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「あーっ!ちょっと待って、あの子達に挨拶していかなきゃ!」
「あんまり時間ないよ?だからって走らないでよ?」

「はーい!」


あっ!・・・もう、そう言ってるのに走って行くんだから!

仕方なく時計と睨めっこしながらつくしの後を追って行くと、犬舎の前では桃太郎達が大はしゃぎ。今じゃ川本がこの3匹の遊び相手兼世話係に任命されてるから、彼が犬舎の扉を開けていた。

「おはようございます、川本のお爺ちゃん!今日もこの子達の遊び相手、宜しくね。私が走れないからさ」
「あぁ、儂も走れないがこの子達が勝手に走りまくってるのは監視してるよ」

「桃太郎、菊次郎、元気だねぇ!梅三郎、ちゃんとご飯食べたの?」
「ワンワン!ワン!」
「ワンワンワン!!」


私が走れないから・・・当たり前だよね?
って言うか、妊娠が判る前日までここで走りまくってたから、よく流産しなかったって加代が泣きそうだったよね?


「・・・ワンッ!!」
「きゃああぁーっ!桃太郎、くすぐったぁい♡」
「うわあぁーっ!桃太郎!ARRÊT(Stop)!!」

つくしの中に子供が居るだなんて判んないから桃太郎が体当たりして、もう少しの所でひっくり返るところだった!
それなのに大笑いして桃太郎を逆に抱き締めて、俺が叫んだら2人(正確には1人と1匹)が同時にキョトンとして!

ダメだ・・・すぐに車に乗せなきゃ、これ以上ここに居たら遊んでしまう!


「もう時間だから行くよ。そんなに巫山戯て後ろに転けたらどうすんの?」
「転けないよぉ!桃太郎、そんなに乱暴じゃないもん」

「そうじゃなくて!あんた、1人じゃないんだからね?」
「はーい。あっ、梅三郎の抱っこ・・・」

「遅刻するってば!」

川本が呆れて桃太郎をホールドしてくれてる間につくしの手を引いて車に向かった。
毎日がこれだから朝からぐったり・・・でも、本当の気疲れは会社に行ってからなんだけど。



**



「おはようございます、専務。今日もいいお天気ですわね」
「・・・・・・あぁ」
「おはようございまーす!」

「専務、おはようございます。今朝早くに大崎商事からお届け物がございましたわ」
「・・・藤本に預けておいて」
「おはようございます~!」

結婚したんだから当然だけど、会社のロビーをつくしと並んで歩いてる。
だけどあからさまに女子社員の「つくし無視」は続くし、それを全然気にしてないかのように彼女は明るく振る舞う。今日も俺だけに向けられたような朝の挨拶につくしが全部答えてくれるんだけど、その後には決まって顔を背けられていた。

可哀想に・・・って思うけど、本人曰く「会社以外では類を独り占めしてるから仕方ないよ」・・・それを聞いた時、速効押し倒しちゃったよね。



「おはようございます、専務」

「おはよう、藤本」
「藤本さん、おはようございます!」


今日も黒縁眼鏡がロビー奥のエレベーター前で俺を待っている。

もう1度説明すれば、この男は藤本透・・・年齢39歳、身長168センチ(1センチ減ったらしい)で推定56㎏(1㎏太ったらしい)。
見事な七三分けの真っ黒な髪で黒縁眼鏡。妻が1人で・・・実は現在妊娠中。これには驚いた。
相変わらず都営住宅に住んでて軽自動車から昇格して普通自動車になったらしい。性格は真面目でお節介でせっかちで心配性、これは変わっていない。


「奥様、おはようございます。専務は本日も一般のエレベーターをご利用ですか?」

「勿論。判ってるくせに聞かないで」
「ごめんなさいね、私が8階だから専務までついて来ちゃって・・・。類、藤本さんと2人で役員専用のエレベーターに乗りなよ」

「いいんですよ、奥様。ここでそれを言い争っている方が時間の無駄。どうせ真っ直ぐ専務室に向かっても仕事を始めるのに時間の掛かる方ですから」

「そ、そうなの?類」
「・・・パソコンの起動に時間が掛かるの。俺じゃない」


・・・余計なひと言だよ!

そして藤本も一緒に一般用のエレベータに乗ると、それには社員は誰も乗ってこない。
充分にスペースがあるから「どうぞ~」なんてつくしも言うけど、多分俺が「誰も来るな」オーラを出してるからだと思うけど。藤本はそれが判るからエレベーターの中で溜息・・・ジロッと俺を睨むのも毎日の事だ。

8階に着くとつくしだけじゃなく俺も、ついでに藤本も降りる。
そこはフロア全体が海外事業部で、世界中に事業展開してるうちとしては1番活気がある花形部署。毎年ここに入りたくて入社してくる人間が居るけど、ここに入れるのは他部署で数年間経験を積んだヤツばっかりだった。

だからつくしのような配属は異例中の異例。
その後押しが俺ではなく、副社長の母さんだから文句なんて出ないけど、普通なら有り得ない事だ。


つくしの仕事は主に海外の取引先とコミュニケーションを図り、契約が円滑に進むように補佐するアシスタント的なもの。自分から営業を担当して業績を上げるとか、月間ノルマのようなものもない。
ここでも1番の語学力を持ってるつくしはあらゆる営業担当の補佐について通訳したり、一見仕事とは無縁と思われる雑談をする事で取引先担当者と和やかな空気を生み出している。

でもそれが功を奏し、これまでに幾つもの商談を実契約に結びつけてるからここでの評価は高い。


「おはようございます、山崎主任」
「あぁ、おはよう、花沢さん。専務・・・今日もここまで送ってこられたんですか?」

「・・・心配だから」

「おはようございます、有田さん」
「おはようございます。花沢さん、もうカナダからメールが来てましたよ。あっ、専務、おはようございます・・・」

「・・・今日も宜しくね」

つくしの上司達が、まるで邪魔者が来たみたいに俺を見てる。


フロアの通路でみんなに挨拶しながら自分のデスクまで行くつくしを見届けて、やっと役員フロアに行こうかと向きを変えたところで出くわしたのは・・・江本竜司!
そいつがニヤリと笑って俺の前に立っていた。

見た目がちょっとあきら似の35歳・・・営業成績トップだからって、少しナナメに顔を傾けた偉そうな態度はなんなんだ?!
こいつの補佐を全面的につくしがするってだけでも鬱陶しいのに、笹本と違うのは遠慮がない!って事だ。花沢家の一員になったつくしなのに、しかも妊婦なのに大量な仕事をさせてる張本人。

すごく・・・ムカつく。顔には出さないけど。


「おはようございます、専務。奥様も子供じゃないんですからデスクまでの送り届けもそろそろお考えになったら如何ですか?」
「・・・俺の勝手でしょ。妊婦に対して適切な仕事量と環境なのかを自分の目で確かめてるだけだ」

「問題ないですよ。規定通りの休憩もありますし、彼女には一切残業はなし。ここは禁煙ルームでもありますし、すぐ近くにはフリードリンクもある。荷物を運ぶような作業もないし、花沢さんは基本デスクワークです。むしろ少しは動きたいってご本人が言うぐらいですよ?」
「・・・職場環境が整っていても精神的にストレスが溜まる場合もあるからね。特に一緒に仕事をする人間次第でね」

「・・・私の事ですか?」
「他に誰がいる?」

「私がストレスを与えてるとでも?」
「必要以上に近づくとそれだけでストレスらしいよ」

「業務でしょ。私は上司です」
「俺は夫だから」

「現在勤務時間中ですよ?」
「夫は24時間体制だからね」



「もういいですか?専務、上に行きましょ!」

超冷静な藤本に背中を引っ張られ、後ろ向きで海外事業部を出た。






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2019/04/28 (Sun) 07:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは♡

お気遣いありがとうございます。
きょうは流石に上着を着ました・・・寒いです💦
風邪は引かなかったですが、きょうは広い会場で仕事してるので、廊下がひんやりしてます。

もうすぐ雨が降りそう・・・。
昔アキレス腱を切ってるので、雨の日には右足が痛みます💦15年ぐらい経つんだけどなぁ・・・。


そうそう!今度は江本さんです!(笑)
あきら似の課長さん(笑)類君のイライラの元ですね!

笹本さんも出てきますので待っててください♡また楽しい「給食タイム」が見られるかも?

2019/04/28 (Sun) 14:56 | EDIT | REPLY |   

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