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坂本さんと約束した日曜日・・・朝、早くに起きたけど動けなかった。
いつもならもうとっくに起きてる時間で掃除したり洗濯したりって忙しいのに、この後の事を考えると憂鬱・・・目は開いてるのにお布団から出られなかった。

「ピピ!・・・ピピ」


それでもハクの鳴き声を聞いたら寝てばかりもいられない。
暫くしたらベッドから降りてハクと目を合わせた。

「おはよ・・・ごめんね。日曜なのに遅くなって。って、あんたには日曜も月曜も判んないか・・・」
「ピピピ、ピピ!」

「くすっ・・・うん、餌を替えようね」

ハクに新しい餌を入れてやって水も替えてあげた。自分にも珈琲を淹れて今日は簡単にパンだけ・・・お昼ご飯は坂本さんと食べなきゃいけないから・・・そう考えるとドキドキするけど、取り敢えず作らなくていいんだと思えば楽なのかな。
晩ご飯は何か買って帰ろう・・・まさか、夜まで一緒って事はないだろうから。

それにあの話になったら断わらなきゃ・・・こんなデートの誘いは受けても、あの返事はNOだなんて酷いとは思うけど。


重たい気分を引き摺りながら掃除機を掛けてお洗濯。いつものようにシーツも洗って、家事を始めたら調子が戻ってガンガン動き始めた。
そして狭い部屋の片付けなんてあっという間に終わって11時になり、仕方なく出掛ける準備をした。

今日はお洒落なんてしない。
お化粧はするけどジーンズとセーターなんて色気のない格好にしようと思っていた。その方が坂本さんに変な期待を持たせずにすむはずだし、こんな格好の女だったら甘い雰囲気になんてならないだろう。
食事だって何処に行くのか知らないけど、一流のお店には入れない。ファミレスぐらいが丁度いいと思うぐらいラフな格好にした。

アクセサリーだって何もつけない。
今時の高校生の方が余程お洒落だろうなって鏡を覗き込んで溜息をついた。

「こんなの見たらなんて言うかしら。呆れて帰ってくれたらいいのに・・・坂本さん、スーツだったら吃驚だわ」


もう出ないといけない時間になって玄関に向かった。
久しぶりにスニーカーを下駄箱から出して履いてみたら、ホントに子供みたい。それなのにいつものようにサングラスをかけてドアを開けた。

時計を見たら11時30分。約束の時間には十分間に合う。
何年ぶりかの買い物以外のお出掛け・・・誰にも見付かりませんようにと願いながら鍵を締めた。



バスに揺られて藍微塵近くまで行ったけど、そこに坂本さんの姿が無い。
夜の格好と違うけど判るよね・・・と、サングラスを外して通りを眺めていたら、1台の黒い普通車が目の前に停まった。

坂本さんの車なんてどんなのか知らないから、つい身構えてビクッとしたら、助手席の窓が開いてそこから覗き込むように坂本さんが顔を出した。

「ここ駐禁だから早く乗って?」
「えっ?!あ、あぁ、はい!」

急かされるままに車に飛び乗ってドアを閉めた。

綺麗にしてる車内に、よく判らないけど小さな音で洋楽がかかってる。強めの香りもなくて乗り心地の良いシート。
そして運転席を見たら、そこには私と同じようなカジュアルな服装の坂本さんが居た。それに驚いてポカンとしてたけど、彼はすぐにこの場所から移動した。

お洒落してくると思ったのに、まさか私と話を合わせてもないのにジーンズにセーターだなんて。

驚く私とは反対に坂本さんは嬉しそう。
ハンドル握りながら口元が笑っててご機嫌だった。


「良かった。華さんがドレスみたいな服着て来たらどうしようかと思った」
「え?そんなもの持ってないですもん。それに休日だし・・・坂本さんこそスーツで来るかと思いました」

「俺がスーツだと思ったのに華さんはそれで来たの?」
「は?あっ・・・いや、そう言う訳でもないんですけど」

「くすっ、どっちでもいいや。結果として似た感じなんだから嬉しいよ。さて・・・何処に行こうか?希望ある?」
「出来るだけ静かな所で・・・あっ、でも待って!」


人の少ない静かな所って言おうと思ったけど、それって如何にも誘ってるよね・・・?それよりは人が多くて二人っきりにならない所がいいんじゃない?
もし、それで知ってる誰かに会っても隣に居るのはあの人達じゃない・・・家からも離れてるし、誰も坂本さんを知らないから声も掛けてこないかも。

僅かな時間にあれこれ考えてるうちに、車はどんどん海の方に向かっていた。


「あ、あれ?何処に行くんですか?」
「まずは食事かな。その後、賑やかな所でいいなら俺に付き合ってくれない?」

「は、はい。でも・・・何処に?」
「少し子供っぽいけどね・・・今日の華さんなら一緒に行ってくれそうだから」




********************




「類様、牧野様がいらっしゃいました」
「そう・・・あいつは?」

「坂本という男ですか?いえ、まだ誰も・・・牧野様は1人で道路脇に立っておられます」
「判った。そのままバレないように見てて」


牧野が坂本と待ち合わせした場所がほんの少し見える場所、そこに花沢の車を停めて運転席の男に見張らせていた。
俺はスモークガラスで見えない後部座席に寝転んで2人が動くのを待つ・・・あまり気分のいいやり方ではなかったけど、万が一牧野に何かあったらと思うと見過ごす事は出来なかった。

「しかし類様、牧野様の後を付けてバレませんか?その・・・類様、目立つと思うんですけど」
「・・・サングラス持ってるけど」

「・・・それだけでバレなかったらいいですねぇ。あっ、車が来ました。牧野様の前で・・・停まりました」


運転手の言葉で身体を起こしてみたら、昔みたいにカジュアルな格好した牧野が車に乗り込むところだった。
ジーンズにセーター・・・そんな格好で安心した。凄く可愛くお洒落してたらどうしようって思ったから。

「少し車間距離をあけて尾行します」
「ん、頼む」


あの密室の中で牧野と坂本が2人きり・・・そう考えただけで凄くムカつく。

坂本の車は暫く走ったら道沿いにあったファミレスに入った。
うちの車もその駐車場に入り、坂本の車から離れて1番端に停め、2人が車から出てくるのを待った。


車から出てきた2人の格好・・・まるで話し合ったかのようなコーディネートでよく似てる。

こうしてみたら恋人に見えない事もない・・・。
まさかね・・・と、遠目で睨みながら生まれてくる嫉妬心を顔に出さないように抑え込んだ。やっぱり坂本が差し出した手を牧野が取ることはない・・・すぐにホッとする自分が情けない気もした。


その時、黒い外車が駐車場には入らずに少し離れた所に停まっているのが見えた。どう見ても不自然な位置、場所的に不似合いな外車・・・人が乗ったままであることは確認出来た。

「あそこの黒い車・・・いつ停まったか見てた?」
「はい?あの前方の車ですか?我々の車がここに停まって少し経ってからですね。何かありましたか?」

「いや、あんな所に不自然じゃない?」
「確かにそうですね。停めてある場所の前には店なんてありませんし」

「この車の後ろを付けてたかどうかは?」
「申し訳ありません。そこまでは確認しておりませんでした。牧野様の車を追っておりましたので」

「・・・うん、だよね」


何だろう・・・その車が凄く気になった。

先日の得体の知れない人影の事もある・・・まさか本当に俺の後を付けてくる奴がいるのか?もし、いるとしても花沢物産後継者としての俺を狙ってるのか、それとも個人として付けられているのかも判らない。

仕事上のトラブルでは何も思い当たる事はない。俺は日本に戻ってまだ数週間で関わった仕事そのものがないし、フランスでも揉めたままの案件はない・・・総て片付けて帰国したはずだ。

個人として何かを探られてるとしたら・・・?


だが数分後、その黒い車はその場から走り去った。
牧野達が店内から出てきたのはそれから40分後、再び坂本の車を追って俺達も走りだした。



坂本の車は首都都心環状線からレインボーブリッジに入り、そのまま首都湾岸線へ向かっている。

「・・・何処に行くんだろう?」
「このまま行けばあのテーマパークじゃないでしょうか。その方面に向かって進んでるようですが」

「テーマパーク?もしかして浦安の?」
「はい、おそらく」


名前を変えて暮らしてるのにそんな人混みへ・・・?
いや、逆に隠してるから人混みを選んだんだろうか。

少しばかりの不安を胸に抱えながら、あいつの車を睨みつけていた。




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2019/03/29 (Fri) 07:24 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/29 (Fri) 12:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうなんです~(笑)
今度は類君がストーカーしてるんです💦

いやいや、本人は守りたいだけですけどね(笑)
でもよく考えたら怖いですよねぇ~・・・アパートも実は知ってるし。

類君、捕まらないようにしないとね・・・ははは!


そうそう!でも今回は「海」です♥

3年前の社内旅行がここでした。
私はいかなかったけど、若い子がすっごく楽しみにしていたのに東京のホテルで38度の熱を出して遊べなくて、同僚の子達も遠慮してホテルに残ったって話がありました(笑)

あの時はみんな落ち込んでましたねぇ・・・書いてたら思いだしてしまった💦

2019/03/29 (Fri) 12:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!!

あっはは!待ってーーっ!
私は確かに昔色んな渾名があったけど、その中に「アヒル」ってのがあったけど!!(笑)

もっと可愛いのないんですか?💦

そして今回は後かぁ・・・ちょっと残念。
やっぱり新鮮な方が・・・もとい、先の方がいいよね~、なんとなく。


あぁ、お話しね💦(笑)

むしろサングラス掛けたら目立つよね。
あんな所で男が1人、サングラス掛けてストーカー・・・しかもエロ男、もといイロ男の着ぐるみ○○開閉タイプ。

後ろには目が血走ったミニーと涎垂らしたアヒル・・・目立つよね(笑)


2019/03/29 (Fri) 22:27 | EDIT | REPLY |   

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