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「バレたもんは仕方ねぇ。ここは泊まれるようになってないからホテルに行くぞ」
「はっ?!総二郎はお座敷が・・・」

「馬鹿野郎!この状況で座敷になんか戻れるか!」
「いや、戻ってもいいわよ?こ、これもお仕事でしょ?途中で抜けちゃあねぇ!」

「仕事は講演だったから終わった。これからはフリーだ」


まったく・・・俺の計画丸潰れで、笑いしか出てこねぇし。でもこいつのヤキモチってのが嬉しくて腹が立ってた事なんてどっかにすっ飛んでいった。
それならってことで呉服屋の店主が持ってきた着物を風呂敷に包み、こいつの手を引いて来た道を戻った。


「ここで待ってろ。ほら、こいつ持ってな!」
「うわっ!ちょ、ちょっと!」

「盗まれんなよ、弁償できねぇぞ」

着物をつくしに持たせてお茶屋に戻り、そこで京都支部の連中には急用でホテルに戻ることを伝えた。
「そんな、若宗匠!」なんて声が聞こえるが知ったこっちゃない。西門の金で遊ぶつもりだったろうが、自分たちの金で遊んでくれ!

そしてこの事情を知ってる雛乃だけがニヤリ・・・軽く手招きして呼んだから傍まで行くと俺の手を取って小さな袋を握らせた。

「・・・なんだ?これ」
「若宗匠やおへん。お嬢さんに・・・ですよ?」

「・・・・・・マジで?」
「マジどす~」

「お気張りやす~」なんてウィンクする雛乃に「またな!」なんて、こっそり渡したのはポチ袋。祇園では舞妓にちょっとした小遣いやるのは当たり前だからな。ま・・・こいつの礼にしては安かったか?

そして急いで裏口から出るとポカンと口を開けてるつくしが待ってた。


「・・・くくっ、ホントびっくり箱みたいな女だな、お前!」
「はぁ?!何言ってんのよ、悪いのは総二郎だからね?泣きそうだったんだから・・・」

「悪かったな。じゃ、先にそいつを片付けようか」
「そいつ?」

「もう見られたから本人で合わせりゃいいだろ?明日にしようと思ったけど先にさっさと終わらせることにするって意味。行くぞ」
「うわぁ・・・!待って、総二郎!」

「毎回待て待てって五月蠅いんだよ!待たねぇから急げ!」


まずは冨久田屋の爺さんに電話して今から行くと伝え、店までつくしを引っ張って走り、扉を閉めていたのに無理言って中に入り猛スピードでつくしに着物を合わせた。

「はぁ、雛乃ちゃんはこんな貧相な身体でしたんえ?舞妓さんは分厚い着物ですから判りませんなぁ」
「・・・貧相?」
「貧相だけど感度は抜群な訳よ。そんな事言ってねぇで早く測ってよ、爺さん」

「ははは!流石噂に聞く若宗匠だ、面白い事を言わはりますなぁ!」
「いや!面白くないし、なんてこと言うのよ、総二郎っ!」
「お前は動くなって!ちゃんと真っ直ぐ立ってろ!で、美人の若奥さんは?」

「息子夫婦は夕飯時から自分達の部屋ですわ。いや、もうねぇ・・・同居も大変ですよ」
「何を聞いてるのよっ!」
「・・・激しいんだな」


この俺が用意したんだからどれを取っても最高級の一点物。総手刺繍の大振袖は、染めが人間国宝に選ばれるほどの職人によるものだ。
この3枚でフェラーリ1台買えるって言ったら腰抜かすんだろうな。


「若宗匠、ちゃんと測りましたからこれで仕立て直しは出来ますが、どれをお直ししましょうか?猩々緋(しょうじょうひ)、支子色(くちなしいろ)、碧瑠璃(へきるり)、どれもようお似合いですけどなぁ」
「そうだな・・・全部にしようか。婚約してから結婚前まで挨拶回りも多いから振袖も何枚か必要だしな」
「はっ?!誰がいつ婚約するのよ?!え、もうしてるの?私、知らないんだけど!」

「へぇっ!全部ですか?ありがとうございますっ!」
「これの帯も任せるから選んどいて。で、仕上がったら大至急西門に送ってくれ。悪いが急いでな!」
「えっ!急ぐって・・・だから急ぐ理由は何?!」

「畏まりました!」
「ちょ、ちょっと説明しなさいよっ・・・あ、もうダメだ・・・」

何か反論したそうなつくしだったけど空腹時に着せ替え人形みたいに着物を着せられて草臥れたようだ。畳の上に座り込んで、今にもそこで気を失いそうだった。


「ほら、次行くぞ!」
「はぁっ?今度は何処?もう・・・もう草臥れて死にそう~!」

「飯だ、飯!!食わねぇと何も出来ねぇだろ?」
「・・・えっ?ご飯♥」

飯だというと急にシャキッと立ち上がり、冨久田屋の爺さんも大笑いだった。
きっとこいつが西門の次期家元夫人になるって女には見えなかったんだろう・・・「えらい剽軽なお嬢さんですなぁ~」なんて小さい声で言われた。


冨久田屋のすぐ近くにある懐石料理の店に入り、やっとそこでつくしの腹に真面な飯が入るってんで、こいつはもうウキウキしていた。
頼んだのはコース料理なのに置いてあった「お品書き」を眺めては「お腹空いた~!」を繰り返し、必死になってそこに書いてある珍しい料理名を読んでいた。

ホント・・・退屈しねぇなぁ、こいつ。


「お待たせしました、本日のコース料理でございます」

「きゃああぁーっ!美味しそうっ!」
「・・・静かに食え」

今日の料理は小鉢に抹茶豆腐・・・まぁ、これには文句を言っても仕方ない。京都は何にでも抹茶を入れるからな・・・。
前菜の湯葉豆腐に菊かぶら、海老の芝煮。お造りとして出されたのは・・・ 
 
「総二郎、このお魚なぁに?」
「ん?こっちが鯛で、こっちは横輪だな」

「そんな魚いるの?」
「ヨコワってのはクロマグロの幼魚だ。関西から中国地方ではヨコワって呼ぶけど関東じゃメジ。聞いたことないか?」

「マグロなんて食べないから・・・」
「・・・味わって食え」


椀は天鰤(てんぶり)の粕汁、焼物には明石鯛の蕗味噌包み焼き。揚物には海老のかけら餅揚げと京野菜の天ぷら。
つくしはどれを出されても悲鳴をあげて喜ぶから、その度に仲居がドン引きして下がって行った。

最後のデザートにはわらび餅。
そいつを口に入れると満足そうに頬を押さえて笑ってる・・・俺は半分以上こいつに食わせたけど、何故か腹が一杯になった気分だ。


この料亭を出たのはもう10時前。
当然ここは予約しているホテルに向かうが、タクシーを捕まえようとしたら急につくしがモジモジし始めた。

・・・今更何やってんだか。


「何してんだ?ホテルに行くぞ」
「いや、あの・・・私は桜子がお部屋を取ってくれてるからそこに行こうかなって・・・ははは」

「なんで?さっきあいつ、別のホテルに行くって言ったじゃん」
「いや、お部屋は予約してるのよ。総二郎と同じホテルに」

「そんなもん、キャンセルしたんじゃね?それにさ・・・お前、正直に言えよ?アレ・・・嘘だよな?」

「・・・はっ!あ、あぁ、アレ・・・ね。う、うん・・・そうかも」


ニヤリと笑った俺の前にタクシーが停まった。
まだビクッとするには早くね?

後ろに下がって行くつくしの腕を掴んでタクシーに放り投げ、今日予約しているホテルに向かった。




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2019/02/25 (Mon) 15:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

あっはは!どうですかねぇ💦
期待を裏切ったらごめんなさいね~!!

そしておめでとうございます!!(*^o^*)
良かった良かった♡これで心置きなく・・・ですね?

私、そこが今までの中では1番嫌でした(笑)
出来たら2度と行きたくないです💦
この前聞いたような面白い人なんていませんでしたしねぇ(笑)


あっ、そうそう、ヨコワでしょ?
私は中国地区だけど、メジなら知ってました(笑)
ヨコワって何?みたいな・・・💦

私が住んでるところの刺身って言ったら・・・あれでしょ?(笑)
あんな高いもん、地元民は食べられな~いっ!!💦

今は鰺とシャケでいい・・・マグロなんて私も食べない(泣)

2019/02/25 (Mon) 16:05 | EDIT | REPLY |   

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