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情報部からの連絡は翌日すぐに入った。

五十嵐物産東京支店長秘書、麻生ルミ子という女性・・・現在30歳で、成城にある築8年程度のマンションに独り暮らし。
大学卒業してすぐに五十嵐に入社して、総務課に1年だけ在籍して秘書課に異動している。それが7年前で、五十嵐浩司が頻繁に東京に来るようになった5年前、既に面識があったと言うことだ。

写真を見る限り「美人」でプロポーション抜群。大学もT大だし、まずまずの才女なんだろうと思うけど、実は相当酒と男好き。


「・・・短時間によく調べられたね」
「それだけ情報入手しやすい行動を取っていると言えますね」

「そういう事?じゃあもしかして男は五十嵐だけじゃないのかな」
「確かに数名の名前が挙がっています。本命は五十嵐営業部長のようですが、彼女は東京を離れたくないそうです。だから五十嵐物産の本社を早く東京に移せと催促していたようですね」

「へぇ・・・年上だから強かったのかな」


それにしても秘書を7年やったからって成城のマンション?グレードは知らないけど成城でそこまで古くはないマンションだとそれなりの金額だろう・・・しかも賃貸じゃなくて分譲。
わざわざ東京支店から離れた成城にマンションを購入・・・この土地に憧れたのなら判るけど、勤務先の近くに住みたくなかったのなら別の理由でもあるのか?


「このマンションの名義は調べた?」
「すぐに調べて参ります」

「ん、宜しく」

「それと、類様。彼女はこの店が気に入ってるらしく、週に2~3回は顔を出してるそうです」

「何の店?」

もう1人の情報部の人間が出した資料は・・・・・・高級ホストクラブ?!
何これ・・・『職業、イケメン』?!イケメンって職業になってんの?総二郎かあきらみたいなのがズラッと・・・!
うわっ、何これ白いスーツ・・・いや、黒いスーツのヤツも居る。へぇ・・・ちゃんとネクタイ締めるんだ?それにわざとらしく手に持ってるのはドンペリ?

「麻生はどうやらここで最低でも月に70万から80万は使っているようです。とても五十嵐の給料だけではやっていけませんので自由に使える金の出所があるのではないでしょうか」

「そ、そうだよね・・・」

「はい。渡した小遣いの使い道をイチイチ聞かないパトロンが居るか、自分で裏で商売してるか・・・犯罪紛いの事をして金を作っている可能性もありますよね」

「・・・誰か潜入捜査出来ないかな」

チラッと見上げたら情報部の連中はみんなお互いを見合ってる。

・・・こうやって見たら全員流石にガタイが良いよね。
しかもどっちかって言うと強面で短髪、どう見ても体育会系の匂いしかしないけど。この中から誰かホストに化けられそうなヤツ・・・なんて俺も一通り目で追ってみたけど何奴も此奴も無理そう・・・。


「はっきり申し上げてこの高級クラブのイケメンに勝てるのは類様しかいないような気がしますが?」

「はっ?俺が潜入捜査するの?!問い詰めるだけじゃなくて潜入・・・ホストになれって言うの?!」

「私達に出来ると思われますか?」

「・・・・・・」


・・・うそ!マジで?そんな事、本気で言ってるの?

いや、でもこれは牧野のためだ。
悩んでる時間はないし、実際俺が行った方が知りたいことも聞ける。昨日総二郎のお手本も見せてもらったし、ここは俺が自分で・・・行くしかないよね!


「類様、ホストにならなくてもその手前で引き止めると言うのはどうでしょう?それでもホストを見慣れている麻生を惹き付けるのにはそれだけの『色気』が必要です。やはりここは我々では・・・1番不足している部分でございますので」

「判った。大至急麻生の週間予定を調べて。今夜がホストクラブ行きならその前に俺が阻止する!その後で麻生を別の場所に誘導して1対1で情報収集する!」

「はっ!畏まりました!」


問題は俺に本物のホスト以上の『色気』が出せるか・・・って事だけど。




*********************




昨日の夜、私が戻ったからって皆でご飯を食べようなんてことにはならなかった。
お爺様は気分が優れないと言って部屋に籠もられ、お父様とお母様も自分達の屋敷に戻った。どうやら進が風邪を引いてるらしい・・・だから放っておけないって言われたけど、それってどうなの?もう大人の男だよね?

いや、梅三郎が居るから2人でいいんだけど・・・うん、この方がいい。

お手伝いさんが私の夕食を以前のように部屋まで運んでくれて、それをテーブルに置いて1人で食べた。
横では梅三郎がやっと落ち着いたのかコリコリ音を立ててドッグフード食べてるし、ミルクももらってそれを薄めてあげたらペロペロと舐めてた。

懐かしい味付け・・・不味くはなかったけど美味しいとも思えなかった。
大好きだったおかずが並んでるのに何にも味がしないような気がして・・・だから全部食べられなかった。


お布団を敷いて潜り込んだけど凄く寒い。
確かに冬だからいくら宮崎だと言っても寒いんだけど気候のせいじゃない。部屋は暖房で暖まってるんだもん・・・空気が冷たいんじゃなくて身体がすごく冷たいんだって気が付いた。

こんな夜は久しぶり・・・類がインフルエンザになった時以来?
でも、あの時はこんなに寒くなかった。類と別々だったけど毎晩ふかふかしてぬくぬくしてぐっすり眠れた。
少し横に手を伸ばせば畳を触ってしまう。そのひんやりした感触にブルッと震えてまた手を引っ込めた。花沢のベッドは広すぎて、お布団から手が出ることなんてなかったっけ。

何もかも比べてちゃダメ・・・もう東京の事は忘れなきゃ、そう思っても余計に彼の笑顔が頭に浮かんできた。


類は・・・ちゃんと眠れてるかしら。
あの時も「牧野欠乏症」なんて言ってたけど、私が居なくても寝てるのかな。くすっ・・・寝坊助だもんね。



朝までウトウトとしか寝られなくて、窓の外が白くなり始めたらもうお布団から出た。
部屋の隅で寝てた梅三郎も大欠伸・・・「おいで」って手を伸ばしたらひんやりした身体を擦り付けてきた。でも抱き締めたら温かい・・・ペロンと私の鼻を舐めて「おはよう」の挨拶をしてくれた。

「おはよ・・・あんたはよく眠れた?」
「クゥ~ン・・・」

「あはは、お腹空いたんでしょ?ちょっと待ってね」
「ワンワン!」

「静かに!静かにしないと捨てられちゃうよ?」
「・・・クゥ~ン・・・」

「ふふっ、嘘だよ。捨てたりしないよ。梅三郎だけが私の友達なんだから」


カーテンを開けたら鈍い色の朝日・・・庭師のお爺さんがこんなに朝早くからホースで水を撒いていた。
ここには芝生なんてない。松や山茶花、椿・・・梅の花がもうすぐ咲きそう。イヌツゲの垣根にもバシャバシャと水を掛けて、それが朝日で少し光ってるのがこの屋敷の毎朝の光景だっけ。

池の中の鯉、少なくなったのかな?って思ったけど今は寒いから魚もあんまり動かないんだった。

はぁ・・・本当に帰ってきたんだなぁって、2階の自分の部屋の窓に凭れ掛かってぼんやり雲が流れるのを見ていた。


「つくし様、こちらでお召し上がりですか?それともダイニングに?」

お手伝いさんが朝食をどうするか聞きに来たから、「部屋で食べます」と言えばすぐに持って来てくれた。これも以前と変わらない和食の朝ご飯。私の好きだったお漬物がある・・・それだけは嬉しかった。

梅三郎にあげるミルクをもらいにキッチンに行くと、その横のダイニングでお爺様にばったり会ってしまった。
これも仕方ない・・・ここに住んでいると言うことはお爺様に会うって事だもん。いちいち喧嘩してても始まらない・・・だから「おはようございます」と挨拶だけしてさっさと部屋に戻ろうとした。

「待ちなさい、つくし」
「・・・何でしょう。部屋で食事中なんですけど」

「そう尖るでない。仕方ないからあの犬は儂に見えんように裏庭で飼うがいい。そしてお前は早速今までと同じ作業をな」

「・・・お爺様、私がしていた事は何でしょう。あの取引って本当に瀧野瀬コーポレーションの為だったの?違うんでしょ?」


お爺様の顔がピクッと動いた。
・・・まだ私が何も知らないと思ってるのね。もう五十嵐さんからも話を聞いてるのに。

「色々東京で聞いたんです。お爺様・・・私がしていたのはお爺様の個人資産を増やしていただけで、それを瀧野瀬の為に使っていたの?それなら初めから法人取引で良かったんじゃないんですか?類からそう言われて・・・」

「五月蠅い!!儂は瀧野瀬のためにやっておるんじゃ!何にも知らんクセに偉そうに口出しするな!お前は言われた通りに取引を続ければいいんじゃよ!・・・既にこれまでの取引の中で大損してる部分がある。早くそれを取り戻せ!」


「・・・判りました」


可哀想な人・・・お爺様、あなたは本当の幸せを知らないのね。
幸せってね、お金のことじゃないんだよ。

触れたらすごく温かくて、笑顔で自分を見てくれる人・・・そんな人がすぐ横に居ることなんだよ。





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☆ホントはわんちゃんに人間のミルクはあげちゃいけないらしいです。
つくしちゃん、一応薄めて飲ませてます。
花沢家では犬用ミルクです♡
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2019/02/20 (Wed) 06:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 おはようございます。

あははは!ホストだったら行きます?いやいや、類君には無理でしょ~!
会話が弾まないと思うんですけど。

え?見るだけでいい?・・・うんうん、そうですけどねぇ(笑)

つくしちゃん以外の女性に話しかけられるかどうか・・・まずはそこですよね💦
ある意味、頑張りますので今夜をお待ちください♡

いつもコメント、ありがとうございます。

2019/02/20 (Wed) 08:08 | EDIT | REPLY |   

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