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酔い潰れた坂本が言った言葉・・・花沢が道明寺から攻撃されていることを牧野が知っていたとは思わなかった。

そんな事を知ったら牧野は俺の前から姿を消すことを考えるはず、マスターに視線を移したら小さく頷かれた。


「マスター、牧野は本当に東京と離れるって言ったの?」

「・・・えぇ。あなたの事を坂本さんから聞いた時に凄く動揺してね。自分がここに居たらいけないって言ってましたよ。その時に色んなことを話してくれました。つくしちゃんは愛されてるんですねぇ・・・あなたにも、その攻撃した人にも。
逃げることを選択する癖がついてることが残念だけど、今なら間に合うかもしれない。今日、花沢さんが来てくれた事も運命だと思うから救ってやって頂けませんかね?明日には東京を出るはずだから今晩しかないんですよ」

「明日?明日にはあのアパートを引き払うの?」

「・・・今日しかないんです、花沢さん」


マスターに軽く頷いて店を出ようとした俺に、また酔っ払った坂本が絡んできた。
俺の腕を掴んで、殴りたいのか拳まで振るわせて・・・でも、こいつに構ってる暇なんてない。酔った人間となんて闘う気にもならないから、腕を払い除け椅子に押し付けた。

その拍子にグラスを倒してしまったけど、お構いなしにまた俺の袖口を掴んだ。

「やっと・・・やっと見つけた人だったのに、お前が横取りしやがって・・・!華さんとなら幸せになれると思ったのに・・・毎晩旨い飯食って、子供だって産んでもらって楽しくなると思ったのに・・・何でしゃしゃり出て来るんだよ!
お前なんか現れなきゃ良かったんだ!そうしたら・・・そうしたら俺は幸せに・・・」

酔った勢いで言いたい放題。

マスターが宥めても、その手を振り払い俺を掴んでいる手の力を強めてきた。
でもふらふらの足と手じゃ相手が誰であっても倒せるはずもない。
殴りかかろうとした手を挙げた瞬間、あっさり自分からカウンターに倒れこんで、転がったグラスを今度は床に落として大きな音を店内に響かせた。

テーブル席の客達は驚いて会話が止まり、マスターは「ちょっと悪酔いしちゃったんですよ」と、小さめの声で説明してその場を誤魔化していた。
坂本のシャツが酒で濡れて、俺の腕を離れた手は力なく下に落とされた。


「くそっ・・・お前なんか消えればいいんだ・・・!」

「坂本さん・・・あんた、さっきから自分の幸せって言ってるけど、彼女の幸せのことは考えなかったの?あいつの幸せが何処にあるか本気で考えた事なんてないんだろ?」

「・・・華さんの・・・幸せ?」

「自分の為に誰かを引っ張り込んでもその人が幸せになれるか判んないよ。確かに彼女みたいに自己犠牲の幸せも間違ってる・・・それを救ってやれるのは俺だけだから」


マスターが坂本と俺の間に入って「後は私が・・・」と笑ってくれた。
悔しそうにカウンターに突っ伏してる坂本をマスターに頼んで、この後俺は急いでアパートに向かった。


あの部屋の電気が消えてしまわないうちに早く・・・早く牧野を抱き締めないと!
それしか頭にはなかった。




********************




「こんなものかしらねぇ・・・って段ボールに荷物詰めたのはいいけど行き先が決まってないのよね」
「ピピ・・・ピ!」

「あはは!バカって言いたいんでしょ?引っ越し費用と諸経費考えるとねぇ・・・何処まで行けるのかなぁって考え中なのよ」
「・・・ピピ、ピピピ」

「はいはい!大丈夫。インコが飼える場所にするからさ」


昨日で藍微塵を辞めたから今日からはスッピンの牧野つくし。
染めた髪はそのままだけどお化粧もしてないし、部屋着のジャージにスエットで爪だって何にもつけてない。逆にもう少しお洒落しなさいよってぐらいのボサボサの姿で部屋の片付けをしていた。

学生の時の地図帳出して、スマホで物件を検索中・・・でも、自分の住みたい場所なんて特にないし行ってみたい場所もない。
せめて過ごしやすい土地がいいなって思うけど、北だと冬は寒いし南だと夏が暑い。沖縄って考えたけど台風がよく通るよね?都会じゃなくて田舎がいいなぁ、とか美味しいものがある所がいいなぁ、とか。

結局今日も決められなくてスマホは閉じた。
そしてコロンと寝転んでシミの出来てる天井を眺めてた。


とうとう、東京ともお別れかぁ・・・やっぱりこんな生活無理だったんだなぁ。
最後にもう1回、会いたかったなぁ・・・。


ーーピンポーン!ーー


その時、こんな夜なのに玄関のチャイムが鳴った。

・・・誰だろう?

まさか下の階のおばさんが「五月蠅いわね!」って苦情言いに来たのかしら。今日一日中荷物の整理していたから確かに喧しかったかもしれないけど、それをこんな夜中に?
居留守を使うわけにもいかないから仕方なく立ち上がり、もうこれで最後の説教かと頭を掻きながら玄関に向かった。


ーーピンポーンーーピンポーンーー!!


「はい、今開けますから待ってください」


そんなに怒らなくてもいいんじゃないの?

ブツブツ言いながら鍵を開け、ドアノブに手を掛けようかと思った途端、外から思いっきりドアを開けられて、私の身体はその拍子に転げるように外に飛び出した!!

「きゃああぁーっ!な、なんなの?!」

「牧野!良かった、まだ居た!」
「うわああぁっ!!」

驚いて誰かを確認する前に大きな腕に抱き締められ、私は懐かしい香りに包まれてた。



顔を見なくても、声を聞かなくても、名前を尋ねなくても判る・・・・・・これは花沢類の香りだ。



何故ここに彼が居るの?
どうして私の部屋を知ってるの?

そして・・・どうして私は彼に抱き締められてるの?なんで・・・どうして?私の声が聞こえたの?

私の背中に回る手がどんどん強くなって、私の顔に彼の髪がかかって・・・何が起きたのかさっぱりだったけど気が付いたら私も彼の背中を握り締めていた。
そうしたらもっと・・・もっと抱き締められて私の足がコンクリートの床から浮いてしまいそう!

そんなに強くしたら折れちゃうよ、なんて言いたかったけど、それさえ勿体なくて言えなかった。いっその事このまま折れてもいいぐらい・・・そのぐらい私も必死に花沢類にしがみついてた。

でも・・・やっぱり無理だった!!


「・・・ゴホッ!うっ、ぐ・・・ぐるじい!」
「あっ!ごめん、つい・・・」


なんて事だろう・・・こんなに甘い再会をしたのに苦しさに負けて変な声が出た・・・。
私の嗄れた声を聞いて手を緩めて、今度は凄い至近距離で彼の瞳を見てしまった。


ドキン!!・・・心臓が爆発した!
暗がりなのに優しく光る茶色の瞳・・・それが少しだけ細くなって私を見つめてる。

そして・・・花沢類の手が私の頬に触れたと同時に・・・・・・下からバンッ!とドアが開く音が聞こえた!


「ちょっと!牧野さん、何回言えばいいの!!今、何時だと思ってんのよ、静かにしてよ!!」

「・・・あっ、はい!!ご、ごめんなさいっ!!」
「・・・プッ!」


・・・まさか1階のおばさんに「牧野」と呼ばれるとは思わなかった。


「華さん・・・じゃなかったの?」
「は、華は・・・昨日・・・ここを出ていったの」

「牧野さんって言うんだ?」
「・・・・・・うん」

「随分下手な芝居だったね。牧野、女優にはなれないみたいだね」
「・・・・・・もう、ならないもん」


「くすっ・・・うん、その方がいいよ。でも間に合って良かった。部屋に入れてくれる?」
「・・・うん」


間に合って良かった?
その意味だけが判らなかったけど玄関の外でこれ以上話してる訳にもいかないから2人で部屋の中に入った。


小さくて狭い玄関に花沢類の綺麗な革靴・・・それが何とも不似合いで笑いが出そう。
スリッパもないからそのまま部屋に入って、彼は沢山ある段ボールを黙って見ていた。そして窓際に置いてるハクの所に近寄って座り込み、中を覗き込んで笑ってた。


「ホントだ・・・小鳥が居る」
「ホントだって・・・聞いてたの?」

「うん、マスターが言ってた。寂しいから小鳥飼ってるって。くす・・・寝てる」
「この時間だから寝ちゃうのよ。カバー掛けなきゃ・・・鳴きだしたら五月蠅いし、また下のおばさんに怒られちゃうから」


牧野つくしに戻ったのにパーマをかけたピンク色の髪・・・見られたくなかったな。
それに着てるものがジャージにスエット。どうして目の前に花沢類が居るのに私はこんな格好なんだろう・・・情けなくて涙が出そうだった。


「牧野・・・明日、何処に行くの?」
「は?明日?何処にも行かないけど?」

「・・・え?明日ここを出ていくんだろ?」
「えっ!私何処に行くの?」


「・・・・・・だってマスターが明日ここを出ていくからって・・・あ、まさか?」





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2019/04/18 (Thu) 00:19 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/18 (Thu) 07:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様 こんにちは!

あははは!!そうそう、感動がね💦
一気に薄れたのよね💦

でも、それがつくしちゃんって感じじゃないですか?
総ちゃんがあんな感じだから類君は明るめに(笑)

あら・・・類好きさんに怒られるかしら?


・・・・・・・・・・・・まぁ、いいか(笑)許してもらおう♥

え?こっちの話はいらないんだ!(爆)

助かります!!ありがとう~~~♥

2019/04/18 (Thu) 10:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは!マスターが役者さんになったんですよ♥
間に合って良かったです~♥

急に甘い感じが無くなったけど(笑)1階のおばちゃん出てきたけど(笑)


坂本さん・・・漸くここで出番終了ーーー!お疲れ様でしたぁ(笑)
よく考えたら可哀想な設定でしたけど・・・。


これでやっとラストに向かえます♡桜の時期に終わるつもりが長くなったんですけどね~💦
最後まで応援、宜しくです!

2019/04/18 (Thu) 10:32 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/18 (Thu) 11:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

え?だって・・・「ない?マジか・・・」で、終わってましたもん(笑)

だからいいのかなぁ?と。

で、どの話に何を入れたらいいのか判んなくなりました💦
って事で・・・私の気分で行かせていただきます!!

どうしよう~💦まだ書いてないのに~💦

ヤバいよね・・・うん、マジでヤバい(笑)

2019/04/18 (Thu) 15:14 | EDIT | REPLY |   

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