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どうして「相変わらず」だなんて言うんだろう、花沢類。
まるで「華」と昔からの知り合いみたいじゃない・・・そんなの、凄く困るんだけど!
ジロッと睨むんだけどニコッと笑うだけで効果無いし、逆に怒ったら「牧野つくし」だって言ってるみたいなもんだし。

それに坂本さんも花沢類と会うのは初めてなのにどうしてこんなに怖い顔してるの?
この人がここまで不機嫌な顔するのは初めて見るかもしれない。彼がカウンターに座ったからなのかしら・・・この狭いカウンターに他の人と座ったことはないから。それが気に入らなくて拗ねてるのかな・・・?

向かい合わせだけど2人の間に立って、どっちを見ていいんだか判らなくて俯いていたら、急に坂本さんが私に話しかけた。


「ねぇ、華さん。今度の日曜日、デートしない?」
「・・・はい?」

「ここ休みでしょ?気分転換にさ、1度明るい時に他の場所で会わない?」
「いや、そんなの困ります!あの・・・だって」

「困らないでしょ?俺も華さんも独身だし、この前の続きも話したいし・・・」
「あぁっ!坂本さん、その話はまだ・・・!」


「・・・その話?華さん、この人と何か話してるんだ?」


急にデートの誘いだなんて坂本さんが言いだして、それを聞いた花沢類は表情も変えずにボソッと呟いた。
私は慌ててグラスを片付けるために背中を向け、彼の質問は聞こえなかったフリをした。

ヤバい・・・動揺し過ぎだ。
独身だとか、あの話だとか言う言葉に反応してこんなに顔に出すなんて、如何にも坂本さんと特別な関係だって思わせてるんじゃないの?
坂本さんも何故急に言い出すの?今まで何にも言わなかったのに・・・!

今、花沢類と坂本さんがどんな顔して座ってるのか判らないけど、凄く見られてる気がする。
背中がゾクッとして振り向くのが怖い。でも、もう手元に片付けるグラスさえなくなって、空いた手を自分で握り締めていた。


「華ちゃん!ごめん、ちょっと頼んでいいかな?」

マスターの声がテーブル席から聞こえてきて、空になったアイスペールを振られた。
丁度良かった・・・急いで氷の準備をしてテーブルに持って行き、そこの人達の注文を聞いたり空いたグラスを集めたり・・・その間も坂本さんへの返事で頭の中はこんがらがっていた。

花沢類の前で「行きます」って言ってもいいの?
その方が私の事なんて諦めて、もうここには来なくなるかもしれない・・・その方が彼のため?
いや、そもそもまだ「華」のまま、彼には何も言ってないもん。関係ないんじゃ無いの?

でも、行くって言ったら今度は坂本さんが勘違いするかもしれない。
この前の話の続き・・・それなら返事は決まってるけど、誘いを受けて断わるだなんて酷いよね・・・?


トレイにグラスを沢山乗せてカウンターに戻って来たら、坂本さんはグラスに手を掛けたまま怖い顔してて、花沢類は片肘ついて私を見るとニコッとした。
その笑顔にドキッとした瞬間・・・ガシャーン!と大きな音を立てて、見事にグラスは私の足元で粉々に!

店内のみんなが一瞬シーンとして、慌てて「ごめんなさいっ!」って叫んだら、次の瞬間には爆笑された。
「ホントにドジだよね!華ちゃん」、テーブル席の常連さんがそんな事言ってるけど笑えない・・・急いで割れたグラスを拾おうとしたら、その中の尖った硝子で指を切った!

「痛・・・っ!」

「華さん、切ったの?」ってすぐに心配そうな声をかけてきたのが坂本さん。花沢類は何も言わずに指を押さえる私を見て、サッとハンカチを出してきた。真っ白い・・・綺麗なハンカチ。

「あ、えぇ・・・でも、大丈夫です。絆創膏持ってるから」
「それを貼るまでに時間が掛かるでしょ?水で洗ってこれで押さえときな」

「でも・・・」
「そう言ってる間に血が服に付くから。ほら、早く」

それを受け取って軽く頭を下げ、奥の控え室に飛び込んだ。


心臓がドキドキしてる・・・指に当てて血が付いちゃったハンカチだけど、それを口元まで持ってきて微かに香る花沢類のフレグランスに酔っちゃう・・・。
坂本さんへの返事に迷ってるのに、なんて正直なんだろう・・・私の心。


でも、戻れないんだよね。
もう、あの頃には戻れない・・・そのぐらい私はあいつに酷い事をしたんだから。

よし・・・「華」に戻らなきゃ。
迷ってないで・・・私は「華」だよ。牧野つくしはここには居ない。

傷口に絆創膏を貼って、1度大きく深呼吸・・・それをふぅーっ!と吐き出してから店の中に戻った。




「花沢さん、これ、汚しちゃったから洗って返します。またいつか・・・来ることあるでしょ?」
「そんなのどうでもいい。指は?深く切ってない?」

「えぇ、このぐらい大丈夫!怪我したって治りは早い方なのよ。ほら、捻挫もすぐに治ったでしょう?」
「・・・ん、でも小さな傷だからって甘くみちゃダメ。そこから黴菌が入って取り返し付かなくなることあるんだから」

「・・・心配性なんですね。でも、ありがとう・・・」

一生懸命乾いた笑顔で答えていたら、それを横から見ていた坂本さんが怒ったように睨んでる。ううん、睨んでるのは目の前のグラスだけど、ぶつけたいのは彼に向かってだろうってすぐに判った。


「坂本さん、さっきはごめんなさい。えっと・・・今度の日曜の話ね?」

今度は花沢類が瞬間眉を顰める。
それも判ったけど、胸が痛むのを我慢して笑顔を坂本さんに向けた。


『ごめんね、花沢類・・・。ここまで来てくれてるのにごめんね・・・』

何度も心の中で叫んだ言葉。
喉の真ん中が熱くて痛くて、カウンターの中で見えないようにしてるけどギュッと拳を作っていた。


「華さん、付き合ってくれるの?」
「え、えぇ、少しなら大丈夫。午前中は忙しいの、色々と掃除したいから。午後からなら・・・」

「本当に?うん、午後からでも!でも一緒に食事しよう?それはいい?」
「・・・えぇ、喜んで。楽しみにしてます」

坂本さんがわざと嬉しそうに大きな声出してる。多分マスターも聞いてる・・・ほんの少し私に顔を向けたから。
それにも気が付かないフリをして機嫌の良くなった坂本さんの前に立っていた。

花沢類は特に怒ったような素振りはない・・・表情も変えずにグラスを持ったままだった。


「じゃあさ、スマホの番号教えてくれる?連絡先、知らないと困るから」
「え?そ、それはごめんなさい、誰にも教えてないから許して?待ち合わせって事ですよね?」

「うん、何処で何時にって言わないと会えないでしょ?」
「・・・それじゃ、この店を出たところの大通りでお昼の12時ってどうかしら。それからならご飯も食べられるでしょ?」


それからも何度も電話番号を聞きたがるけど、それは教えなかった。

暫くそんな会話をしていたらテーブル席からおつまみの注文が入り、私は花沢類と坂本さんに断わりを入れて奥に入った。そして出てきた時には花沢類が居なかった。
ハッと上着を掛けていたところを見ると彼のものが無い・・・入り口に顔を向けたら坂本さんが教えてくれた。


「彼ならさっき帰ったよ。何だかご機嫌が悪くなっちゃったみたいだね」

「・・・そうですか」


もしかしたら本当にもう来ないのかもしれない。
そう思うと心の中の火が消えたみたい・・・泣きたいけど泣けない、涙まで「牧野つくし」と一緒に何処かに隠れた気がした。




*********************




『・・・えぇ、喜んで。楽しみにしてます』

馬鹿だよね・・・全然喜んでないのにそんな返事して。
あんたの仕草を見たら全部判るのに・・・すぐに俯いてしまうのも、慌ててドジな事するのも、頑張って華になりきった台詞も・・・密かに握り締めていた手だって俺には全部伝わるんだって。


そしてあんたは何も判ってない・・・俺がこのぐらいのことで諦めると思ってる?

もし、そうだとしたら教えてあげる。今の俺は諦めの悪い男だってこと。
あんたの笑顔を見るだけで良かったあの頃とは違う・・・あんたの笑顔を守る側になったんだ。

だから今日は先に消えてあげる。
俺が居たらあんたはもっと嘘をつきそうだったから、それを見ないでおいてあげる・・・。



牧野が奥に引っ込んだと同時にマスターにだけ目配せして俺は店を出た。
そして薄暗い道をタクシーが走ってる大通りまで向かっていた時、後ろで誰かが動く気配を感じた。

「誰だ!」

そう叫んで振り返ったら、確かにこの暗闇で何者かが姿を隠したのが判った。瞬間動いた影・・・でも、それは細い道と何処かで点滅するネオンに消された。

はっきりしなかったが少なくとも2人は居た。意図的に隠れるって事は俺を監視してるのか・・・それとも気のせいか?
暫く動かずに様子を伺っていたけど、何も動かず不審な音もしない。この通りじゃない所から聞こえてくる意味不明な言葉や、ビルの隙間を渡る風の音だけ。

でも・・・誰かが俺を見てる。


また向きを変え歩き出した時、やはりそいつらも動き出したようだ。
背後から来るその気配を警戒しながら表通りまで行き、タクシーに乗り込んだが、そいつが追ってくる事はなかった。

ただの物盗りならいいが、そうじゃなかったら考えられるのは1つしかない。


まさか・・・そうなのか?





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2019/03/28 (Thu) 06:51 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/28 (Thu) 11:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
本当にねぇ💦困ったつくしちゃんです。

これは相当気持ちを解すのに時間が掛かりそう・・・?
でも、類君は負けないのです!!

こうなったら形振り構わず(笑)突進して行くのです~♥

さて・・・誰がつけているのでしょう?

2019/03/28 (Thu) 22:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あっはは!それねぇ、迷ったんですよ(笑)
真っ白か、グレーのチェックか?って。

その結果真っ白にしてしまいました。そうかぁ!王子様の持ち物かぁ(笑)
じゃあ総ちゃんは殿様だから真っ白じゃないんだ!

総ちゃんのハンカチって何だろう・・・紫・・・いや、それはいかん!!(笑)


類君、これからどうするか・・・暴走するのか?それとも忍者になるのか?それとも掻っ攫って逃げるか!!
何にしても頑張れ、類君っ!!(笑)

2019/03/28 (Thu) 22:58 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/29 (Fri) 11:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

えぇっ!!もう書けないって!(笑)

・・・・・・そう言いながらちょっとタイトル考えてみたりして。

つくしちゃんがオーナーで、2人がホスト。
色んな人が飲みに来るのよ・・・老若男女問わず・・・。

お店の名前を考えてください(笑)

2019/03/29 (Fri) 22:17 | EDIT | REPLY |   

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