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テーマパークの中に入ると楽しそうな顔した人達でいっぱい!私はこの2年間、夜を中心に動いていたからこの賑やかで華やかな光景に入った瞬間戸惑ってしまった。
誰にも会ってないのにドキドキする・・・何処かから「つくし!」って声かけられたらどうしよう、なんて。


「うわっ・・・本当に凄い人ですね」
「うん、実は俺も初めてなんだけど」

「そうなんですか?」
「子供がまだ小さかったからチャンスを窺ってたらね・・・こうなっちゃって」

「・・・あ、でもいつか・・・」
「ううん、いいんだ。華さんと来ることが出来たから」


私と来ることが出来たから・・・なんて、言った後で鼻の頭をかきながら赤い顔してる。
それを言われてもどうしていいか判らない私は目線を遠くにすることしか出来なかった。その時にチラッと見えた茶色の髪・・・背の高さが花沢類に似てるって思ったけど、すぐに姿は消えてしまった。


・・・うん、こんな所に来るぐらいなら寝てるわ、きっと。
それに1人で来る人なんて居ないでしょ。もし今のが花沢類なら・・・誰と来てるのよ?


私がキョロキョロしてる間も坂本さんはテーマパークのマップを見ながら何処に行こうか?なんて楽しそう。藍微塵では見せない、もう一つの彼の顔を見たような気がした。
本当はこんなに笑う人なんだ・・・もっと静かで大人しいと思っていたから、一緒に出掛けても会話が弾むのかと心配したのに。

いや、弾まなくてもいいんだけど。


このテーマパークは海に関するお話しや伝説からヒントを得て、冒険とロマンスの世界を作り出してるんだとか。
それが7つのエリアに分かれてて、私達はまず空いてたベンチに座って何処に行くのかを決めていた。
ここには絶叫的なアトラクションはそれほど多くはないらしい。比較的ゆったりと出来そうな探検物や景色を楽しむ乗り物が沢山あった。

「蒸気船ってのもあるよ?船は大丈夫?」
「えぇ、大丈夫だと思います。これは何?」

「・・・お化け屋敷みたいなものじゃない?恐怖の体験が待ち受けているって・・・スリルあるみたいだけど俺はちょっと・・・」
「え?坂本さん、お化け屋敷ダメなの?」

「・・・うん」
「くすっ、意外ですね!」


どれだけ気分を上げようと思っても結局どれに乗りたいとか、何を見たいとかが浮かんでこないのが正直な気持ちだった。それなら真面目な話を切り出せないものの方がいい、そう思ってローラーコースターに乗ることにした。
そんなものに乗るなんていつ以来?それさえ思い出せないほど遠い昔に乗っただけだったから、少しだけワクワクした。

だけど「牧野つくし」に戻らないようにしなくちゃ・・・それだけは何度も自分に言い聞かせた。


「うわっ!これ本当に大丈夫なの?外から見ただけじゃ崩れ落ちそうじゃない?」
「華さん、造りがそうなだけで中身は最新設備だって」

「そ、そうだけど」
「怖いなら手、握ってあげようか?」

「はっ?!いえ!大丈夫です!!」


今にも崩れ落ちそうな発掘現場を再現して設計されてるアトラクションの列に並んで、すぐ近くを走り抜けるローラーコースターを見ていた。
遠くで見た時には思わなかったのに、近くで見ると一回転はするし、傾きがすごくて見てるだけで怖い!気が付いたら坂本さんに身体が寄ってて「やっぱり手を握ろうか?」って言われて慌てて離れた。
そうしたらくすって苦笑い・・・アトラクションにドキドキするのか、この人にドキドキするのか判らなくなっていた。

でも乗ると本性が出るのよね・・・華とは思えない大声で叫びまくって、坂本さんをもっと驚かせたみたい。
降りる時には流石に手を借りたけど、今度は嬉しそうに笑っていた。


「華さんのそう言う部分が見られただけでも誘って良かった!いつも大人っぽいけど、可愛い人なんだろうなって初めから思っていたからさ」

「・・・え?そうなんですか?だって初めて会ったのはもう随分前で・・・その頃の私ってどんな感じだったのか覚えてないけど、兎に角営業的だったでしょ?」

「うん、無理してこの仕事に就いてるんだなって思ってた。ぎこちない笑顔と慣れない手つきと飲めないお酒・・・なんでこの人がホステスしてるんだろうって疑問だったな」

「それなのに可愛い部分がありました?」

「・・・おつまみかな。家庭的で美味しくて何処か懐かしい味で、こういうの作れる人は温かい人だって思ったから。
食べる人の事を考えて料理を作れる可愛い人なんだろうなって・・・別れた奥さんは出来たものばかり並べていたから手料理がどれなのかさっぱり判らなかったんだよね」

「・・・作らなきゃ誰も作ってくれないから。それだけで覚えたんですよ」


少し、ヤバい空気に変わってきた?
それを変えるために、その後も話しかけられた言葉をはぐらかして歩き回った。ゴンドラに乗ったりマジックショーを見たり、2人乗りのものを避けて出来るだけ人の中に紛れ込んだ。
「あのさ・・・」って言われるとスルリと逃げる私のことを、坂本さんは気が付いてるだろうけど。


随分歩いたからベンチに座ってジェラートも食べた。
坂本さんはティラミスで私はピーチヨーグルト。

それを食べ終わったら「これに乗らない?」って言われたもの・・・小型潜水艇に乗って海底の旅に出るってものだった。

写真を見たら随分小さな潜水艇みたい。2人乗りじゃないにしてもかなり近寄ってしまいそう。
どうしようかと考えていたけど、それまでの自分の態度を考えたら1回ぐらいは付き合わないといけないかなと・・・だから、そこに行くことにした。

他に比べて待ち時間は長くない感じだったけど、沢山の人が向かってる。
その流れに乗って歩いていたら、急に坂本さんが手を握ってきた!
それに驚いてビクッとしたけど、彼の手の力が強くて離せない・・・真横に居る彼を見上げたら「いいよね?」ってニコッとされた。


いいよね?・・・いいよねって何が?

手を繋ぐこと?それとも・・・まさかあの時の返事の事を言ってるの?
もっと人の少ない所で言われるのかと思っていたから、まさかここで行動に出るとは思っていなかった。このアトラクションがどんなものか知らなくて、万が一2人乗りだったら・・・・・・薄暗い中を行く乗り物で2人きり?

歩く速度が遅くなる。
握られてる指先が冷たい・・・。


「華さん・・・俺から逃げようとしてるでしょ?でも、そろそろ聞かせて欲しいんだけどな」
「逃げてなんかいませんよ、でも・・・」

「将来って言葉はまだ考えなくてもいいんだ。まずは恋人として・・・それは受けてもらえたんだよね?」
「今日はそういうんじゃなくて・・・坂本さんがお店であんな事言うから」

「少しは気持ちがないと男の誘いには乗らないでしょ?」
「・・・って言うか・・・私はやっぱり誰とも・・・」

「あの人が・・・気になるの?」
「・・・え?」


あの人・・・それは花沢類の事?急に怖い顔になった坂本さんを見て足が止まった。


「どうしたの?後ろの人が困っちゃうよ、華さん」
「・・・・・・あ、あの・・・ト、トイレに行って来てもいいですか?」

「え?今から?あぁ・・・でも、すぐ近くにあるから先に行こうか?」
「・・・私1人で行って来ますから待っててもらえます?!」

「華さん?!」
「ごめんなさい!」


通路で坂本さんの手を振り解いて、今来た道を走って戻った!
本当はトイレに行きたい訳じゃなかったけど、このままあの薄暗い中に入って行く勇気がなかった。

断わることは簡単でも、それを口にした時狭い空間で坂本さんがどういう行動に出るか判らないから・・・道明寺に別れを告げた時の光景が頭を過ぎって、私は怖くて堪らなくなった!

何処に行くとも考えずに通路から出て、人が沢山居る場所に来たら、そこで立ち止まってはぁはぁと息を切らした。腰を屈めて自分の両手を膝に当てて・・・地面を見つめながら頭の中が真っ白になってた。


どうしよう・・・どうしたらいい?
戻るの?戻らないの?・・・戻らなかったらどうなるの?

もしかして追い掛けてくる・・・?


身体を起こして顔だけ後ろに向けたその時・・・!

「・・・行くよ!」
「は?うわぁっ・・・!!」

いきなり私の腕をグイッと引っ張った人がいて、悲鳴もあげることが出来ずにその人と手を繋いで走ってる自分が居た!さっきも走って息が苦しいのに何が起きたか判らなくて、止まってた足を急に動かしたから縺れて思わず転けそうに・・・!


誰よ!って顔を上げた時に見えた後ろ姿、その髪・・・私の手を引っ張っているのは・・・・・・花沢類?!


懐かしい普段着の彼が、昔のようにジーンズとスニーカーで、茶色の髪を揺らしながら走ってる。
私の手を思いっきり握って・・・その手は凄く大きくて温かくて、私の冷めた指が一気に熱くなった。


「速く!あんた、本当は足、速いでしょ!」
「え?あっ、あの、でも、待って・・・私、あの!」

「待たないって!いいから急げ!」

「は、はいっ!!」


あれ?もしかして花沢類、笑ってた?
ほんの少し振り向いた彼の横顔、その口元が嬉しそうに見えたのは気のせい?


園内の人達が驚いて私達を見ている中、私には彼の背中しか見えなかった。
そしてもう坂本さんの事なんて頭から消えてしまっていた。





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2019/03/31 (Sun) 01:18 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/31 (Sun) 07:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

可哀想(笑)うん、確かに可哀想ですよね~💦
まだそんなに悪いこともしてないのにめっちゃ可哀想ですよね!

と、私も思います。手、握っただけじゃんねぇ!
でも、仕方ないのよ・・・類君が来てるんだもん(笑)

ストーカー類に勝てるわけがございません。
自分もストーカーされてるクセに、つくしちゃんを掻っ攫って逃げる類君!無謀ですねぇ(笑)


逃げたくて仕方なかったのね・・・変な2人が隠れているから(誰とはいいませんが💦)
今度は私が先なのね?♡ラッキー!!

2019/03/31 (Sun) 19:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

坂本さんには大変申し訳ないことをしました(笑)
書いてる時には類君のことしか考えてなかったのですが、よく読んだらすっごい被害者になっちゃいましたね💦

まぁ・・・いいか!(笑)

そうなんです~!お土産買いに行けない・・・。
でも、その案もいいかも♡

考えてなかったけど。書いてみようかなぁ・・・と、いいながら行った事がないので無理かも💦
また出鱈目な事を書いてしまうかもしれません💦

あぁ、悩むわ・・・どうしよう(笑)


ダッフィー・・・実は私、唯一好きなんですよね(笑)

2019/03/31 (Sun) 20:23 | EDIT | REPLY |   

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