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plumeria

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何にもプレゼントできないから、おめでとうの言葉と一緒に彼にキスをした。
そんなの今までだってした事もないから凄く下手くそだったと思うけど、膝立ちして彼の肩に手を置いて・・・緊張しすぎて唇なんて震えていたけど頑張ってみた。

そうしたら・・・逆にとんでもないぐらい甘いキスが返ってきた!!

「うっ・・・んっ、んんっ・・・やっ、ちょっ・・・」
「馬鹿野郎、お前が煽ってんじゃねぇか!覚悟しろ!」

「にし・・・んっ・・・」


軽く触れるだけのキスだったはずが、今度は彼の舌が私の中に入ってきて歯列を舐められ、そのまま私の舌を追い掛けるように絡めてる・・・あまりの激しさに息が出来なくて思わず西門さんの服を力一杯握ってしまった。
それでも求めるのを止めない・・・気が付いたら私は彼の膝の上に座らされて凄い力で抱き締められていた。

1度は離れた唇・・・でも、すぐにまた重なる。
それは彼からって訳でもなく、私からって訳でもなく自然に・・・私も西門さんの髪の中に指を入れて引き寄せていた。

怖いくらいリップ音が部屋に響く・・・誰も居ないって判っていても恥ずかしくて堪らなくなって慌てて私から唇を離した。でも今度はグイッと引き寄せられて耳朶を噛まれる・・・!
その時にゾクッとして甘い声を出すと、余計嬉しそうに耳元にも舌を這わせてきた。


・・・でも、これ以上はダメ。この人には・・・この人には奥さんが居る。
もしかしたら奥さんにもこんな事を・・・そんな気持ちは無いと言われても、余所見なんてしてないって言われても、やっぱり急に怖くなって彼から飛び退いてしまった。

西門さんは凄く驚いた目をしてる。
私の肩を引き寄せてた手は宙に浮いたまま、私は急いで立ち上がり、テーブルを挟んで彼の向かい側に移動した。


「・・・なんだよ、嫌だった?」
「う、ううん・・・そうじゃなくて・・・西門さんには、その・・・」

「・・・紫のこと、まだ気にしてんのか?」
「気にしてんのかって・・・気にするわよ、その・・・奥さんと比べられるの・・・嫌だもん」

「比べる?何を?」
「・・・・・・なんで私から言わなきゃいけないのよ。判ってよ・・・バカ!」


こんな貧弱な身体だもん・・・4年前よりもっと痩せたし、ガリガリで女っぽい所なんて全然無いし。奥さんの方がいいって思われたら・・・口には出さないかもしれないけど態度で判るもん。
そんな思いはしたくないし、そうじゃなくてもこれ以上進んだら本当に「浮気」・・・だよね?

西門さんが大きく溜息ついた。
そして呆れた顔で私の事を見て・・・あれ、笑ってる・・・?


「お前、俺が紫を抱いたことがあると思ってんのか?」
「えっ・・・だって、奥さんでしょ?婚約も3年以上前だし・・・それって当たり前な・・・事でしょ?」

「まぁな・・・世間じゃ当たり前かもしれねぇけど俺と紫はそんな関係じゃねぇよ。婚約してからも同じ部屋で寝たことはねぇし、結婚したからって離れに新居は出来たが部屋は別だ。俺は今まで1度もあいつを抱いたことはねぇけど?」

「・・・うそ!」
「ホントだっての!なんでお前に嘘つくんだよ。抱いてた方が良かったのか?」

「いや、そうじゃないけど・・・」
「・・・疑うのも無理ねぇな。牧野、こっち来い。俺の話も教えてやるから」


西門さんが奥さんとはそういう関係になってないと言ったことに驚いて次の言葉も出ないし、身体も動かなくなっていた。
あれだけ22日の夜、美作さんの家で暴れたのに・・・?
あの時間にこの人が何してるかを想像して気が狂いそうだったのに?

何にもしてない・・・そんな事が許されるの?紫さんって人は何ともないの?


だって・・・結婚したんだよ?




******************




牧野が吃驚して固まった。
そんなに俺が女に手を出さなかったら意外なのか?と、ムカついたが・・・自分の過去の素行は此奴に全部知られてるから疑われても仕方ない。

でも、今回だけは信じてもらわないと困る。
「来い」って言ったのにまん丸い目をしたまま動かなかったから、仕方なく俺が立ち上がって牧野の腕を掴んだ。
そしてまた俺の正面、掴んだ手を離さないまま向かい合って座った。


「あきらから聞いてんだろ?俺と紫がその気なんかねぇって事」
「う・・・ん。少しだけは聞いてるけど、詳しい事は何も言われてないの。私が会わないって言い続けたから事故の話以外の情報は殆ど聞いてないと思うけど」

「そうか・・・紫は俺の事なんて何とも思ってねぇんだよ。あいつの目的は家元夫人の座・・・そして俺にも愛人許可出してるからな」

「えっ?!愛人許可って・・・なに?」


牧野にこれまでの紫との会話を話した。
紫は家元夫人として西門で生きていければそれでいい、俺が他の誰を好きでも問題はない。ただし本妻は自分だから、自分以外の女は愛人だと。
俺が紫の事をどう思うかなんてのはどうでもいい・・・世間が紫を認めればそれでいい。

それを事故って入院した日に「大丈夫か」の言葉も言わずに、無表情で伝えてきたと言えば牧野の驚きは更に大きくなった。


「確かに跡取りの話は出た。紫は西門の後継者を産まなきゃいけねぇから感情抜きで抱けって言いやがった。それが嫌なら人工授精でもいいから俺の遺伝子を残すことだけが自分の使命だってさ」

「・・・後継者を産まなきゃいけない?あ、あの・・・もし産まれなかったら?」
「なんでお前がそんな顔すんだ?」


人工授精でもいいって話したばかりなのに、産まれなかった時の事を心配そうに聞いて来たのには少し違和感があった。驚いていた顔から急に曇った表情・・・そこまで牧野が狼狽えなくてもいいのに、と今度は俺の方が驚いてしまった。

ただ、それも一瞬の事。牧野は「ごめん、余計な事言った」って俯いてしまった。


「ばーか!心配すんな。俺の遺伝子なんかどうだっていいんだよ。だから婚約してから3年半、この期間1度も紫には触れてねぇよ・・・ってか、出来ねぇだろ?俺の心の中にはお前しか居なかったんだから」

「西門さん・・・でも、そんな事も言えないんじゃないの?お家元が・・・許さないんじゃないの?」

「・・・親父もお袋も許さねぇだろうな。それならそれで俺を破門でも何でもすればいい、そう思ってるけど?」
「そんな!だってそれだと西門流が・・・!」

「最悪の話だ。俺だって茶道を捨てる気はねぇよ。それがお前の1番の願いだって思ったからさ」


握っていた手を離して牧野の頬を撫でたら、そこに顔を寄せて甘えたような仕草をする。
だから今度はもっと引き寄せて俺の胸に抱え込んだ。まるで小さい子を抱いてるみたいに両手で支え、牧野も自分の両腕を俺の首にかけて肩に顔を埋めた。

その体勢のまま、また話をしてやった。


紫の無感情で能面のような顔にうんざりしたこと、岩代での野点で起きた茶碗の事件のせいで婚約させられた話、京都の爺さんに会いに行った時の事・・・あの薬を盛られた事は言わなかったが風邪を引いた事にして部屋を別けたと言えば「そこまでしたの?」ってまたデカい目になってた。
正直言えばここで2日間同室だったが・・・それも余計な情報だと言葉にはしなかった。

病院で大暴れした話、リハビリも本気じゃなくて看護師を困らせた話、牧野の両親に会った話、寺籠りした時の退屈だった毎日・・・類と司に怒鳴られた話まで。


「そうなんだ・・・。両親にも話してくれたんだね・・・ごめんね。花沢類にも道明寺にも心配かけてたんだね」

「彼奴らのことは問題ねぇよ。怒ってんのは俺に対してだからな」

「お父さんとお母さん・・・まだ連絡してないの。怒ってるだろうなぁ・・・」
「そりゃ仕方ねぇな。でもお前の家は話せば判ってくれるだろうから、その時は俺も一緒に行ってやるよ」

「・・・無理だよ、だって・・・」


俺が既婚者だから?確かに今は不味いかもしれねぇけどな・・・。


「牧野・・・俺はお前を離す気はねぇからな。紫が西門に持ってる恨みだか何だか知らねぇけど、それを暴いて離婚する。今度はそれに全力を尽くす、そしてそいつが終わったら何があってもお前を西門に迎える。だから今度はここで俺を待っとけ」

「・・・り、離婚?西門さん、そんな事考えてるの?」

俺の身体に凭れ掛かってたのに急に身体を起こした。
結婚して2週間で離婚するだなんて言ったからだろうけど、ポカンと金魚みてぇに口も目もデッカくさせて俺の顔を見つめていた。それが可笑しくて、もう1度手を頬に添えて耳から後ろの髪を撫でるように動かす・・・今度は真っ赤になって俺の手に自分の手を重ねていた。


「勿論。何年先になってもお前を見付けたらそうするつもりだったしな。心配すんな、絶対に迎えに来るから」

「で、出来るのかな・・・西門家でそんな離婚だなんて」
「いいんじゃね?俺がそのハジメテってヤツになっても」


今後はプッ!と噴き出した。
コロコロよく表情が変わるなぁ・・・と、牧野の顔を眺めていた。

牧野はすげぇ俺の事を心配してんのに、その心配を余所に感情丸出しのこいつに魅入っていた。無表情な紫とはあまりにも違ってやっぱり面白ぇ。
必死だったり泣き虫だったり、笑ったり怒ったり・・・俺が見たかった牧野の顔が目の前にある。


真剣な話してんのに可笑しくなって、こいつが可愛くて可愛くて堪らなかった。





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