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plumeria

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「うわっ!これ可愛い・・・どうしよう、でも色がねぇ。こっちはどうかしら・・・」
「こんなのもあるけど」

「きゃあっ!それも可愛いねぇ~」

子供服のお店に入っていつもよりテンション高めに商品を選んでいた。
半分は本当に迷ってるけど、半分は自分を誤魔化してる・・・何でもないフリして、今何処かで何かが始まってるなんて想像したくなくてわざと大きな声ではしゃいでる。

それを可笑しく思わないのか、美作さんは普通にしてくれる。
でも、その「普通」が私には「特別」を感じさせた。


今までの美作さんならきっと聞いてくるはずだもの・・・「牧野、何かあったのか?」とか「牧野、元気いいんだな」とか。
それに私もだけど、あんまりお互いの顔を見ていない。


「ねぇ、美作さん、2人は何色が好きなの?」
「色?そうだなぁ・・・仁美の方が詳しいだろうけど、紫音はあんまり原色は好きじゃないみたいだ。いつも喜ぶのが渋めなんだよなぁ・・・3歳だろ?って言いたくなるような色を選ぶよ。花音は水色やラベンダーみたいな寒色系の薄い色が好きみたいだけど」

「えっ!男の子は緑か青、女の子はピンクか赤じゃないの?」
「誰が決めたんだよ、それ。いいんじゃないのか?世間と違ってても。紫音は渋いピンクとか好きだし」

「・・・そうなんだぁ、知らなかった。良かった!1人で決めなくて」

1時間以上悩んで決めたのは紫音には薄めのダークブルーに白いラインが入ったセーターにデニムのジップアップパーカー。花音には色違いで可愛いラベンダー色に白いラインのセーター、上着は白のフワフワコート。
それぞれ可愛くラッピングしてもらって、コートは美作さんが、セーターの包みは私が持った。

「もしかして双子さんのお洋服ですか?」

店員さんがそう聞いて来たから「はい、男の子と女の子なんですけど」って答えると・・・

「お父様が一緒に選ばれるなんて嬉しいですね!」

思わず美作さんと顔を見合わせて・・・彼は少し赤くなったけど、私はすぐに俯いてしまった。


双子のお父さん・・・今日はその人の・・・


考えないようにしていたのにやっぱり無理・・・さっきまで頑張って作っていた笑顔もここまで。
私の態度に不思議そうな顔をした店員さんは「ありがとうございました~」と小さな声で見送ってくれた。




*********************


<sideあきら>

牧野と買い物に行く日・・・偶然にも牧野が22日が休みだと言ったから半分強引にその日に行こうと言った。
その日は総二郎の結婚式だから、何処でニュースが流れるか判らない。

テレビなのかスマホなのか、鎌倉なのか外出している時か・・・どちらにしても牧野が知ってしまう事は容易に想像できたから、その時何かが起きても対処できるように一緒に居てやりたかった。

ショックを受けて動かなくなるかもしれない。
泣き叫んで、また気持ちが身体から逃げるかもしれない。
1番怖いのは逆に大はしゃぎして我慢してしまうこと・・・「大丈夫」って言葉で自分を抑え込むことだった。


その日、牧野の様子は車に乗った時からハイテンションだった。

それで何となく感じた・・・もう、知ってしまったんだと。
もしかしたら朝1番のテレビで報道されたのかもしれない・・・婚約の時のように、葬儀の時のように何故か偶然、牧野は西門に関する事を報道で知ってしまう。それが起きてしまったんだと直感した。


服を選ぶ時もそう。
いつもの牧野じゃなくて心が半分何処かに行ってる。

俺の顔を見ようとしない・・・だけど、俺も牧野の目を見ることが出来ない。支えなきゃって言いながら真面に見ることが出来ない自分に腹が立つほどだった。


買い物が終わった時、店員に言われたひと言・・・「お父様が一緒に選ばれるなんて嬉しいですね!」
俺は素直に照れてしまったんだけど、牧野はそうじゃなかった。それまで出さなかった感情をここで曝け出した。

子供の父親は俺じゃない・・・牧野の外された視線がそう言った気がした。


「牧野、駐車場まで結構あるから荷物、持とうか?」
「・・・ううん、いい。大丈夫・・・美作さんには大きい方持ってもらってるから」

牧野の声に覇気がなくなった。
張り詰めていたものが切れたのか・・・それなら本当に守らないと危ないかもしれない。俺は来た時よりも慎重になって牧野の横を歩いた。

交差点まで来て信号待ち。
ここでも俺の事なんて見もしないでスマホを弄くっていた。いつもは歩きながらそんな事しないのに・・・その画面上で何かを確かめようとしてるのか?
それはおそらく正直な牧野の気持ちなんだろうと黙って付き添った。


「危ないぞ。少しは前を見て歩けよ?」
「うん・・・わかってる。大丈夫」

「牧野の大丈夫ほど当てにならないものはないよ。それ言われたら昔っから不安になるんだよな」
「ははっ・・・そうなんだ?気が付かなかったよ」

何言ってんだか。
俺だけじゃなく、類だっていつも言ってたのに・・・「牧野の大丈夫は信用出来ない」ってさ。


信号が青に変わって俺たちは歩き出した。
すごい人混みの中、後ろからも前からも沢山の人が来て、俺達の間に大騒ぎしながら渡る学生達が割り込んで牧野と少し離れてしまった。
それでも牧野はスマホを見ながら歩いていて、俺が離れたことにすら気が付いていない。


その時、ピタッと足が止まった。
まだ、渡りきっていない横断歩道の真ん中で足が動かなくなった。

馬鹿野郎!もう点滅してんのに・・・!
俺は急いで牧野の所に戻って、その手を引っ張って横断歩道を渡った。気が付かなくて俺だけ先に渡っていたら今頃どうなっていたかと思うと・・・振り向いたら大型のバスがその歩道を通過した。

あんなのに巻き込まれていたら・・・一瞬冷や汗をかいた。


「もうそんなもの見るのはやめろって!どうしたんだ?牧野」
「・・・え?あぁ、何でもないよ。ごめん、ぼーっとしちゃった」

「危なっかしいんだから!1人で外出禁止だな!」
「くすっ、そんな事ないよ。たまたまだよ・・・」


牧野が動かなくなるニュース・・・それはひとつしかないと自分のスマホで確認した。


『速報!茶道家 西門総二郎氏入籍!お相手は・・・』


やっぱりそうか・・・すぐにスマホを閉じて牧野の横に並んだ。

そのすぐ後に通りすがりの女性達が総二郎の事で騒ぎ出し、また牧野は足を止めた。
泣きたくても泣けない顔・・・その顔は初めて佐賀で見た牧野の顔と同じだった。それならまたあの時と同じように手を貸してやろう・・・お前は1人じゃないって教えてやるよ。

・・・牧野、だからそんな顔すんな。



「そんな所で立ち止まらないで。うちに帰ろう・・・子供達が待ってるからさ」

「えぇ、そうね。美作さん・・・」


ニッコリ笑った牧野の悲しそうな笑顔・・・俺の手に触れたこいつの手がほんの少し震えていた。





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