FC2ブログ

plumeria

plumeria

何とも言えないこの並び方・・・アウェイ感半端ない。

俺だけが対面に1人、目の前には五十嵐社長夫妻、その横には瀧野瀬会長。そして1人外れた所に座って脚を組んでる浩司。
この状態で勤務時間外になったこの部屋からは秘書の女性も出ていった。

ブラインドも閉められ閉鎖的な空間になったところで持ってきた資料が入っている封筒をテーブルに置いた。


「・・・それは何だね?類君」

「中をご覧になる前に言っておきます。こんなラフな格好で申し訳ないが、この時間は花沢物産取締役専務、としてお話ししますので甥だと思わないように。宜しいですか?五十嵐社長」

「・・・判った。では、聞きましょう」

こんな言い方はしたくなかったけど、系列会社のトップが来てるんだと思わせないと五十嵐親子、瀧野瀬会長に緊張感が欠けてしまう。それに多少は恐怖心も湧くだろう。
会長は牧野以外の事で呼ばれたんだと少しは察しがついてるのか、どんどん顔色は悪くなった。

「それでは始めましょう。今日私がここに来たのは五十嵐物産の過去案件について不審な点が見付かったので、その確認の為です。そちらには何もお知らせなどしていませんが、過去7年分のあらゆる報告書を調べさせていただきました」

「な、7年分?私達が何かおかしな取引をしたというのか?何を証拠にそんな・・・グループトップだからって憶測で適当なことを言わないでいただきたい!!」
「社長、落ち着いて。うちは何も疚しい事などしてないので、聞かれた事に対して花沢専務に説明して差し上げたら良いんですよ。それで間違いであったらどうするつもりなんでしょうかね。系列とは言っても何も知らせずに過去の報告書を調べるとは、随分やり方が汚いと言うか・・・土足で人の家に入るのと同じですよ、花沢専務」

「土足ね・・・それは失礼。でも、何もなければここまで来ませんけどね。私はそんなに暇じゃありません」

浩司は俺の顔も見ずにそう言った。
もしかしたら今日は麻生と連絡を取り合ってないのか?それとも彼女が気付いてないのか・・・どっちでも良いけどね。


「あぁ、そう言えば佐々木さんも川本さんもお元気でしたよ。この件でお会いしたんですけどね」

「佐々木に川本・・・誰だ?それは」

この名前に反応したのは浩司と瀧野瀬会長だった。
浩司はほんの少し眉を動かしただけだが、会長はあからさまに表情を変えた。5年も前の事を覚えてる・・・それだけの金額だったからね。
と、言うことは西門の件は五十嵐社長は把握してないのかもしれない。浩司だけが関わってる不正案件も有りって事だ。


「実は調べた中に西門邸の茶道会館移設耐震工事、言うものがあります。5年前の東京支店で扱った工事です。社長、覚えていらっしゃいますか?」

「あぁ、それは覚えている。なんせ金額が大きかったしな。それがどうかしたのか?」

「佐々木さんと川本さんはこの案件の営業責任者です。この時に4人も責任者が代わったことは把握していらっしゃいますか?」

「いや、東京支店の案件は殆ど浩司に指揮させているから・・・おい、そんな事があったのか?」
「・・・あったかもしれません。その工事、内容は覚えていますが担当者までは記憶にないですね」

「そうですか・・・実はね、そちらは知らなくて当然なんですが、この家・・・私の親友の家なんです」



「・・・何だって?」

「私の幼馴染みの家です。そして私はこの家に自由に出入り出来る上に事務長と何でも話が出来る間柄なんですよ。どうかしましたか?疚しい事なんてないんでしょ?」

「・・・・・・勿論だ」

「それでは・・・これをご説明いただきましょうか、社長」


封筒からこれまで調べた書類の一部を出して五十嵐側に向けた。それを手に取って眺めるうちに社長の顔色は変わり、同時に浩司もその書類を見るために両親の間に割って入った。
瀧野瀬会長は横目で睨むように五十嵐の3人を見ていたけど自分では書類を手に取ろうとはしない・・・手が震えすぎて動かせないと言った方がいいのかもしれないけど。

「これは2番目の佐々木さんと3番目の川本さんの話も聞いて、西門に資料提供を求めたものです。
そして判りますか?金額の違う見積書と請求書がありますよね?その差額8700万・・・私の経験上、このような大幅な修正は見たことがありません。いや、国家事業なら話は別ですが、これは個人宅の案件ですからね。
何故このような修正が起きたのかな・・・そして西門に渡しているのは高額な見積書の方なのに五十嵐の工事完了はこっちの金額の低い方。西門に適当な話をして振り込みの口座を2つに分けた本当の理由、お答えいただけますか?」


答えろと言われてもお互いの顔を見合わせるのは社長と副社長、それに浩司と瀧野瀬会長。
聞いているのは俺なのに社長が浩司に色々問い詰めて、それに対して浩司は何も言わなかった・・・いや、言えるわけがない。

それまでの涼しい顔から一変して険しい表情になり、イライラし始めて腕組みしてる指を小刻みに動かしていた。

「その前に何でこんなものがここにある?どうやって手に入れた?これが本物だという証拠でもあるのか?お前・・・いや、そっちがうちを陥れようと捏ち上げたものと言えばそれまでじゃないか!」

「捏ち上げ・・・入手経路は後ほど教えましょう。そうしたらこれが本物だと判ると思いますよ。それに、もしこの件で証人が必要なら川本さんが出てきてくれるそうです。彼は今、花沢で働いてるんですよ。奇遇でしょう?」

「・・・くっ!」

「それにね、花沢が五十嵐を陥れる必要性なんてこれっぽっちも有りませんから」


そう言うとまた4人は顔を付き合わせてガタガタと・・・。
その時、今度は腕時計に組み込んだボイスレコーダーのスイッチを入れた。
あきら・・・ホント、こういうの好きだよね。凄く助かってるけどさ。


「お話しは纏まりませんか?それではまだ出しましょうか?これが西門から借りたその時の議事録、そしてこれは五十嵐物産名義の口座の入出金に関するコピーです。どうですか?何故ここに瀧野瀬孝三さんの名前が印字されているのでしょう?瀧野瀬コーポレーション名義ではない理由は?」

「・・・そ、それは・・・」

浩司が口籠もると横から五十嵐社長がイラつきながら書類を覗き込んだ。副社長の母親は既に会話から離れ、書類すら見ようとしない。見ても意味が判らない、そういう事だろう。
どう見ても飾り物の副社長・・・うちの母さんとは大違いだ。


「瀧野瀬さんが東京の工事に何か関係してましたかな?ちょ、ちょっとそれも見せてくれ」

「五十嵐社長、見てもいいんですけど、不思議な書類は西門に限られてる訳じゃありませんよ。この本社で扱ったものは調べていませんが東京支店に関するものは少なくてもこれだけあります。どうぞ、よく見て下さい」


麻生のマンションから持って帰ったディスクの中にあったものをそこに並べると、今度は社長の手から捥ぎ取るようにして浩司がそれを読んでいた。クールに装っていた顔を真っ赤にさせて.・・・。

「私が納得出来る回答は出ませんか?ついでに話しますと、既に5年も前の事ですし、パソコンから削除されていますから証言だけですけど、この川本さんに偽装したメールを送られたのは瀧野瀬会長、あなたですね?
不正に気が付いて調査を始めた川本さんは実に頭がキレる人だったから危機感を感じた。早く社から追い出すには不正の首謀者が川本さんであるかのように工作して監査役に説明、懲戒解雇したって事ですよね」

「・・・・・・」

「いいんですよ、そのまま黙っていても。花沢グループのトップとしては本社の監査部をここに送り込んで徹底的に調べても構わないのです。私が本社の専務として来ていると言いましたが、内部的には現在極秘事項にしてあるので誰も知りません。
流石に監査部を寄越すとなれば隠し通せませんけどね・・・どうします?これまでの不正をお認めになりますか?」


ガクッと項垂れたのは五十嵐社長で、浩司は俺が渡した書類を両手で思い切り引き裂いた。
そんな事をしてもそれ、コピーなんだけどね。


「・・・類君、いや、専務・・・確かに金額の改竄を行ってきた事は認める。ほんの出来心というか・・・その・・・瀧野瀬会長に上手く言いくるめられてな」
「なんじゃと?儂のせいだと言うのか!ほいほい乗ってきて、そのうち主導権を握ったのはそっちじゃないか!」

「黙っていても金を作る孫が要るから面白くて仕方ないと言ったのはそっちでしょ!」

「いい加減な事を言うな!最近では浩司が色んな話を吹っ掛けて、儂に工作資金を要求しとるんじゃないか!この西門の時も五十嵐に仕事をもらう為にライバル会社をわざと不正取引に巻き込んで世間にバラしたんじゃないか!その時の金は儂が出したんじゃ、このぐらい振り込ませないと割に合わんわい!」

「そんな事頼んだ訳じゃ無い!あんたがその方がいいだろうって勝手に動いたんじゃないか!」
「勝手にじゃと?あの会社を潰した方が今後、仕事がしやすい言うたんは浩司、お前じゃろうが!!」

「五月蠅いっ!!」バンッ!!

・・・目の前のテーブルを平手で叩き、その勢いでクリスタルの灰皿がカラカラと音を立てて飛び跳ねた!
杖を振り上げそうになってる瀧野瀬会長、破り捨てた書類を足元に散らしてる浩司、ネクタイを緩め応戦態勢の五十嵐社長、驚いてソファーから転げ落ちそうな五十嵐副社長・・・何奴も此奴も!!


「いい加減にするのはあんた達全員でしょ?」


これから先は一気に婚約解消させてやる!!





15493584870.jpeg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/02/26 (Tue) 06:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

はい、今度は浩司を潰してきます!


いやいや、登場人物増やしたら訳が判らなくなるんで(笑)
でも、実は居るんじゃないかな・・・?

悪事で繋がってる人って、最終的には絆も何もないから仲間割れって簡単に起こすんですよね。
「自分は悪くない」って感じで。

やっとこれで私も不正事件の調べ物から解放される(笑)
調べてたら頭が痛かった・・・💦

難しいことは書くまいと毎回思うのになぁ・・・ははは。


ではでは、今夜もお楽しみいただけたらと思います♡

2019/02/26 (Tue) 19:35 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply