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ここまで話したら婚約を破棄せざるを得ない五十嵐浩司は、もはや力なく始めに座っていた椅子に戻ってそこで天井を見つめていた。色々隠したけれど無駄だった・・・そんな事を思ってるのかもしれない。


「あぁ、そうだ・・・聞くのを忘れるところだった。もしかして花沢の新年パーティーに彼女を忍び込ませました?この会社のホームページに大きく載せてる写真、何処の誰が撮ったのかと思ったけど、彼女に依頼したの?」

「・・・あぁ、まぁな」

「前もってホテルの部屋を予約しておいてパーティー用に支度させてたってこと?悪いけどあの記事も社長が怒ってたから変更しておいた方が・・・ついでに花沢のロゴも消しておきますか?」

「・・・・・・言われなくても消しておくさ」


ヤバっ・・・1度会ってたんじゃん!!
カラーコンタクトと髪型のおかげかな・・・どっちにしてもバレなくて良かった。


「それに監視カメラ。あれも計画的に起こした事?何処かで子供でも雇ったんですか?派手に壊してくれましたよね」

「・・・やっぱり藤本不動産だなんて名前でここに所在電話したのはお前か。その日に東京のそんな会社から電話があったって聞いたから調べたけど該当する不動産屋なんてなかったからな」

「あれは私の秘書ですよ。本当に藤本って言うんだけど演技が下手だからバレるとは思っていましたが」

「・・・少しの小遣いを握らせたら近くの公園でサッカーやってた子供達が協力してくれたんだよ。・・・ったく、成功報酬まで要求しやがって都会のガキは要領がいいよな!」

「随分下調べが良かったから、前日にでも人を雇って監視カメラの場所を確認したんでしょう?」

「・・・そうだ。東京の探偵は何でも調べてくれるからな。庭の何処に監視カメラがあるかすぐに連絡をくれたよ。ついでに何処に立てば屋敷からの監視カメラに映らないのか、何処にタクシーを待機させれば怪しまれないかってね。
俺が彼女の手を引いて連れ出す場面を撮られるわけにはいかないからな。適当に小難しい事を言ったら素直に裏口から出てきてくれて助かったよ」

立ち位置まで・・・通りで他のカメラに姿が映らなかった訳だ。
計算外だったのは牧野が梅三郎を・・・


・・・・・・!!そうだった、1番肝心な事を聞いてなかった!


「ごめん、ちょっと専務職から個人に戻って聞いてもいい?」、俺が急に声のトーンを変えて質問したからこの場の全員が「はっ?」って顔になった。
でもこれだけは聞いておかないと、もしもの時には違う意味で許さない!!


「あんた、牧野を屋敷から連れ出した日、何処に泊まった?都内のホテルも旅館も、宿泊出来そうな所を調べたけどあんた達が泊まった場所は特定出来なかった。麻生が見掛けたって言ったけど、情報屋がその場所までは聞き出せてない。
まさか・・・牧野に触れてないだろうな!」

「・・・あぁ、その事か」


あぁ、その事か、だって?!
少しだけ小馬鹿にしたように笑った浩司が、この時だけ俺に勝ち誇ったような顔をしたからムカッとした。
冷静にならなければ・・・そうは思うけど、これだけはどうしても気になる!調査途中で梅三郎を連れて宮崎に帰ったことが判ったから解決してなかったけど、この2人が一晩何処で何をしていたのか・・・。

牧野に聞いてもいいけど、もしもの時は・・・もしもの時は、傷ついた心と体を俺が救ってあげないと・・・!


「五十嵐の社員寮に泊めてやった。犬と一緒にな」
「・・・はっ?!」

「五十嵐が持ってる寮に泊めてやったって言ったんだよ。悪いけど子供に興味はないんだ。結婚したら抱いてもやっても良かったけど、その前にどうしても欲しいと思うようなタイプじゃなかったんでね。安心したか?」

「・・・・・・」

「礼ぐらい言ったらどうだ?無傷でお前に返してやるって・・・」


その言葉を聞いた瞬間、我慢していた何かがキレた。
涼しい顔で牧野を侮辱した・・・そんなの許さない!ニヤッと笑った浩司の前に飛び出して行き、その胸ぐらを掴んだ!

こんなに力を入れて人の首なんて絞めた事はない。浩司の顔が真っ赤になって、俺の手首を必死になって解こうとしてる・・・その爪で手の甲に血が滲んだようだけど・・・絶対に許せなかった!

「きゃああぁーっ!やめて、ちょっと!」
「類君!手を出すのはやめないか!!」

「ぐっ・・・は、はな・・・離せっ!」

「・・・・・・今は花沢の役員じゃないって言ったよね。あの夜の牧野の心の痛み・・・少しは思い知れっ!!」

締め上げていた浩司の首元から手を離すと、次の瞬間、こいつの左顎を目掛けて拳を振り上げ力任せに殴りつけた!
その勢いで浩司の身体は吹っ飛んで窓際の背の高い観葉植物とぶつかり、一緒に横倒しになった。当然植木鉢から土は溢れ、浩司は頭を抱え込んで踞り、飛び出してきた副社長が慌てて助け起こした。


「・・・ってぇ!何をする!!傷害罪で訴えるぞ!」
「したきゃすればいい!!こっちは器物破損とその損害賠償で訴えてやる!」

「・・・くそっ!」


・・・痛っ、と自分の手の甲を見たら・・・結構血が滲んでた。
浩司も口の中を切ったのか、拭った手の甲に血がついてた。


「・・・失礼しました。少し頭に血が上ってしまって」

これ以上騒いで本当に傷害事件が起きたら悲しむのは牧野・・・そう思って浩司より先にソファーに戻った。浩司も立ち上がって副社長が心配する手を振り払い、何食わぬ顔で乱れたスーツを直していた。

真面にストレートを喰らったから左顎が真っ赤・・・痣になるなって思ったけど、内心もう一発殴りたかった。


「では、本題に戻しましょうか」
「・・・もういいだろ?どうせこの先色んな事を調べに来るんだろうからその時に全部喋ってやるよ。俺は帰る・・・またな、類」

「・・・もうお会いすることは無いと思いますけど」


確かにもう話を聞く事はないかもしれない。
後は浩司の言う通り監査役に任せて終わり・・・そこで今日よりも厳しい追及を受けてもらおう。




時間は夜の10時を回った。
ここでもう1度後回しにしていた偏屈ジジィ・・・瀧野瀬会長に視線を向けた。

「会長・・・最後にこれだけは言わせていただきますが、私はあなたを許す気にはなれない。たとえつくしさんがあなたを許したとしてもです。彼女を自分の欲望のためだけに利用したことは認めますよね?可愛いと言いながらあなたが欲しかったのは彼女の投資に対する天才的な勘だけです。でも、それは保証された能力ではありません。
もし、彼女がその勘を鈍らせたらあなたはどうするんです?損益を出したら罵るんですか?もっと取り戻せとまた縛り付ける、そうではないんですか?」

「・・・・・・いや、それは・・・」

「彼女は東京で仕事をしたいと言ってうちの社員食堂を選びました。沢山の人と話がしたい、身体を使って働きたいと言いましたからね。そこで働く彼女は楽しそうに笑ってました。失敗も多かったようですし、虐められたこともあるようですが毎日筋肉痛になりながら楽しそうに会社に行きましたよ。
2度と1人っきりの部屋でパソコンだけを相手に仕事したくないって言ってね・・・それが不正なのかもしれないと判った時、私達家族の前でずっと泣いてました。そんな姿、あなたは想像もしないのでしょうね」


会長にも花沢の関連会社と不正を行ったと言う事で調査には協力してもらうこと、2度とやらないと約束し、さっさと実権を手放すことなどを条件に出すとこっちも力なく頷いていた。
これを裏切った場合、即時にこれまでのことを公表し、瀧野瀬コーポレーションが存続できなくなるほどのダメージを受けることを話すとワナワナと震えていた。


「私にはそこまでして金儲けしたいという気持ちは理解出来ません。確かに花沢に生まれて経済的に困った事は一度もないけど、だからって子供の時に楽しかったかと聞かれれば素直にはい、とは答えられない。
私はつくしさんに会ってから、初めて日々の暮らしが楽しいと思いました。それ・・・いくら金を出しても買えないんですよ」

「・・・・・・」


これで話合いは終わった。

明日、やっと牧野に会える・・・誰も言葉を出さなくなったこの部屋を出てホテルに戻った。




*******************




「うそっ・・・!どうしよう、まただわ・・・また昨日取引したものが暴落してる!」

夜になってパソコンで確認していたら、また私が選んだものが大きく値を下げ、莫大な損を出していた。
これで何回目なのかしら・・・戻って来てから何度やっても昔のような「勘」が働かなくて、大丈夫だろうと思って取引したものが総て値を下げた。

またお爺様に叱られてしまう・・・これを見て「何をやってるんだ!早く取り戻せ!」って怒鳴ってくるんだわ。
それを想像したら怖くなって画面を見ることが出来なくなった。


もう前のようにこの仕事が出来ない。
そうなったら私の存在価値なんて何処にもない・・・きっとお爺様は呆れて私を蔑んだ目で見るに違いないんだ。

今日の損を取り戻すのにどのぐらい掛かるだろう・・・それを必死に頭の中で考えようとしても何も浮かんでは来なかった。


「クゥ~ン・・・クゥ~ン」
「・・・梅三郎。どうやら私にはもう何の力もないみたい。類のお屋敷で幸せ一杯に暮らしてたから、勘が鈍ってそれまで出来ていた事が出来なくなっちゃった。全然判んなくなっちゃったの」

「・・・ワン!」
「・・・え?どうして楽しそうに鳴くの?私、困ってるんだよ?」

「ハッハッハッ・・・ワン!」
「あははっ!ちょ、ちょっと!舐めないでってば・・・梅三郎、もしかして慰めてくれてるの?・・・ありがとう」


パソコンの電源を落としてから梅三郎を抱き締めて、暗くした部屋の中で踞っていた。

もう何日会ってないんだろう。
「牧野欠乏症」なんて類が言ってたけど、今は私が『類欠乏症』・・・身体の何処にも元気なんて残ってない。


類に・・・会いたいなぁ・・・。




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2019/02/28 (Thu) 07:37 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/28 (Thu) 11:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

・・・・・・・・・あら。それはどうでしょう?
いや、ここまで来てそんな(笑)

それは今晩のお楽しみ・・・ではないでしょうか?
類君はルンルンしてますけど・・・ねぇ?

それにほら!今度は梅ちゃんがいますから、無茶は・・・出来ないはず?

お楽しみに~💦

2019/02/28 (Thu) 16:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

そうそう!会ってたんですよ(笑)

実はね・・・ルミ子ちゃんを引っ掛けたときに「何処かで会わなかった?」って台詞入れるつもりだったんです(笑)
そうしたら入れ忘れて💦

あれ?あの台詞、何処行った?!って捜したけど何処にもないっ!!

話が複雑になるとそう言う細かいところ、メモしてるのに忘れるという(笑)
困ったもんです。反省するけどまたやるのよね~、これが。

で、どうしても誰かを殴るシーンを入れたくなると言う・・・ね。

類君は殴ってもいいけど、殴られたくないんですよね~。
総ちゃんは殴られてもいいんだけど。ここ不思議だよね~、どうしてかしら。
(殴られるどころかナイフで刺されたり、バイク事故に遭わせてるけどね・・・)



ありがとうございます(笑)

ValentineStoryを短くすればいいのに長いから!(爆)
自業自得なんですけどね・・・でも、魔の2月が終わりました。ホッとしてます・・・♡

2019/02/28 (Thu) 16:12 | EDIT | REPLY |   

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