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plumeria

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私が明日このアパートを出て行く・・・そんな嘘をマスターがつくなんて思わなかった。
だからこんなにも慌てて来て「間に合って良かった」なんて言葉が出たんだ・・・ドアを開けた時の荒い息遣いを思いだして嬉しかった。

それにもう全部バレちゃった・・・だから気が抜けてその場に座り込んでしまった。


「髪・・・染めちゃったんだね」
「・・・え?あぁ・・・あはは!あの次の日にね・・・華に成り切ろうと思ったの。似合わないけどね・・・」

「あんたには黒髪が似合うよ。でも伸びてくるしね」、そう言ってそっと撫でてくれた頭・・・驚いて肩を竦めてしまった。
夜桜の後からまた派手な服と化粧に戻り、髪も染めてパーマを掛けて、それまでの華よりも凄い格好で働いたって話すと悲しそうな目になって「バカだね」ってひと言だけ。


「ねぇ、花沢類、どうしてこのアパート知ってたの?マスターが教えたの?」

「初めて会った日の翌々日、あんたをストーカーしたの」
「・・・はっ?!」

クスクス笑う花沢類・・・聞けば私が坂本さんに告白された時の一部始終を見ていて、タクシーの後を追っていたとか。もう随分前にはこの部屋の事を知っていたと聞いて驚いた。

「じ、じゃあさ、夜桜の日、私があのマンションに住んでない事を知ってて降ろしたの?」

それも頷かれて呆然。
「階数間違えたときは笑いそうになった!」、だなんて今頃笑ってる・・・泣きながらアパートに帰る私の事を公園の隅で見ていたと言われてガクッとした。


「だって牧野が素直じゃないんだもん、仕方ないでしょ?もう行方不明なんて耐えられなかったし」

「・・・でも、もう会うわけにはいかないの。ごめんね、花沢類・・・嘘なんてついちゃって」

「司の事?もう全部聞いたけど?」

「・・・だろうと思った。だって道明寺が店に来たんだもん。あの人とも久しぶりだったけど何も変わってなかったなぁ・・・。
でも聞いたのなら判ったでしょ?花沢類と私、会っちゃダメなのよ。だから早く帰って?私なら大丈夫だから」

「何が大丈夫なの?そんなに泣きそうな目をしてるクセに」

「だって!・・・だって、私が花沢類に会ったら・・・」
「司が俺を攻撃する・・・だからもうそれも知ってるって」


・・・どうしてそんなに優しい目で見るの?
私のせいで何かのお仕事で大変な目に遭ってるんでしょ?
帰国したばっかりなのに会社で責められてるんでしょ?後継者のクセにって・・・それなのになんで笑ってるの?

私はあなたの仕事の邪魔をしたくない・・・だから気持ちなんて伝えられない。


「ね・・・どうしてあんたが俺と会ったら司が攻撃してくるの?その理由、ちゃんとあんたの口で話してよ」




********************




マスターに騙されて焦った結果・・・まさか全然知らない人から聞かされるとは思わなかったけど、牧野が「華」を脱ぎ捨てて俺の前に現れてくれた。
それは凄く嬉しかったけど、部屋に積まれた段ボールの箱と間近で見たピンクアッシュの髪はやっぱりショックだった。

あんなに綺麗だったのに染めちゃって、大好きなストレートだったのにパーマなんて掛けて。
あの雨の日に遠目では見たけれど、また「華」に戻ったって言葉で聞いたら「バカだね」って・・・それしか言えなかった。

そしてやっぱり「もう会わない」って言葉が出る・・・その言葉を出す時には震えながら両手を固く結んでいた。


「ね・・・どうしてあんたが俺と会ったら司が攻撃してくるの?その理由、ちゃんとあんたの口で話してよ」
「そ、それは・・・その」

「どうして?会うだけで攻撃される理由・・・それって何?」
「えと・・・だから・・・」

「早く言って?ねぇ、どうして?」


そんなの1つしかないじゃん。

司から聞いたって意味ないんだよ?その言葉はあんたから聞かなきゃ俺には伝わらない。
少し後ろに下がろうとした牧野の腕を掴んで引き寄せ、俺の目の前に・・・すぐにでも抱き締められる所まで来てるのに困った表情で顔を背けた。

だから横に向けられた顔を片手で戻し、その目を見つめた。
ほら・・・あんたの漆黒の瞳には俺しか映ってないよ?早くその言葉を俺に伝えて欲しい・・・。


「・・・あ、あのね・・・」
「うん・・・」

「道明寺との婚約解消を決めた時・・・他に好きな人がいるって言っちゃったの」
「うん・・・」

「それでね、それで・・・道明寺が怒って2度と会うなって・・・会ったらそいつを攻撃するって・・・そう言ったの」
「うん・・・」

「私はその人に気持ちなんて伝える気はないって言ったのに、会うだけでダメだって・・・それで、それで・・・」
「伝える気はないの?本当に?」


真っ赤になって涙まで一粒溢して・・・その涙を俺の指で受け止めたらまた1つ溢して。
言葉が詰まって出てこなくなったから我慢出来なくなって抱き締めた。
抱き締めたら今度は俺の肩で声を我慢して泣くから背中を摩ってやって、そのうち俺の首に手を回して少しだけ声を出して泣いて・・・

くすっ、まるで小さな子供みたい。

なんて顔して泣いてんの?鼻の頭が真っ赤でほっぺたも真っ赤でおまけに耳まで真っ赤になって。
・・・それでも泣くから身体を離して額をくっつけて、俺は目を閉じた。


「伝えてみなよ・・・そいつ、喜ぶよ?」
「・・・でも」

「いいから。そいつ、そんなに弱い男じゃないよ?司に反撃するかもしれないよ?」
「やだ・・・喧嘩はして欲しくない」

「じゃあ喧嘩も反撃もしない・・・でも、そいつはあんたの事を待ってるよ?そいつを幸せに出来るのはあんただけ・・・それって凄くない?あんたを幸せに出来るのもそいつだけ・・・多分、そいつ、自惚れてそんな事考えてると思うよ?」


「・・・・・・花沢類」
「ほら・・・早く。もう本当に我慢出来ないんだから」


牧野のドキドキが手を、額を通して伝わってくる。
大きく息を吸って・・・それを吐いてまた吸って。何度か繰り返したら握った手に力が入った。


「・・・私、花沢類の事が好きなの・・・もうずっと前から・・・大好きなの」


それを聞いた途端、目を開けて牧野をもう1度抱き締めた。
前とは違う髪の中に顔を埋めて耳元で囁いた・・・「俺もあんたが好き・・・多分、あんたより前から」


「でも、ダメなの。道明寺は一生許さないって言ったもん。私と花沢類は恋人にはなれないよ」

「・・・司はもう花沢から手を引いたよ。明日から道明寺とは一緒に仕事をする事が決定してる。でも、あいつは日本を離れてロシアに行くってさ。俺にも絶対に許さないとは言ってたけどね」

「うそ!道明寺、花沢の攻撃止めたの?!」

「まぁね。あんたを解放してくれたんだよ。だから大丈夫・・・あんたはもう自由だよ」


大河原との婚約も白紙にして、暫くは仕事の鬼になるみたいだって言うとほんの少し悲しそうに笑った。

もう恋人じゃないけど嫌いにはなれない。
司の幸せも願ってるんだって・・・そう呟いた。


「あっ、そう言えばさ!」
「・・・は?な、なに?」

「あんた、司に会った時に何かされた?」
「・・・・・・えっ?」

「なにかされたよね?何されたの?」
「な、何にもされてないっ!何もない!ホントに何もない!」


「・・・また嘘つく気?」
「嘘じゃないもん!本当に何もなかったもん!」


真っ赤な顔して分かり易い・・・ちょっと、いや、かなりムカつく!





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Comments 4

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2019/04/19 (Fri) 00:36 | EDIT | REPLY |   
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2019/04/19 (Fri) 07:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

ははは・・・向こうに比べたら早かったですね♡
私、こう言うおっとりした類君が好きなんですよ~!

(え?1年前の「桜狩り」の類君?あれも好きだけどね💦)

はいはい!お待たせしましたね~。
お仕置きするかどうかは判りませんが、楽しい時間が始まりそうです♡

2019/04/19 (Fri) 10:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あははは!そうそう、それが見えていましたね♡
楽しんでるんですよね、きっと!そんな類君が大好きです(笑)


あの日の夜・・・さて、本当は何をされたんですかねぇ(笑)
つくしちゃん、この先も言わないと思うので妄想してて下さいませ。

で・・・えっ!!(笑)どどどど、どうしましょう?!素敵かどうかは・・・私、苦手なので💦
素敵なヤツはきっと他の作家様が書いてると思います💦

そこはお許しくださいませ~💦

2019/04/19 (Fri) 10:54 | EDIT | REPLY |   

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