FC2ブログ

plumeria

plumeria

テーマパークに入ってからずっと牧野と坂本の動きを離れた所から見ていた。
すごく腹が立つ・・・仲良さそうにベンチに座ってマップ見て、それを指さしながら何話してるの?

そんなヤツとアトラクションに乗っても平気なの?
来たくて来た訳でもないのに・・・あんた、当日に急病になるぐらいの演技は出来なかったの?華なんて「役」は長いことしてるクセに、嘘をついてもいい時にはそれが出来ない・・・ホント、お人好しにも程があるよ。


でも楽しそうになんてしてない・・・それが俺には救いだった。
仲良く笑われたら今すぐ飛び出してあんたを掻っ攫って、ここから逃げ出してしまうかも・・・そんな事を考えながら移動する2人を追った。

確かにこれだけ人が居たら、逆に牧野の事は見付けにくいかもしれない。それでも時々不安そうに周りを見回してる姿が可哀想でならなかった。
誰に見付かる事が怖いのか・・・今でも何処かで俺の事を監視してる視線があるって事は、理由はそれしかないんだろうけど。


坂本と並んでローラーコースターなんかに乗って、思ったより怖かったのか支えられて降りてきて、今度はジェラート?
随分俺を怒らせるよね・・・。

でも、そうしてるうちに牧野の様子が変わってきた。
何処に行くのか知らないけど、少し躊躇った様子を見せた。
もしかしたら坂本に何か言われたんだろうか・・・全然顔を上げずに俯いたまま、潜水艇に乗るアトラクションの入り口へと向かった。

不味い・・・そこに入られたら2人がどんな様子なのか見えない。
このアトラクションの列は離れた所からじゃ見難いようになっていたし、俺が中に入ると見付かる可能性は大・・・見付からなかったとしても出て行く時間がズレれば2人を見失ってしまう。
イラつくけど待つしかないかと客が出てくる通路が見える位置に立っていたら、数分後に牧野が走って戻って来た。驚いて身を隠してその姿を見ていたけど、坂本が追い掛けてくる気配はなかった。

怯えたように眉を寄せて、歩いてる人にぶつかりそうになりながら、少し広い場所に来たらそこで腰を曲げて息を整えていた。


坂本に何かされたのか、知り合いに出くわしたのか、それは判らないけど今ならあいつから引き離せる?
気が付いたら牧野の所に走り出してて、後ろを確認していた彼女の腕を掴んでた!

急に引っ張られたから言葉も出せないみたいだったけど、すぐに俺だと気が付いたんだろう、握った手を振り解こうともせずに付いてきた。


「速く!あんた、本当は足、速いでしょ!」
「え?あっ、あの、でも、待って・・・私、あの!」

「待たないって。いいから急げ!」
「は、はいっ!!」

坂本が追ってこられない所まで・・・いや、もうここから出てしまおうと出口に向かって走った。

もしかして俺、笑ってない?今、この手で牧野を連れ出してるって思うと凄く嬉しかった。まだなにも解決してないのに、昔の俺達に戻ったような気さえして。

そこら中の来場者が俺達を見て何事かと驚いてる。
もしかしたら目立たないようにしていたのを全部無駄にしてるんじゃないかって思うほどみんなを振り向かせてる。
それでもお構いなしに俺は牧野の手を離そうなんて思わなかった。


「ど、何処に行くの?!ねぇ、ちょっと!」
「あんた、ここに未練あるの?無いならこのまま帰る!」

「み、未練なんて無いけど・・・うわぁっ!待って、足の長さが違うんだってば!!」
「あはは!そんなの回転数でカバーしなよ」

「回転数って!最近は走ってないんだから回らないわよっ!」
「抱えてあげたいけどそうしたら走れない!全力で走れ!」

「きゃああぁーっ!待ってってば!」
「だから待てないって!」


いつの間にか「華」から「牧野」に戻って昔と同じ声で話してる。
その喋り方が懐かしい・・・あんたにはその方が似合ってるよって胸の中で呟きながら出口を出たら、止まらず今度は駐車場まで走った。


少し離れた所で聞こえる革靴の音・・・振り切れなかったかと、それだけは悔しかったけど何とか車まで戻った。


「はぁはぁ・・・はぁ、あ、あの・・・死ぬ・・・もう、ダメ・・・」
「このぐらいで死なないよ。ほら、早く乗って!」

「はぁはぁ、はぁはぁ・・・く、苦しい・・・っ!」
「車の中で幾らでも寝てていいって。行くよ!」


シルバーの車にもエンジンが掛かった・・・何処かで彼奴らを撒かなきゃいけない。
急いでこの駐車場を出て東京とは反対方面に向かった。



**



「大丈夫?落ち着いた?」
「・・・はい、何とか。は、花沢さん、急に現れるから驚いちゃった」

「凄い偶然だよね?俺、時々1人で遊びに行くんだよね」
「・・・・・・」

白々しかったか?と思うけど、牧野も「華」に戻ったから嘘をついてみた。勿論疑ってる・・・凄く変な顔して運転席の俺を見るから可笑しくなって噴き出した。
そうしたら牧野もプッ!と笑って口元を押さえた。


「それで、何かあったの?アトラクションに向かってたんじゃないの?彼・・・居たんでしょ?」

「・・・はっ!そう言えば、どうしようっ!忘れてた!!」
「え?彼の事、忘れてたの?」

「だってあんな勢いで引っ張るから、あ、頭の中が真っ白になって、それで・・・あぁっ!連絡先も知らないのにっ!も、戻らなきゃ」


テーマパークから遠離ってるのに車の後ろを振り返って、もう見えなくなってる場所を不安そうに見てる。
小さく漏れる溜息・・・でも、頼まれてもあいつの所に戻す気なんて無いけど。

それよりもバックミラーに映るシルバーの車が気になる・・・。
駐車場を出てからすぐ、間に車1台挟んでずっと付いてきてる。其奴を何処で振り切るか、そのタイミングを見計らっていた。


「花沢さん、どうしてこんな事したんですか?ホントにどうしよう・・・今頃怒ってるんじゃないかしら」

「怒られたくないの?怒ってもう店に来なかったらその方が楽じゃない?」
「そんなっ!だ、大事なお客さんですから・・・謝らないとダメですよ」

「でも、あんなに慌てて走って出てきたんだよ?何かあったって事でしょ?」
「・・・・・・いえ、何もないけど」

「何もないのにあんなに息が上がるほど走るの?何かが怖かった・・・って事じゃないの?」
「怖くなんか・・・いや、もういいです。今度お店で謝ります。来てくれたらだけど・・・」


困った顔から今度は怒った顔になった。くすっ・・・本当に素直じゃ無いんだから。

その時、俺の前の交差点の信号が黄色になった。
このままだとこの車が差し掛かったときは赤信号・・・だけど歩行者もいないし、運良く対向車もいない。今しか無いかと、信号が赤に変わった瞬間にアクセルを踏み込んで、この交差点で方向転換した!
遠心力で窓の方に傾いた牧野を片手で抱き寄せ、右手だけでハンドルを回し、タイヤのホイールを縁石で擦ってしまったけど向きを変えた瞬間猛スピードでその場から走り去った。

当然後ろにいたシルバーの車は1台前に無関係な車があったから動けない!
すれ違うときに横目で睨みつけたが、運転席の男はサングラスを掛けたままで表情は判らないし、助手席には誰か居たようだけど何も見えなかった。

「少し飛ばすから何処かにしっかりしがみついといて!」
「・・・・・・」

アクセルを踏み込んで今来た方向に車を向けたから、牧野は驚いて言葉も出せなかった。

もしかしたら別の場所から違う車が出てくるかもしれない・・・暫く走って今度は大通りから外れた道にわざと入った。
そのまま全然知らない道を突き進んで、周りに何もない空き地を見付けてそこで車を停めた。


「・・・な、何が起きたんですか?!花沢さん、一体どうしたの?!」
「・・・はぁはぁ、何でもないよ、怖かったね」

「怖いのはあなたじゃ無くてこの車を見てた人よっ!あんな運転しちゃダメでしょうっ!」
「あはは・・・確かにそうだよね。これでも一応周りは見たんだよ・・・事故らないって思ったからさ。でも何処かにぶつかったね」

「もうっ!何かがあったらどうするの?!困るのは花沢る・・・花沢さんでしょうっ!!」
「うん、もうしない・・・流石に焦った。あんたが乗ってるから」

「・・・はっ?」


だってそうだよ・・・何があってもあんたには怪我なんてさせられない。
あんたには安心して俺の横に居て欲しいから・・・だから2度としない。俺の助手席が怖いなんて思われたくない・・・。

暫くこの場所に居ても車が来る気配は無かった。
尾行していた車からは逃げられた、そう確信したから今度は安全運転で・・・牧野と初めてのドライブに出掛けることにした。


くすっ、まだ怒ってる・・・。
「華」から牧野に戻って怒ってる。

「花沢類」って言いかけて止めたこと・・・今日もちゃんと聞こえていたよ。



この後夕方薄暗くなっていく道を埼玉に向けて走っていた。

「・・・ねぇ、何処に行ってるんですか?だんだん都心から離れてない?ここ、何処?」
「今は荒川沿いを埼玉に向かってるかな・・・」

「は?なんで埼玉なんですか?か、帰りましょうよ!もうすぐ暗くなるし、明日は花沢さん、会社でしょう?」
「慌てなくても誘拐なんてしないよ。ドライブ、付き合ってよ」

「わ、我儘だなぁ・・・そんな約束してないし」
「もう桜が咲いてるから見ていかない?夜桜・・・見てみたくない?」

「・・・・・・そこだけですよ」



窓ガラスに映った牧野が少し微笑んだ・・・さて、何処に夜桜なんてあるんだろう?




2e9846641f761fd69419b22dd79834ff_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/01 (Mon) 06:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あははは!ビオラ様もなかなか仰る(笑)
坂本さん、どうしたんでしょうねぇ・・・書いた割には後の事は考えていない私です。
え?これも結構ワルですか?(笑)

2人で逃げたけどまだ「華」ですからねぇ・・・どうなるんでしょう?

再度言いますが爆弾はございません(笑)
ほんのちょっと意地悪するだけです・・・あはは!

そして彼は今何処に・・・間もなくですかね?(笑)
待ちたくもないでしょうけど待っててくださいね!

2019/04/01 (Mon) 11:08 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply