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plumeria

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「春ちゃーん!休憩しましょう!」
「はーーい!」

施設内の温室で花殻摘みをしていた時に、スタッフさんから声を掛けられて手を止めた。
今日は小雨だから外の水やりは無し。温室内で1日作業だから雨とはいえムシムシして汗が凄い!首に掛けたタオルで額を拭きながら休憩室に戻って、そこで15分程ゆっくりする事にした。

ふと鞄を見たらスマホが光ってる・・・誰かからの電話かメール?
と言っても、美作さんか小夜さんしかいないからスマホの画面を開いて確認した。

「あれ?こんな時間に美作さんからだ。仁美さんじゃなくて?紫音たちに何かあったのかしら・・・それとも別の用件?」


掛かってきたのは午後2時15分・・・もう45分も経ってる。

人が居るところでは掛けにくいから、席を立って誰も居ない廊下に出て、そこでリダイヤルを押した。
この時間は仕事中だから本当は掛けないようにしてるんだけど、不在着信だもん・・・いいよね?って思いながら彼が電話に出るのを待った。

でも、熱ぐらいならいつも事後報告・・・事故とかじゃないよね?
だって仁美さんだもん。絶対に目を離さないし、危ない事なんて・・・いや、お転婆な花音が何処かから落ちて大怪我とか?
コールの間に色んなことを考えてドキドキする。まさか迷子?私の血が入ってるからなぁ・・・なんて。

十数回も鳴らしてやっと出てくれた美作さんは低めの小さな声。

『もしもし・・・どうした?』
「え?どうしたって・・・それ、私の台詞だけど?」

私のドキドキとは裏腹に落ち着いた美作さんの声に逆に拍子抜けした。

『は?どう言う意味だ?』
「だって美作さんが電話くれたんでしょ?少し時間が経ってるけど、双子に何かあった?2時15分に着信があるんだけど?」

『・・・・・・いや、何もない。あ、もしかしたら間違ってこの番号、押したのかもしれないな。仁美に用があって掛けたから』
「そうなの?うん、判った。何もなかったのならいいの。ごめんね、仕事中に」


・・・一瞬、美作さんが言葉を止めたのは何だったんだろう。
その後の言葉も何故か不自然に聞こえたような・・・?だけど、双子に何かが起きたとか、病気をしたとかじゃないのなら気にしなくてもいいのかな?

私も休憩時間が終わってしまうから、この後すぐに電話は切った。
お茶の一杯も飲めなかったなぁって、またタオルを首に掛けて温室に戻った。



******************

<sideあきら>

仕事中に個人用のスマホが鳴る時は屋敷からと小夜からが殆どで、牧野から掛かってきたことはなかった。なのに総二郎が帰って暫くして鳴った電話に表示されたのは「田中 春」・・・牧野の研究所での偽名だった。

このタイミングで牧野から掛かることに驚いて、この前の屋敷でのニアミスを思いだしてドキッとした。

今はすぐ近くに秘書が居る。
牧野という名前は出さないように電話に出て、その内容にもう1度驚いた。


2時15分にこのスマホから電話が掛かった?

牧野には間違い電話だと言って通話は終わらせたが、その後すぐに通話履歴を確認したら、確かに2時15分にこのスマホから発信していた。
俺には身に覚えがないし、今は掛ける理由がない・・・そもそもこの部屋からは殆ど掛けたことはない。


じゃあ、どうして?

その時間はまだここに総二郎が居た。

俺は何をしていた?・・・あぁ、秘書に呼ばれて情報管理室に行ったんだ。
コンピューターウィルスに感染した可能性があるなんて言い出すから、総二郎をここに残して急いで向かって・・・結局、問題は起きてなかったからすぐに戻ったら、あいつが帰るって言い出して・・・。

そうだ、この時間、総二郎だけがここに居たはずだ。
スマホはどうしていた?

総二郎に聞かれたから過去のメールを見るためにデスクから持ってきて、テーブルに置いていた。

でも、万が一の事を考えて登録は「田中 春」だ。牧野じゃない・・・それなのに総二郎が掛ける訳はないよな?
それにあいつが俺のスマホを勝手に触るなんて考えられない。何かで使いたいなら必ず俺が戻ってから聞くはずだ。


でも・・・誰かが押さないと牧野に電話は掛からない。


これを総二郎に聞く訳にもいかない。
「田中 春」の存在は、牧野の心が変わらない限り総二郎に教えることは出来ない。社の女性だと言ってもいいが、何故個人用スマホに登録しているかなんて聞かれてどう答える?

もし総二郎が通話を押したのなら画面に双子が表示された・・・?
紫音と花音の画像はフォルダ分けして、アルバム内でロックを掛けているからパスワードを入れないと見ることは出来ない。
唯一ここに画像を貼り付けたんだが迂闊だったか・・・。


この前の事といい、今回の事といい・・・もう限界かもしれない。
このままだといつか必ず2人は出会ってしまう、そう思わずにはいられなかった。



**



「パパァ!おかえりなちゃい!」
「あっ!かのんだけずるい~!」

取引先と夕食を済ませて少し遅くに帰宅したら、俺に向かって飛びついて来る双子。
先に走ってきた花音を抱き上げたら紫音が悔しそうに足元で怒ってる。もうそんな光景にも慣れて、むしろこれがないと落ち着かないぐらいになっていた。
出迎えに来た使用人にビジネスバッグを手渡して、すぐに紫音も抱っこするけど、流石に2人は重い・・・!

「もうそろそろ抱っこは止めないか?パパも疲れて帰ってくるんだからさ」
「やだぁ!抱っこがいい~!」
「かのんが抱っこならぼくも~!」

「・・・困った子達だな。甘やかし過ぎたかな?それにもう寝る時間だろ?」
「「そんなことな~~い!」」


2人を抱きかかえたままリビングに行くとお袋が待っていた。ただ、いつも居る仁美の姿がない・・・どうしたのかと思って周りを見ていたらお袋が「仁美さんならお部屋よ」と教えてくれた。

「部屋に居るんだ?子供達がここに居るし、俺が帰る時間に部屋って・・・具合悪いのか?」

「ううん、そんな事はないと思うけど?夕食だってみんなで普通に食べたもの。ただ、最近少し元気がないみたいなの。あなた達、何かあったの?」

「・・・は?俺達に?」


双子はここで降ろしたらすぐに自分たちのおもちゃで遊びだし、それをお袋が楽しそうに見ていた。
顔は子供に向けたまま・・・言いにくそうに出した言葉は「淋しいんじゃないかしら?」だった。

「淋しいってどういう事だよ」

「・・・だからね?あきら君も仁美さんも最近ずっとこの子達に構ってばかりでしょ?2人になんかならないじゃない。だから淋しいのかなって思ったの」

「・・・はぁ、そういう意味?馬鹿馬鹿しいな・・・この歳の息子夫婦の心配なんかしなくていいって」

「うん、そうは思うんだけど仁美さんもまだ若いんだもん。旦那様との時間も欲しいんだと思うのよ。だから今日はこの子達、私が預かろうかなって思うんだけど・・・どう?」

「・・・好きにすれば?それが目的だろ、お袋」


お袋の提案通り、今日は紫音と花音を預かってもらい、俺達は久しぶりに2人だけ。
まぁ、それもいいかなと思いながら自分たちの部屋に戻ると、仁美がぼんやり窓の外を見ていた。その姿はあの子達が来る前に似てる・・・まさか、また鬱の症状が出たのかと不安になった。

「あ・・・お帰りなさい、あきらさん。お出迎えもせずにごめんなさい」
「あぁ、そんな事はいいよ。具合、悪いのか?」

「いいえ、そんな事はないわ。少し天気が悪いから気分が塞いじゃったの・・・それに子供の声が頭に響いちゃって・・・」
「・・・そうか。悪いな、昼間は任せっきりだから。助かってるよ、仁美」


お袋の言ったように顔色が優れないようだ。
それも天気のせいならいいが・・・。

仁美の傍に行って肩に手を置くと、そっと自分の顔を近づけて腕に寄り掛かってきた。

その仕草を見る限り、お袋の言葉は当たってるのかもしれない。仁美が父親の俺ではなく、男としての俺に甘えてるのかと・・・それが凄く可愛らしかった。


「今日は双子をお袋が見てくれるそうだからここには来ないってさ。久しぶりに2人だ・・・ワインでも飲むか?」
「・・・本当?あきらさんと2人・・・うふふ、本当に久しぶりね」

「あぁ、今日は母親でも父親でもないってわけ。たまにはこんな時間を持とうな」
「えぇ、嬉しいわ」


この日、仁美とワインを飲んで色んな話をし、バスルームも一緒だった。
その後は久しぶりに激しく仁美を抱いた。

いや、俺が激しくと言うよりは仁美が求めてくるんだ・・・今までにないぐらい。
彼女を抱き締めながらこの変化に戸惑った。何がこんなに仁美を情熱的にしてるんだろうかと・・・。


「あきらさん、愛してる」・・・繰り返されるこの言葉に、何故か強い不安を感じた。





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