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サントシャペル教会の夜間コンサート・・・まさかここで渡すことになるだなんて思いもしなかった。
だけど最高の舞台のような気もして胸が高鳴った。


今日の演奏曲は日本でも知られているものばかり。
パッヘルベルのカノンにモーツアルトの夜想曲、ヴィバルディの四季からは春、そしてベートーベンのピアノソナタ・・・バイオリンを弾く俺には馴染み深いし好きな曲だった。
嬉しくなって隣を見たら・・・くすっ、俺のお姫さまはどうやら疲れ過ぎて寝てしまったみたい。

通りで左肩が重たかったわけだ。



その演奏が終わって観客が帰り始めた頃、その物音で牧野は目を覚まし「あれ・・・終わった?」なんて目を擦っていた。

「ん、終わったよ。素敵な演奏だったね」
「・・・うん、凄く気持ち良かった・・・」

「だからすぐに寝ちゃった?」
「えへへ・・・だってすっごく歩いて走って・・・お腹も空いちゃったから。あのね、実はね・・・」

「知ってるよ、スリに遭ったんでしょ?露天商のお爺さんが見てたらしくてさ、それを聞いたから俺もこっちに走ってきたんだ。でも、命があって良かったよ」


えへへって苦笑いしてるけどホントだよ・・・万が一の事があったら俺が生きていけないもん。
ここで殆どの観客が出ていって、礼拝堂には俺と牧野とこの教会のシスターが2人だけ・・・少しの間主祭壇の前で2人で話したいと言えば快く受けてくれて、彼女等は礼拝堂を出て行った。

だから今は2人だけ・・・手招きすると俺の横にやってきた。


「本当にごめん・・・俺が変な計画立てたからあんた、不安だったんだよね。14日なんて意識しちゃったから・・・」

「ううん、私も変な意地はって類を見送らなかったからどうしても気になって・・・会いたくて会いたくて我慢出来なくなったの」

「俺はね・・・今日、あんたに渡したい物があったんだ。手を出して、牧野」

「・・・類?」
「うん、左手・・・」

ここまで来たら予想は出来るんだろう、牧野は少し頬を赤らめて俺の前に左手を出した。
今度は俺がポケットから例のケースを取りだして、その中からダイヤの指輪を抜き取った。そして牧野の左手薬指に・・・その動きをジッと見つめながら牧野の手は凄く震えていた。


「・・・はい、これであんたは俺のもの。本当はちゃんと言葉を用意してたのに忘れちゃった・・・だから一番簡単なのでいい?」

「え?一番簡単な言葉?」


「うん、牧野・・・結婚しよう?」

「・・・・・・」

「あれ?返事なし?何か言ってよ」

「・・・遅いよっ!!もうっ・・・類のばかぁ!!」
「あははっ、それが返事?」

ばかって叫んだと同時に俺の胸に飛び込んで来てわんわん泣いて、泣きながら笑って、笑いながらまた俺を殴って・・・そして落ち着いたらコートの襟に掴まって鼻を啜ってた。
少し身体を離して、もう1回指を見て・・・それを教会の照明に翳して「綺麗・・・」ってひと言。


「今年のValentineにプロポーズする事は前から決めてたんだ。でも本当に急な赴任だったからさ。14日に帰国してあんたを連れてフランスに帰るつもりだった。だからこっちに来てもマンションの改装したり、あんたのものを揃えたりして俺は1人で浮かれてたんだ。牧野がそんなに寂しがってるって思わなくて」

「寂しいに決まってるじゃん!だって・・・もう1人じゃ寝られないんだもん。ご飯だって作れなくなったし、マンションに帰っても広すぎて寒いだけだし、電話の時間は限られてるし」

「・・・あっ!あんた電話、なんで出なかったの?今は盗られたから無いんだろうけど」
「電池切れでアダプタ忘れた」

「・・・・・・ぷっ!もうっ、心配したんだから」

「・・・ごめん」

「もういいよ、会えたから」


もう1度強く、強く抱き締めた。
神父もいないし証人もいないし、両親もいないし客もいない。でも礼拝堂のステンドグラスが俺達のためだけに輝いてた。

そんな誰も居なくて2人だけの教会で・・・牧野に誓いのキスをした。


**


サントシャペル教会を出て、走って来た道を今度はゆっくり手を繋いで歩いた。
俺のマンションがそこまで遠くはなかったから・・・まさか初めて泊まるのが今日だなんて思わなかったけど。

「あのね、花沢の本社まで行ったらね、格好いいおじさんが歩いてたからその人に類の事を聞いたんだよ?休暇中だって言われた時はホントに驚いたよ~、目の前真っ暗になっちゃったんだから!」
「くすっ、背の高い人で4~5人付き人がいたでしょ?」

「うん!なんで知ってるの?あっ、やっぱり偉い人?ヤバかったかなぁ・・・類、怒られない?」
「怒らないでしょ。明日は会いに行こうか?」

「その人に?なんでまた会うの?」
「だって父さんだから。うちの社長だもん」

「・・・・・・は?」

手を繋いで歩いてるのに足を止めるから俺まで躓きそうになった。
でも、牧野はそれどころじゃなかったみたい。くすっ、またすっごい顔して驚いてる。もう1回「あれがうちの父さん。似てるでしょ?」って言うと「そう言えば・・・」って泣きそうになってた。


「1度日本に戻って退職手続き取らなきゃ・・・ごめんね、仕事頑張ってたのに」
「ううん、類が居なくなってから仕事なんて全然出来なかったもん。やっぱりダメだなぁって思ったよ」

「そお?じゃ今度からこっちで俺の世話と・・・語学学校にでも入ろうか?」
「あはは!そうしようかな?だって『泥簿ー!!』って叫んでも皆に無視されたもん。勉強しなくちゃ」

「そう言えばパスポートは?」
「命の次に大事だって言うからお腹に巻いてた。ほら!このカイロ入れの中!」

「ぷっ・・・あっははは!」
「だってぇ!類だってそう言ってたじゃない!あっ・・・でもさ、ごめん・・・Valentineのプレゼント、渡そうと思って持って来てたのに」

思い出したようにピタッと足を止めて悲しそうな顔をして・・・また振り向いて街の暗闇に目を向けた。握ってる手の力が悔しさで強くなり、グズッと鼻を啜って口を尖らせた。


「・・・そっか。でも1番欲しかったものは貰ったよ?」
「えっ?私、何もあげてないよ?」

「うん?あはっ・・・あんたの笑顔だよ。この日に見ることが出来て最高!」

膨れっ面の牧野のおでこにキスしたら、今度はそこを押さえて真っ赤になって。
「行こうか」って言ったら止まっていた足は軽やかに動き出した。


「こんなので良かったら毎日見せてあげるよ!それよりホントにお腹空いた~!」

「はいはい。その格好じゃ・・・街のカフェかな?美味しいところあるよ?」
「うん!行こう行こう!」


「牧野、俺の隣の永久指定席、座り心地最高でしょ?」
「うん!ふわっふわで楽ちんでぬくぬく!だから、もう絶対動かないからね!」

「ん、了解。ずっと守っていく・・・約束するよ」




ねぇ、牧野。

今、俺がどれだけ幸せか判る?あんたが隣に居て俺を笑わかせてくれて、繋いだ手がこんなに温かくて。
つまんないシチュエーションなんか考えずに、あんたを離さなければ良かったって思ってるよ。


だから今度こそ離さない。

Vous êtes destinés à être ensemble pour toujours・・・この先もずっと。





fin。


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ドタバタの類君、ValentineStory、終了です。
お付き合いいただきましてありがとうございました。
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2019/02/26 (Tue) 11:27 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/26 (Tue) 13:38 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/26 (Tue) 20:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

とてもバレンタインとは思えないお話しでしたが💦
チョコのひと言も出てこないし・・・ははは!

しかもこんな時期に終わるとなんの話だったんだ?って感じでしたね(笑)
お許しくださいませ♡

楽しんでいただけて良かったです。
コメント、どうもありがとうございました。

2019/02/26 (Tue) 22:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様 こんばんは。

あっはは!捕まった(笑)
確かにね、うん、確かに捕まりました!

いやいや、知らない国で走って逃げちゃいかんでしょう💦
これに懲りて1人で動き回らないことですね!

私はシンガポールのホテルから1人で買い物に出掛けた事があるんですが、怖くてすぐに戻りました。
勿論何も買わずにです(笑)


私、これで教会に行かせたの3回目です(笑)
好きだなぁ💦

まぁ、いいんですよ、好きなんだもん♡

うふふ、幸せな気分になっていただけて良かったわ♡
コメント、ありがとうございました。

2019/02/26 (Tue) 22:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ミキッp様、こんばんは。

あらら!ハラハラさせました?(笑)
ごめんなさいね💦今回はValentineComedyにしちゃいましたので。

空中ですれ違うなんて面白いかなぁって♡

焦りまくりの類君(笑)なかなか良かったですか?
格好いい類君が多い中、うちの類君は結構崩れてますよね(笑)

甘々じゃなかったけどラストはラブラブ♡
手を繋いで帰るなんて夜のパリを歩くんですもの、素敵ですよね~、きっと!
(類君だからね)

お付き合いくださいましてありがとうございました♥

2019/02/26 (Tue) 22:58 | EDIT | REPLY |   

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