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「もう桜が咲いてるから見ていかない?夜桜・・・見てみたくない?」
「・・・・・・そこだけですよ」

夜桜だって・・・急に変わった予定にドキドキしながらまた坂本さんの事を忘れていた。
自分でもニヤついてるのが判るから運転席の方に顔を向けられない。困った顔しなきゃいけないのに、口元が緩んじゃうから頑張って歯を食いしばった。
クスクス笑う声が聞こえる・・・今、彼が笑顔なんだって思うと振り向いてその顔を見たいけど、頑固な首は動かない。

何処までも「華」が私に釘を刺す・・・「牧野つくしに戻っちゃダメ」って。


暫く無言で走っていたら気持ちも落ち着いてきて、私は漸く前を向けるようになった。
坂本さんの時とは比べものにならない心臓の音・・・花沢類に聞こえるんじゃないかって思うぐらい喧しくて慌ててしまう。それにこんなに時間が経ってから自分の格好が可笑しくないか?なんて気になってきた。

着古したジーンズにブランド物でもない普通のセーター・・・たとえ華としてここに居るとしても、みっともないと思われなかったかな、なんて。

こうなるんだったら可愛い服にすれば良かった。
いや、スカートであんなに走ったら完全にパンツ丸見えで・・・

「お腹空かない?」
「・・・はい?」

「お腹・・・あんた、お昼に何食べたの?」
「お昼に何食べたか?・・・あれ?覚えてない・・・何食べたっけ?」

「・・・ぷっ!彼、怒るよ?」
「・・・えーと・・・」

片手で口元を押さえて笑いを堪えてる花沢類・・・あなたにドキドキしてるから何も思い出せないのよ!って言いたかったけど、その言葉を呑み込んで助手席のシートに埋もれてしまった。
そうしたら彼はウインカーを出して道沿いにあった小さなお店の駐車場に入った。

そこは緑色の屋根のイタリアンレストラン・・・入り口に沢山の花が植えられてて窓に掛かってるカーテンもカントリー調で可愛らしかった。


「ここ、来たことあるんですか?」
「まさか。この道だって通るの初めてだからね。イタリアンカラーが見えたから決めただけ。あんたが昼に食べたものじゃないヤツにしようと思ったけど、覚えてないってぐらいだから何でもいいでしょ?」

「・・・はい、何でもいいです」
「じゃ、決まりね」

車を降りたら私が横に来るまで待っててくれて、私はそんな彼の少しだけ後ろを歩いてその店に入った。



「いらっしゃいませ~、2名様ですか?」

綺麗なお姉さんが花沢類を見て顔を赤くした。
やっぱりそうだよねって彼の顔を見上げたら、私と目があって慌てて俯いた。

案内された席は1番奥の窓際。マーガレットが一輪挿しに生けてあって、壁にはイタリアの街だろうか、港の絵なんかが飾ってあって、置かれてる道具類はみんな木製で丸いフォルムのもの。
どれもみんな可愛いなぁって触っていたら、花沢類はそんな私を両肘突いて見ていた。

「あ・・・ごめんなさい、可愛いなぁって思って」
「どうして謝るの?何もしてないのに」

「・・・そうですよね。謝り癖、ついてるんですよ、あんな仕事だから」
「ふーん・・・仕事で謝り癖ってつくの?」

「・・・判んないけど」


そんなに真顔で見ないでよ。

謝り癖はあなたとあいつと・・・ハクに毎日言うから癖付いたのよ。そんなの判ってるけど言えないもん。別の事を話そうと思っても昔話は出来ないし、今の暮らしの話しも出来ない。
ここは毎日見てる時事問題のニュースの話題でも・・・って思ったのに、肝心な時には頭から抜けてしまってる。
どうしようかとおしぼりばっかり絞ってたら、またそれを見て笑い出した。

意外と笑い上戸・・・昔っからそうなんだから!


その後は向かい合ったまま何も話さず、テーブルの下で重ねた手に汗ばっかりかいてた。
彼は両手を組んでそこに顎乗せて暗くなった外を見てる・・・そのうちここの住所を店員さんに聞いて、スマホで何かを調べていた。


「お待たせしました。まずは前菜からどうぞ。すぐにパスタ、持ってきますね」

テーブルの上に並べられたお料理は生ハムとフルーツ、 枝豆とじゃがいものパルミジャーノ和えにトマトソースのパンプキンサラダ。
どれもカラフルで美味しそう!って、ニコッと笑うと花沢類もクスッって笑った。

ヤバい!と思って慌てて顔を元に戻すと、今度は少し悲しそうに言った。


「あのさ・・・あんたの名前がなんであれ、笑いたい時には笑いなよ。その方がいいよ」


それを聞いても「はい・・・」としか返事が出来ない。
それ以上は何も言えなかったけど、頑張って笑ってみた。
「まだ無理してる・・・」って言うから「そんな事ない!」って・・・素直に笑ったら花沢類も嬉しそうだったけど、その笑顔が眩しすぎて身体中が火照る。まだ前菜なのにお水のお代わりなんかして、どれだけドキドキしてんの?って内心凄く焦ってた。


次に持ってこられたパスタは私が「トマトとブラータチーズのスパゲティ 」で、花沢類が「海老のトマトクリームリングイネ 」。
「美味しそう~!」の大声が自然と出て慌てて口を押さえたら「ぷっ!」と噴き出され、店員さんには「ごゆっくり」とにこやかに言われた。


花沢類が目の前でパスタを食べてる。
昔と変わらず綺麗に食べること・・・半分ぐらい食べた時、ふと彼の手元とお皿と顔に目がいった。そうしたら彼も私の視線に気が付いて手を止めた。

「ちょっと食べてみる?」
「・・・えっ!いえ、私は自分のを・・・」

「だってすごく食べたそうにしてたじゃん?ひと口・・・いいよ?」
「・・・・・・そんな風に見えました?」

「うん、見えた。遠慮しないで、はい!」
「・・・・・・」

なんて悪戯っぽく笑ってお皿を交換・・・こんな事、普段は絶対しないくせに。でもここは高級レストランでもホテルでもない。街の中の小さなお店だ。それに私達は多分、ここに来るのはこれで最後・・・それならいいかなって花沢類のお皿と交換した。

「あっ、美味しい!」
「でしょ?くすっ・・・じゃあそのまま最後まで食べちゃいな。俺はこっちをもらうから」

「あっ・・・でも、ここのチーズ、もうひと口食べたい」
「あはは!食いしん坊だね、ほら、取りな」

「・・・えへへ」


華だけど・・・華なんだけど、少しだけ昔に戻った気分で話した。

最後に出てきたドルチェはティラミスとカボチャの濃厚プリン。
彼は「食べられない・・・」って困った顔したから私が両方食べた。


何故だろう・・・お昼ご飯なんて味も覚えてないのに。
今の私はやっぱり味なんて覚えられないんだけど、胸の中がこんなに熱い。

それを言葉には出せないけど、凄く幸せな気分で座っていた。




******************




夕食を食べ終わった頃はもうすっかり夜になっていた。
すぐに車に乗って向かったのは店内で調べた「桜の名所」・・・そこまで人が多くない場所がいいと探していたら「柳瀬川」って言う川の土手が綺麗だとか。
正直言えば2人きりで見られる場所が良かったけど、それは牧野を緊張させるだけかもしれないから・・・。


お腹がいっぱいになった牧野は欠伸する余裕も出てきたみたい。
「寝ててもいいよ?」って言うと急いで姿勢を正した。

「気にしなくていいのに。ナビがあるから目的地にはちゃんといけると思うし」
「いえ!運転させてるのに私が寝るわけにはいきませんから!」


そう言いながら5分後には完全に目を閉じて夢の中。
ホント、身体は素直だよね。心は意地っ張りなのに。


ナビに助けられて柳瀬川についたのはそれから1時間後。
調べた通り小さな川の土手に華やかな桜並木が続いていた。それにぶら下がってるボンボリで桜が照れされてて綺麗・・・この時間でも恋人や家族連れだろうか、夜桜を見てる人達が居た。

その近くに車を停めて牧野を起こしたら、目を擦りながら辺りをキョロキョロ・・・「ここ何処?」って言うから「桜咲いてるところ」って言うと目を輝かせた。


艶やかに美しい桜が俺達を呼んでるみたいだった。




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2019/04/02 (Tue) 06:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あはは!本当にねぇ💦
坂本さん、可哀想ですね・・・1人で帰ってご飯でしょうか。

つくしちゃん、ちょっと悪魔になってますね・・・申し訳ないっ!(笑)
それほど類君との時間が楽しかったんですよ。そう言う事にしておきましょう!

近所の桜が漸く咲いてきました。
近くの公園に夜桜見に行きたいんだけど、真っ暗で人気もないので怖くて行けません💦

やっぱりお昼がいいかな?って思ったら急な寒の戻りでめっちゃ寒かった!!

そうしてるうちに桜って終わるんですよね・・・。

2019/04/02 (Tue) 11:38 | EDIT | REPLY |   

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