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まさかここに来て牧野が居なくなるだなんて思いもしなかった。
俺が来ることを知らないって事は、何か余程嫌なことがあったのか・・・また何処か知らない街に自由を求めたとか?

いや、それなら牧野1人で?
でも置いて行くなんて考えにくい・・・東京からだって連れ出したんだから!


「もしかして梅三郎も一緒に?」
「だ、誰だって?!」

「犬!牧野の犬も一緒に居なくなったの?!」
「あ、あぁ、そうじゃ、犬も見当たらんのじゃ」

やっぱり・・・梅三郎を連れているのなら遠くには行かない。牧野はこの近くに居るんだ。


急いで向きを変えて玄関から門の外に出て、さっき気になった山道に向かった。
舗装もされてない砂利道で走りにくいけど、そこを牧野の名前を叫びながら進んで行くと・・・やっぱり足が止まった。


この道・・・昔、歩いた気がする。その感覚がもう1度蘇って来て辺りを見回した。


畑や田んぼが遠くに広がってて山が多くて・・・たまに畑の畦道に木があって、絵本でしか見た事のない地蔵があって・・・もしかしたら子供の時に迷い込んだ森に通じてる道?
山の中に入っていく小道があって、そこに木の杭みたいな物があって矢印の札が・・・子供の時の記憶を辿りながら進んで行くと、本当に記憶の片隅に残ってた矢印があった!

そうだ・・・この杭を見て山道に入り込んで、何かに惹き付けられるように奥に入って行ったら不思議な色の池があった。

ここはあの小さな女の子がシャボン玉を飛ばしてた森がある場所?


まさか・・・あの時の女の子って・・・牧野?


今度は踵を返して瀧野瀬の屋敷に走って戻った。
そこでまだウロウロしていた使用人を捕まえて、この裏の森の中に池があるのかどうかを尋ねた。でも彼女はこの土地の人間じゃないから知らないと言い、すぐに会長が出てきた。

「つくしは見付かったのか!?」

「いや、そうじゃないんだけど、この裏山の何処かに池がある?そんなに大きくなくて、周りが鬱蒼とした木に囲まれてて・・・牧野が知ってる池がある?」

「池じゃと?あぁ、小さな池がある。儂等は”青池”と呼んでおったがつくしが知ってるかどうかは知らん。池と言っても沼に近い感じで底が深いと聞いているから落ちたらいかんので連れて行った事はない筈じゃが?」

「あるんだね?それと、五十嵐ってもしかして昔はこの辺に住んでた?」

「五十嵐は元々この土地の人間で、この前の道をもっと奥に進んだところに大きな屋敷を構えておったわ。15年ぐらい前に宮崎市内に近い場所に新しく家を建ててから、その屋敷は潰してしもうて今は新地になってる筈じゃ」

「ありがと!あっ、それと・・・」


今度は使用人の女性にあるものを作ってもらった。
もしかしたら牧野はあそこに居るかもしれない・・・あの時みたいに、今度は梅三郎連れて踞ってるかもしれない。




*****************




今朝早く・・・まだ暗いうちに目が覚めた。

昨日の事がショックでよく寝られなかったから・・・もう、自分には何も出来る事がなくなったって気がして落ち込んで。
それなら他に出来ること、そう言われても瀧野瀬が何をやってる会社なのかすら考えた事のない私は何も出来ない。ううん、キュイジーヌを選んだ時のようなワクワクした気持ちがない。

自分のしたい仕事じゃないから。
自分で選んだ仕事じゃないから・・・だから瀧野瀬で働く自分の姿を想像できなかった。


それよりも問題はお爺様だ。昨日の夜遅くまで外出していたみたいだから私の失敗を知らない・・・知ったらまた呼び出される。
凄く怒るんだろうなぁ・・・「いい加減にせんか!この役立たず!」なんて怒鳴って、すぐに次の取引をしろって急かされる。

でも・・・もう自信なんて一欠片もない。
チャートを何度見ても閃かないし、すらすら解読してた文章が頭に入って来ないんだもん。


だから梅三郎を連れてそっと家を抜け出した。
前みたいに何処かに行こうなんて思わない・・・ちゃんとこの屋敷に戻ってくるつもりだったけど、お爺様の顔を見たくなかったから。逃げられないって判ってても、暫く1人になりたかった。



1番始めに行ったのは私が通った小学校。
歩いて30分ぐらい掛かるのに歩いた事なんて殆どない。毎日車で送られて、時間通りに迎えに来られた。
だから放課後にこの運動場で遊んだ記憶は全くない。お友達の顔と名前は覚えてるけど、一緒に遊んだ記憶はなかった。

だから渾名さえ付けてもらえなかった。
「瀧野瀬さん」って・・・子供なのに「さん」って呼ばれて悲しかったなぁ。1度ぐらいこの校庭で遊びたかったな。

田舎の小学校なのに昔と違って門が高くなって、しっかり鍵も掛かってた。
残念・・・梅三郎と中に入ってブランコに乗ろうと思ったのに。


「梅三郎・・・いい加減に降りて歩いてよ~、あんた、運動不足になるわよ?」
「ワンワン!」

「じゃ、歩こうか。大丈夫・・・今は怖い人なんて居ないから」

すっかり抱き癖がついてしまった梅三郎を下に降ろして学校の周りを一周した。懐かしいと言えば懐かしい校舎・・・小さくて古くてすっかりボロボロになってる。
昔はニワトリが居た小屋も今では何も飼われてなかった。


それからもブラブラと田舎道を歩いて、教室で仲良くしていたお友達の家も見た。
今はもう営業してない小さなお店・・・近くに大型スーパーが出来たから潰れたって言ってたよね。
向こうにはお墓が見える・・・怖くて1度も行けなかったけど、その隣のお寺では毎年夏祭りをしていたのよ。浴衣を着たお友達を偶然見掛けた事はある。でも、私は1度もお祭りなんて行ってない。

だから今年の初詣・・・出店が楽しかったな。ふふふ、類ったらたこ焼きで火傷しちゃったのよね。


そんな事を考えながら歩いていたら、家を出てからもう3時間以上が経っていた。
勿論そんなに遠くまでは来ていない。立ち止まって景色を眺めたり、梅三郎との休憩時間が多かったから。


今度は屋敷の裏側・・・私が小さい時に隠れ家を作ったり、探検ばかりした山を見た。

「あ・・・あの池、まだあるのかな。中学校になってからは行かなかったからな・・・梅三郎、おいで!」
「ワンワン!」

いつもの道からじゃないけどこの山の事は何でも知ってる。
何処にも連れて行ってもらえなかったから、お屋敷の人の目を盗んではこの山の中を探検したんだもん。洞穴があったり、登れる木があったり、毎年鳥が巣を作る場所があったり・・・可愛い花が咲く秘密の場所も知ってる。

その中でも小さな池があって、そこにある大きな石の上に座ってシャボン玉作るのが好きだったのよね。
ううん、好きだった訳じゃないのかも・・・どっちかって言うと作りながら泣いてたかもしれない。


綺麗なシャボン玉も絶対にあの池を通り超さなかったんだもん・・・全部池の中に落ちていって、そこで割れてしまうのよ。それが私みたいでイヤだった。
池は瀧野瀬のお屋敷で私はシャボン玉・・・どうにかして外に出て行きたかった私の願いはみんな割れてしまう気がして・・・。

「こ、こんなに坂道だったかしら・・・それとも私が衰えたの?足が・・・足が痛いよぉ、梅三郎!」
「ワン!」

「はぁはぁ・・・この道をね・・・もう少し行ったところにあるんだけど・・・池が・・・あっ、あった!!」

「ワンワン!ワン!!」

「・・・梅三郎どうしたの?急いで行って池に落ちないでよ?梅三郎ーっ!」


もう少しで池に着くって所で急に走り出した梅三郎。
何をそんなに急いで行くのよ・・・って、ゼィゼィ言いながら山道を上っていったら、緑色が濃い池が見えてきた。


あれ?でも何かが見える・・・何かが飛んでる?
池の上をフワフワ・・・あれってシャボン玉じゃないの?なんでこんな所でシャボン玉が飛んでんの?

私以外の人がシャボン玉なんて飛ばすの?

待って・・・どうして梅三郎が喜んで走って行ったの?


一瞬そこで足が止まった。
梅三郎が喜ぶのは1人しか居ない・・・でも、なんでここを知ってるの?そんなはずはないよね?

少しずつ近づいて行くとシャボン玉の数が増えていって、池の上にはキラキラと綺麗なまん丸が沢山飛んでいた。
そのシャボン玉が生まれてくる方向を見たら・・・


「あっははは!ダメだって、梅三郎・・・!それは飲めないよ。それより早く牧野を呼んできてよ」
「ワンワンワン!!」

「こらっ!それ以上端っこに行ったら落ちるよ?梅三郎、戻ってこいって!」
「ワン!!」

「うわっ!舐めるなってば、くすぐったいっ!」



私が置いて来ちゃった人がシャボン玉を作っていた。
今日も素敵な茶色の髪をふんわりさせて、長い指先でストロー持って・・・私の指定席でシャボン玉を作っていた。





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2019/03/02 (Sat) 00:08 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/02 (Sat) 06:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

てるる様 こんにちは。

はい!やっと会えました~♥
焦らしちゃってごめんなさいね💦

ラブラブ・・・ある意味ラブラブですね(色っぽいヤツの意味じゃないですよね?笑)

残り数話になりました。
最後までどうぞ宜しくお願い致します♥

2019/03/02 (Sat) 13:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あっはは!そこで終わるの?!みたいでした?(爆)
まぁ、一応は再会出来たんでお許しくださいね♥

そうそう!早く梅ちゃん連れて帰らねば!!

今日は子供の卒業式です・・・晴れて良かったけど、嬉しいのか淋しいのか?って感じです。
社会の厳しさを知っていくのねぇ、と。

4月からも研究生って形なので半分学生のようなものですが・・・どうなるのかなぁって心配です(笑)
類君みたいな彼氏が出来ないかなぁ(笑)

2019/03/02 (Sat) 13:56 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/02 (Sat) 16:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あはは!トトロの方かと思いました(笑)
と、言いますか「和也」の意味が判らなくて(笑)

和也って・・・?ってそんなの書いたっけ?って焦ったわ~!!💦
で、あとで意味が判って爆笑しました。

あの人の事、頭からスポッと抜けていた💦


うふふ、今度は類君がシャボン玉飛ばしてるの。
ってか、シャボン玉知らなくて、ストローさして飲みそうじゃない?(笑)

『花沢類、口から泡吹いて倒れる』


ヤバい・・・また歴史を作りそうだった💦

2019/03/03 (Sun) 00:57 | EDIT | REPLY |   

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