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plumeria

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<sideあきら>

少し強引に牧野を家族旅行に誘って、双子との思い出作りをさせてやろうと思った。
子供達に会うようになった初めの頃はそれが逆に辛いんじゃないのかと心配したけど、会えばそれなりに嬉しそうに笑ってる。それでも美作や仁美に遠慮してるのが判るから、思い切って旅行という形を取った。


自分からは一緒に写真を撮ろうともしない。
隣にも座ろうとしない。あくまでも父親の友人の「つくしちゃん」・・・その距離を縮めようなんてしなかった。

だけど温室で見た時の3人の寝顔。
牧野の本心を見てしまったようで胸が痛んだ。

美作で育つことは牧野からの申し出だったとしてもだ。今でも本当は傍にいて、その手を握っていたい・・・母親として当たり前の感情を改めて感じてしまったから。


夕方近く、さっきまで紫音と砂遊びをしていたのに今度は小夜も一緒になって砂浜で貝拾い。
牧野が嬉しそうな顔して花音の持ってるカゴに拾った貝を入れるのをコテージの窓から見ていた。妹達は日差しが落ち着いてもパラソルの下で日焼け止めを塗りまくってる。今から海で泳ぐ気なのか、髪の毛を纏めたりと忙しそうだった。

そして仁美は部屋に戻っていて、お袋や親父と雑談中・・・そんな時に俺のスマホが鳴った。


その電話は総二郎だった。



俺が数回鳴ってる電話を見てるのに出ようとしないから仁美がそれに気がついた。
同時にお袋も親父も・・・みんなに「総二郎だ」と告げて席を立ち、奥の部屋でその電話をとった。

「・・・どうした?」
『・・・あきら?今、忙しかったのか?』

「いや、そうじゃない。少し書類に目を通していたから・・・でも、大丈夫だ。何かあったのか?」


総二郎の声はいつもより随分沈んでいるように感じた。覇気がないと言うか、投げ遣りというか・・・兎に角まったく力を感じなかった。
外では子供達の笑い声がする。これを聞かれちゃ不味いような気がして、もっと奥の部屋に移動した。


『・・・11月だってよ』
「は?何が?」

『・・・俺、11月に結婚すんだってさ』
「・・・・・・え?」

『初盆で京都に行ったんだけどな・・・その時、親父がそう決めやがった。俺の結婚は11月・・・これは決定事項だとさ』

「・・・本当に決まったのか?」

その後の返事はなかった。
暫く溜息のような音だけが聞こえてるだけ・・・総二郎はなにも言わなくなった。でも、俺もそれについて聞き出すことが出来ない・・・西門にしたら充分過ぎるほど待った筈だから。

婚約期間の3年なんて普通は有り得ない。
それもこれも牧野を探すため・・・それなのに総てを知ってる俺は、総二郎を苦しみから救ってやるどころか騙してるんだ。それを考えると違う意味で身体が震えた。

この部屋に居ても遠くで紫音を呼ぶ牧野の声が聞こえる・・・この電話の向こうにはあの声を求めて止まない男が居るのに。


『あぁ・・・ごめん、あきら。お前に言ってもどうしようもねぇって判ってるから、1つ頼み事だけしていいか?』

「・・・あぁ、何だ?」

『今更報道発表はしねぇらしいが、どうせそのうち判るからさ・・・彼奴らに連絡しといてくれよ。で、その事での苦情なら受け付けねぇから電話すんなって・・・そう言っといてくれ』

「・・・判った。で・・・総二郎はそれを承知したんだな?」

『承知・・・ねぇ。そんなもん、しねぇけど?』

「え?じゃあどうするんだ?まさか、また家を捨てるとかで揉め事起こす気なのか?」

『・・・大きな声出すなよ、耳が痛ぇ・・・。俺は茶道は捨てねぇって決めたんだ。だから西門は守る・・・でも、籍を入れても紫の事は受け入れねぇ。牧野の事は探し続ける、一生掛けてもな』

「・・・総二郎」


電話はあいつから一方的に切られた。

お袋達の所に戻ったら3人が心配そうに俺の事を見てる。
窓から外を見たらまだ4人は砂浜ではしゃいでいて、暫く戻って来そうになかったから総二郎が言ったことを伝えた。

親父は無言だったがお袋は動揺していた。
仁美も眉を顰めて砂浜で遊ぶ牧野の事を見た。


「・・・いつかはこの日が来るって思っていたけど。そうなの・・・今度の11月なのね」
「ふむ。まぁ、西門家の事に口出しは出来ないが可哀想だと思うよ。愛情が持てない結婚に意味があるとは思えないからな」

「そうなのよ!もうっ・・・!!どうしてそんな簡単な事が判らないのかしら、お家元も美和子さんも!」
「夢子、お前が苛立ってどうする。つくしちゃんの前で出てしまうからやめなさい」

「・・・だって!あんまりだわ・・・」

感情的になったお袋は両手で顔を覆った。
親父がその背中を摩りながら何か声を掛けている・・・俺はなにも考えられない頭でその姿を見ていた。


「でも、その時はつくしさんにも判ってしまうわね」

仁美が窓の外を見ながらそう言った。


西門の・・・総二郎の結婚なら事前の発表がなくてもマスコミが放っておくはずがない。
そして西門にしてみれば婚約会見から3年以上経ってるからその時は報道したいだろう・・・そうなったらあらゆるメデイアであいつの結婚は流される。
テレビじゃなくてもスマホを持ってれば間違いなくリアルタイムで知る事になる。


その時俺に出来ることは牧野を1人にしない事、それだけだろうと思った。




*****************




「ちゅくちちゃん、これ、きれいね~!」
「ん?どれ?あぁ、桜貝ね。うん、綺麗だね」

「あっ!これ、ちょっとだけ色がちがう~!みて?」
「うん、ここが少し紫色だね。あっ、ここにもあったよ?花音ちゃん」
「ここに入れて、ちゅくちちゃん!」


小さな手の平に桜貝を並べていく・・・それを何度も指で撫でで砂を落とし、カゴに入れていく。
そんな仕草が可愛くて、おでこがくっつくぐらい近づいて貝殻を探した。でも、私の目は貝殻なんて探さずに花音の顔に向かってる。

まだ3歳なのにそっくり・・・切れ長の目で、黒い瞳・・・ちょっとだけ目尻が上がってるところ。
睫もバサバサでスッとした鼻筋が本当によく似てる。
大きくなったらもっと似るのかしら・・・出来たらお父さんみたいに色気なんて出さずに、好きな人は1人だけにしてよ?なんて心の中で思ったりして。

「これ、パパに見せてくる~!」
「そうなの?うん、見せておいで」

「あい!パパァ~!!」


花音がパパって叫んだら美作さんがコテージから顔を出す。
私はそれを見ながら立ち上がり、自分の服についた砂を払うフリして海の方に顔を向けた。


赤くなった目は誰にも見せたくなかったから。


**


夕食は浜辺でバーベキューだった。
おば様と仁美さんは紫音と花音が火傷しないように抱っこして、私と小夜さんと美作さんでお肉や野菜、魚貝類を焼いていく。双子ちゃん達は髪に匂いがつくとか、お肉は太るとかって年頃の女の子発言して室内で別メニューを食べていた。


「つくしちゃん、これなぁに?」
「うふふ、居酒屋さんだと定番ですけど、おば様は作らないかもしれないですねぇ!」

おば様が聞いてきたのはアルミホイルに包んで焼いてるジャガイモ。
軽く下ゆでしてからアルミホイルに入れて、真ん中にバターをおいて網に置くと子供にも食べやすくなるからって小夜さんと急いで作ったものだった。
それに薄く切ったフランスパンにチーズを乗せて軽く焼いたら、お腹を空かせた子供達もすぐに食べられる。

「熱いから気をつけてね」って声を掛けると「あーい!」と可愛い返事。
おば様と仁美さんが上手に食べさせてくれるから、焼けたものをどんどんお皿に移していった。

美作さんとおじ様はワインを飲みながら仕事の会話なんてしてる。
小夜さんが時々美作さんを見て赤くなってる・・・それを肘で小突くとハッ!としたように素に戻るのが面白かった。

「ちゅくちちゃん、お代わり~!」
「あら!紫音君、お腹壊さない?大丈夫?」

「だっておいしいもん!」
「・・・そうなの?はいはい、お皿出して?」
「あい!」

焼きおにぎりを紫音のお皿に乗せたら嬉しそうにフォークで食べ始めた。口を大きく開けてハフハフいいながら、口の横にご飯粒くっつけておば様に注意されてる。
花音はパンの方がいいみたい。仁美さんに小さく切ってもらいながらまだ食べてる。

健康なんだなって・・・生まれた時の小さな身体を思いだして嬉しくなった。



「あらら、寝ちゃったわ」
「疲れたんでしょうね、海にも入って大はしゃぎだったから」

おば様と仁美さんの腕の中でぐっすり寝てしまった双子・・・部屋につれて行くって言われたから、その寝顔に「おやすみ・・・」って小さく声を掛けた。



見上げたら満天の星空。

双子との思い出がまた1つ増えた・・・ちょっぴり切ないけど来て良かった、素直にそう思った。




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<お詫び>

本日2話更新です。(11時に更新しています)
先にこちらを読まれた方がいたらごめんなさい💦
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