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plumeria

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12月3日・・・西門さんのお誕生日。
この日は研究所が休みになったから朝からのんびりしていた。

美作さんはお昼前に帰国して、そのまま私を迎えに来ると言ったから少し早めにお昼ご飯を済ませた。小夜さんは今日も夕方になったら美作邸に迎えに来てくれるらしい。
それまではこれから本格的に始まる冬の準備やお買い物をすると言ってた。


「急な事だったから子供達にお土産なんてないんだけどなぁ・・・どうしようかな」
「毎回何かを持って行くのも大変じゃない?お菓子はほら、奥様が居るし」

「そうなのよね~!遊び道具・・・何かないかしらね」
「お屋敷にはなんでも揃ってるからねぇ・・・。あぁ、折り紙なんてどう?私が絵夢様達をお世話していた時も折り紙ってなかったわ。だから1度折ってあげたら喜ばれたのよ?」

「へぇ!折り紙!・・・素朴なものを知らないのね」
「うん、まぁね」


美作さんが来る前に別荘のすぐ近くにあるホームセンターまで車を出してもらい、そこで色数の多い折り紙と、ついでに折り方の本も一緒に買った。リクエストされたら折ってあげたいって思ったから。
色んな物を持っていくと仁美さんが嫌がるかもしれない・・・だから毎回持っていく物は最小限にしようと考えていた。

仁美さんが抱えてる不安・・・私は母親に戻る気はない事を示さないとって。



買い物を済ませて家に戻ると、そこにもう美作さんが来て車の中で待っていた。
だから慌てて小夜さんの車を降りて傍まで行き、これまでの事を話した。

「あぁ、そう言えばおもちゃは多いけど折り紙なんて見たことがないな。喜ぶんじゃないのか?」
「ホント?!良かった、すぐに支度してくるね。あ、ご飯食べたの?美作さん」

「いや、まだ食ってないけど・・・」

「なんだ、そうなの?じゃあ食べて行きなよ」
「あっ、あきら様のお口に合うかどうか判りませんけど、良かったらどうぞ!」

くすっ・・・小夜さんったら真っ赤になってる。

美作さんも車から降りて家の中に入り、私と小夜さんがご飯の支度をするのを照れ臭そうに待っていた。
確かにおかずなんて庶民的なものばかりだから小夜さんが気にするのも判る。でも、美作さんは美味しそうに・・・って言うか凄く上品に庶民食を食べてた。

「これなんだ?」
「きんぴらゴボウ。美味しいでしょ?小夜さん、上手なのよ。これは私が作った肉じゃが」

「は・・・肉じゃが?」
「いいから食べてみて?お味噌汁は長ネギとお豆腐。こんなの食べたことないでしょ?」
「ああっ、ごめんなさい!スープなんて気の利いたもの、作れないんです~💦」

彼が食べている間に着替えて支度して、食後の珈琲まで3人で飲んで「じゃあ行こうか」って時に香港のお土産をもらった。
中華風な刺繍が可愛いコスメポーチ。

「ありがとうございます、あきら様。使うの勿体ないみたい!飾っておこうかしら」
「私もお化粧しないし・・・」
「2人ともそんなんでどうするんだ?牧野も少しは考えろって!」

明らかに私達より美作さんの方がお手入れ完璧だよって大笑いした。


「じゃあ夕方お迎えに行きますね」
「あぁ、頼むな、小夜」

「行って来まーす!」
「行ってらっしゃーい!」


本当はずっと西門さんの顔が浮かんでるのにわざと元気よく手を振った。

でも2人になったら自然と表情に出てしまう・・・急に黙り込んだ私に美作さんは何も言わず、車を都内の自宅に向けて走らせた。



**



「ちゅくちちゃん、すごい~!!鳥さんできたぁ!」
「ふふっ、これは鶴だよ?」

「もういっこ、ちゅくってぇ!」
「はいはい。何色にしようか?」

「みどり!」「きいろ!!」
「よし!全部の色で折ってあげる!」


美作さんのお屋敷に着いたら早速折り紙で遊びだした。
やっぱりやったことがないって仁美さんも言うから、リビングに出した小さなテーブルの上で2人に挟まれながら沢山折った。

亀にカエルに金魚、蝉にペンギンにうさぎ。花に箱にヤッコさん。
子供にも判るような簡単なものを本を見ながら折ったりして、鶴は希望通り50色の折り紙全部で折った。

「かのんもやる~!ちゅくちちゃん、おちえて~!」
「ぼく、これ出来る!えっとね・・・クジラ!」
「うん、作ってごらん?花音ちゃんは・・・そうねぇ、お花が簡単だよ?」

夢中になって折り続けていたらいつの間にか3時になってて、仁美さんから「おやつですよ」の声が掛かった。

そうなったら子供達は折り紙なんて放り投げてお母さんの所に行ってしまう。
私はその場に散らかった折り紙を拾いながら苦笑いだった。せっかく作った鶴も落としちゃって・・・作りかけのクジラとお花。多分おやつの後には気分が変わってそのままだろうから、続きを折って完成させた。


「つくしさんもどうぞ。お母様お手製のケーキなんですけど」
「あっ、ありがとうございます」

私も呼ばれたから立ち上がってテーブルに行ったら・・・可愛い苺のケーキが切り分けてあった。

別に深い意味はないんだろう。
おば様はお菓子作りが趣味だから作っただけ・・・彼の為に作ったわけじゃない。これは意味のない普通のケーキだ。


「美味しそう!いただきまーす!」
「ちゅくちちゃん、おいちいよ!」
「ぼく、いちごのケーキ、いちばんすき!」

私の正面では仁美さんに口を拭いてもらいながらケーキを頬張る紫音と花音。美作さんが食べながら喋るのを注意するけどお構いなしに私に話しかけて、もう少しで雷が落ちそうだった。

そして食べ終わったら予想通りお庭へ一目散に逃げていく・・・その後ろ姿はもうしっかりした子供だった。
蹌踉けそうな感じなんて全然無い。12月の寒い庭なのに元気よく走っていった。


「大丈夫なんですか?子供達だけで」
「うふふ、心配ないわ。ここから見える場所でしか遊ばないから。玄関に近い方には行かないようにってキツく言ってあるから、その約束を破ったことはないの。パパが怖いから」

「そんな事ないさ。決まりを破ったら叱る、それだけだろ?」

「へぇ!昔は決まりなんて破ってばっかりだったのにねぇ?」
「・・・五月蠅いぞ、牧野」

「それに今日は庭師さんが作業してるはずだから安心だわ。もう12月ですものね」
「あぁ、イルミネーション!毎年すごいですもんね!」


大人だけになったら急に静かになる室内・・・仁美さんも今日が何の日か知ってるんだろうか。チラッと見たけどいつもと同じ穏やかな表情しているだけで私に気を遣ってる訳でも無さそうだ。

反対に美作さんの視線は感じる。
彼は私がこの日を意識しないようにって思ってる・・・だから無理矢理連れ出して楽しい時間を作ってくれたんだろうから。


「あきらさん、お土産ありがとう。素敵なカップ・・・明日の朝から使おうかしら」

「気に入った?あんまり派手なものは使いにくいだろうから単色にしたんだよな。香港って中華っぽいのばっかりだから選ぶの難しくてさ」

「あきらさんが選ぶものはいつも品がいいわ。それに私の好きな色・・・嬉しいです」


いいなぁ、夫婦の会話。
仁美さんのいつもより可愛らしい声にちょっとヤキモチ・・・こんな会話、してみたかったな・・・って。


庭に目を向けたら私達から見える芝生で双子が遊んでる。
そこに小さな三輪車があって、それに乗ろうとしてるのが見えた。その三輪車もホームセンターで見るようなのじゃなくて高級そう・・・こんなものにもブランドってあるんだ?って不思議に思った。

私だけなら2台も買ってあげられたのかしら・・・それも少し考えたけど、余計な事だと頭から消した。


どうやら乗れるのは花音みたいで、紫音の方が練習してるみたい。
その姿を珈琲飲みながらずっと見ていた。


その時、このお屋敷の玄関に「彼」が立ってるなんて思いもせずに。




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