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plumeria

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3時半、あきらの屋敷に着いて門の前まで行くと、その横の大きなミモザアカシアの前に作業中の庭師達が居た。

その中でも最年長と思われる爺さんが運転席の俺を見ると嬉しそうに近づいてきた。
たまに庭木の事で言葉を交わしたこともある人で、温厚で朗らかな爺さん・・・名前なんて知らないけど、帽子と軍手を取って門の内側まで来たから窓を下げ挨拶をした。


「いらっしゃいませ、西門様。あきら様にご用でございますかな?」

「特別な用なんて無いんだけど今日は屋敷に居るって聞いたから来てみたんだ。今はここに居るのか?」

「はい。先ほどお帰りになられまして居間で寛いでいらっしゃるのでは?お呼びしましょうか?」

「いや、驚かせようと思って連絡してないんだ」

「ははは!少しお待ちください、門を開けましょうね」
「悪いな」


インターホンを鳴らす前に爺さんが門を開けてくれて、俺はいつものように駐車場に車を停めた。
そこに今日もあるファミリーカー・・・そいつの事も聞いてみようか、なんて思いながら車を降り、玄関に向かった。


昔からあきらの家は12月になると庭中の木々に電飾をしてクリスマス気分を盛り上げていた。今でもそんな事をしているのか、爺さんを含む沢山の庭師や使用人が脚立に登って作業中だった。

もう子供も居ないのによくするよな・・・冷めた気分でその光景を見ながら歩いていた。


花が少ない季節だってのに耐寒性の強い薔薇が今でも咲いてる。
簡単な幾何学模様のようにつくられた花壇には、そのブロック毎に色を変えたパンジーにビオラ、ノースポール・・・こいつの家にしては子供っぽい花だとは思ったが、綺麗に咲いていた。
ガーデンシクラメンも紫色から白まで、グラデーションになるように植えられてるからこの家だけまるで花畑のようだ。



玄関が近づいた時、何処からか子供の声が聞こえた。
1人じゃない・・・2人?

楽しそうに笑う声がテラスのある庭の方から聞こえてきて、俺は玄関に行く前にそっちに足が向いた。

少しずつ近寄って行くと子供の声も大きくなる。
「かのん、もっとおして!」・・・かのんってのは名前か?
「しょん、ちゃんと前みてて!」・・・しょん・・・いや、しおん?これもそうなのか・・・誰の子供だ?


屋敷の端まで行くと・・・そこに三輪車に乗ってる子供と、それを押している子供を見つけた。


・・・なんだ?この子達・・・何処かで見たことないか?
それに何でこんなにドキドキすんだ?


暫くその場で立ち竦んでいたら子供達が俺に近づいて来て、後ろから押していた女の子が俺に気が付いた。そしてハンドルを持ってる男の子に何かを話したら2人が同時にこっちを見た。

すぐに三輪車から降りてヤケに楽しそうに俺に向かって走ってくる。
手を繋いで髪を振り乱して・・・ニコニコ笑いながら走ってくる姿があいつに似てるようですげぇ驚いた。


いや、どう考えてもまだ2歳か3歳・・・なんで牧野に似てるだなんて思うのか判らないけど、あいつが俺の所に走ってくるような気がして足が動かなくなった。

俺は小さい子なんか得意じゃない・・・むしろ苦手なのに何でこんなに心臓が五月蠅いんだ?


「はぁはぁ、えっと、こんにちは!」
「おじちゃん、こんにちは!!」

「おじちゃん?・・・こんにちは。えっと・・・お前ら、いや・・・名前なんだ?」

「みまさかかのん!3さいでしゅ!」
「ぼくはみまさかしおん、3さい・・・えっとね、ぼくがおにいちゃんだよ」


真っ黒な髪の毛でそっくりの双子・・・あぁ、あきらのスマホにあった「田中 春」って女の通話画面に表示された子だ。
これはその「田中 春」の子供か?でも、何で姓が美作でここで遊んでるんだ?

よく見たら庭の隅には小さな遊び道具がある。奥の方にはブランコや木造のキッズハウスまで・・・って事は遊びに来た子じゃなくて、この屋敷に住んでるのか?


「兄妹か・・・ここに住んでんの?」
「「うん!ここおうちだよ」」

「パパ・・・名前なんて言うんだ?」
「パパはみまさかあきら!ママはみまさかひとみ!ねー、しょん」
「うん!」

「・・・パパ、今何処に居るんだ?」
「こっち!今ね、ケーキ食べてる!」
「パパのおともらち?」

「・・・・・・あぁ、まぁな」


あきらの子供?
これまで何度か聞いた噂は本当だったのか?でも何故、そんな大事なことを俺に黙ってるんだ?


「・・・おじちゃん」
「おじちゃんは止めろ。せめてお兄ちゃんだろ」

「・・・おにいちゃん、それなぁに?」
「は?あぁ・・・土産の菓子だ、持って行きな。こっちは重いけど持てるか?」

「「うん!!うわぁーーいっ!」」


買ってきた菓子とワインを渡すと両手で抱えて俺に背中を向けた。

・・・この子達の大きさからして、嫁さんがまだ精神的に立ち直ってねぇ時の子のはず・・・そして嫁さんは子供が産めない。この子達はあきらには似ていない・・・これはどういう事だ?


俺はこの子達が走って行く方向に足を向けた。
この先はいつものテラスに繋がってるリビングのはず・・・・・・あきら、お前何を隠してんだ?




******************




「あれ?双子がいない・・・何処に行ったのかしら」

3人でケーキを食べながら美作さんの香港話なんかを聞いていた。
暫く窓の外を気にせずに話し込んでいたけど、ふと目をやると2人が居ない・・・少し心配になって窓辺に行くと遠くに三輪車は見えるけど双子の姿がなかった。

「心配ないと思うわ。お話しした通り今日は庭師さん達が電飾の飾り付けをしてるからお庭に沢山人が居るはずよ。このお屋敷の外には行かないから」

「また今年もお袋が派手な電飾にしろって頼んだんだろうな・・・恥ずかしくないのかな」

「うふふ、お義母様にそんな事言ったらだめよ、あきらさん。孫のために必死なんだから」
「・・・これだけ木があったら凄い事になりそう~!久しぶりに今年は見に来ようかしら」

「えぇ、是非一緒にクリスマスパーティーしましょう?その時は朝から幾つもケーキを焼くからお手伝いに来てくださると嬉しいわ」

「あはは!研究所と相談してきます。年末近いけどお休みもらえるかしら?」


窓際に立っていたけどその場で振り向いてソファーに居る仁美さんと話していた。

美作さんも椅子から立ち上がって私の方に向かってきた。その姿を見た仁美さんが少し眉根を寄せた・・・それを見た時に彼と並んじゃいけない気がして少し移動した。

別に私の所に来たわけじゃない。子供達を心配して見に来ただけよ。
それなのに悲しそうな顔しないで・・・・・・仁美さんに心の中でそう呟いて視線を外した。


「何処行ったんだろう。屋敷の外に出ないと判ってても花音はお転婆だからなぁ・・・」

「あはっ、そうみたいだね」

「あぁ、この前も階段の手摺りによじ登って・・・・・・え?」


「・・・美作さん?」


どうしたんだろう・・・美作さんが窓の外を見て驚いた顔をした。
話してた言葉の続きも出さずに口を開けたまま、窓に手を置いて目を見開いて・・・そんな顔になるほど珍しいものが外にあるの?それとも子供達に何かあった?


「・・・・・・ま、きの」

「ん、なぁに?何かあったの?」

掠れたような声で私の名前を呼んだから、美作さんをもう1度見上げた。
それでも彼の視線は窓の外の一点に集中してる。不思議に思って私も身体の向きはそのままで顔だけを窓の外に向けた。


紫音と花音が何かを抱えて楽しそうに走ってくる・・・その姿が見えた。

もう少し後ろに目をやると・・・



彼が・・・西門さんが双子の後から現れた。

4年前の今日、別れた彼が・・・・・・私の前に現れた。





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