話しながら食べるなんて、あいつらとのランチだけだし。

「ねぇ、牧野。あんたのこと、もっと知りたい。なんか話して?」

「え?話すほど面白い人間じゃないよ。でも、住んでる世界が違う人だからそれがおもしろいのかな?」

「住んでる世界?」

「そうだよ。私は貧乏で生きていくのに必死だけど、類達はこんな家で不自由なく暮らしてて。
買えない物もないし、欲しい物もなんでも待ってるでしょ。不公平だとは思うけど、それが住んでる世界が違うって事だよ」

それはね・・・

俺が一番嫌いな言葉だよ。そうやって言うけど、これは俺がなりたくてなった境遇じゃない。
むしろ自由も何も持てない未来。何一つ自分では決められない未来。
想像するのは・・・日も差さないような、風も吹かないような世界。どす黒い欲望やきな臭い取引の応酬が繰り返される世界・・・


もっと話をしたかったのに・・・・一気に気分が下がってしまって何も言えなくなった。

「でもね、私は自分の世界は嫌いじゃないの。何かに必死になって『生きてる』って気がするじゃない?もう少し楽な生活のがいいけどね。・・・でも類達みたいな世界の人ってみんなヤな奴だと思ってたけど、違ってたから嬉しかったよ」

「え?」

「だって、怪我した私を助けてくれて、今日も助けに来てくれて・・・とっても優しくしてくれた。
だからね、ホントに嬉しかったの。バイトをしてるって言ったときもバカにしなかったし、
お風呂がないって言ったときも笑わなかった・・・・だから、この人はいい人だって思ったの。えへへ・・」

そう言って、大きな眼を細めて、ちょっと恥ずかしそうに笑った。
その顔は反則でしょ。

「俺たちは牧野の言うような楽しい生活はしてないよ。何もかも決められてるんだ。・・・
小さいときから人生をすべて決められててそこからは出られないんだ。習い事や勉強や武道まで・・・
たたき込まれてきたよ。好きとか、嫌いとか関係なくね」


牧野の手が止まる・・・

「これからは会社のため、家のために生きるんだ。自由なんてどこにもない、つまんない生活が待ってるんだ・・・」

なんでだろ?今までこんなこと誰にも言わなかったのに。



「ふふっ・・・そっか。類達も本当は大変なんだね」

また、牧野はフォークを動かし始めた。

「でもさ、限られた世界の中でも、絶対その中から素敵な物を見つけられると思うよ?そう思ってそれを探さなきゃ!」

美味しそうにデザートにも手を伸ばしてる・・・

「見つけようよ!私で良ければ話を聞くし。あ、それでさ、足が治ったら色んなとこ行かない?
庶民の生活とか体験させてあげるよ!銭湯・・・とか、どう?びっくりするよ!絶対、この家がいいっとかになるかも!」

「混浴・・・?」

「ばっかね!!別々よ。その前に私の貧弱な体見たら悲しくなるかもよ?」

思いっきり笑ってるけど・・・

「悲しくなんてならないのに・・・・」

「へっ?」


やっぱり、これって・・・まさか、だよね・・・

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