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「もうお風邪は宜しいのですか?専務」

1日休んだ次の日、執務室に入ると無表情の藤本が顔をパソコンに向けたまま言葉を出した。
それが上司に対する態度?ってムッとしたけど、この非常時に熱を出したのは俺・・・言い返すことも出来なくて「大丈夫」とひと言だけ答えてデスクに向かった。

デスクの上には既に山積みの書類、そしてパソコンを開けば信じられないほどのメールの数。
病み上がりの頭にはとても処理できないほどの仕事量にうんざりしながら、ため息交じりでキーボードを叩いた。
その中に『最重要』としてあるのが『ロボット開発プロジェクト中止に伴う代替案提示について』・・・まだ正式に決まっていないのに嫌味とも取れるメールが散見された。


「専務、ご報告しますね」
「なに?」

「道明寺ホールディングスのアポの件です。やはり何の連絡も無いので催促してみましたが、都合が悪いとの事で一切取り合ってもらえませんでした。これ以上は無理かと思うのですが・・・」

「・・・そう。司の動向はチェック出来てる?」

「恐らく日本に帰国されてから殆ど社の中にいらっしゃると思いますよ。日本であの方が関わってる事業はこの産業用ロボット開発プロジェクトのみだと思います。それもまだ始動していませんから、日本以外の事業の指揮を取っておられるはずです。
お出かけになればそれなりに情報が上がって来ますが、1度もそのような話はありませんね」

「自分の執務室にいるって事だね」

「でしょうね」


俺に会う気は無いって?

それなら・・・強行突破だよね。


この後、藤本から休んでいた間に起きた事を聞き、昨日出席するはずだった会議の内容の説明をされた。それを聞きながらメールを確認して返信、溜まっていた仕事の殆どを午前中に終わらせた。
「やる気になれば早いんですね」と、そんな言葉も無表情で言う藤本・・・最後の伝言はアメリカの事業が1つ完全に消えた、と言うことだった。


「開発チームから外すって事が決定したって?」

「はい。例の人工知能搭載の最新型エコカーの開発チームの方ですね。一時見合わせという連絡でしたが、昨日完全に花沢を外して開発チームが再編され始動したと聞きました。もうフランスの社長もご存じだと思いますが」

「・・・判った。それについてはイギリスの自動車メーカーが開発予定の新型軽量スーパーカーの共同事業に切り替える。至急エンジニアにイギリスと連絡を取るように伝えてくれる?明細は藤本にメールしておくから」

「は?そんな所を見付けておられたのですか?」

「うちはヨーロッパには強いからね。フルカーボンファイバー製のボディと自社開発の自然吸気V型8気筒エンジンを搭載したレーシングカーらしいからエンジニアも喜ぶだろ?そこの企業は道明寺と取引が薄いはずだから問題ない。もう一つの方は?」

「海底資源開発事業はまだ結論は出ていません。実はこの開発には花沢が特許を持っている製品が必要という事もあり、道明寺の申し入れを素直に受け入れられないのだと思いますが」

「判った。それは現地に任せよう」


司が動いたのなら俺も動く・・・やられっぱなしである訳がない。
そして午後になってからアポも取っていないのに司の所に行くことにした。



道明寺ホールディングスの日本本社ビル。
殆ど来たことはないけれどエントランスで車を降りて1人で入って行った。

ロビーに居る人間は花沢同様多国籍だ。
其奴らの目を気にすることなく進んで行くと受付の女性に声をかけられた。それも無視してエレベーターに向かうと今度は警備員が数人やってきて取り囲み、俺の前に立ちはだかると上層階に行くことを遮られた。


「大変失礼ですがどちらへ?」
「司に会いに来た。花沢が来たって言ってくれる?」

「花沢様・・・花沢物産の方ですか?司様にアポは取られてますか?」
「そんなもの取ってない、って言うか返事が無いから来ただけ。そこ・・・退いてくれる?」

「そ・・・それは!」


俺の無表情も結構恐ろしいらしい。
冷めた目で警備員を見下ろしていたら、そいつの後ろのエレベーターがタイミング良く開いた。


そこから出てきたのは司・・・こいつも俺の顔を見るなりピクッと眉を動かした。

相変わらずの刺すような視線・・・今度は司の後ろに居た秘書かボディガードか判らない連中が俺を取り囲んだ。


「・・・なんだ、類か」

「久しぶりだね、司。お前が拒否るから黙って来ちゃった」




******************




「これは・・・もう要らないかなぁ。捨てちゃお・・・」

お店に行くまでの時間、部屋の大掃除をしていた。
狭い部屋なのに押し入れやタンスの中のものを出して、タダでもらってきた段ボールに少しずつ詰め込んで引っ越しの準備・・・やっとこの街を出て行く決心をしたから。

花沢類にこれ以上迷惑かけないようにしなくちゃ。
その為には私が東京に居ちゃいけない。判ってた事なのにしがみついて、そのせいで道明寺をまた怒らせて、何にも知らない花沢類の仕事の邪魔して・・・。


「ピピ・・・ピピ」
「うん、ちゃんとあんたも住めるアパートにするから大丈夫だよ。今度は田舎になると思うけどね」

「ピピピピ!ピピ!」
「くすっ、出て遊びたいの?仕方ないなぁ、私がこんなに忙しいのに」

ハクをカゴから出してやっていつもの植木に止まらせてやると、嬉しそうに窓の外を見てる。私も一緒に並んで公園を眺めて、残り少なくなった桜の花を見ていた。
もう葉っぱの方が目立ち始めてる・・・桜が終わると春が終わったみたいな気がする。


柳瀬川の桜・・・綺麗だったなぁってあの日の事を思い出した。
あれが花沢類に会った最後の日。最初で最後のキスをした日・・・私の記念日、そして失恋の日だ。


「だめだめ!こんな事してたらあっという間に日にちが過ぎちゃうわ。ハク、そこから動かないでね」
「ピピ・・・ピピ」


藍微塵は来週には辞めてしまう。
だからそれまで着る仕事用の服は数枚だけ手元に置いて、残りは処分することにした。もうホステスなんてしないもの・・・こんな派手な服なんて要らない。
似合わない花柄のワンピース、原色のスカート、背伸びしまくりのブラウスに大胆なカットのトップス。何度も転けて傷だらけのハイヒールにアクセサリー、役立たずのギラギラバッグ。

よくもこんなに揃えたなぁってぐらいの私の「戦闘服」・・・でも、もう出番無しだ。
こんなものでもゴミ袋に入れていく時はやっぱり辛い。私を隠してくれた服だから・・・。

「今日はこのぐらいにしようかな。まだ少し日にちはあるしね」・・・キュッと袋を縛ると涙がそこに落ちた。


夕方になったら今日も「華」になる。
パーマはかけたけど更に巻いてウエーブを出して、お化粧は今日も派手にした。真っ赤な口紅にグロスまでつけて、大きな目なのに付け睫毛までして。
耳に付けたのは大きな輪っかのピアス・・・手首には3連のブレスレッドにお揃いのネックレス。

ダークピンクのVネックセーターに白のタイトスカート履いて、ライトグレーのロングカーディガン羽織って、ラメの鞄に化粧品を詰め込んだ。

「ハク、行って来まーす!」
「ピピ・・・ピピ、ピピ!」

「今日は遅いと思うわ。待っててね」


玄関でいつものピンヒールに足を入れて支度は完了。
今日もカンカンと喧しく音を響かせながらアパートの階段を降りた。もう1階のおばさんの怒鳴り声も聞かなくなるなぁ、なんて思いながら公園の横を歩いてバス停に向かった。


鼻歌を歌いながら・・・涙声で歌いながらゆっくり歩いていた。




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2019/04/11 (Thu) 06:50 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/11 (Thu) 08:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

反撃開始です(笑)
そして私の苦手な場面です💦どうしよう~💦

司君書くと類君も総ちゃんも彼に呑み込まれていきそうで怖いんですよね(笑)
司君に弱いイメージってないじゃないですか、だからそれを崩さずにって考えると・・・シリアスな場合は本当に苦手です💦

はぁ・・・今晩からしばらくストレスだわ(笑)

それが終わらないとつくしちゃんのかくれんぼを阻止出来ませんからね!
頑張りまーす!!

2019/04/11 (Thu) 09:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花より・・・様、おはようございます。

初めまして、でしょうか?ご訪問&コメントありがとうございます。

あはは・・・えーとですね。
結論から申し上げますと、私の中ではつくしちゃんはあまりそのイメージはありません。
それはそれぞれの読者様が持つイメージで有り、本当の意味でのつくしちゃんの設定は原作者様にしかないと思っています。

たまたまこのお話ではつくしちゃんはそういう仕事に就けないようにされているので、このお仕事を選んでいます。
つくしちゃんがやりたくてやっているわけではありません。
また、彼女の能力がないからホステス、などと言う設定でもありません。濃いめのお化粧もつくしちゃんが華に変わるための行為であり、客目を引くためのものではありません。

それと類君とつくしちゃんをあまり同じ世界に置きたくない、って言うのがあります(笑)


ごめんなさいね、お好みの設定ではないかもしれませんが二次とはそういうものだと思っています。
そのお話し毎でつくしちゃんは変わってしまいますね💦
基本、類君も総ちゃんも変わらないのでどうしても変わるのは私の場合つくしちゃんです。

総てはタイトル通りですかねぇ・・・(笑)
私の書く類君は明るくて前向きなつくしちゃんが好きなようです♥

貴重なご意見、ありがとうございました。いずれそのようなつくしちゃんが現れるかも?(笑)

2019/04/11 (Thu) 09:26 | EDIT | REPLY |   

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