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plumeria

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俺の前を小走りで行く子供が急に振り返った。
その時の顔・・・やっぱり何処かが牧野に似てる気がする。あいつが童顔だからそう思うのか?
でも、何故だろう・・・小さい時の俺もこんな顔してたような・・・?

なんで似てないあいつと俺の両方の面影があるだなんて思うんだろう・・・それにこのむず痒さは何だ?


まさかと思うが・・・紫が言ったような事じゃねぇよな?
嫁さん公認で他の女との間に子供を作って美作で・・・その相手が「田中 春」?それならスマホにあんな画像貼るのも判るが、紫じゃあるまいし普通の女性がそんな事を許すはずがない。
仮にそうだとしても、あきらの嫁さんならとっくに離婚を選んでるだろう。いくら自分が許したとしても現実にそれが起きたら深窓の令嬢には耐えられないはずだ。

「田中 春」のことは聞きたかったがスマホを盗み見た事は言えない。
あの時の俺の行動はあきらのプライバシーを侵害したと同じだ。保身と言われればそれまでだが言葉には出せなかった。


「ねぇ、おにいちゃん、おなまえはぁ?」
「・・・名前?」

「うん!だってかのんたち、おちえたもん!」
「あぁ、そうか。お兄ちゃんはな、総二郎ってんだ」

「そじろ?そ、そう・・・」
「じゃあさ、そうちゃんでいい?」

「ははっ!いいぜ?宜しくな、2人とも」


無邪気なもんだな、って薄笑いを浮かべながら庭を歩いてテラスに向かった。
「そうちゃん」・・・そんな名前で呼ばれた事なんてねぇから擽ってぇな・・・、と頭を搔きながら双子の背中を見ていた。

そしてグルッと建物を回り、庭の向こうにテラスが見えた時、あきらが窓際に立ってるのが見えた。
子供達の足はあきらを見た途端に速くなり、俺はこれからどうやってこの子達の事を聞き出してやろうかと思案中・・・問い詰めていいものか、何か事情があるのか、それとも・・・


その時、あきらの横に後ろ姿の女がいるのが見えた。
嫁さんか、と思ったがあんな背格好だったっけ?・・・以前見た時の嫁さんはもう少し背が高かったよな?と呟いた時に足が止まった。


いや、あの後ろ姿は・・・見覚えがある。

あれは・・・いや、まさか・・・でも、あれは確かに・・・・・・


その女が窓の向こうで振り向いた。
その瞬間、俺の心臓がドクン!!と鳴った・・・それっきり足も手も固まった。頭の中も真っ白になった・・・俺の全身が驚きのあまり震え始めた。



・・・・・・牧野?!!




**********************




「・・・・・・ま、きの」
「ん?なぁに?何かあったの?」

窓の外を見て何かに驚いてる美作さん・・・何があったのかと彼と同じ方向を目で追ったら、双子が楽しそうに手を繋いで戻って来た。それを見てホッと一安心・・・なんだ、近くに居たんだって思うと私の顔も綻んだ。

それなのに美作さんの驚いた顔は変わらない。
だからもう1度子供達を見たら・・・その後ろから男性が現れた。

細い手足、あの背格好・・・見覚えがある姿。
真っ黒な髪にあの歩き方は・・・あの歩き方は・・・・・・西門さん?


まさか、急に彼がここに・・・・・・双子に会ってしまったの?!


隠れなきゃ、って思うのに足が動かない。会ってはいけないって思うのに私の目は彼を捉えて離れない。
全身が震えだして汗が落ちる・・・それなのに指先がサーッと冷たくなって恐怖に似た思いも生まれる。
何か言葉を出したいけど、半開きの唇からは声すら出せない・・・近づいてきた紫音と花音は目の端で見えるけど、私の全神経はその向こうの西門さんに向かっていた。


これは現実・・・?それとも・・・夢?

夢ならいい・・・夢じゃなかったら・・・現実なら私はどうしたらいいの?


「・・・なんで、あいつ・・・!どうしてここに居るんだ?」
「どうかしたんですか?あきらさん」

仁美さんも不思議そうな顔して窓際にやってきた。
そして美作さんの背中越しに庭の西門さんを確認して無言になった。

窓の向こうの彼が足を止めた・・・向こうも気が付いた?!


「・・・どうしよう、美作さん・・・私、どうしたら・・・私・・・」
「落ち着け、牧野」

「落ち着けないよ!!だって、だって・・・やだ、どうして?!どうしてここに西門さんが来たの?!まさか・・・まさか呼んだの?」

「そんな訳無いだろう!お前達を会わせるならもっと早くに会わせてるさ!」
「じゃあどうして!!」

私も美作さんも視線は窓の外なのに声が大きくなってしまった。
怒鳴っても仕方ないのに、叫んだって目の前の事実は変わらないのに・・・美作さんはこんなに私達の為に動いてくれたのに、仁美さんの前で私は大声を出してしまった。

紫音と花音は何も知らずにニコニコして目の前まで帰って来て元気よく手を振ってる。
仁美さんがそれに答えて手を振って・・・でも、私と美作さんはまだ動くことが出来なかった。


「恐らく庭師が沢山作業に出てるから西門さんを知ってる人が居たんじゃないかしら。それで私達に知らせずにお通しした・・・そうじゃないとここには入って来られないわ」

「・・・考えられるな。ベテランの庭師なら総二郎の事はよく知ってるからな」


1人冷静だった仁美さんが窓を開け、双子に両手を差し出した。
そこに向かって嬉しそうに帰ってくる2人・・・お母さんに抱きついて言った言葉は・・・

「あのね、そうちゃんって人がきたよぉ~!」
「ほら、あそこ~!」

「そう・・・お客様にちゃんとご挨拶したの?」

「うん!おなまえ、ちゃんと言えたよ~!」
「うん、かのんもおちえてあげたぁ!」


それを聞いた瞬間、私の身体から力が抜けて、その場に座り込んだ。いつもならそんな私に手を出す美作さんが動かない・・・西門さんがそこに居るから彼は動けないんだって思った。
彼もまた、自分の拳を振るわせて窓の向こうの西門さんから目が離せない・・・この人は私とは違う恐怖があるはずだ。

私が頼んだせいで・・・親友を裏切り続けたんだから。


仁美さんがそれを見ながら子供達を部屋に入れ、お手伝いさんを呼んだ。

「あきらさん・・・私はこの子達を連れて上の部屋に行きます。お話し合いが必要でしょう・・・この後は客間の方に行ってください。ここだと子供達が見てしまったら心配しますから」

「あぁ、判った・・・離れに行くよ」
「えぇ、その方が宜しいわ」

「時間が掛かるかもしれない。それでも心配要らないから誰も寄せ付けないでくれるか?」

「判りました」

紫音と花音はお手伝いさんに手を引かれて仁美さんとリビングから出て行った。
「なんでぇ?まだちゅくちちゃんとあそぶ~!」って声が聞こえたけど、今はあの子達の方を振り返る事も出来ない。


西門さんの足が・・・動き始めた。





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