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「川本竜之介は五十嵐物産を退職後、目黒にあった自宅を差し押さえられています。本人は行方不明となっていますがどうやら都内の公園内を転々としてホームレスのような状態になっているそうです。部下だったという人間が1度そんな風貌の彼を見掛けたと証言しています」

「ホームレス?五十嵐の営業部長で役員名簿にまで名前があったのに?」

情報部からの報告を自宅のリビングで確認中、川本の現在の状態を聞いて驚いた。
資料として持っている画像の彼は上質なスーツにネクタイを締め、鋭い眼光の持ち主・・・こんな男がホームレスになんてなれるのか?

「はい。懲戒解雇という事ですので規定により退職金が大幅に減額されているようです。ですが自宅の方はまだ残債が結構な額で残っており、それに充当出来るほどはなかったのでは、とその部下は言ってました。それに妻が解雇直後に男と逃げてるそうです。その時に預金なんかも持ち逃げされて、川本は生活困難に陥ったのではないかと」

「・・・最悪だね。で、自暴自棄になってホームレス?辞めた理由、その部下には言わなかったの?」

「その部分は話したくないと言って、何も言わなかったそうです」

「残った借金の返済は?連帯保証人が精算したのかな」

「調査をしたわけではありませんが住宅ローンの連帯保証人は妻の父親だそうで、男と逃げた娘の為に払うだろうと川本は言っていたようですね。確認しますか?」

「いや、そこまではいい。悪いが今は川本個人の問題まで構ってられない」


万が一滞っても金融機関は時効中断を申し立てて債務が消えるわけじゃない。通常5年の消滅時効がどんどん延びていくだけで一生怯えて暮らすわけだから。
ただ何かの罪を着せられて陥れられたのなら、浩司によって人生を狂わされた人だ。

それが判った時には花沢として助けてやらないとね。


その懲戒解雇というのが総二郎の屋敷の案件・・・そこに絡んだ何かが原因で辞めたって事?
西門の西村さんも静岡の佐々木と言う前任者も川本の事を真面目で正義感が強いと言った・・・そんな人が懲戒解雇。

家庭内の事はわかんないけど、真面目で正義感が強いって事は堅物で仕事の鬼だったかも・・・そういう男なら妻が浮気してても気が付かなかったのかもね。


でも、なんだろう・・・ホームレスって言葉の方に何故か引っ掛かるんだけど。

そう言えば、牧野は川本って名前に首を傾げてた・・・川本、ホームレス・・・・・・牧野・・・公園?


・・・・・・・・・。


「あーっ!判った!!」
「はっ?!類様、どうされたんですか?」

「大至急、Y町の公園に行って、そこに居るホームレスの中に川本がいないか捜せ!公園の名前は判らないけど比較的大きな公園で近くに商店街があるはずだ!」
「Y町の公園ですか?凄い数ですけど!?」

「ホームレスが居る公園なんてそんなにないだろう!いいから急げ!もしかしたら公園を転々としてるらしいから歩いて行ける範囲の公園も捜して!」
「畏まりました!」


牧野は東京に来た直後、公園でホームレスの男性に助けられたと言っていた。

当たってるかどうかは判らないけど牧野が川本って名前に反応したんなら、そのホームレスが川本なんじゃないのか?それ以外に牧野が接触した人物なんて東京に居ないんだから!

おそらく間違いない・・・絶対に捜して川本から事実を聞きだすんだ。




********************




お昼に宮崎空港に到着して、そこからは五十嵐家の車で移動するらしい。
「懐かしいかい?」なんて言われたけど、そこまで長期で家を出ていたわけじゃないし、宮崎の空港も初めてだからそんな気分にもならない。
それよりも早く梅三郎に会いたくてペットの受け渡し場所でソワソワしながら待っていた。


「お待たせしました。どうぞ」
「ありがとうございます」

「・・・クゥーン・・・」

梅三郎はぐったりしてて元気がなかった。
そりゃそうだわ・・・私の都合で昨日からお屋敷を抜け出して知らない部屋に入れられて、今度は小さなケージに入れられて飛行機・・・この子には飛行機なんて判らないし荷物と一緒に乗ったんだもん。怖かったよね・・・ごめんね、梅三郎。

急いでケージから出して抱いてやったけど、いつも擦り寄せてくる鼻も下に向けたまま。
私の腕の中に踞るようにして震えていた。


「それじゃあ瀧野瀬の自宅に送ろう。今朝連絡しておいたからきっと喜んでくれるよ。お父さん達も会社から自宅に戻ってるんじゃないかな」

「・・・そうですか」

「あぁ・・・それと、伝え忘れていたけど昨日の夜、俺の自宅にも花沢から連絡があったようだ」
「えっ!類から?なっ、なんて言ってたんですか?!」


類が五十嵐さんの自宅に電話・・・やっぱり宮崎に帰ったって思って捜してるんだ。
じゃあここまで来てくれるの?私の所まで迎えに・・・いや、ダメだ。私はあの家に居ちゃいけないんだった。
類の名前を聞いたから舞い上がって大きな声を出したけど、五十嵐さんに言われた言葉を思いだして慌てて口を押さえ込んだ。


「俺が居ないって言えば大人しく切ったそうだ。それ以外は聞きもしなかったそうだよ?諦めたのかな・・・やっぱり自分のしてる事が間違いだったって認めたのかもね」

「・・・・・・」

「自宅に着いたら少しゆっくりして、そのうち落ち着いたら結納なんかの話を進めようね。あぁ、車が来たようだ」


結納・・・全然実感が湧かないままその言葉を聞いて、まるで他の誰かの事のような気がしていた。
そんな言葉には返事もしないで車に乗り、私の横にはまた五十嵐さんが座った。そして小さく震えて鳴き声も出せない梅三郎の事を嫌そうに横目で見ていた。

類・・・大人しく電話切っちゃったんだね。うん・・・それで良かったのかもしれない。


日向灘がまだ冬の色・・・それでも東京より青く見える空は綺麗だった。
綺麗だったけど虚しく感じた。

1人で眺めてるからかもしれない・・・横に彼が居ないから、何を見ても心が動かないのかも・・・。



車はどんどん山の方に・・・瀧野瀬のお屋敷に近づいて行った。
窓から見える景色が見慣れた山並みに変わって、梅三郎を抱える手に力が入る。それを感じ取ったのか梅三郎が小さな声を出して私の顔を見上げた。
「ごめんね、痛かった?」って頭を撫でると、また小さくなって顔を隠した。


見覚えのある大きな木が見えた・・・あの木を超えたらお屋敷の門が見えるはず。
自分の家に帰るのにドキドキしながら前方を見つめていると、とうとう瀧野瀬の門と塀が私の視界に入ってきた。

「やっと着いたね。こいつのせいで予定外に時間が掛かったな」
「・・・この子は絶対に離しませんから」

「飼うならここでだよ。五十嵐には持ってこないでね。そんな花嫁道具は要らないから」
「梅三郎は家族です。道具じゃありません!」

「・・・ふん」


車は門をくぐり、瀧野瀬の駐車場に入った。

私の目の前には秋に飛び出したお屋敷がある・・・そして静かに玄関が開き、車椅子に乗ったお爺様が現れた。

少し痩せたのかもしれない。
あんなにもお顔に皺があったっけ?って思うほど、以前より衰えた感じを受けるお爺様・・・それでも変わらない鋭い目が私に向けられ、背筋に汗が流れた。


「・・・随分長い外出じゃったのう?つくし・・・ちと、帰るのが遅かったようだが?」

「た、ただいま戻りました。お爺様・・・ご心配お掛けしました」


前はこんなにもお爺様に怯えなかったのに。
この人の身体を拭いてお世話をしていたのは私だったのに・・・この先、同じ事をしろと言われてももう出来ない。

生まれた時から住んでいる家にこんなにも恐怖を感じるなんて思ってもみなかった。




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2019/02/16 (Sat) 08:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あはは!そうですね、やってみます?
私は遠慮しておきます(笑)せめて毎日お風呂には入りたい💦

はい、もうここからは一気に・・・ですが、お話しの日数だけは掛かりますから💦あはは!
ちょっと最後のお遊びをしてしまいます。

「この流れでこんな事あるの?」って思うかもしれませんが。

うふふ、楽しみにしてて下さいね♥

2019/02/16 (Sat) 11:02 | EDIT | REPLY |   

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