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サントシャペル教会・・・ここに着いたのは午後7時30分。
外から見ると縦に長い石柱が沢山あって尖った塔があって、如何にもヨーロッパの教会って感じだった。ここが花沢類が私に見せたいって言った場所。

もしかしたらここで一晩過ごせないかなって思ったけど、どうやら入場料が要るらしい。
全部は読めないけど看板にはそれらしき事が書いてあって、時間も制限があるんだ・・・この時期は午後5時で閉まっちゃうみたい。


それにしては中に入って行く人がいる・・・何故だろう?って思ったけど誰に聞いていいのかも判らなかった。いや、翻訳機すら無いんだから聞けたとしても答えを理解出来るかどうかだわ。
それにちょっと怖い感じの人が何かを話しかけてきたけど、低い男性の声で早口だから何を言ってるのかさっぱり・・・そうしたら隣の人が持ち物検査を受けていた。

はぁ、成る程!ここではそういう検査もあるって訳ね?

「Je n'ai rien à voir avec les bagages(私は何も持ってません)」・・・確かこんな単語じゃなかったかしら?なんて自分のコートを広げて見せたら、ジェスチャーで「通っていいよ」みたいに道を開けてくれた。

それでも教会の中には入れない。だから入り口の石段に腰掛けた。


「あ~あ、教会って一晩中開いてるのかと思った。そうじゃないのね・・・でも、ここなら朝まで座ってても文句言われないのかしら。それとも出て行けって言われるのかなぁ・・・」

この横にも豪華な建物があってそれが何かは判んない。そして少し向こうにはノートルダム大聖堂・・・そこがライトアップされてるのが見えて、暗くなっても観光客は多いみたい。
この賑やかなのが何時ぐらいまで続くんだろう・・・真夜中は流石に暗くなって危ないのかしら。


「花沢類・・・今頃何処に居るのかなぁ・・・クシュン!」



********************



結構走って見えてきたシテ島、そこにある教会に牧野が居るような気がしてとにかく急いだ。

教会と言っても世界遺産だし、この時間には中に入れない。
だからってまた何処かに行かれたらもう見当がつかない・・・頼むからそこに居てくれと、何度も心の中で呟きながら目に入ってきた塔を見つめた。


「あれ?結構人が居る・・・もしかして今日はその日かな?」

サントシャペル教会の近くまで行くと、もう閉館時刻を過ぎてるのに何人かが教会に向かって歩いて行くのが見えた。
フランスでは夜に教会でクラシックコンサートをする事が多くて、このサントシャペル教会でもやってるはずだ。今日がその日なら礼拝堂には入ってなくても教会の前までなら行けるのかもしれない。

それにこれだけ人が居れば誰かが日本人の女の子を見てるかも・・・少し期待しながら足を速めたら、隣の裁判所の警備員が持ち物検査のために立っていた。
この人なら何か知ってるかも・・・中に入るならこの人の前を通過してるか、断わられたとしてもここまで来ていたことがわかるかもしれない!


「失礼!仕事中にごめん、ここに日本人の女の子が来なかった?」

「日本人の女の子?さぁ・・・知らないけど、さっきフランス語を理解しない女の子なら来てたよ。話しかけても通じなかったけど、カタコトのフランス語で『何も持ってない!』ってコート広げられてね。可哀想になったから通したんだけど」

「・・・何も持ってない女の子・・・ありがとう!」
「あぁ、どういたしまして!知り合いなら入場料、宜しく!」

「あははっ、勿論!」


間違いない、牧野だ!そう思って走って中に入ると・・・・・・居た。


入り口の石段の一番端っこにちょこんと座って空を見上げて「クシュン!」ってくしゃみした。
その姿を見た瞬間、2週間会えなかったことが全部吹き飛んで、俺に黙ってここまで来たことも逆に愛おしくなって・・・やっぱり離れられないんだって思った。

子供が小鳥かチョウチョを捕まえるみたいにそっと近づいて行った。
逃げる訳はないんだけど、逃げても掴まえられるんだけど・・・見付けたから嬉しくて逆に声が掛けられなかったんだ。

牧野は疲れたのか自分の膝を抱えて顔を隠して踞ってる。
だから目の前に立って・・・音を立てないようにそこに座った。


「・・・何してるの?牧野」

「・・・えっ?」

「何やってんの?こんな所に踞って。風邪、拗らせたんじゃないの?」

「・・・・・・・・・」

「1人で海外なんて危ないよ?それよりもう危ない目に遭ったんじゃないの?あんた、何も持ってないじゃん」

目の前、同じ高さにある俺の顔を見て目をまん丸くさせてる。
そのびっくり目・・・溢れ落ちそうだよねって思ったら溢れたのは大粒の涙。それがポロポロ溢れだして牧野の頬はあっという間に濡れてしまった。
そこを手で覆ったら、今度は俺の手に自分の手を重ねて・・・震える唇が俺の名前を呼んだ。


「・・・・・・類?」
「うん、俺・・・日本語で安心した?」

「なんで?なんでここに居るの?」
「なんでだろ・・・あんたが来るならここかなって思ったから」

「・・・うっ、うえっ・・・類・・・類のバカっ!」
「え、なんでバカ?牧野だって・・・いいや、うん、俺が悪かった。ごめん・・・」

「バカァっ!バカバカ!類のバカァ!!うわぁ~~ん!!」
「あはっ、ごめんって・・・ほら、おいで・・・牧野」

「類ーっ!怖かった、怖かったぁ!!」
「大丈夫・・・もう大丈夫だから」


まだ沢山人が居るのに牧野は大声で泣いて叫んで、そして俺の腕の中に飛び込んで来た。
細い身体がガタガタ震えて、それでも掌をグーにして俺をボコボコ殴って・・・そんな事されてるのに俺は抱き締めて離せなかった。


気が付いてる?花沢類から類になってる・・・何だかそんな事が嬉しかったりするんだよね。


暫く俺を殴ってた手は、いつの間にか背中に回って俺を抱き締めてる。
俺は牧野の頭に顔をくっつけて泣き声が止むまで髪の毛を撫でていた。そして泣き止んだ後は少しずつ現実に戻って来て周りをキョロキョロ・・・そしたら現地の人達がニコニコしながら「良かったね!」って拍手をくれた。

「えっ!やだっ・・・どうして?なんで拍手?」
「くすっ、巡り会えたからじゃないの?あんた、あれだけ泣き叫んだら誰だってそう思うよ」

「うそっ!やだぁ!!恥ずかしいっ!」
「・・・遅いよ、牧野」


やっぱり今日はここでコンサートがある日だった。
それなら丁度いい・・・お昼じゃないからステンドグラスはちょっと見難いけど記念に聴いていこう。

それが終わったらその時に・・・ちょっと計画はズレちゃったけど、これも思い出に残るValentineだよね。


牧野の手を引いて教会の受付窓口に行ってチケットを購入。牧野は何をしてるのか判ってないから不安そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「中に入ろうか」って言うとコクンと頷いて、俺の腕にしがみついて歩いてる。危うく転けそうになるぐらい近寄ってる姿も可愛らしかった。


「うわぁ・・・!凄い・・・類、すごく綺麗・・・!」

「でしょ?昼間に来たらもっと綺麗だよ。今日はここでコンサートがあるんだ。だから一緒に聴こうか」
「コンサート?それでこんなに人が居るんだ!」


目を輝かせて礼拝堂を見つめる牧野の手を引っ張って一番後ろの端の席・・・そこに並んで座った。
勿論繋がれた手は離さない。やがて俺達の耳には優しい音が聞こえてきた。





sainte-chapelle-972313__340.jpg

★本当はサントシャペル教会のコンサート、2月は土日だけです。お許しを(笑)
裁判所の警備員さんの記述もこのお話し用の妄想です。実際は違うと思います💦
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Comments 4

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2019/02/24 (Sun) 14:09 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/24 (Sun) 15:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

うふふ、やっと会えました~!

サプライズは失敗しましたが、アクシデントは半端なかったようですね💦
電話で教会の事を告げてなかったら会えなかったのかも?


今はどうかわかりませんが、昔パリに行った時は夜も明るかったです。
確かに橋がみんなライトアップされて綺麗でした。最近は治安が悪いみたいなので心配ですね~💦

去年は娘がパリに行ったので、写真を沢山撮ってきてもらいました。
声に出さずに「類く~ん!」と(心の中で)叫びながらそれを眺め、1人でニヤニヤして「気持ちわる!」って。

フランス語も少し話せるので話してもらいましたが・・・ゴニョゴニョしててイマイチ聞き取りにくかったです(笑)


きっとこれから類君による特訓が待ってるんじゃないかしら?

次話、最終回です。
どうぞ宜しくお願いします♡

2019/02/24 (Sun) 18:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

meimei様 こんばんは。

あっはは!ホントだ!忘れていました。
まぁまぁ、感じで判るでしょ?

うふふ、お許しくださいませ。

こんなにズレたらバレンタインのお話しだと思いませんよね💦
もう少し早くに始めたかったんですが、忙しかった(笑)

2月中に終われて良かったです♡
どうもありがとうございました。

2019/02/24 (Sun) 18:56 | EDIT | REPLY |   

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