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plumeria

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西門さんが運転する車がもうすぐ鎌倉に着く。
その頃になって家の中のことが気になってきた。

小夜さんがお掃除はしてくれてるから散らかってはないはずだけど、それとは別に双子に関するものがあるかもしれない。

リビングに何か飾ってなかったっけ?
写真も置いてる気がする・・・それを考えていたら自然と難しい顔して無言になっていた。


「牧野・・・もうすぐ鎌倉だけど。牧野・・・?」
「・・・・・・」

「ナビ見りゃ判るけど道案内出来ねぇか?牧野・・・おい!」
「・・・はっ!ごめん、なに?」

急に聞こえた西門さんの大きな声に驚いて思わずシートベルトにしがみついた。それを横目でジロッと見て「ナビ見るの嫌いだ」って言った。あぁ、道の事か・・・ってホッと息を吐く、そんな私を呆れたように見てクスクス笑ってる西門さん・・・。

私の心の中を覗かれたのかと思ってビクビクしたのに、この人は私が緊張してると思って笑ったんだと思うと罪悪感でいっぱいになった。


「あっ・・・この道を右に登っていくの」
「ここ?確かに知らねぇ場所だな」

近づいてきた・・・西門さんには悪いけど少し待ってもらおう。
その間に部屋中を確認して、出ているものがあったら隠さなきゃ・・・そればっかり考えていた。

「・・・もう少ししたら左に・・・あ、見えてきた。この道の突き当たりがおば様の別荘なの」


西門さんは私の住んでる家を外から眺めてたけど、門の横にある駐車場に停めるとすぐにシートベルトを外した。それを見て慌てて先に降りて玄関を開けた。
下駄箱の上・・・ヤバい!この前のぶどう狩りの写真を飾ってた!

他にもあるはず・・・早く隠さないとって靴を脱いで部屋に入ろうとしたら車のドアが閉まる音がした。

そうだった、先に西門さんを引き止めておかないと!
こんなもの見られたら絶対に聞いてくるわ。助けてくれたとは言え、自分が写ってないのに美作さんの家族写真を飾るのかって・・・彼との事を疑ってくるに違いない!

脱いだ靴をもう1度履いて慌てて彼の所に戻った。


「あ、あのさ、少し待っててくれる?まさか男の人が来るとは思わなかったから部屋の中、確認してくる!」
「俺は別にお前の下着が干してあっても関係ねぇけど?」

「そっ・・・そっちが良くても私が嫌なの!お願いだから少し車で待ってて?」


「怪しい・・・」なんて口を尖らせて目を細めた・・・ヤバい、完全に信用されてない。
いや、それも仕方ない。4年間も逃げてたんだもの、信用されなくて当たり前・・・だけど、ここは負ける訳にはいかない!
「すぐだから!すぐ!」って言い残して玄関を閉めて、大急ぎでリビングを見回した。


「うわっ!本当に室内に下着が干してある!さ、小夜さんったらぁ!!」

いや、そんな事言ってる場合じゃない。小夜さんだって私を迎えに行かなきゃいけなかったんだもん、夕方近くなっても洗濯物が完全に乾いてなかったんだ。
急いでそれを私の部屋に・・・いや、それもヤバいからここは小夜さんの部屋を借りる事にした。

ローボードの上に夏の家族旅行の写真がある!
紫音が書いてくれた自称犬の絵、花音が作ってくれた貝殻のかたつむり。
小夜さんとたまに読んでいた子供の成長や病気に関する本、それに一緒に見ていた子供服のカタログ!


「他にはないよね?」ってもう1度ぐるりと見回したら、カーテンの隙間から西門さんが庭に居るのが見えた。
まさか部屋の中を覗いてないよね?って言いながらも、今度は私の部屋にダッシュ!

「うわぁっ、クジラの縫いぐるみ!えっと・・・隠すところがないじゃない!」

双子からもらった水族館のお土産のクジラ!それに誕生日プレゼントの声が吹き込まれた犬の縫いぐるみも!
それを抱えてクローゼットの隅、部屋からは見えない所に置いた。
よく考えたらこれは「プレゼントで貰った」って言ってもおかしくはないのに、西門さんに少しでも疑われたくなくて・・・縫いぐるみに「ごめんね」って声を掛けてやっぱりそこに置いた。

後はアルバムだけ。それはベッドの下に押し込んだ。


大丈夫?・・・これで大丈夫?
机の上にもないもないし、壁にも何も貼ってない。この部屋には子供を感じさせるものは何もない・・・よね?

あんまり待たせると西門さんが不審に思うだろうから、何度も振り返りながら確認して、庭が見える窓のカーテンを開けた。

「西門さん、いいよ・・・玄関からどうぞ」
「あぁ、判った」


ガチャっとドアが開いて西門さんが玄関から入って来た。
ドキドキする・・・何も見付かりませんように。

そしてリビングで話そうと思ったのにやっぱり私の部屋に行くと言った。
でも何故か部屋を見回して変な顔してる・・・何かを探してるって言うより空気を感じてる、そんな風に見えてビクッとした。


何でもないフリして「お茶、煎れてくる」 、そう言ったら西門さんが煎れてくれるって・・・ビクビクしていたのにそのひと言が懐かしくて懐かしくて、思わず「本当?!」って喜んでしまった。


その後で何故か抱き締められて私の身体は彼の腕の中・・・この瞬間に4年間の苦しみが消えた気がした。




********************




牧野に案内されてこいつの部屋に入った。

この屋敷の中では1番奥にある小さめのゲストルーム。
そこに机とベッドと小さなタンスがあるだけで他には何もなかった。クローゼットは隣にあるんだろうけど服なんて殆ど掛かってなくてガランとしてる。
部屋の隅に置いてあるタンスにこいつの服が入ってるんだろうけど、それも全部美作が手配したんだと思うと悔しかった。


俺の知らない牧野の暮らし・・・それを支えたのがあきら。
蟠りとまではいかなくても気分は悪い。


それに牧野は何故かソワソワしてる。
自分の部屋なのにあちこち見回して何かを確認してるように見えた。


「どうした?俺に見られちゃ不味いものでもあんのかよ・・・さっきからすげぇ気になるんだけど」
「えっ!ううん・・・何でもない!何でも・・・緊張だってば・・・」

「・・・そんなもんか?」
「うん、そんなもんだよ。だって・・・まだ夢みたいで」


俺が煎れた茶を小さなテーブルに置いて、向かい側に座ろうとした牧野を引っ張って隣に座らせた。

肩が触れあう距離・・・緊張して湯呑みに手が伸びない牧野。
真っ赤な顔して身体を強張らせているこいつに俺がそれを取って手渡してやると嬉しそうに受け取り、そのままひと口コクンと飲んだ。その後に聞こえてくる安堵のため息・・・自分の中にも落ち着きが戻ってくるようだった。


「やっぱり美味しいね・・・西門さんが煎れると」
「当たり前だ。お前の希望通り真面目にやってんだから」

「良かった。それだけがずっと気になってたから」
「・・・俺は西門には拘らなくても良かったけどな。事故って家から逃げ出すタイミングを逃しただけだ」

「そうだ・・・傷ってどんな感じ?酷いの・・・もう本当に痛まないの?」
「痛くはないけど正座が長いとその日は疼くな。仕方ねぇや、なんたって骨の中に金属入れて固めたんだから」


そう言うとすげぇ嫌そうに眉を顰めて耳を塞いだ。
くくっ・・・なんて顔してんだ?そんなんじゃあの事故の時の病室に入れねぇなって可笑しくなった。

あの時の見舞いが牧野なら大泣きして俺から離れなかっただろう。帰れって言っても帰らなかったかもな。
1日中俺の手を心配そうな顔して握ってて、俺は真面目にリハビリして早く家に帰るために頑張ったんだろうな・・・考えても仕方のない過去を振り返ってた。


「あぁ・・・今更だけどプレゼント、サンキュ!」
「は?なんの・・・あ、あの時の?」

「ちゃんと持って帰ったぜ。使ってはねぇけど大事に持ってる・・・事故ったバイクのサドルバッグに入れてたんだけど無傷で残ってたんだ。お前の執念だなって思ってさ」

「えっ、執念って酷い!頑張って探したんだから、あれだけは渡したかったのよ。あっ・・・ごめん、こんなに長いこと言い忘れてた・・・」

急に牧野が俺の方に身体を向けて真面目な顔をした。
どうしたのかと思ったら・・・


「お誕生日、おめでとう・・・西門さん」


もうすっかり忘れてた自分の誕生日・・・牧野の顔がゆっくり近づいてきて、優しいキスをくれた。





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