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宮崎に着いたのは午後・・・これまでに集めた資料だけを持って空港を出た。

そして牧野が残していったスマホの着信履歴を見て、浩司だと思われる番号に電話を掛けた。俺の個人携帯の番号なんて知らないだろうから出るかどうかは疑問だけど。

数回のコール・・・その後に無言で電話に出た。


『・・・・・・』

「もしもし?五十嵐浩司さん、ですか?」
『・・・誰だ?』

「くすっ、声も覚えてもらえなかった?花沢だけど」
『・・・類か?』

類・・・既に呼び捨てするんだ?確かに年下で従兄弟だけど、こう見えて花沢本社の専務・・・なんだけどね。
それとも牧野のことでは勝った気分にでもなってるのか・・・これまでとは違う浩司の声に苦笑いしてしまった。

でも内心凄く焦ったはずだ。
あれからすぐに動かなかった花沢がこれまで何をしていたのか、少なからずビクビクはしていただろう。本当はすぐに俺が大騒ぎして連絡してくると思ったはず。
その時の対応については色々考えていただろうけど、数日経ってからの電話は予想してなかったかもね。


「もう俺からの電話なんて来ないって思ってた?牧野、どうしてるの?」
『言わせてもらうが俺が無理矢理連れ出した訳じゃない。彼女が自分の足で花沢家を出たんだ。勘違いしないでくれよ?』

「そんな事は聞いてない。牧野、どうしてるの?瀧野瀬・・・まさか五十嵐って事はないよね?」
『まだ妻って訳じゃないからな。ちゃんと自宅に送り届けてるさ。会長も両親も泣いて喜んでたよ』


今度は妻・・・わざとそんな言葉を出して俺を挑発しようとしてるんだろうけど無駄だから。
牧野の気持ちが変わるなんて思えない。会長が泣いて喜んだ?それはまた牧野にあの作業をさせることが出来るから?

それももう許さない。
2度と牧野には悲しい仕事はさせない。
一瞬牧野が泣きそうな顔でパソコンに向かってる場面を想像してカッとなったけど、1度スマホを耳から外し、自分自分に「落ち着け!」と言い聞かせた。

証拠は充分にある・・・感情的になる必要はない。


「今さ、宮崎に来てるんだけどこれから五十嵐本社に行って話したい事がある。社長と瀧野瀬会長を呼ぶことは可能?」
『・・・宮崎に?宮崎の何処だ?』

「空港。ついさっき着いたばかりだからね。もう目の前にタクシー呼んでるからすぐに行けるけど、揃ってないと話にならないから」
『・・・・・・判った。だが俺が今、別府に居るからすぐには戻れない。そうだな・・・夕方の5時なら社に戻ってるし、それまでに親父と会長に話しておくが、それでどうだ?』

「夕方の5時・・・ん、判った」


夕方の5時・・・それから話が始まったとしたら納得させるのにどのぐらい時間が掛かるのか判らない。
運良くすぐに総てを認めて婚約破棄の話まで持っていけても、瀧野瀬にいる牧野を連れ出すのに何時になるか、土地勘のない俺にはさっぱり判らなかった。
いずれにしてもホテルは必要・・・もし今日中に牧野を奪い返せたら、梅三郎も一緒に来るだろうからペットも泊まれるホテルにしなきゃね。

予約したのは宮崎市内で日向灘が目の前に広がるホテル。
そして時間は早かったけどチェックインして、昼食だか夕食だか判らない食事を済ませた。


「もうすぐだからね・・・今度は逃げないでよ?絶対に連れて帰るんだから」


**


4時半になってからホテルを出て、タクシーで五十嵐本社に向かった。
夕方の渋滞と言っても東京都内ほどじゃない。予定通り5時前には本社前に着くことが出来た。

この辺りにしては大きなビル・・・入り口に入ると何処の国のものだか判らないオリエンタルでカラフルな置物があって驚いた。
その正面にも誰の絵だか判らないけど抽象画が飾られ、床材も模様つきの派手なヤツ。誰の趣味でこうなってるのか・・・少々鬱陶しい気がした。

そこのロビーに入ると受付のようなものはなく、正面にはパーティーで会って以来の浩司の姿があった。
従業員が数名、浩司に頭を下げながら俺の顔を見て首を傾げてる・・・当然、俺の顔なんて知らないから誰も挨拶なんてしなかった。


「こんな田舎の会社までよく来たね。そちらの本社と比べると雲泥の差で驚いただろうけど、こっちじゃこれでも大きな方でね」

「別に驚きはしないけど。皆揃ってる?」

「あぁ。一体ここで何の話だ?彼女の事なら瀧野瀬でしてもいいだろう。わざわざうちの本社に人を集めて話したいだなんて意味が判らないな」

「牧野の事・・・は後でいい。先に片付けたい事があるからね」


ほんの少し嫌そうな顔を見せてる。
本当にさっきまで別府に居たかどうかなんて疑問だ。おそらくここに居たけど、急に来られて何か粗探しをされたら困るから咄嗟についた嘘だろう。
この数時間の間、急いで瀧野瀬会長も呼んでおいて口裏合わせの会議があった・・・そう考える方が自然だ。

そんな事、いくらしても無意味だけどね・・・証拠は全部俺が持ってるんだから。


無言のままエレベーターで最上階まで上がり、ドアが開くとスッと手を差し出された。
誘導された通り先に降りると今度は自分が前を歩いて社長室へ・・・ここのフロアにもロビーと同じく変な置物が飾ってあって、壁にはさっぱり判らないデザイン画のような油彩の絵が飾られていた。

そして廊下を1番奥まで行くと、一際装飾が派手なドアが有り、ここでも金色のプレートで『社長室』と掲げられていた。


浩司は軽くノックをして、その返事も聞かないままドアを開けた。
「どうぞ、ここに皆居るから」なんて小さい声で言われて、俺もこの部屋に足を踏み入れた。

黒革のゴージャスな椅子・・・そこに1人の男性が座っていて、その前の応接用のソファーには女性と腰の曲がった痩せた老人。全員が俺を見て瞬間顔を強張らせ、すぐに女性だけが作り笑顔を浮かべた。
業務に関係のない飾り物、ゴルフバッグ、壁には何の賞状かと思えばゴルフで優勝したものだった。

当然正面の椅子の男性が五十嵐社長だろう。
俺を見ると椅子から立ち上がり、大袈裟に手を広げて近寄って来た。


「おお!久しぶりだな、類、覚えているかい?叔父さんのこと」
「・・・お久しぶりです。突然お邪魔して申し訳ありませんね、叔父さん・・・いえ、五十嵐社長」

「ん?そんなにラフな格好で来ているのに、まさか仕事の話だなんて言わないだろう?いや、先日は浩司が世話になったようだねぇ。此奴も花沢本社のパーティーに顔が出せていい勉強だったようだよ」

父さんの弟って言うだけあって似てるような気もするけど、この人の方が老けて見えるのは何故だろう?うちの父さん、やっぱり年より若く見えるのかな・・・あんな性格だし。
父さんよりも背は低くて小太り・・・花沢の血縁で太ってる人を初めて見た!ってぐらい驚いたけど顔には出さないように必死で堪えた。


「うふふ、何と言っても20年ぶりですものねぇ、類君。あの時は小っちゃくて天使みたいだったけど、こんなに素敵な男性になって・・・モテるんでしょうねぇ!叔母さんも15歳若かったらデートに誘いたいぐらいよ?」

「・・・お久しぶりです。ごめんなさい、全然覚えてなくて。若くならなくてもお誘いいただけたら酒ぐらいお付き合いしますよ、五十嵐副社長」

「あ、あら、そう?嬉しいわ」

覚えてないと言ったからなのか怒ったみたい。しかも一瞬「瑠那」が出てしまった・・・。
この人は年の割には派手なスーツを着て、脚線美をモロダシ・・・とても勤務中とは思えないメイクとスーツを見て、これまでの装飾品の趣味はこの人だって確信した。


そして黙ったままソファーに腰掛けている老人。
厳しい表情で俺の事を見てるが、その杖を支えにしている手が震えている。
この人が瀧野瀬コーポレーション会長・・・瀧野瀬孝三。


牧野の祖父・・・そう思うと、彼の前に行き一礼した。


「あなたが瀧野瀬孝三さんですね?初めまして、花沢類と申します。
あなたには早くにお会いしたかったのですが、色々立て込んでおりましてご挨拶が遅れました。申し訳ありません」

「・・・いや、足が悪いのでこのままで失礼する。花沢の専務さんにそのように挨拶される覚えもないのだが、こんな田舎までよく来て下された。もう隠さなくても良いことじゃから言うが、つくしが世話になったようで・・・ありがとうございましたな」


「世話をした、と言うつもりはありません。家族の一員と思って暮らしておりましたので。それについては本題の後で・・・」


本題、そう言うとこの部屋の空気が変わった。
さて・・・始めようか。






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2019/02/25 (Mon) 06:38 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/25 (Mon) 07:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

かぼ様、こんにちは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
はい、やっと(笑)ですね!

いやいや、ご期待通りになるかは判りませんが💦何と言ってもコメディですので♡
勿論、本気100%で闘っていただきます!!キリッ!

証拠品バッチリなので勝負は目に見えてますけど・・・あはは!

もうすぐラストになります。
最後まで応援、宜しくお願い致します♡


2019/02/25 (Mon) 11:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんにちは。

あはははは・・・プ、プレッシャーだわ💦
これまでの事をお話しするだけなのでそんなに「おおーっ!」って言う場面じゃ無いとは思うんですが(笑)

類君が少しだけ真面目になってお話しするだけ・・・かも?

まぁ、浩司君がどう出るかが・・・もしかして、まだ隠し球が?
いやいや、もういいでしょうって感じ?(笑)


困ったな・・・期待薄でお待ちくださいね💦

2019/02/25 (Mon) 11:47 | EDIT | REPLY |   

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