FC2ブログ

plumeria

plumeria

<side坂本>

あの日曜日以来、藍微塵に行くことが出来なかった。
俺が返事を迫ったら逃げた・・・それが何を意味するかなんて判らない筈がない。華さんは俺との事は考えられない、そう言う事なんだろう。

だけどこうして仕事をしていても頭の中では彼女が笑いかける。
別れた妻にはなかった優しさ、穏やかさ、明るさ・・・少し悩みがあるんだろうとはずっと思っていたけど、あの料理から伝わる彼女の温かさがとても好きだった。


そのうち・・・これが恋だと気が付いた。

妻が引き取った子供は彼女によく似ていた。子供の癖に冷めた目で俺を見てるような気がするし懐かなかった。だから今度は俺によく似た子供が欲しい・・・。丁度離婚してフリーだった俺はいつかプロポーズしようと思っていた。
きっと華さんなら時間を掛ければ俺の事を好きになってくれて、俺の願いを叶えてくれると・・・俺の事を第一に考えて家を守ってくれると信じていた。

優しくすれば、微笑みかければ・・・絶対に自分のものに出来ると思っていたのに・・・!


あいつが現れてからだ。
花沢・・・あいつが藍微塵に現れてから華さんの態度が変わった。
どう言う関係かは知らないが、あの2人は知り合いで、花沢も華さんを想ってる・・・そして華さんも・・・


「・・・・・・長?・・・社長、川端産業さんがお見えですよ」
「・・・え?あぁ、そんな時間か。お通しして」

「畏まりました」


取引先である川端産業の営業担当が来て、今抱えている現場の事で話合いをしていた時だった。
休憩の意味で珈琲を持ってこさせ世間話で笑っていたら、急に真面目な顔で川端が参加している新事業のトラブルを話し始めた。

それはあの花沢物産が絡む話・・・それまで気が緩んでいたのに急に姿勢を正し、身を乗り出した。


「花沢物産・・・それはまた大きな企業と関わりがあるんですね?羨ましいなぁ」

「いやいや、そうじゃないんですよ。実はね~、ここだけの話ですけど道明寺ホールディングス、花沢物産と他の企業も含めて協働ロボットの開発事業があったんです。それがゴタゴタしましてね・・・」

「ゴタゴタ?道明寺って・・・あの道明寺ですよね?」

「そうそう!その道明寺が花沢が加わるなら事業から手を引く、と言い出しましてね。まぁ、花沢物産がいるんだからそれでも開発は進められるんでしょうが、今度はその開発したロボットを使える場所がなくなると言い始めましてね」

「・・・どう言う意味ですか?」

「道明寺が撤退した後にロボットが完成したとしてもそれを使う現場を提供しない・・・つまり、簡単にいえば道明寺が阻止すると言う事ですよ。どう言う理由かは知りませんが花沢が入らないなら道明寺がこのプロジェクトを成功させ、今後数年間の利益確保は間違いないと。そりゃ花沢だって同じ事が出来るんでしょうが、道明寺の方が気難しい所がありましてね・・・睨まれるとこれ以外の事業でもやりづらくなる。それに理由が後継者に問題ありと言われたのでねぇ・・・」

「後継者・・・?」


花沢の後継者はあの男だ。
あの男のせいでプロジェクトから外された?それなら・・・あいつは今、華さんどころじゃないのか。
社内でもそうとうヤバい立場になってる?

これはある意味チャンスじゃないのか・・・もう、女性に構ってる場合じゃないのならあの店にも来ないだろう。


「後継者のトラブルはいくら企業が大きくても命取りですからね。傾き始めたら一気に崩れるかもしれないでしょう?そうなったら手を組むのも今から考えておかないとねぇ・・・」

「どんなトラブルなんですか?」

「いや、それは判らんのです。女性なのか金銭なのか、もしかしたら健康状態なのか・・・全然そんな情報もないんですけどね。あぁ!社長、変な話をしましたね、他言無用でお願いしますよ?」
「ははっ、そんな事を話しに行く相手がいませんよ、ご心配なく」


この後も気にしていないフリをして仕事の話を終わらせた。
そして、久しぶりに藍微塵に行くことにした。




**********************




「彼・・・来なくなったねぇ」
「・・・彼?誰のことですか?」

「・・・・・・いや、何でもないよ」

今日はお客さんが少なくて、テーブル席に3人だけ。しかも真面目な話をしているから傍には行かず、マスターと一緒にカウンターの中に入っていた。
賑やかなお客さんじゃないからおつまみの注文も来やしない。

だからグラスを拭いたり食器を並べ替えたり簡単に掃除したり・・・まるで閉店後にするような作業をしていた。

マスターの言った「彼」は坂本さんじゃなくて花沢類の事。
同時に来なくなった2人だけど、花沢類の事を言ったんだろう・・・横目で私の事を見ながら「やれやれ」って小さな声が聞こえた。


その時、ギィッとドアが開き、マスターの「いらっしゃいませ」の声と同時に入り口を見たら、たった今頭を過ぎった坂本さんが立っていた。


瞬間、私の顔が強張った。
あの日、テーマパークで別れて以来だったから。

帰るとも告げず、いきなり姿を消した私が居る店になんて来ると思わなかった。だから顔を見ても声が出せない・・・それを見ていたマスターの方が彼をカウンターに案内した。


「華さん、久しぶりだね」
「・・・お、お久しぶりです。坂本さん」

「また元の雰囲気に戻ったの?何かあった?・・・ごめん、あの時の事かな」
「あっ、あの時はごめんなさい!私、た、体調が悪くなってしまってずっとトイレに居て・・・それで、出てきたらもう・・・」

「くすっ、もういいよ。俺が怖がらせたんでしょ?華さんにはあのぐらい強引に言わないと返事・・・もらえないかと思ったんだ」
「・・・・・・怖いとかじゃなかったんだけど」


チラッとマスターを見たら「奥に入るから何かあったら声かけて」・・・そう言って気を利かせて中に入っていった。相変わらず真剣な3人組みは自分たちの世界に入ってるからこっちを気にする気配もない。
私は黙って坂本さんにいつものお酒を作って差し出し、すぐに出せるように作っておいたおつまみだけ目の前に置いた。

怒ってないのかしら・・・以前と変わらず穏やかで言葉は少なめ。
もし、お店に来たら凄い剣幕で罵られると思っていた私は拍子抜け・・・と、言うよりこの状況もかなり怖かった。


怒鳴って罵ってくれた方が良かった。
そう思ったのは事実だ。怒鳴られたのならそれ以上関わらなくていい・・・恋を始めよう?なんて、あの夜の言葉は白紙に戻るんだから。


「どうでもいいんだけどさ・・・噂で聞いたんだよね。あの人のこと」

「あの人?誰ですか?」

「・・・うちの会社は関わってないから詳しい事は判らないけど、花沢物産・・・道明寺ホールディングスに睨まれて大きな事業から外されたらしいよ」

「・・・・・・え?」


・・・道明寺ホールディングスに睨まれて・・・花沢物産が外された?
道明寺が花沢類を攻撃・・・したの?

どうして?・・・どうやって私達が会ってた事を調べたの?・・・どうして判ったの?


坂本さんは私の顔も見ずに、時々グラスに口を付けて話を続けた。
その言葉を聞く途中から身体が震えだし、手に持ってるアイスペールもカタカタと音を立てた。
バクバク鳴る心臓の音・・・全身の血液が熱を持って身体中を猛スピードで流れてる感じ・・・顔は冷めていくのに何処からともなく汗が流れた。


「何があったんだろうね。どうも花沢物産の後継者に問題ありって事で道明寺が怒ってるらしいけど・・・彼、何をしたんだろうね。きっと今頃は大変なんじゃないかな・・・どれだけの被害なんだろう。それに後継者がスキャンダルなんて起こすとヤバいよね。大丈夫なのかな、花沢物産」

「・・・そ、その話は本当・・・なんですか?」

「花沢物産と一緒に仕事するはずだった人から聞いたから。良かったよ、うちみたいな小さな会社には関係なくて。大企業でトラブル起こして何万って社員の生活を狂わす事なんて、考えただけでも気が狂いそうだよね。
あの人、酒を飲みに出歩いてる場合じゃないと思うよ?」

「・・・そんなに大変なの?あの・・・理由って・・・」

「さぁ?それは知らない。でもさ・・・人って判らないよね。どれだけ表の顔が綺麗でも裏では何やってるか判んないって事だよ」

「彼はそんな人じゃ・・・!」
「どんな人か詳しく知ってるの?華さん」

「・・・ご、ごめんなさい、何でもないです。ちょっと失礼します・・・」
「華さん?!」

坂本さんの話をそれ以上聞きたくなくて、私は奥の更衣室に飛び込んだ。
そこで耳を塞いで踞った。


どうしよう・・・どうしよう・・・私のせいだ。

私が彼と会ってしまったから、彼を拒絶しなかったから、この街を出て行かなかったから・・・だから道明寺にバレたんだ。
だから本当に彼を攻撃したんだ。

彼が1番困る方法で・・・花沢類を追い詰めたんだ。


ごめんなさい・・・花沢類。
私の存在があなたを苦しめたのね。

許して・・・・・・許して、花沢類。ここから消えなかった私を・・・許して。





2e9846641f761fd69419b22dd79834ff_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/07 (Sun) 06:47 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/07 (Sun) 07:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

はい!坂本さん、出てきましたねぇ(笑)
昨日のコメントで「鋭い!」って思っていましたが(笑)

設定は類君に似てる・・・なので、自信があったんじゃないでしょうか・・・。フラれる事なんて許せなかったりして💦
いやいや、もう彼にはここらで引っ込んでいただきましょうかね(笑)

つくしちゃん・・・ヤバいですね。
いつもの癖が出ちゃうかも?

2019/04/07 (Sun) 14:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ミキッp様、こんにちは。

坂本さん💦困った人ですよね~。
まぁ、この人は・・・可哀想ですが放っておきましょう(笑)

つくしちゃんにはこっそりガードがついていますからね、大丈夫じゃないかと思うんですが・・・どうだろう?

頑固なつくしちゃんと、執念の司と、策士類・・・果たして勝つのは誰かな?
(そんな事言ってる場合じゃないって?)


お話しは終盤です。
ほんわかと終われるように頑張りますので宜しくお願いいたします♥

2019/04/07 (Sun) 15:02 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/07 (Sun) 23:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みず様 おはようございます。

ご訪問&コメントありがとうございます。

嬉しいお言葉・・・楽しんでいただけて嬉しいです♥

おおっ!そのような展開がお好みなのですか?(笑)助かります~♡
私はコメディタッチとシリアスと、交互に書くことが多いのですが、たまたま今は両方がシリアスなので読者さんもつまらないだろうなぁ、なんて思うのですが💦

特に総ちゃんは・・・ねぇ(笑)あっ!でもちょっと近づいてきましたけどね!

お気遣いいただきましてありがとうございます。
暑さに弱いシロクマのような私ですが、これからも頑張ります!

どうぞ宜しくお願いいたします♥

2019/04/08 (Mon) 08:49 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply