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plumeria

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車が都内に戻ったのは午後11時。
藍微塵の近くまで来たらだんだん焦ってきた。

花沢類の車に乗ってるのに何処で降りたらいいんだろう・・・?
アパートまで行く訳にはいかないし、だからって全然違う場所で降りるのも困る・・・いっそのこと藍微塵で降ろしてもらってバスで帰ろうか?そんなことを考えていたらあっという間に車はいつものバス停を通り過ぎた。

「あ、あの!この辺でいいです。もう歩いて帰られる距離ですから!」

「でもこの時間に女性を道端で降ろせないから。アパート、教えてくれる?」

「いえ!それは・・・あの、本当に大丈夫だから・・・」

「いいから。家に上がり込もうなんて思ってないし、急に訪ねたりもしないし。早くいいな?何処なの?」

「・・・この先を左・・・」


少し怒ったような口調で言われたから正直に答えた。
でも、あのアパートを知られる訳にはいかない。私は道案内をしながら少し手前にある小さなマンションを指さした。

「あ、あそこです。本当に助かりました、ありがとう・・・」
「ここなの?部屋は何階?」

「は?えっと・・・5階、です」
「・・・ここ4階までしかないみたいだけど?」

「えっ!あっ、そうそう!4階です!あはは・・・」
「くすっ、自分の部屋なんて普通間違えないよ?」


だって知らないんだもん、こんなマンションなんて!
でもここのマンションからならアパートまで歩いても2分ぐらいだもの、私は急いで降りようと鞄を持ち直した。今の返事をおかしく思われたかも・・・だから顔も見ずに車のドアの取っ手を掴んで引こうとした。

「と、突然だったけど楽しかったです。それに晩ご飯、ご馳走様でした。花沢さんも気をつけて帰って下さいね」
「・・・・・・」

「おやすみ・・・なさい」

その時、花沢類の腕が私を掴み運転席の方に引き寄せた!
私の手はドアから離れて、持っていた鞄は足元に落ちて、顔の右側には彼の服が・・・!


「きゃっ!なっ・・・うわっ!」

何も言わずに私を抱き締める腕・・・急に目の前に来た彼の胸。
私の顔に掛かる髪の毛、それに優しい香りと温かい頬。背中に当たる指・・・それがどんどん強くなって私の呼吸を止めた。

何が起きたのか判らなくて、鳴り止まない心臓の音で胸が苦しい・・・!


「は、離してください、花沢さん・・・あの!」
「・・・いつまでそうしてるの?」

「い、いつまでって・・・何言ってるんですか?私は・・・」
「無駄だって・・・どうしてそれが判んないの?あんたが俺を騙すことなんて出来ないって」

「騙す・・・騙してなんていないって!私はあなたが捜してる人と似てるかもしれないけど・・・」
「似てるんじゃない!あんたはアーモンドじゃない・・・似てても間違わない。俺の中の桜はあんただから」

「花沢さ・・・!」


突然塞がれた唇・・・それに驚いたけど、気が付いたら私も彼の背中に手を回していた。

甘いキス・・・だけど悲しいキス。
初めてキスするのにどうしてこんなにドキドキしながら泣かなきゃいけないの?


1度は腕も唇も離されたけど・・・私が動けなかったからもう1度、今度は優しいキスをしてくれた。




******************




俺の中の桜はあんただから・・・遠回しかもしれないけどあんたが好きだって言ったのに、それでも自分の事を言わなかった。
言わないから我慢出来なくなってキスをした。

ずっと・・・そうしたかった。
抱き締めてキスして、自分のものにしたかった。
このまま帰したくなくて・・・だから1度離した唇をもう1度塞いだ。

その時にも俺の身体を抱き締めてくれた腕・・・それが牧野だって証明してるのに。
華になりきるのなら拒否すればいい。それもしないで俺を受け止めたのに・・・どうして涙なんて溢してるの?


「・・・全部話してくれる?もう華に戻らなくていいから」
「私は華・・・です。花沢さん、もう・・・会わない方がいいと思います」

「まだそんな事言うの?こんな芝居いつまでも続けていけないって判るよね?自分らしくないって思ってるはずだよ?」
「芝居なんてした覚えはありません。花沢さんが勝手に勘違いしてるだけでしょ?」

「牧野!いい加減にしないと怒るよ?!」
「怒られても私は華です!それ以外の名前なんて・・・牧野なんて知りません!もう、お店にも来ないで・・・来たら、私・・・この街から消えますから!」


「牧野!!」
「・・・さようなら、花沢さん。お元気で・・・!」


俺の腕を振り切って車から降りて、自分の住んでないマンションに飛び込んだ。車のドアだって閉めないで階段を駆け上がり、2階の踊り場であんたの髪が揺れたのまでは見えたけど・・・その後は暗闇で判らなくなった。
勿論マンションのドアが開く音だって聞こえる訳がない。堪えてるのかもしれないけど泣き声もしない。

真っ暗な闇の中、冷たい風が吹いてるだけだった。


何処に行こうって言うのさ・・・あんたのアパート、ここじゃないのに。俺が居なくなるまでずっと隠れてるつもりなの?俺が追い掛けてこないかって何処かで踞ってるの?

今のキスでもあんたには届かなかったの?俺の想い・・・伝わらなかった?



仕方なくそこから車を動かして帰ったフリをした。
少し離れた所に車を停めてアパート前の公園の端まで歩いて行き、牧野が帰る姿を見守ろうと思ったから。

暫くしたら牧野は辺りを見渡しながらマンションから出てきた。少し歩いては振り向いたり道を覗き込んだりして、公園横の民家のガレージに隠れてる俺には気が付いていない。
俺の車がないと判ると急いで真っ暗な道をアパートに向けて走り出した。

途中で拭ってる涙・・・何かを振り切るように走って階段を上がり、数分後部屋の電気が点いた。
小さな窓から少しだけ室内が見えたけど遠くてよく判らない。すぐに閉められたカーテンで牧野の姿も見えなくなった。


もう来ないで・・・来たらこの街から消えますから、か・・・。


ううん、あんたはこの街から消えないよ。
俺の前から消えない・・・だから『華』になってまでここに居るんだから。

少しだけ部屋の灯りを見ていたけど、俺も踵を返して車に戻った。



エンジンをかけ、自宅に戻ろうとした時に不意に鳴ったスマホ・・・花沢の情報部からの電話だった。

「どうした?何かあった?」

『類様、本日の夕方、道明寺司様が日本に帰国されました』

「・・・そう。あいつの予定なんて判んないよね?」

『専用ジェットで帰国後すぐに道明寺ホールディングスに向かわれました。恐らくもうすぐ行われる合同会議への出席の為と思われますが、詳しいスケジュールなどはまだ把握できておりません。道明寺のセキュリティーはかなり厳しいので・・・』

「そうだろうね。悪いけど頼みがある。今から言うところに大至急人を寄越して。車は小さくていい、色も目立たないヤツで」

『畏まりました』


帰ろうと思ったのを止めて、ここに花沢の人間を呼んだ。

すぐに小さな黒い車が到着し、その情報部の人間にアパートの監視を指示。
絶対に牧野に悟られないこと、道明寺かもしれない人間が近づいたら牧野への接触を阻止して守ること、その時にも花沢だと判らないようにしろと命じた。

期間は司が日本に滞在している間。
牧野が素直になってくれれば花沢で保護出来るけど、今の状態じゃ意地ばかり張って何も言わないだろうから。


それなら俺に出来る事はひとつだけだ。


司に会う・・・そして牧野を縛り付けているものを解き自由にしてあげる。

『華』を解放し、牧野をあの頃の笑顔に戻す・・・それまでは牧野に会わないと決め、屋敷に戻った。




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2019/04/04 (Thu) 07:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

いつもコメントありがとうございます。
切なかったですかねぇ・・・(笑)

暫くつくしちゃんと類君もお別れ・・・(笑)夜も昼もとんでもない展開になって参りました💦ははは!

司君、どうですかねぇ?
ここは類君にかかってると思うんですが・・・上手く説得出来るんでしょうか。
(でも爆弾は落とさないぞ!!笑)

もうお話しはラストに近づいてきました~♥
つくしちゃんに笑顔が戻るように頑張ります!!

2019/04/04 (Thu) 10:41 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/04 (Thu) 13:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

どうしても忘れないのね、白アスパラ(笑)
いやぁ、強烈だったかしら・・・💦

あのお話し、超真面目に書いたのに、あそこで白アスパラ出したもんだから(笑)
変態なイメージがついたらどうしよう・・・

今から画像外そうかしら(笑)

あっ!!そうそう、ゴーヤはOK出ました(笑)


で、お話し・・・うん、つくしちゃんが意外と頑固ちゃんだというお話しです・・・ははは。

2019/04/04 (Thu) 19:58 | EDIT | REPLY |   

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