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「随分長い外出じゃったのう?つくし・・・ちと、帰るのが遅かったようだが?」
「た、ただいま戻りました。お爺様・・・ご心配お掛けしました」

「五十嵐君にまで手を煩わせおって・・・あんな風に家を出た娘をわざわざ東京まで迎えに行ってくれるなど有り難い事じゃて。ん?つくし、何を持ってるんじゃ?」

お爺様は漸く私が抱きかかえてる梅三郎に気が付いたみたい。
五十嵐さんと同じように嫌そうな顔をして痩せ細った指を私の胸に向けた。


「これは私の飼い犬なんです。大事なお友達だから連れて帰りました。お爺様、この子は絶対に手放しませんから!」
「犬じゃと?そんなものは瀧野瀬に持ち込むんじゃない!さっさと捨てに行け!」

「捨てません!この子を捨てると言うのでしたら私ごと捨ててください!」
「馬鹿を言うな!!」


私達の声に驚いて飛び出してきたのはお父様とお母様。
2人共仕事の合間に屋敷に戻っていたのかスーツ姿だった。そして私を見るなり抱きついて泣いたのはお母様・・・お父様はお爺様に遠慮したのか少し後ろでモジモジしていた。

「つくしっ!ホントにあんたって子は・・・どれだけ心配したと思ってるの!馬鹿っ!」
「ごめんなさい、お母様。私、どうしても世の中を見て見たかったの・・・ここだけしか知らない人生に耐えられなかったの」

「つくし、お帰り。いや、本当に無事で良かったが、あちこち探し回って大変だったんだよ?行き先を知らせずに出ていくなんて2度とするんじゃないぞ」
「はい・・・お父様。反省はしてます・・・ごめんなさい」

「クゥ~ン・・・」
「あら、犬?・・・つくし、うちは動物禁止だって知ってるでしょ?お爺様がお嫌いなんだから」

お母様は慌てたようにお爺様と私の間に入ってきて、梅三郎がお爺様から見えないように隠した。そしてやっぱりお爺様のご機嫌を窺うように横目で見て私の服の袖を引っ張った。
「いいから捨てておいで!」って小さな声で・・・お父様でさえうんうんと頷いて、誰も私の味方はしてくれなかった。


「それでは私はこの辺で。今日は久しぶりの家族団欒でしょうから楽しい時間をお過ごしください。つくしさん、今度は五十嵐家で夕食でもご一緒に。今日は疲れてるだろうから早くお休み・・・昨日は余り寝てないんだからね」

「・・・誤解されるような言い方は止めてください。あんな所に連れて行くから梅三郎が寝られなかったのよ」

イヤな言い方・・・私達の間に何かがあったみたいな言葉を出したからキッと睨んだ。それをまたお母様達が慌てて間に入って、私を宥めようと必死になってた。

「あぁっ、五十嵐さん!本当にこの度はありがとうございました。日を改めてお礼にお伺い致しますわ」
「お父上にも宜しく、浩司君。どうもありがとう」

これ以上瀧野瀬の親子喧嘩なんて見なくてもいいだろうって感じで五十嵐さんは車に戻って行った。私の両親が頭を下げてるのに見もしないで。
車に乗り込んでも顔さえ向けずに走り去っていき、それを見えなくなるまでお辞儀してるお父様、お母様・・・なんだかその姿を見て悲しくなってしまった。

この家の人達は婚約解消なんて全然考えてくれないんだなって・・・。


それなら尚更私の味方は梅三郎だけ。この子は絶対に守らなきゃ。

「お爺様・・・お父様、お母様。それでは私は自分の部屋に戻らずに納屋で暮らします。そこなら梅三郎と住んだって構わないでしょ?私からこの子を奪ったら今後一切の仕事は拒否しますから!」

「何じゃと?納屋で暮らすじゃと?」
「つくし!今度は何を言い出すの!」
「そうだよ、つくし。そんな所でご飯を食べても美味しくないぞ?」

「いいえ、ご飯ならどんなものでも梅三郎と食べた方が美味しいわ。行きましょ、梅三郎」
「ワン?」


帰ってきたんだからいいじゃないの!
私は梅三郎を抱えたまま玄関に入らずに屋敷の奥にある納屋に向かった。
そこには昔から悪戯したら閉じ込められる部屋があるんだもん。そこで幾らでも寝られるし、この子も納屋の中なら歩けるし。

ズンズンと歩いていく私の事を3人が呆然と見てるようだったけど、無視して足を進めた。
悲しさ通り過ぎてだんだん腹が立ってきたわ!




*********************




「川本というホームレス、発見しました!」

その報告は夕方になってから飛び込んで来た。
やはり牧野が言ってた辺りの公園で、今でも段ボールに包まって生活していたと。大至急花沢の屋敷まで連れてくるように命令し、川本はその1時間後、顰めっ面で俺の前に現れた。


無精髭に泥だらけの服と何色なのかわかんないジャンバー着て、髪だってボサボサ・・・とても63歳には見えない、って言うか汚れてるから少し匂う気がする。
加代に頼んですぐにゲスト用のバスルームを用意させ、取り敢えずそこに入ってもらった。
「何なんだ!急にここまで呼びつけて!」なんて叫んでいたけど、風呂に入れると聞けば幾分機嫌が良くなった。

逆に加代を含めて使用人には凄く嫌な顔をされたけど、着替えも用意させて理容師免許持ってる使用人に髪をカットしてもらい、髭も剃らせた。
新しい服も用意して身綺麗にさせて、再びリビングに来た時には随分さっぱりしていた。


「・・・こんな事を頼んだ覚えはないが?花沢物産の息子が俺に何の用だ?もう五十嵐とは関係ないけどな」

「無理矢理連れて来て悪かったとは思うけど、さっぱりしたんだから文句言わないで下さい。あなたには少し聞きたいことがあるんですよ、川本竜之介さん。あぁ、それと五十嵐の事を聞く前に1つ聞いてもいいですか?」

「・・・なんだ。それ以外であんたが知りたい情報を俺が持ってるとは思えないが」

「そう尖らないで。去年なんだけどあなたが寝泊まりしてた公園で女の子を助けなかった?ブランケットみたいなの貸して珈琲飲ませなかったかな・・・覚えてない?」


この言葉に川本はすぐに反応した。
やっぱり牧野が話してたのはこの人・・・でも、名前を知ってたってことは自分の素性を話したって事?

「どうしてその事を知ってるんだ?あの子は・・・あの子は今どうしてるんだ?」

「あの子はあの後うちで保護していました。色々実家で揉め事があったみたいですからね」

「え?ここでって・・・花沢の関係者だったのか?」

「いえ、あなたが助けた直後に変な奴等に騙されて連れ去られそうになったのを、今度は私が助けたのがきっかけでね。
何処にも行く所がないというのでうちに泊まらせていたんです。ですが今回実家に再び連れ戻された・・・あなたに来ていただいたのは彼女を自由にするためなんです。ご協力いただけますか?」

「あの子を自由に?ただの家出ではなかったのか?とても複雑そうな感じじゃなかったがなぁ・・・。
儂みたいな浮浪者にも普通に話しかけてくれてな。煎れても飲まないかと思ったのに儂の珈琲も飲んでくれた。そんな子だったから儂もつい身の上話までして、それも嫌がらずに聞いてくれた。寒くなるから早くちゃんとした所に住まないとって・・・儂の話を聞いて泣いてくれたんだ。そんな子は初めてだった。女房でさえそんな風に話を聞いてくれなかったのに」


くすっ、牧野らしい・・・同情しちゃって泣いたんだね?
その時のあんたは無一文で食べるものも行く所もなかったのに、それでも人のために泣いちゃうんだよね。


「川本さん、その子は牧野つくしって言います。いえ、本当は瀧野瀬つくし・・・宮崎から出てきてたんですよ」

「瀧野瀬・・・?宮崎の瀧野瀬だと?」

「何かご存じですね?それはあなたが五十嵐を退職した事と関係している・・・そうでしょう?牧野が宮崎を出たのも五十嵐に関係しています。牧野をここから無理矢理連れ戻したのは五十嵐浩司・・・五十嵐物産の後継者です。そして、2人は家同士が決めた婚約者ですよ」


瀧野瀬と聞いてこれまでよりも驚いたと言う事は、やはり西門の案件で瀧野瀬が絡んだ不正があり、この人はそれを見付けたか、あるいは見付けそうになって罪を被せられたか。
痩せ細った身体をワナワナと震わせて川本は膝の上の手を拳にした。

忘れかけていた怒りが再び戻って来たんだろうか。
封じ込めたかった思いかもしれないけど、それを解決させればこの人も自分の生活を取り戻せるかもしれない。


「私の話を聞いてもらえますか?川本さん。その後あなたの知っていることを教えてください」

言葉も出せなくなったこの人の前で、これまでに起きた事を説明した。
牧野のしていた事、想像でしかないけど瀧野瀬と五十嵐が仕組んで行っていたと思われる不正、牧野が宮崎から逃げた理由、そしてうちに来てからのこと・・・総てを話すまでに長い時間が掛かったけど、川本は最後まで黙って聞いていた。


そして全部を聞き終わると深い溜息をつき、暫く目を閉じていた。
やがて決心したかのように目を開くと、真っ直ぐ俺の目を見て言葉を出した。


「判った。知ってることは全部話そう・・・あの子が笑って暮らせるようになるなら協力するよ」




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2019/02/17 (Sun) 07:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

ホントに💦どれだけこの爺さんは恐ろしいのでしょう💦
早く助けてあげなきゃいけませんね!

類くんはこれからある意味、凄く頑張って証拠集めです!!

と、言うことで私はそろそろ新しいお話しの準備を・・・今度はどんなお話しにしようかな?(笑)

2019/02/17 (Sun) 11:06 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/18 (Mon) 20:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

実は私も昔納屋に閉じ込められた記憶があります(笑)
子供の頃、まだ父の実家があった時(今はもうないんですが)納屋があって、そこに牛も居たんです。
で、何をやったのかは覚えてないけど、お盆に遊びに行った時に怒られて、閉じ込められたんですが・・・牛が!

牛が一緒に居るんです!5頭ぐらい!!
怖かったぁ!ってのが記憶にあります。

私、何をしたんだろう・・・?


つくしちゃんは暫く我慢!
類君が助けに行くから待ってて欲しいと思います♡

って事で、類君宜しく~!!

今日もコメントありがとうございました。

2019/02/18 (Mon) 21:18 | EDIT | REPLY |   

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