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plumeria

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子供達を迎え入れたのはあきらの嫁さんだ。
だが、あきらの横で崩れ落ちたのは・・・やっぱり牧野だ。俺が見間違えるはずはない、どれだけ離れてても判る!


でも、何故だ?どうしてここに牧野が居るんだ?
あきら・・・何でお前は牧野の横に居るんだ?どうして・・・いつからここに牧野が居たんだよっ!!

バクバク鳴ってる心臓はそのままに、やっと動き出した足は速度を上げていった。



4年だ・・・

4年間捜した牧野がそこに居る・・・毎日夢に見た牧野がすぐそこに居る・・・!
そう思ったら他の事はどうでも良くなった。

みっともないほど焦ってる。
この俺が蹴躓きながら走って、今にも芝に手をつきそうになりながら走って、瞬きすら忘れて一点だけ見つめて走って・・・!

さっき子供達が少しだけ開けたままにしていた窓まで辿り着いた時、ガラスが割れるんじゃないかってぐらいの音を立てて力一杯そいつを開き、部屋の中に足を踏み入れた!
俺の前にはあきらが居たんだろうが目には入らない。こいつがどんな表情をしているのかなんて見てもいない。


・・・その真横に踞っていた牧野が泣きながら俺を見あげた瞬間、全身に雷を浴びたかのような衝撃が走った。


「・・・・・・・・・牧・・・野?」

「・・・・・・西門さん・・・」


「牧野・・・だよな?」
「・・・・・・・・・」

「・・・お前、牧野だよな!!」
「・・・にし・・・かどさ・・・ん、ごめんなさ・・・」


もう回りなんて見えなかった。何も聞こえなかった。
俺の目には牧野しか映らなかった・・・でも、足がそこで動かなくなった。目の前にいるのに、抱き締めたいのに手が震えて動けなかった。

ゾクッと鳥肌が立つ・・・唇が震えてる。喉の奥が熱くて乾いて・・・鳴り止まない心臓の音で五月蠅いぐらいだ。


漸く1歩・・・もう1歩・・・牧野に近づいた。
そして震える手で牧野の髪に触れた。昔と同じ・・・艶やかな綺麗な髪だ。

俺もその場に膝をついた。そして手はゆっくりと・・・震えながら牧野の頬に触れた。こいつの涙が・・・俺の手に伝った。


なんの言葉も出なかった。
次の瞬間には牧野を思いっきり抱き締めた!

まだ信じられなくて俺も震えてるが、牧野の方がすげぇ震えてる。こんなに身体が細かったか?と思うほど・・・骨ばっかの身体を抱き締めて牧野を自分の胸の中に押し込んだ。
泣いてるから小さな嗚咽だけが俺の耳に聞こえる・・・それでも力が緩められなくて、こいつを殺すんじゃないかってぐらい強く引き寄せた。



「総二郎・・・悪かった」

急に後ろから聞こえてきたあきらの声で俺は現実に戻った。
それまで抱き締めていた牧野を離し、座り込んでいた姿勢から振り向きあきらを睨んだ。こいつはすげぇ悲しそうな、苦しそうな顔だったが・・・どうしても許せなかった!

牧野から離れた手は自然と拳を作る・・・今度はそこに俺の怒りが全部向かっていくようだった。


「あきら・・・どういう事だ。何故牧野がここに居る?」

「・・・これから話すよ」

「これから話す?・・・お前、この俺を騙してたのか?・・・答えろ!あきら!!」
「西門さん、やめて!」

「牧野、いいんだ。総二郎が怒るのも無理ないんだから」


「・・・お前が今まで牧野を匿ってたのか?!俺があれだけ・・・あれだけお前に頼んで・・・お前を信じてたのに・・・!」


気が付いたらあきらに向かって飛びかかっていた!

親友に裏切られた・・・その気持ちは抑えることも出来なくて、どれだけ苦しそうな顔されたとしても許せねぇ!!
右手の拳は既に後ろに引いていて、あきらの目の前に行けばすぐにでもこいつを殴り倒す!その状態に入っていた時、牧野の腕が俺の拳を掴んだ!

それに驚いて振り向いたら、牧野は泣きながら必死に首を振っていた。

「だめぇ!!西門さん、やめて!!美作さんは悪くないの!」
「お前は黙ってろ!!俺はこいつが許せねぇんだ!離せ!!」

「離さない!美作さんのせいじゃない!!違うのよ、お願い、止めて!」

「牧野、いいから総二郎の好きにさせろ!俺の事はいいから!」
「いやあぁっ!!だめぇっ!!」
「・・・上等だ、あきら!!!」

泣き叫ぶ牧野を振り切って、俺の拳はあきらの左頬に・・・!
こいつはまったく避けようともせずに真面に俺の拳を顔面で受けて、その勢いで後ろにあった応接セットのテーブルに身体を打ち付け、そこに置いてあった誰かの珈琲カップが床に落ちてすげぇ音を立てた!

あきらは背中を強打したのかその場に倒れ込み、背中を丸めて苦痛の表情を浮かべた。
それでもまだ許せねぇ・・・あきらを殴った拳をもう1度握り締めたら、牧野が背中に飛び付いて来て「もう止めて!」と泣いた。


何故、お前が泣く・・・何故、止める?
俺自信、頭が真っ白で何も考えられねぇけど怒りだけがあきらに向けられた。騙された事には変わりない・・・それ以外の事は何も判らねぇってのに、こいつだけは許せなかった。


「きゃああぁーっ!あきら様!!」
「誰か、誰かーっ!!」

この騒ぎで駆けつけた使用人が悲鳴をあげ、バラバラと何人かが集まって来たが、倒れたままのあきらの方がそれを制した。

「何でもない!いいから下がってろ!!・・・俺達はこのあと離れに行く。絶対に誰も近づけるな!そしてこの件については一切屋敷の外に漏らすな・・・判ったな!」

「「は、はい!!」」



たった一発しか殴ってねぇけど俺の方が興奮してる。
あきらは口の中を少し切ったのか、流れ出た血を拭きながら立ち上がった。

牧野は俺の背中にしがみついていたけど、俺が動くのを止めたら急いであきらの傍に行き、泣きながら謝っていた。
何度も何度も・・・あきらの口元にハンカチなんて当てて。


それを見ていたらだんだんムカついてきた・・・。


「牧野・・・どうしてそんなにあきらに優しくすんだ?そいつには嫁さんがいるんだぞ?」

「・・・そんなんじゃない。そんな感情じゃないのよ・・・」
「じゃあどうしてだ・・・何故俺を裏切ったあきらをお前が庇うんだ!!」

「美作さんは私を助けてくれただけなの!私が頼んだの・・・西門さんと会わないようにしてくれって頼んだのは私なのよ!!」
「牧野、もういいから・・・」

「私のせいなの・・・私のせいで西門さんに嘘をついてくれたのよ・・・」


牧野が頼んだ?
俺と会わないようにって・・・牧野があきらに頼んだって?

あきらが牧野を助けた・・・俺には何が起きたのかさっぱりだった。


「・・・総二郎を騙していたのは事実だ。だから一発殴られた方がすっきりする、そう思ってた。もう隠す事も出来ないからこれまでの事を説明する。2人とも離れに来い・・・ここじゃうちの人間に迷惑だからな」

「美作さん・・・」
「・・・判ってるって。もう喧嘩になんてならない。総二郎に話してやらないとな・・・こいつは何も知らないんだから」


俺の知らない間に此奴らに生まれた感情は何だ?
俺と牧野の信頼関係よりも牧野とあきらの方がすげぇ解り合ってるって思うのは何故だ?

どれだけの間、この2人は一緒に居たんだ・・・俺は1人で馬鹿みてぇじゃね?


あきらがテラスから外に出て、離れの方に歩いて行く。
牧野は真っ赤な顔して俺を待ち、その場に立ち竦んでいた俺は漸く足を動かした。


そしてもう1度牧野を抱き締めた・・・こいつの心はまだ俺にあるのか?何故かそんな疑問が生まれた。
でも、抱き締めた牧野の腕が初めて俺の背中に回った。


小さく聞こえた声は・・・「会いたかった」

牧野の髪に顔を埋めて俺も答えた・・・「もう、何処にも行くな」


でも、牧野の返事はこの時には聞けなかった。
これから聞く4年間の話・・・それがすげぇ恐怖だった。





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