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総ての話を終えてから、玄関でお爺さま、お父様、お母様に見送られて類と一緒に東京に戻ることになった。
でも、宮崎に帰った時と同じように梅三郎の搭乗手続きの為に明日じゃないと飛行機には乗れない・・・だから今日はまたホテルに泊まるって言われた。

散々類に怒られた両親はしょんぼりして立っていて、お母様は目に涙を浮かべていた。
お爺様は怖い顔をしたまま車椅子に乗って端っこに・・・ここで、私はお爺様に自分のミスを報告した。


「あ、あの・・・実はご報告があるんですけど」
「・・・何じゃ」

「・・・損益出した分の取り返しに失敗しました。また私が選んだものが暴落してしまって・・・それを早いうちに売ってしまえばもしかしたら損害額が少ないかもしれなくて、でもそれも今の私じゃ判らなくて。
それで何もかもイヤになって散歩に出てしまったの。昔みたいに画面を見てもピンと来ないんです。何故だか判らないけど・・・」

そう言うと両親は心配そうにお爺様の顔色を伺っていた。
類は・・・背中を向けたまま振り向かなかった。


「・・・もうええ。どうせ儲けても儂の好きなようには使えんようになったし、これからは五十嵐とも組めんのじゃ。今取引してあるヤツは全部売り払って口座も解約して、この分野からは手を引くわい」

「そうなの?お爺様、それでいいの?」

「・・・つくしも2度とあんなものを見たくはなかろう。もう忘れるが良い・・・儂が間違っておったのじゃろうからな」


本当は全然そんな風に思ってもいないって感じのお爺さまだったけど、類が居るからそう答えたのかもしれない。それでもちょっと照れたような顔して口を尖らせ「これからは楽しゅう暮らせ」・・・そう言ってくれた。


「それじゃあ・・・東京に帰ります。今度はちゃんと定期的にお電話しますからお父様達もお元気で」

「つくし、ごめんね・・・本当にごめんね」
「こんな情けない親で悪かった・・・今度からお爺様と進と一緒に瀧野瀬をクリーンな企業に変えて見せるからな!」

「うん!頑張ってください。私は類の傍で花沢の為に頑張ります!」


この時だけ梅三郎は類の腕の中。
もう何にも言葉を出さなかった彼はブスッとしたまま、私が両親達と抱き合って別れを惜しむのを見ていた。
類が乗ってきたタクシーが迎えに来たら、さっさと彼は梅三郎を連れて乗り込んで、私はもう1度3人と別れを惜しんだ。


「進にも宜しくね。仕事頑張るように伝えてください。また帰ったら会おうねって・・・それじゃあね!」

「つくし、元気でね!今度からちゃんと電話するからね!」
「身体には気をつけてな。いつでもここに帰っていいからね!」


「ありがとう~!またねぇ~!!」ってタクシーの窓を全開して手を振った。
皆が見えなくなって、お屋敷が見えなくなって、裏山だけしか見えなくなったら漸く前を見て座ることが出来た・・・と、思った瞬間、グイッと真横に引き寄せられた!


「うわぁっ・・・!ど、どうしたの?類」
「・・・・・・気に入らない。あんなに酷い目に遭ったのに。どうしてそんなに優しく出来るの?もっと怒ったら良いのに」

「はっ?!怒る・・・うん、怒った事もあるけど・・・今はこうして類と一緒に居るから。それだけで嬉しくて・・・ダメ?」
「・・・ダメじゃないけど・・・でも、あんたの25年間を考えるともっと言えば良かった!」

「くすっ、沢山怒鳴ってたじゃん。ありがとう・・・凄く嬉しかったよ?」
「・・・あれだけじゃ足りない。ホントはもっと・・・!」
「ワンワン!!」

類が次の言葉を出そうとしたら梅三郎が止めてくれた。ペロッと類の口元を舐めて、嬉しそうに尻尾振って。
それを見てクスクス笑ったら「舐めて欲しいのは梅三郎じゃないんだけど!」って変な怒り方したもんだから運転手さんがバックミラーで私達を見てる。

「もうっ!類ったら止めなよ、タクシーの中なんだから!」
「・・・ふん」

「あっ!拗ねた・・・大人気ない。さっきまですっごく格好良かったのに。・・・子供みたい」
「子供に言われたくないっ!もうっ・・・許さないんだからね!」

「きゃっ!るっ・・・!」

梅三郎を抱っこしてるのに私を引き寄せて不意打ちのキス・・・!
運転手さんは驚くし、梅三郎は間に挟まって「キャン!」って鳴くし、私は驚きすぎて抵抗も出来ず・・・1度唇を離したけど、今度は鼻の頭にチュ!っとされて慌てて飛び退いた!


なんて事するの!運転手さん、真っ赤になってるじゃないのっ!

タクシーを降りる時には何故か私が平謝り、類は知らん顔してさっさとホテルの中に入って行った。




*********************




今朝チェックアウトしたホテルにもう1泊する事にして、今度もペット同室の部屋を取った。

部屋に入ると梅三郎を床に降ろしてそのままベッドにダイブ・・・!
あとから入ってきた牧野にじゃれついて、その足元に纏わり付いていた。こうしてみると梅三郎、少し痩せたみたい。帰ったら沢山食べさせなきゃ・・・。
庭師兼専属の世話係が・・・ってところで、ある事を思い出した!


「あっ、言うの忘れてた!牧野、川本さんって思い出した?」
「川本さん?あぁ・・・えっとね、ううん、まだ思い出せない。どうして?」

「川本さんってね、牧野が東京に来て1番始めに世話になった人だったよ」
「東京で初めて世話に・・・?初めて・・・あっ、あぁーーっ!思い出した!ホームレスのお爺ちゃんだっ!」

「くすっ、当たり!」
「そうだわ、そう言えば大きな会社の役員さんだったって・・・その人、どうかしたの?」

「明日会えるよ」、そう言うと「は?」ってまた驚いてた。
川本もこの事件の被害者だったことを伝えると、彼の生活ぶりを見た牧野には特別な思いがあったのかもしれない。川本のこれから先の事を心配するから、花沢で働くことになったって言うと泣いて喜んでいた。


「彼も五十嵐に人生狂わされたんだよね。奥さんの事はどうにも出来ないけど、失った物を少しでも取り返して、まだ借金があるならうちでそれを終わらせようと思ってる。
きっとあんたの事、桃太郎達と待ってると思うよ。調査に協力したのも、あの時に自分の珈琲を飲んでくれたあんたの為だって言ったからさ」

「そうなんだ・・・うん、会うの楽しみ!もう暑くても寒くても住む場所はあるんだね?」

「うん。何処かの会社に入るかって聞いたけど、もう企業はイヤだってさ」


「そっかぁ・・・」って小さく頷いた牧野はせっかく降ろした梅三郎を抱きかかえてテラスへ・・・まだ寒いのにそこに出て、すぐ目の前に広がる海を眺めていた。

「うわぁっ、海が光ってる・・・綺麗だねぇ、梅三郎!」なんて大声出して・・・俺はムクッと起き上がって牧野の後ろに行き、そっとその背中を抱き締めた。
・・・正確に言えば梅三郎ごと抱き締めた。


「ね・・・俺さ、病気なんだけど」
「え?どうしたの?風邪引いてたの?」

「ううん、前にも罹ったことある病気。薬が1つしかないから待ってるんだけど」
「は?薬があるの?じゃあ飲んだらいいじゃん」

「飲んでもいい?」
「勿論よ!水が要るんだったら冷蔵庫から・・・きゃああぁーっ!」


馬鹿だね・・・俺の病気は「牧野欠乏症」で薬はあんただって言ってるのに。

飲んでも良いなんて許可が出たからすぐに抱きかかえてベッドに連れて行った。当然この途中に梅三郎には悪いけど専用の柵の中で待っててもらう。
ちょっと見られちゃうのが気になるけど・・・子供だから判んないかな?


ベッドに横たえて見下ろすと、真っ赤な顔して今日もびっくり目。
可笑しくなってチュッって触れるだけのキスをしたら怒ったような顔して、もう1度、今度はゆっくり触れるようなキスをしたら泣きそうになって、最後に甘いキスをしたら・・・牧野の両腕が俺の首に巻き付いた。

この後は会えなかった時間を埋めるかのように牧野と抱き合ってた。
牧野の甘い声が耳に届く・・・確かに俺の腕の中に居るって思うとそれだけで幸せだった。

この温かさがあったら他には何も要らない。
初めて自分よりも大事な人に巡り会った・・・もう絶対に離さない。
指と指を絡め合い、何度も何度もキスをして、お互いの目を逸らさずに・・・牧野の白い肌に俺の全部を沈めていった。


部屋に夕日が射し込む頃になって漸く身体を離し、牧野の荒い息が部屋に響いた。
苦しそうに目を閉じたまま・・・汗で濡れてしまった髪を梳いたら擽ったそうに笑うんだ。そんな顔を見せられたら、また抱きたくなるのに・・・って手を伸ばした瞬間、牧野のお腹が鳴った。

「ぷっ!あっはははは!またなの?」
「やだぁ!だってぇ、もうこんな時間で、類が、類があんなにっ!」

「俺のせい?ごめんね?」
「いっ、いいけどさ!あっ、梅三郎・・・!」

話を誤魔化そうと梅三郎に話を振ったけど・・・2人で身体を起こして柵の中を見たら、梅三郎は身体を丸くして寝ていた。


「くすっ、刺激が強かったかな」
「・・・バカッ!もうっ・・・」

「あっ、病気治った!でも薬は暫く続けないとダメだよね?」
「・・・ホント、甘えん坊だよね」

「・・・きらい?」
「ううん・・・大好き!」





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明日、最終話です♥
長い間のお付き合い、ありがとうございました。

最後まで楽しんでくださいね♡
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Comments 4

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2019/03/05 (Tue) 07:20 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/05 (Tue) 09:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

うふふ、無事にお薬も飲めましたので(笑)これからは幸せになると思います!
ラブラブ、期待されていたのでしょうか・・・実はそのようなお声があったので付け足したのですが(笑)

この程度で我慢してくださいね💦梅ちゃんがいるから・・・ははは!

次話、最終回ですが、毎回のコメントに感謝致します。
どうもありがとうございました♡

2019/03/05 (Tue) 15:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

あっはは!今でもあれを公開したくて堪りませんが💦
そうなったら変態な私がバレてしまう・・・!

私のイメージが崩れてはいけないので我慢します(笑)


爆笑!!忘れていたが、ソウイチロウも見ていたっけ!!

ヤバいっ・・・これは梅三郎の呟きが誕生するかもしれない(笑)
変態スイッチが入ってしまうわ~!

梅ちゃん、子供なのに~💦教育上良くなかったねぇ💦


意外と長かったこの話(笑)気が付いたら3ヶ月ですって!
ドタバタのラストも楽しんでくださいね♡

2019/03/05 (Tue) 15:29 | EDIT | REPLY |   

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