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看護師が呼びに来て急いで分娩室に向かった。
こんな時に限ってエレベーターが遅い気がする・・・イライラしながら扉の前で足踏みする俺の事を見て加代が呆れ顔。双子が起きたら分娩室の前で待機すると言われて、扉が開いたらそれに返事もせずに飛び乗った。


だって新しい命が生まれようとしてるんだよ。
俺の子供・・・つくしが頑張ってくれてるんだ、落ち着けって言う方が無理!

その瞬間に立ち会える嬉しさと、彼女の苦しみと、もう1人増える喜びと、元気な子だろうかという不安とで身体中が震えてる。早くつくしの傍に行ってその苦しさをやわらげてあげたくて、掌にジワッと滲む汗を拭った。


「こちを羽織っていただけますか?」

看護師から手渡された白衣のようなものをバサッと羽織って案内された部屋に入ると・・・目の前の分娩台の上でつくしが息を荒くして寝ていた。
もうすごい汗・・・顔を真っ赤にさせて眉を寄せて歯を食いしばって、まだ身体を横にしてベッドの横の握り棒を両手で掴んでいた。

それなのに俺の気配を感じて目を開けたらニコッと笑うんだ。
「こちら側でお願いします」と、看護師がつくしの頭の方へ移動するよう指示したから急いで駆け寄った。


「つくし・・・!頑張れ!!」
「・・・はぁはぁ、類、来てくれたんだ・・・はぁ、うっ!」

「当たり前じゃん!廊下に玲音と玲那も居るよ。みんなで待ってるよ」
「・・・うん、頑張る・・・!もう、少しだから・・・類、手・・・手を握っててね」

「ん、判った」
「はぁはぁ・・・うっ!あぁっ・・・、また、来たっ・・・!」

「つくし、つくし・・・!」

名前を呼んであげることしか出来ないもどかしさ・・・陣痛の間隔がもう2~3分で、看護師の話だと2度目のつくしの場合あと1時間ぐらいで産まれるだろうって。
そんなに長い時間この苦しみを耐えなきゃいけないのかと思うと可哀想で・・・でも、痛みが少し引いた時には「早く会いたいねぇ」なんて涙目で言っていた。

「はぁはぁ、どっち・・・かなぁ?類は・・・どっちがいい?」
「どっちでもいい。元気だったらいい・・・あんたが楽な方がいい」

「あはっ・・・そんなの、選べないよ、どっちも・・・痛いよ、うぅー・・・っ!」
「手・・・俺の手、思いっきり握っていいから!頑張れ!」

「うん!大丈夫・・・これは・・・幸せな痛みだから頑張れるよ・・・はぁっ、はぁ・・・」


思いっきり握っていいって言ったら本当に折れるかと思うぐらいに握ってる。あんたの細い身体にこんな力があったんだって驚いてしまう。
つくしの爪が食い込んできて、それが弱まったら強張っていた身体から力が抜ける・・・でも、すぐにまた痛みが来るから必死に俺の腕を掴む。「背中を摩ってあげてくださいね」って、この場に慣れてる看護師が涼しい顔で横を通ってく。

痛みがほんの少し落ち着いた時には言われた通りに背中を摩るけど、何処を摩ってやればいいのか判らない。
汗で湿った病衣を手当たり次第に摩ってたら逆につくしが顔を顰めながら苦笑い・・・「腰をお願い」なんて言われるけど腕は掴まれてるし、俺はつくしの頭側だし・・・腰に手が届いた時には次の痛みが襲ってくる、その繰り返しだった。


アタフタしてたらお産の最終段階が来たみたい。
医師が現れて出産の体勢に入った。

もうつくしの表情に笑う余裕なんてないし、俺の腕も真っ赤になってる。周りには看護師が集まってきて医師の声も大きくなってくる。
つくしの口から漏れる苦しい呻き声、聞こえてるかどうかも判らないけど耳元で「頑張れ!」って叫ぶことしか出来ない男の情けなさを味わった。

玲音と玲那も自然分娩で産んでるから大丈夫って聞いていたけど、立ち会うのが初めての俺にはこの状況が大丈夫だなんて思えない。今にもつくしの身体が壊れるんじゃないかと思って大声を出し過ぎ、「落ち着いてください!」を連発された。


「頑張れ!もう少しだから!つくし、頑張れ!!」
「はぁはぁっ!類、うん・・・はぁ、ううっ、あぁーっ、はぁっ・・・ふぅー」

「花沢さん!頭が見えてきたわ、もう少しよ!」

「つくし、もうすぐ会えるよ、頑張れ!」
「はぁはぁ・・・んんっ!うっ・・・はぁ、はぁ!」

「よし!いきんで!!」
「うっ・・・!はぁはぁ、あぁっ、ふぅ、ううーーっ・・・!!」

これまで以上につくしが全身に力を込めてる!汗で滑りそうな手が俺の腕を真っ赤にさせて、歯を食いしばって息を止めてた。でも、その時は産まれなかったのかつくしが1度力を緩めて荒い息を吐き出した。
でも、すぐにまた手に力が入る。

いよいよなんだ・・・その場の緊張感で俺の鼓動も凄く早くなっていた。


「・・・はい、もう1回、・・・いきんで!!」
「ううっ!・・・あっ、あっ・・・あああぁーーーっ!!」
「つくし・・・つくし?!頑張れ!つくし!」


んぎゃあ・・・・・・ほぎゃあぁ・・・ほぎゃああぁーーっ!


「産まれましたよ!おめでとうございます!」



・・・・・・・・・産まれ・・・た?
今の声・・・俺の赤ん坊の声・・・産まれた?



一気に全身の力を抜いたつくしの手が俺の腕から離れてベッドに落ちた。そして目から溢れる涙が汗と一緒になって髪を濡らし、口元だけが凄く嬉しそうに笑ってた。
俺は頭が真っ白・・・頑張ったのはつくしなのに、俺まで全身汗かいてて身体が動かなかった。


「花沢様、おめでとうございます。可愛らしいお嬢様ですわ。まずはお母様に・・・」
「・・・ありがとう・・・ございます。ありがとう・・・」

泣きながら産まれたばかりの赤ん坊を自分の胸に乗せて頬ずりして・・・つくしの涙が赤ん坊にも伝っていった。


「それではお子様のケアをして参ります。お母様にも処置がありますからお父様は少し離れてお待ちください」

看護師がそう言ったけど、まだ俺はつくしに両腕差し出したまま分娩台の後ろ側で呆然としてた。
それを見たつくしが苦しそうに笑う・・・「類、頑張れ・・・」って逆に励まされた。

「あっ・・・ごめん。何が何だか判んなくなって」
「・・・あはっ、大丈夫?・・・すぐに来るよ・・・抱っこ、してね・・・」


数分後、真っ白なタオルに包まれた赤ん坊が俺の所にやってきた。
「どうぞ、抱いていいですよ」なんて言われて小さな身体を差し出された。まだ目も開けてなくて、シワシワで真っ赤で・・・。

その子を自分の腕の中に入れた。
本当に軽い・・・まだ弱々しくて頼りなくて小さくて、抱いてる手が緊張して震えてる。
でも、凄く可愛くて愛おしくて・・・気が付いたらその子にキスしてた。


「初めまして・・・パパだよ」

まだ返事なんてしてくれないけど、小さな口を尖らせてた。


つくしの処置がもう少し掛かるからって、その子を抱いて廊下が見える場所に行った。勿論ガラス窓越しだけど、眠そうな顔していた玲音と玲那が急に大きな目をして窓にへばりついて赤ん坊を見てる。
その顔が嬉しそうに変わって2人が両手を挙げて万歳してた。

後ろには両親も駆けつけてて、みんなに「女の子だったよ」と報告。
俺の顔の横に赤ん坊を抱き上げて並んで見せたら「似てる~!」って喜んでた。


・・・似てるのかな?シワシワなのに?


赤ん坊は新生児室に連れて行かれ、俺は処置が終わったつくしの所に戻っていた。
2度目の大仕事を終わった彼女はぐったりしていたけど、凄く誇らしげに笑っていた。最高の笑顔で笑ってた。

「・・・頑張ったよ、類」

「うん・・・お疲れ様。本当にありがとう・・・宝物が増えたね」
「ふふっ、パパ、頑張らなきゃ・・・」

「ん、頑張るよ。その前に・・・あんたが頑張ったご褒美あげる」


まだ起き上がることも出来ないつくしにキスをして、クタクタの身体をそっと抱き締めた。
「痛いよ~」って泣きそうな声出しながら笑ってる・・・俺の1番の宝物。




**



「パパァ・・・さくら、もう終わり?」
「草の上がピンク色~!パパ、さくらの中でお昼寝してるみたい~!」

「うん、気持ちいいよ。おいで・・・玲音、玲那」


つくしと赤ん坊の退院から1週間後、桜がもう殆ど散ってしまった中でまた「川」の字・・・。
右に玲音、左に玲那で真っ青な空を見上げて寝転んでいた。


また優しい風が吹いて桜の花びらがラストダンスを披露する。
それを寝転んだまま3人で両手広げて掴もうとする・・・くすっ、俺の手が長いから双子は全然取れないんだけど。

「パパ、ずるいー!」って玲音が怒る。
「パパ、次はわたしが取る!」って玲那が立ち上がる。

そして2人は風の中で桜の花びらと戯れる・・・俺はやっぱり寝転んでそれを見てる。最高に・・・幸せな時間。



ほぎゃあぁ・・・ほぎゃああぁ・・・


「あっ!凜が泣いてる!」
「凜ちゃんが泣いてる!行かなくちゃ!」



さらさらと・・・ゆらゆらと暖かな風が流れる。

    ふわふわと・・・くるくると最後の花びらがそこに舞う・・・



春風の中で愛しい人が笑ってる・・・ほら、昼寝の俺を呼びに来た。





fin。




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類君、お誕生日おめでとう♡

plumeriaからのプレゼントは「凜ちゃん」でした♡
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2019/03/30 (Sat) 15:17 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/30 (Sat) 16:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/30 (Sat) 17:04 | EDIT | REPLY |   
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2019/03/30 (Sat) 22:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あら!素敵ですねぇ♡男の子だったら毎年プレゼントがアレで終わりそうですが(笑)

うふふ!ほんわかしていただけました?
凄く苦手なんですけどね(笑)可愛いお話し💦

でも、秋風のお話しを完結出来て良かった(笑)


類君のお誕生日、今日はお天気が良かったので私もお花見をしました。
手ぶらで1人でしたけど。

いつもコメントありがとうございます。

2019/03/30 (Sat) 23:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

うふふ!力入っちゃった?
私は産んだのが相当前だからもう忘れちゃった💦

でも、私の出産も笑い話は沢山なんですよ。教えた事あるかなぁ・・・?

私の子供が産まれるとき、先生が「今日中に産んだ方がいいだろうから始めようか!」って言ったのが23時。
理由が次の日にその病院の赤ちゃんが退院して0になってしまうから、産婦人科としては活気がなくなると・・・。

そんな理由で人の出産を早めるんかいっ!って後から思いました。

おまけに陣痛で苦しんでる私に看護師さんが水分補給しないとダメだって言って「グレープにする?オレンジにする?水?」って聞いた時に半分キレた(笑)


まぁ、いいんですけどね。
隣が飲み屋で(藍微塵みたいな店ね)夜中にカラオケがガンガン聞こえて五月蠅かったし。
船乗りの兄貴は新生児なのにブンブン振り回して喜ぶし。

懐かしいなぁ・・・○○年前だわ・・・。

2019/03/30 (Sat) 23:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

るいか様、こんばんは~!

おおっっ!わざわざコメントありがとう!

って言うか(笑)
実はこれ、変えたのよ!

もしかしたら読んでくれるかな~って思って♡嬉しいわぁ!

本当は男の子で「来音」って書いて「らいと」って名前にしていたのよ。
でもね(笑)丁度いいじゃん?って思って凜ちゃんに変えたの~♡


そう言えば空さんが言ってたよ。

「キリンの名前のことを言えなかった・・・」って!

もう2ヶ月前ぐらいには書いていたからね💦ごめんね~!許してね~💦


大変だろうけど仕事とか無理しないようにね!
またいつかイベントしようね~!!

2019/03/30 (Sat) 23:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

うふふ、ほのぼのしていただけて嬉しいです♡
私のお気に入りは

産まれたのに呆然として立ちっぱなしの類君。
シワシワの凜ちゃんを自分の顔に寄せて家族に見せてる類君。

です~♡

そうなんですよね、どうしても原作の類君は寂しい子供時代を感じさせるので、こう言うのはジーンときますね。

この先もバンバン子供を抱かせてあげよう!(笑)
なーんちゃって!(その前にお話し考えなきゃ)

類誕イベントも楽しんでいただけましたか?
明日も数話、予定があるので宜しくお願い致します♥

2019/03/30 (Sat) 23:56 | EDIT | REPLY |   

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