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「花沢を助ける方法は1つしかねぇけど・・・聞くか?」

道明寺が言った言葉にビクッとした。
その内容が私には判る気がしたから。

身を乗り出していたのを元に戻して俯いてしまう。その私を見る道明寺の視線は相変わらず鋭かった。

「どうする?聞くのかよ」ってもう1度聞かれたけど返事が出来なかった。
多分、私に出来る事って・・・「それ」しかないから。でも受けることも出来ない・・・聞いても返事はNOだ。そんなの道明寺を怒らせてしまうだけだから、黙ったまま自分のグラスを手に持った。

少しだけ薄くなったお酒をひと口・・・やっぱり喉がカッとしてゴホッ!と噎せてしまったけど。


「ごめん・・・それは無理だよ」
「まだ何も言ってねぇぞ」

「だって私に出来る事ってそれしかないじゃん。お金も力もない私があんたにしてあげられることって・・・それしかないじゃん」
「・・・察しがいいんだな。じゃ、やっぱり花沢は潰す・・・で、いいんだな?」

「道明寺!だからそれは・・・そんな事してどうなるの?花沢物産にも凄い数の従業員が居るんだよ?その人達のこと考えなきゃ!あんただって経営者なんだから判るでしょ?」
「関係ねぇな。能力があれば道明寺で引き取りゃいいんだろ?」

「そんな問題じゃないでしょう?経営者達のエゴで路頭に迷う人を出してどうすんの!あ、あのさ・・・私にはよく判らないんだけど、この度の1件だけで止めてくれない?お願い、道明寺・・・お願いだから!!」


はぁっ、て溜息ついた道明寺が椅子から立ち上がった。
そして出ていくのかと思ったらカウンターをぐるっと回って私が立ってるスペースに入ってきた。

驚いたけど足が竦んで動けない・・・彼は私の目の前まで来てそこで立ち止まった。
幅の狭いカウンターの中・・・道明寺が立ち塞がるから外には出られないし、奥に逃げようかと思ったけど、少し動いたら傍にあった椅子に躓いてお酒の棚に身体をぶつけた!

さっき飲んだお酒のせいだろうか、頭もまだクラクラする・・・。
ううん、お酒のせいだけじゃなくてこの人の香りが・・・この人の香りが私を惑わせるんだ。


「な、なによ・・・こっちに入って来ないでよ!」
「・・・そんなに怯えるなよ。元カレ・・・って言うのか?面白くもねぇけどそう言う仲だろ?」

「元が付くんだから近づかないで!お、大声出すわよ!」
「叫べばいいだろう。誰が来るかは知らねぇけどな」

「マスターが来てくれるわ!それ以上近づいたら営業妨害で警察呼ぶんだから!」
「・・・呼べねぇと思うぞ?相手はこの俺だ」

「やめて・・・やだ、道明寺、やめてよ・・・」
「まだ何もしてねぇけど?」


ぶつかった棚から身体を起こしてジリジリと後ろに下がった。背中を見せると捕まえられそうな気がして振り向けない。
顔だけは道明寺を見つめながら身体をどんどん離してるつもりが全然距離があかない・・・むしろもう身体が当たるぐらいに詰め寄られていた。

顔を背けて両手を前に出し、道明寺の身体を止めようとした・・・その時、フワッと彼の香りに包まれた。


それは凄く優しい腕だった。

私が知ってる道明寺の中でも1番優しかったかもしれない・・・背中に当たる掌は誰よりも大きいし、背が高いから私の顔は丁度この人の心臓辺り。
自分がすっぽり入ってしまう胸の中で、道明寺の体温を感じてた。


でも、こんなのダメ・・・私の気持ちはもう・・・!


「離・・・して、道明寺!私達は終わったんだよ?私、あんたを傷付けた女だからそんな事しないで・・・!」
「五月蠅い!少しだけ黙ってこうしてろ!」

「やだっ・・・ダメだってば!離して、お願い・・・道明寺」
「・・・素直に方法を聞けば良かったのに聞かねぇからだ」

「・・・え?」
「俺は絶対に許さねぇからな。お前も・・・類も」


「道明・・・」




道明寺の腕から解放されたのは数分後・・・あまりの事に驚いて椅子に倒れ込むようにして座った。
足が、腕が、指が震えて止まらない。涙が出てきて頬を伝ったけどそれを拭うことも出来なかった。その瞬間、頭が真っ白になって、花沢類の顔さえ薄れていきそうだった。

本当に吃驚した・・・。


「・・・何考えてたんだ?お前・・・バカじゃねぇの?」
「だって・・・だって、それしか・・・思い当たらなかったから」

「歳だけとっても中身がガキのクセに変な事ばっか想像してんじゃねぇよ!」
「だって・・・私・・・」

「そこまで落ちぶれてねぇぞ、俺は!」


それだけ言うと道明寺はカウンターから出ていって、そのまま座らずに入り口に向かった。
来た時と同じような靴音だけが響く・・・私は自分の口を押さえ込んだままその後ろ姿を見ていた。言葉なんて出せなくて、昔より男っぽい背中を見つめることしか出来なかった。

でも、ドアに手をかけて開けようとした時、背中を向けたままボソッと呟いた。


「・・・さっきの方法がもう1度アメリカに来い・・・だったら、お前どうした?」

「・・・・・・ごめん」

「俺とお前の未来はもう全然繋がってねぇって事か?」

「・・・繋がってないとかじゃないよ。あんたは私の事を許さなくてもいいけど、私はあんたの未来もちゃんと見届けるよ・・・何処に居てもあんたが頑張ればそれを応援出来る。それは西門さんも美作さんも同じだよ・・・私はあんた達の事は忘れないよ」


「・・・全然嬉しくねぇな。もういい・・・好きにしろ!」


ガチャっとドアが開き・・・バタンと閉められた。
私の回りにはまだあいつの香りが残ってる・・・懐かしい香りが私を包んでる。



**



道明寺が出ていって数分後、マスターが戻ってきた。
私はまだ椅子から立ち上がることも出来ずに、そこで呆然としていた。さっきのこと・・・夢だったって思いたくて・・・。

マスターはゆっくりカウンターの中に入ってきて、椅子に座って棚に凭れ掛かってる私の前に来ると腰を曲げて目線を合わせた。すこし悲しそうな目・・・申し訳なさそうな表情で私を見ると深いため息をついた。


「つくしちゃん、ごめんな」
「・・・ううん、私こそごめんなさい。私のせいで1日潰しちゃったのね」

「いや、それはさっきの彼がね・・・そんな事は心配しなくていいんだ。話合いは・・・出来たのかい?」


マスターの優しい声を聞いたらまた涙が溢れてきた。
道明寺は私も花沢類も許さないって言った・・・彼への攻撃も続けるつもりなのかもしれない。最後に言った「好きにしろ」・・・この意味もよく判らない。

どうしたらいいのか・・・全然判らなくなった。

マスターがお店のおしぼりなんて出してくれて「涙をお拭き」って・・・それを受け取って顔に当てたらお化粧もボロボロ。
もうお客さんも来ないからって、頑張って立ち上がり裏に入って顔を洗い流した。
付け睫毛も取れちゃってアイシャドーも落ちちゃって、真っ赤な口紅も・・・スッピンに近くなったら少しはすっきりした。

大きく息を吸って・・・天井を見ながらフーッ!と吐いて、震える手でもう1度唇を覆った。


「・・・乾杯しようか?実はね、ケーキ買ってるんだ」
「え?あははっ!飲み屋なのにケーキ?」

「あぁ、まぁね。いいじゃないか、今日ぐらい。大人のビターチョコのケーキだよ?」
「あら・・・お子様用苺ショートじゃないのね?」


マスターが出してくれたケーキには「卒・華」って書かれていた。それを見た瞬間・・・最後まで緊張していた肩の力がガクッと抜けた。これが私の藍微塵での最後の日・・・「華」の卒業式だ。


「マスター、長いことお世話になりました。色々ありがとう・・・本当に助かりました」

「私は何もしてないよ。女の子を1人、雇っただけだ。楽しかったよ、つくしちゃん。こっちこそありがとう・・・。
幸せにおなり、それが私の願いだよ」

「・・・ふふっ、私は雑草だから大丈夫!ね、このハンカチ、明日にでもお客さんに渡しといて?華からだって・・・」

「あぁ、判ったよ」



つくしに戻ったら雑草だ・・・・・・だから大丈夫。




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2019/04/16 (Tue) 00:27 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/16 (Tue) 07:37 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/16 (Tue) 07:58 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/16 (Tue) 10:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

うふふ、このお話の司君は素直じゃないので「許す」なんて言わないと思って。
後は読者さんの感じ方にお任せしようと思って詳しい描写は避けました。

司君のことが今1つ上手く書けないと言うところもあるんですが、
私の中では1番の天邪鬼なんですよね~💦

類つく、総つくですから申し訳ないが司君にはいつも失恋させてるでしょ?
だけど司君がつくしちゃんを愛してて諦めきれないって思うんですよ。
だから困るんですよね・・・あっさり「許す」なんて言いそうになくて。


まぁ、ここは・・・類君に幸せになってもらえれば(笑)そんな感じです♥

2019/04/16 (Tue) 11:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうそう!朝1番にニュースで見て驚きました。

ここ、行った事もあるし、よく調べるし(笑)Valentineには類君達も近くに行ったし・・・。
ショックでした~💦元通りになるのかな・・・フランスって最近色々ありますね。

お話しの方は・・・そうですね(笑)
そんな感じです。ご理解いただけて嬉しいわ💦(もう苦手だから、私💦)

ありがとうございます~!!

2019/04/16 (Tue) 11:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

コメントありがとうございます。
そこはですね・・・読者様にご判断いただこうと思って、彼がどうしたのかは書かなかったんです(笑)
つくしちゃんの台詞も微妙に何が起きたのか書いてない💦

どうぞ脳内で想像して下さい(笑)
因みに私は○○○○した想定で書いています・・・あはは!類君に怒られる~!!


司君、頑張ってくれ!他の作家様がイチャイチャさせてくれるから許してっ!!(笑)


あっちのお話し・・・もうすぐ第二章が終わります。
そしてヤバい第三章が待っている・・・どよ~ん。

2019/04/16 (Tue) 11:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

えっ!・・・・・・えっ!!!・・・・・・・・・

私のお話ではこれまでにそのような設定はないはず・・・(笑)
あったっけ?ないよね?

・・・・・・・・・ないよねぇ?(笑)

って事は無関係・・・って事かな?


判らない事はないですよ(笑)
基本、彼が凄くつくしちゃんを好きな事は理解してますし、何があっても嫌いにはならないと思っています。
ただ、書かないだけで・・・(書けないだけで)

多分・・・このまま掻っ攫ってずっと一緒に居たいって思ってたんでしょうね。そう思いながら・・・失恋させました(鬼!)


あっ!そうそう!!
向こうの話、ごめんね、焦らすから(笑)まだだよ~ん♥

2019/04/16 (Tue) 11:39 | EDIT | REPLY |   

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