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「クゥ~ン・・・クゥ~ン」
「ん?どうした?梅三郎・・・やっぱり桃太郎達が恋しいかな。ごめんね・・・でも、私が居るからね」

納屋の中でやっと私の腕から出て歩き回る梅三郎・・・でも、やっぱり少し歩いたら私の膝の上によじ登ってきた。
そして頭を突っ込んで震えてる。
昨日からのストレスで全然元気がないこの子が心配・・・突然姿を消したことで慌ててる類の事が心配。

今日は会社に行けたのかな・・・って考えながら梅三郎の頭を撫でていたら納屋の戸口がガタン!と開いた。


「つくし・・・?居るの?つくし・・・」

「お母様?はい、ここに居ますけど」

私が座っていたのは納屋でも1番奥にある古い畳が敷いてある場所だったから、そこから顔を出すと呆れたような顔でお母様が近づいてきた。
梅三郎はまたガタガタと震えだして私の脇に顔を突っ込んで、そのお尻を撫でながら「大丈夫だよ」って声を掛けた。


「いらっしゃい・・・お爺様のお許しが出たからその子を連れて来てもいいわ。こんな所で暮らせないでしょう?」
「・・・本当?捨てたりしない?」

「あなた、そんなに動物好きだった?その子がそんなに大事なの?普通の犬にしか見えないけど」

私が動物好きかどうか?
お母様はそんな事も知らないんだ・・・私は、昔から大好きなのよ?
飼いたいって何度頼んでもダメだって言われて飼えなかっただけ。私はいつも友達が欲しくて堪らなかったんです・・・お母様。


「この子は私の誕生日に類が買ってくれたんです。私の犬だから大事に育てようねって」
「・・・類?花沢物産の跡取りさんね?そうだったの・・・その人に買ってもらったの」

「ここではいつも忘れられてたけど花沢家では沢山お祝いしてもらったわ。凄く嬉しかった・・・誕生日なんて毎年大っ嫌いだったけど、初めて誕生日が素敵だって思えたんです。だからこの子は宝物なの」

「忘れていた訳じゃないのよ?ただ、あなたの誕生日は丁度忙しい時で・・・」
「そんなの私が決めた日じゃないもの!・・・あ、ごめんなさい」


花沢だって年末で忙しかったわ。
私なんてその日の朝に初めて皆に誕生日だって事を教えた・・・類は凄く慌てて皆に怒られてたけど。

それでもお父様もお母様も急いでプレゼント用意してくれて、お屋敷ではケーキを焼いてくれて、お料理だって特別で・・・少し時間は遅くなっても揃ってご飯食べてお祝いしてくれた。
料理長さんも執事さんも加代さんも・・・「お誕生日おめでとう」って言葉があちこちから聞こえてどれだけ嬉しかったか・・・!


でも、それはここでは通用しない。お爺様がそんな人じゃないし、みんなお爺様に逆らえない。私のお誕生日会はあの1回だけで終わってしまった。

もう2度とあんなに楽しいパーティーは来ないんだ・・・。


「ごめんね・・・私達がしっかりしてないからお爺様があなたに大きな期待掛けちゃってるみたいで。ほら・・・あなたって小さい頃から頭が良くてテストだっていつも満点で、パソコンを自由に使ってたでしょ?自分の子供にしちゃ良く出来た子だなぁって自慢だったのよ。だからお爺様もいずれは自分の後継者にはあなたを、って瀧野瀬に移したんですものね・・・」

「私は瀧野瀬コーポレーションを継ごうなんて思ってないもの・・・お父様でも進でもいいじゃない」

「・・・そうかもしれないけど、これはお爺様がお決めになったことだから。花沢さんって人のことは忘れるしかないわ。そして五十嵐さんの事は少しずつ理解していけばいいんじゃないかしら?あなたに時間が必要なら、結婚を延期してもいいと思うし・・・ね?つくし、そうしましょう?」

「私は戻ってきたの・・・もう、それだけで許して欲しい。五十嵐さんとは結婚なんて出来ない」

「・・・時間が経てば気持ちも変わると思うのよ。ほら、浩司さんも見た目も格好いいし、上品で優しいでしょ?」


上品で優しい・・・お母様は本当に何も知らない。五十嵐さんの冷たい目を見たことなんてないのよ・・・ううん、それほど関心すらないのよ。私の婚約者だって言いながら・・・。


類の事は忘れない。

どれだけ時間を掛けても私の気持ちは五十嵐さんになんか向かない・・・だけど、それを言ってもここでは誰も味方になってくれないのも知っている。

このあとお母様に背中を押されてお屋敷に・・・梅三郎と共に懐かしい自分の部屋に戻った。




******************




夜になって父さんと母さんに川本から聞いた話を報告した。
父さんは机に額をくっつけるほど落ち込み、母さんは右手人差し指をこめかみに当てて悩んでいた。

「そういう事?・・・西門からお金を騙し取ったって話よね?」
「そうなるよね。まぁ、それはいいんだと思うよ。腐るほど持ってるから」

「そういう問題じゃないだろうっ!この花沢の関連企業が・・・そんな事をっ!」
「パパ、今更悩んでも5年前の事だわ。ここは類の言う通り、西門には心の中で謝りましょう」

本当は3億5千万じゃなくて2億6千万ぐらいだったんだよ?なんて言ったら西村さんの心臓が止まるかもしれない。だからここは総二郎にこの先稼いでもらうことにして・・・で、話は落ち着いた。


「で?五十嵐と瀧野瀬には電話したのか?」

「いや、確証がないから迂闊には掛けられない。多分浩司が、海外出張って嘘ついて東京に来てたんだと思うけどね。証拠品を手に入れてから宮崎に乗り込むよ。悪いけど早めに片付けるから仕事、頼むね」

「どーせ出勤しても仕事にならないんでしょ?役立たずは居なくて結構よ、優秀な藤本にさせとくわ」
「くすっ、流石、母さん。判ってるよね」

藤本は毎回俺が頼むと100%顔に出して怒るけど、流石に副社長が頼めば文句一つ言わずに黙々と仕事をしたらしい。
おかげで俺が居る時より書類の流れがスムーズだと常務にも驚かれたとか。まるで毎日俺がサボってるみたいでちょっとムカついたけど。


「つくしちゃん・・・大丈夫かしら」
「梅三郎を連れてるからずっと一緒に居ると思う。でも俺の代わりにはならないだろうから早く迎えに行かなきゃね」

「梅ちゃんと類もあんまり大差ないけど、言葉を喋るだけ類の方が良いのかもね・・・」
「どういう意味?」

「心が渇ききらないうちに早く抱き締めてあげなさいって事よ。頑張ってちょうだいね、類」

「・・・ん、判ってる」


まだ落ち込んで話が出来ない父さんは置いといて、明日からの打ち合わせを母さんと済ませた。取り敢えずそれが終わって自分の部屋に戻ろうとした時、川本のことを思いだした。


「あぁ、ごめん。さっき話した五十嵐を解雇された川本ってホームレス、うちで雇ってるから。勝手にしてごめんね」
「あら!営業本部長だったって人?なんなら寮のある関連会社、手配しましょうか?」

「ううん、牧野が帰って来るまでここに置いてやって?そのあとの事はまた相談するから」
「了解~!全部類に任せるわ」


次は秘書の麻生・・・だよね。
この女から情報を聞き出さなきゃ、ってどうやって聞き出すんだろう。

脅し・・・ちゃダメだよね?女性相手に小難しい話をしてもドン引きされるはず・・・こういう時は上手い具合に相手に喋らすんだよね?住所は行きつけの店なんかはもう探らせてるけど、どうやって接近してどうやって問い詰める?


「・・・・・・・・・」


やっぱりここはこいつしか居ないか・・・。


♪~♪♪~♪

「もしもし、総二郎?今いいかな・・・」
『なんだよ、もう見積もりとかねぇぞ!俺、今忙しいんだけど!』

「あっ、もしかして今誰かと一緒なの?あのさ、見学に行ってもいい?」
『・・・は?!見学って・・・小学生かっ!』

「ごめん、今回も急ぐんだよね。すぐに行くから店を教えて?」
『・・・・・・お前、邪魔する気か?』

「その手前で帰る。約束するから!」


この後、総二郎が飲んでる店まで行ったら、そこには先日のミス花沢がいた。


「・・・終わったね、西門も」
「は?何がだよ」





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2019/02/19 (Tue) 06:44 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/19 (Tue) 10:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうなんです、実に困った両親で・・・これも最後は類君にお任せしましょう。
それでも嫌いになれないつくしちゃんなんでしょうね。

あはは!類君、お勉強しに行きましたが大丈夫なんでしょうか。
類君にじーっと見られながら総ちゃん、何が出来るんでしょうかね?(笑)
それに秘書は・・・明日からの会社、困るでしょうね~💦

どのタイミングで帰るつもりなんでしょう、類君(笑)
出来たら最後までお勉強したらいいと思うPlumeriaでした。

2019/02/19 (Tue) 13:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

だから類つくだって(笑)
一瞬、私が間違えたかと思ってしまった💦

総ちゃんのそんな場面、書かないでしょ!(爆)
仰る通り、ほんのちょーーーーーーーっと遊んでもらってるだけです。

多分ね、この日も真っ直ぐおうちに帰ったと思う。バラバラで。
多分ね、総ちゃんと類君が一緒に・・・

え?それも違う?うんうん、禁断だよね、それ。


え?それなら読む?いや、書かないから。

2019/02/19 (Tue) 13:35 | EDIT | REPLY |   

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