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plumeria

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あのパーティーの日からしばらくして屋敷で家元夫人に呼ばれた。

「総二郎さん・・・あなた、この前の後援会の山本様のパーティーに私たちの知らないお嬢さんをお連れしたって
聞いたのだけど本当なの?」

いきなりの俺の行動に気を悪くしたんだろうな。
この屋敷でほとんど俺に声をかけてこないくせにこうして文句を言うために呼び出すとは・・・

「はい。連れて行きましたけど、何か問題でもありましたか?以前からお話ししているじゃありませんか。
私の相手は私が選びます。そこだけは譲れないと・・・ご理解いただけたと思ってましたが?」

家元夫人の顔が険しくなった。

「それは聞いていましたけど、私たちになんの紹介もなくそんな事をして・・・順番が違いますよ?
まずはうちにお連れしなさい。話しはそれからです」

まるで俺の話を聞く気はないとばかりに無表情で言葉を返してくる・・・。
この人達は結局、西門のためにどこからか俺の相手を探し出してくるってことぐらいわかってるさ。
だから、牧野にもその言葉が出せなかったんだ。

もしも認めないのならそれでもいい。この家を出るまでだ。
でも、出来るなら時間をかけてでもここに牧野を迎えてやりたい。
牧野と過した夜からずっとそのことだけを考えていたが、この人はそれを許さないだろう。

両親の説得、後援会の説得・・・支部幹部らの説得・・・どのくらいそれをしなくてはならないのか。
情けないがそのぐらい高い壁が目の前にあった。


しばらく家元夫人と睨み合っていた時に、廊下の方から綾乃の声が聞こえた。
昔からのことで綾乃は自由にこの屋敷に出入りしていてそれを誰も咎めることはない。
弟子達でもこの部屋へ入ることはほとんどないというのにノックと同時にドアを開けて入ってきた。


「おば様、総二郎お兄様、こんにちは!ご挨拶に参りましたの。・・・あら、どうかされたんですか?
お二人とも怖いお顔なさって・・・」

「あら、まぁ!綾乃ちゃん?お元気だったの?本当に久しぶりねぇ」

家元夫人にとっては綾乃は自分の身内のようなもの・・・急に態度を変えて笑顔を作った。
娘のいないこの人には綾乃が可愛くてしかたなかったんだろう。
綾乃が西門でここまで自由に動けるのは家元夫人が甘やかしているせいでもあるんだ。

「総二郎お兄様もこの前のパーティー以来ですわね。牧野さんはお元気ですか?今日はこちらには
お見えにならないの?また、お会いしたいと思ってますのよ!」

家元夫人の顔がまた一気に変わる・・・綾乃の余計な一言にムカついた!


「牧野さん?・・・牧野さんっておっしゃるの?総二郎さんのお相手の方は・・・」

「あら、おば様はご存じないの?すごくお綺麗な方ですのよ?総二郎お兄様はそれはもうずっとお側に
いらっしゃって離れないんですもの。・・・少し焼けましたわ」

「綾乃!余計なことは言うなっていつも言ってるだろう!」

今日はその話を持ち出されたくなくて大きな声を出すと、綾乃は今にも泣き出しそうな顔をする。

こいつは昔っからそうだ。すぐに泣こうとする・・・周りの気を引こうと態と大袈裟な素振りをするんだ。
この顔で泣かれたら周りがまた大騒ぎをする・・・綾乃はそれを楽しんでるとしか思えなかった。

それを見抜いてるから俺は綾乃が苦手だった。
可愛い妹のような存在だけど、時々鬱陶しくて仕方がない。

「ごめんなさい、総二郎お兄様・・・勝手に喋ってしまって。おば様がまだお会いしてないだなんて
思わなくて・・・許して下さる?でも、反対なんてなさらないわよ。素敵な方でしたもの」

だから!その一言が余計なんだよっ!


「家元夫人、彼女の事はまた改めて紹介をしますから。今日はこれで失礼します」

とにかくこの部屋から出たくて、家元夫人の顔も見ずに頭だけを下げて向きを変えた。
どうせ、この後綾乃に牧野の事を根掘り葉掘り聞くに決まってんだから・・・。

「総二郎お兄様、怒っちゃったの?ごめんなさい・・・綾乃が悪かったのかしら・・・」

「もういいよ。・・・綾乃もゆっくりしていっていいけど色々喋ってんじゃねぇぞ!」


綾乃に釘を刺してから家を出た。
今日は牧野をある場所へ連れて行く予定だったから。


******
<side綾乃>

「綾乃ちゃん・・・あなたはその方とお会いしたのよね?どんな方なの?」

「とても綺麗な方でしたわ。お支度も総二郎お兄様がご用意されたんでしょうけど素敵なドレスでしたもの。
でも・・・いいお家柄ではないのでしょうね。総二郎お兄様のもそれが恥ずかしかったのかしら。
わざわざ牧野さんを隅に置いてご自分1人でご挨拶に回られてましたわ。
あんな席をあまり経験されてないように見えましたわね」

「まぁ・・・一般家庭の方でもよろしいのよ?そこそこのお家なら問題はないのだけれど・・・」

「そうですわね・・・私も一度お会いしただけですからそこまではわかりませんわ。でも・・・お知り合いの皆様にも
ご紹介はされてませんでしたから・・・まだ本気のお相手ではないのかもしれませんね。
お連れになるには申し分ない方ですけど・・・やはり育ちというものはわかってきますものね・・・」


そう・・・あの方は総二郎お兄様にはふさわしくないわ。


牧野つくしさん?でしたかしら・・・

ご自分から離れていくのなら許して差し上げますわ。
早く気が付いて下さいね?・・・総二郎お兄様とご自分じゃ釣り合わないのよ?


このままだと・・・どうなりますかしらね・・・

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