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plumeria

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西門さんと紫さんはまだ身体を重ねてない、そう聞いてからホッとしたような怖いような・・・やっぱり嬉しかったのか顔が笑ってしまった。
本当は全然喜べる状況じゃないし、今の私達の関係は「不貞行為」・・・不倫だって事には変わりないんだけど。


それでも目の前の彼の胸に埋もれて、その温かさを感じていた。
もう2度とこんな風に出来ないと思っていたから余計に離れられない・・・だけど、これも罪なんだって思うと身体の何処かにチクチクとした痛みが走る。

このまま時間が止まればいいのに・・・出来もしない事を考えて西門さんにバレないように小さな溜息をついた。


「牧野・・・なんで顔見せてくれないんだよ」
「・・・え?だって・・・こうするの夢だったんだもん」

「早く出て来れば良かったじゃん・・・って、もうそんな事言っても遅いか」

西門さんの腕の力がまた強くなる。私も忘れかけてたものを取り戻すように彼にしがみついてた。
そのうち重ねられる唇・・・ここに来てから何度目だろうってキスをお互いに貪り合うように求め合っていた。


「・・・今日、帰らなくてもいいよな?」
「・・・・・・え?」

「まさかお前、この状況で俺を西門に戻すつもりだったのか?!」
「いや、そういう訳じゃないけど・・・でも、泊まるのはダメじゃない・・・かな、だって・・・」

「何度言えばいいんだよ!俺は今でも・・・」
「そ、それは判ったけど、でも・・・西門さんがここに泊まったのがバレたら大変な事になるんだよ?だから・・・」


さっきまでの甘い気分が何処かに行って、また不安が戻ってくる。
ずっと一緒に居たいけど、もう離れたくないけど、この人には奥さんがいる・・・それは事実。
離婚まで考えてるって言ってくれたけど、それさえ不確かな未来の話で私には現実味が無い。あの家元と家元夫人が西門流の世間体を気にして離婚なんて許さないような気がする。

そうなったら今度はどんなことを言われるか・・・もう1度あの思いを味わったら今度こそこの人の前には立てない。
そんな悪い事しか頭に浮かばなくて、私を抱いてくれてる手から逃げようとしてしまった。


「逃がさねぇぞ、牧野。俺は4年間も捜したんだ・・・もう逃げられねぇから覚悟決めろって!」
「に、逃げない・・・逃げないから今日は取り敢えず家に帰って?」

「嫌だね。絶対に帰らねぇ。プレゼントがキスだけってのが許せねぇしな」
「はっ?!プレゼントの要求なの?」

「そう!俺が1番欲しいプレゼント、それを貰うまでは絶対に帰らねぇ!」


「・・・・・・子供みたい」
「悪いか?」


クスッと笑うともうダメだ・・・私は完全に負けてしまった。
もう全部を西門さんに任せてしまおうか・・・そんな気がしてきた。

もし、この先で私達の事がバレたら一緒に地の底に墜ちてしまおうか・・・それさえも幸せに感じさせる西門さんの胸の中で、彼と過ごす夜を覚悟した。


そっと持ち上げられた顎・・・すぐに落ちてくる優しいキス。
それに必死で応えていたら彼の手が服の中にスルリと入ってきた・・・直に触れる指の温かさ、それにビクッとした瞬間、ある事に気付いて慌てて彼の手を止めた!


「まだ何かあんのかよ!今、すっげぇ気分が乗ってたのに!」
「ご、ごめん!!あの、えっと・・・シャワーしてきていい?!」

「はぁ?いいじゃん、俺は気にしねぇけど?」
「私が気になるの!お、お願い・・・すぐに戻ってくるから、少し待ってて?」

「・・・じゃあ、俺も・・・」
「1人で行ってくるから!」


うわっ・・・凄く不機嫌になっちゃった?西門さんの眉間に特大の皺が!!
でも・・・こればっかりは誤魔化せないんだもの!

そんな西門さんを部屋に置いて、私は急いでバスルームに駆け込んだ。


・・・お腹の傷、彼に見せるわけにはいかないもの。
こんな所にある傷を見せたらバレてしまう。紫音たちを産んだ証し・・・私1人ならこれも勲章だけど西門さんには話せない。


後ろ手で閉めたドアに凭れ掛かって、逃げ場がなくなったこの状況に動揺していた。




*********************




急に慌ててバスルームに飛び込んだ牧野・・・4年ぶりって事での緊張かと思って我慢したけど、内心すげぇムカついた。

確かに久しぶりだけど、そこまで照れなくても良くないか?
いや、これも牧野が俺の事しか知らない証しか・・・誰にも身体を許してねぇなら照れるのも何となく判る・・・か?


牧野がバスルームに行ってる間、こいつの部屋で1人・・・初めて見る部屋を見回していた。

何にもない殺風景な部屋・・・昔からそうだけど縫いぐるみや女らしい飾り物なんてこいつの部屋にはなかったっけ。
買う金もないってのが理由だったのと片付け上手が重なって散らかる事がない。


別に何かを探るつもりもなかったけど机の上に並べられた本を手に取ってみた。

「植物の育て方に農薬の本・・・植物研修所て働いてるって言ってたっけ。真面目だな・・・家でも勉強してんのか」

そいつを手に取ってパラパラと捲ると沢山マーカーなんかされてて牧野らしいと思った。
やるからには手抜きしねぇできちんと覚える性分だ。夢子おばさんの紹介で入ったのなら余計に頑張らないといけないとでも思ったんだろうな。

椅子には草臥れたバッグが置いてある。
あきらに面倒みてもらっても贅沢な暮らしじゃ無さそうだ・・・って事はあきらは鎌倉にあんまり来てねぇのかな。

パソコンも置いてあるけど埃を被ってる。この部屋にも小さなテレビがあるけどリモコンすら出てないところを見ると殆ど見ないのか?
ハンガーに掛かった上着は牧野らしい落ち着いた色のコート・・・どれも俺の知らないものばかりだ。


こいつの事だから着るものに金なんてかけないんだろう。どのぐらいの服を待ってるのかと思い、少し気が引けたがクローゼットの中に足を踏み入れた。

「なんだ、こんな薄手のコートじゃこの先寒いっての!ここは海風だろ?・・・少し用意してやるか」

別にあきらに嫉妬して服を揃えるつもりなんかじゃねぇからな、そんな言葉を独り言のように呟いてクローゼットを出ようとした時、足元に派手な色を見付けた。


「なんだ?・・・縫いぐるみ?」

それはクジラと犬の縫いぐるみ・・・クジラの方はこの付近でも有名な水族館のタグが付いていた。その背中には派手なシールで「つくし」と書かれてる。
如何にも小さな子供がするみたいに・・・そう思ったら浮かんできたのはあきらの子供だった。

あの子達が牧野に贈ったもの?それなら何故こんな所に隠すように置いてるんだ?

もう一つの犬の縫いぐるみには首輪に細工がされてるようだった。[PUSH」と書かれてるところ・・・何かの音が出たらどうしようかと思ったけど牧野はまだバスルーム。
1度部屋のドアを開けて確認したけど今すぐ戻ってくる気配がなかった。だからクローゼットに戻ってそいつを押してみた。


『つったん!おたん・・・じょうび、おめれとう!』
『おちおと、ばんばって・・・ね!』



誕生日?牧野の誕生日プレゼント・・・って事は去年の?

やっぱりおかしい・・・そんなものを隠す必要があるのか?
隠すとしたらその理由は何だ?

邪魔なら捨てればいい・・・こんな所に置いてあの子達はここには来ないんだろうか。来た時にこんな場所に転がされていたら悲しむだろう。
すげぇ腑に落ちなかったが取り敢えず縫いぐるみを元あった場所に戻し、自分もさっきまで座っていた場所に戻った。


暫くして真っ赤な顔して戻って来た牧野。
スッピンでタオルなんて巻いて・・・色気もクソもねぇパジャマ着て・・・それを見たらさっきまで考え込んでいたものは何処かに飛んでしまった。


「・・・落ち着いたか?」
「・・・ん、少しだけ」


部屋の中に広がるボディソープの香り・・・そいつが俺の中に火を付けた。




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